東京オリンピックの紹介:1965年日本映画。日本の戦後復興の証として、国家の威信をかけて開催された東京オリンピック。各国から“外国人”を迎えて日本国中が湧きたった当時の様子が記録されています。観客席や沿道で応援する人たちは、どこかの知らない人たちでありながら、まぎれもなく、令和に生きる私たちのルーツともいえる人たちです。また公開時、「芸術か記録か」と賛否を巻き起こした映像表現も、現代ではまったく違和感がなく、スポーツ映像のひとつとして、その技巧を楽しめる作品になっています。その意味で、「あらやる映画はドラマに通ず」といえます。
総監督:市川崑 出演者:世界の国の人びと
映画「東京オリンピック」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「東京オリンピック」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
東京オリンピックの予告編 動画
映画「東京オリンピック」解説
この解説記事には映画「東京オリンピック」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
東京オリンピックのネタバレあらすじ:起
1964年8月。ギリシャ・オリンポスの山で灯された炎が、遥か日本へ向かって出発します。聖火はユーラシア大陸をめぐり、当時はまだアメリカの占領下にあった沖縄へ到着します。そこから、鹿児島、宮崎、北海道の千歳へ空輸され、日本列島を4つのコースに分かれ東京を目指します。
羽田の東京国際空港では、朝な夕な各国の選手を迎えています。総勢百数十名のアメリカ選手団。総員2名のコンゴ、カメルーンの選手たちもいます。いよいよ選手村がいそがしく稼働しはじめると、東京がオリンピックムード一色に染まります。
そして10月10日。雲ひとつない青空のもと、各国選手が東京国立競技場へ入場してきます。94の国と地域の選手を温かく迎える日本人。時に嬌声と歓声で迎える外国人。外国人の観客の姿も少なくありません。聖火最終ランナーの坂井君が大きく聖火を掲げ、聖火台に火を点けます。開会式では天皇陛下が朗々と開会を宣言されました。
東京オリンピックのネタバレあらすじ:承
男子100m競走の金メダル候補ボブ・ヘイズ(米)を望遠レンズがとらえています。決勝を前にした選手たちの顔はクローズアップです。このレース、スタートからゴールまで、すべてスローモーションです。ゴールしたヘイズのタイムは10秒フラット!世界タイ。オリンピックレコードです。ゴール後もヘイズは歓喜の力走です。
続く男子走り高跳び決勝。画面からブルメル選手(ソ)の息づかいが聞こえてきます。ここでもカメラはブルメルにピントを合わせ、スローモーションで追いかけます。日没後の決勝戦。先に臨んだトーマス選手(米)がバーを落とします。そのすぐあと、ブルメルがきれいなジャンプを決めて金メダルを手にします。
こうして競技ははじまり、男女砲丸投げ、棒高跳び、ハンマー投げと続きます。いずれも望遠レンズを使い、選手ひとりひとりの動きにスポットを当てています。続く男子10000m、やり投げ、男子1500m、三段跳び、女子800m、男子400mリレー、男子走り幅跳び、女子80mハードル。カメラは競技場で展開されるドラマをひたすら追いかけます。
そして、女子体操の名花と謳われたベラ・チャスラフスカ選手。映画では、スタジオに平均台と跳馬を運び入れて稀代の名選手を特殊撮影しています。1964年当時の往年の女子体操。美しさの極みを記録した貴重な映像です。
さらに体操は男子団体。決勝です。ソビエトVS日本戦。両者一歩も譲らない接戦です。王者を堅持したい日本。追うソビエト。ひとりのミスも許されない試合展開です。最後まで王者の貫禄を貫いた日本。瀬戸際の苦しみにも耐え、みごと国旗を掲揚します。
東京オリンピックのネタバレあらすじ:転
陸上男子800m競走のアーメッド・イサ選手。彼はアフリカのチャドから参加しています。選手村、競技場への往復、渋谷の街へ、カメラは密着します。若いイサ選手は晴ときどきナーバスです。彼は準決勝で敗れます。しかしカメラは、選手村のステーキに満足した彼をしっかりとらえています。
若い選手が台頭した競泳。男子100m自由形では18歳ドン・ショランダーが1着。女子100m背泳ぎでは16歳キャシー・ファーガソンが1着。女子100m自由形では15歳シャロン・スタウダーが惜しくも2着。いずれもアメリカです。100mの女王ドーン・フレーザー27歳(濠)のその座は揺がず、敗れた新鋭スタウダーも脱帽です。
小柄な日本人の中にあって、さらに小柄な重量挙げ選手、三宅。それだけに三宅は目を引きます。しかし三宅は筋肉の塊です。他の選手とは違い、三宅の武器は圧縮された筋肉です。その彼が、つぎつぎと荒技を決めます。まさに重量挙げ競技の醍醐味です。
レスリングのグレコローマン決勝。上竹選手がトルコのフセイン・アクバシュ選手を肉弾で制します。ボクシングヘビー級のジョー・フレイザー選手(米)を手持ちカメラで追いかけます。すると、そこから画面は一転して、女子フェンシング団体決勝のハンガリーVSソビエト戦。一瞬の隙を突いて相手を封殺するハチの一刺しです。
東京オリンピックの結末
日本のお家芸の柔道では、重量級の猪熊選手がみごと金、無差別級の神永選手は銀に終わります。神永を倒したのはオランダ人選手ヘーシンク(蘭)。それまで全階級を制していた日本柔道界に衝撃が走ります。しかし、外国人選手のこの1勝が無ければ、その後、海外での柔道普及はなかったといわれています。まさに歴史が動いた瞬間です。
フリーライフル決勝。選手たちの強い眼光が画面を引き締めます。1発1発を入念に、1日120発を標的に向けて発射する長丁場に、選手たちは弁当持参で臨みます。弾をこめるその指先でサンドイッチをつまむ男たち。金メダルはゲイリー・アンダーソン選手(米)でした。
1点集中の射撃から、カメラはのどかな郊外を走り抜けています。自転車レースは、八王子市内の田園地帯を駆け抜け、小高い丘陵を上り下りして1周24㎞超を8周します。4時間以上に及ぶ耐久レースに勝ったのは驚異的な太ももをもつイタリア人、ツァニン選手でした。
サッカー、馬術、バスケットボール、水球、ホッケー、五輪種目を駆け足で紹介したあとに、女子バレーボール、ソビエトVS日本戦が続きます。もつれにもつれた決勝戦。ソビエト選手のオーバーネットで幕を引きますが、大歓声を浴びるその渦中、大松監督の虚無な表情をカメラは見逃していませんでした。
なおもカヌー、ヨット、50㎞競歩、クロスカントリーと、選手たちの競い合いが網羅され、最終競技はマラソンです。スタートからゴールまで、カメラがドラマを追い、見せ場をうまくつないでいきますが、クライマックスは、1位アベベ選手の独走、かつ3位円谷選手の完全燃焼です。
そしてファイナル。この時代の民族や地域、主義主張を越えた国々が一堂に会した東京オリンピック。閉会式では、勢いよく列を崩した参加選手たちが国境のない輪をつくり、東西の壁を越えて、互いの肩を抱き合います。聖火台の火に浮かぶ数千の選手たちを広く大きくカメラがとらえます。歓喜にもみくちゃにされる中、閉会式は幕を閉じました。
以上、映画「東京オリンピック」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する