オッペンハイマーの紹介:2023年アメリカ映画。原子爆弾の開発に尽力し、「原爆の父」と呼ばれたアメリカの物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーの波乱に満ちた半生を巨匠クリストファー・ノーラン監督が映像化した人間ドラマです。第二次世界大戦中にアメリカの極秘プロジェクト“マンハッタン計画”に参加したオッペンハイマーは世界初の原子爆弾の開発に成功したのですが、実際に原爆が戦争に用いられたことから苦悩し、さらには東西冷戦時代の核開発競争の加速を懸念して水素爆弾の開発に反対したことから追い詰められていきます。本作は日本では2024年3月に公開され、第96回アカデミー賞では作品賞・監督賞(クリストファー・ノーラン)・主演男優賞(キリアン・マーフィー)・助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)など7部門を受賞しています。
監督・脚本:クリストファー・ノーラン 出演者:キリアン・マーフィー(J・ロバート・オッペンハイマー)、エミリー・ブラント(キャサリン・“キティ”・オッペンハイマー)、マット・デイモン(レズリー・グローヴス)、ロバート・ダウニー・Jr.(ルイス・ストローズ)、フローレンス・ピュー(ジーン・タトロック)、ジョシュ・ハートネット(アーネスト・ローレンス)、ケイシー・アフレック(ボリス・パッシュ)、ラミ・マレック(デヴィッド・L・ヒル)、ケネス・ブラナー(ニールス・ボーア)、ディラン・アーノルド(フランク・オッペンハイマー)、デヴィッド・クラムホルツ(イジドール・ラビ)、マシュー・モディーン(ヴァネヴァー・ブッシュ)、ジェファーソン・ホール(ハーコン・シュヴァリエ)、デヴィッド・ダストマルチャン(ウィリアム・ボーデン)、トム・コンティ(アルベルト・アインシュタイン)、グスタフ・スカルスガルド(ハンス・ベーテ)、ジョシュ・ザッカーマン(ジョヴァンニ・ロッシ・ロマニッツ)、エマ・デュモン(ジャッキー・オッペンハイマー)、ベニー・サフディ(エドワード・テラー)、マイケル・アンガラノ(ロバート・サーバー)、ジョシュ・ペック(ケネス・ベインブリッジ)、デヴォン・ボスティック(セス・ネッダーマイヤー)、ジャック・クエイド(リチャード・P・ファインマン)、オーリー・ハースキヴィ(エドワード・コンドン)、トム・ジェンキンス(リチャード・トルマン)、ルイーズ・ロンバード(ルース・トルマン)、クリストファー・デナム(クラウス・フックス)、デヴィッド・リスダール(ドナルド・ホルニグ)、ハリソン・ギルバートソン(フィリップ・モリソン)、アレックス・ウルフ(ルイス・ウォルター・アルヴァレズ)、トロンド・ファウサ・アウルヴォーグ(ジョージ・キスチャコフスキー)、ジェームズ・ダーシー(パトリック・ブラケット)、マティアス・シュヴァイクホファー(ヴェルナー・ハイゼンベルク)、デイン・デハーン(ケネス・ニコルス)、ジェイソン・クラーク(ロージャー・ロッブ)、オールデン・エアエンライク(ストローズの側近)、スコット・グライムス(公聴会の弁護士)、メイコン・ブレア(ロイド・ギャリソン)、ガイ・バーネット(ジョージ・エルテントン)、トニー・ゴールドウィン(ゴードン・グレイ)、ジェームズ・アーバニアク(クルト・ゲーデル)、ダニー・デフェラーリ(エンリコ・フェルミ)、マテ・ハウマン(レオ・シラード)、ジェームズ・レマー(ヘンリー・スティムソン)、ゲイリー・オールドマン(ハリー・S・トルーマン)ほか
映画「オッペンハイマー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「オッペンハイマー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「オッペンハイマー」解説
この解説記事には映画「オッペンハイマー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
オッペンハイマーのネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦終結後、東西冷戦時代の1954年。アメリカでは共産党員を公職から追放する“赤狩り”の嵐が吹き荒れていました。そんな中、原子爆弾の開発に尽力し、“原爆の父”と呼ばれていた天才物理学者J・ロバート・オッペンハイマーはソ連のスパイ疑惑をかけられ、聴聞会に呼び出されて追求を受けていました。オッペンハイマーは妻キティや弟フランクが元共産党員だったことから自身もまた共産主義者との疑いをかけられ、ソ連との関係も疑われていたのです―――。
―――時をさかのぼること1926年。元々優れた頭脳の持ち主であるオッペンハイマーはハーバード大学を最優秀の成績で卒業し、イギリスのケンブリッジ大学に留学しました。しかし、オッペンハイマーは現地での環境や実験物理学に馴染めず、ドイツのゲッティンゲン大学に留学しました。オッペンハイマーはそこでニールス・ボーアやヴェルナー・ハイゼンベルクといった優れた物理学者と出会い、彼らに影響を受けて量子力学研究への道を歩み始めました。
1929年。博士号を取得したオッペンハイマーはアメリカに戻り、若くしてカリフォルニア大学バークレー校の助教授となり教鞭を執っていました。この頃からオッペンハイマーは自らの研究や活動を通じ、核分裂を応用して原子爆弾を開発できるのではないかと考えていました。折しもドイツではヒトラー率いるナチスが台頭し、1938年にはドイツで核分裂が発見されるなどナチスもまた核開発を推し進めていました。
オッペンハイマーのネタバレあらすじ:承
やがて第二次世界大戦が勃発、中盤に差し掛かった1942年10月。オッペンハイマーはアメリカ軍のレズリー・グローヴス准将に呼び出されました。アメリカ政府はナチスドイツの勢いに焦りを感じており、核開発のための極秘プロジェクト「マンハッタン計画」を立ち上げ、オッペンハイマーを原爆開発チームのリーダーに抜擢したのです。
1943年、オッペンハイマーはニューメキシコ州ロスアラモスに国立研究所を設立して所長に就任ました。続けてオッペンハイマーは全米各地から優秀な科学者やヨーロッパから亡命してきたユダヤ人科学者を招聘、さらには科学者たちの家族数千人をもロスアラモスに移住させて街を作りました。
本格的な原爆開発に取り掛かったオッペンハイマーは自身がユダヤ人であることもあり、何としてもナチスドイツよりも先に原爆を完成させるべく積極的にリーダーシップを発揮していきました。しかし、研究が進むにつれ、オッペンハイマーはあまりの威力の強さに世界が核の炎に包まれるのではないかという恐怖、各国間による核開発競争の激化、そして原爆よりもさらに強力な水素爆弾の開発を危惧するようになっていきました。
オッペンハイマーのネタバレあらすじ:転
1945年5月8日、原爆投下の目標としていたナチスドイツが降伏しました。これを受けて科学者たちは原爆開発の継続に異を唱えるようになりましたが、オッペンハイマーは日本が未だに降伏せず戦い続けていることから開発を続行するよう科学者たちを説得しました。
1945年7月16日。人類初の核実験となる「トリニティ実験」が行われ、成功しました。科学者や軍関係者、政治家たちは原爆の威力の凄まじさに歓喜するなか、オッペンハイマーは言いしれぬ恐怖と不安を感じていました。
原爆は米軍に移管され、時のアメリカ大統領ハリー・S・トルーマンは日本を降伏に追い込むため、そしてこれからのアメリカの脅威となるであろうソ連への牽制の意味も込めて原爆の使用を決断しました。そして原爆は遂に日本の広島と長崎に投下され、日本は無条件降伏して第二次世界大戦は終結しました。
オッペンハイマーは「原爆の父」としてアメリカ国中から讃えられ、タイム誌の表紙を飾るまでになりましたが、その一方で広島と長崎で甚大な犠牲者が出たことから、原爆の炎に焼かれて死んでいく人々の幻覚に悩まされるようになっていきました。
やがて1949年、ソ連もまた原爆の開発に成功したことにより、オッペンハイマーの危惧した通りにアメリカ国内でも水爆開発を進めるべきだとの声が挙がるようになっていきました。水爆開発に反対の立場をとるオッペンハイマーはトルーマン大統領と面会し、国際的な核兵器の管理機関を設けるべきだと提言しましたが、オッペンハイマーの姿勢を弱腰だとみなしたトルーマン大統領は提言を受け入れませんでした。
そして1954年、ソ連との関係を疑われたオッペンハイマーは聴聞会に招集されました。自身は共産党員ではないものの、妻キティや弟フランク、バークレー校時代の元恋人だった精神科医のジーン・タトロック、バークレー校のフランス語教員で友人のハーコン・シュヴァリエらが共産党員だったこともあり、オッペンハイマーもまた目をつけられていたのです。
オッペンハイマー事件の黒幕はアメリカ原子力委員会(AEC)委員長ルイス・ストローズでした。ストローズは1947年にオッペンハイマーをAECの顧問に任命したのですが、以前にアイソトープをノルウェーに輸出するか判断する公聴会でオッペンハイマーがストローズを揶揄したことがあり、元々頑固で野心家のストローズはそのことを深く根に持っていたのです。
そしてストローズとオッペンハイマーは水爆開発を巡って対立するようになり、オッペンハイマーを公職から追放しようと目論んだのです。キティはストローズの企みに気づいていましたがどうすることもできず、オッペンハイマーはとうとう公職を追放されてしまいました。
オッペンハイマーの結末
オッペンハイマー事件から数年経った1959年。今度はストローズが公聴会に招集されました。ストローズは商務長官への就任を狙っていたのですが、かつてマンハッタン計画に参加したものの原爆使用反対に転じた科学者デヴィッド・L・ヒルによりオッペンハイマーを失脚させるための企みが暴露されました。ストローズは結局、長官就任にふさわしくないと判断されて就任は却下されました。ストローズの長官就任に反対した者の中には、後に大統領となるジョン・F・ケネディの名前もありました。
ストローズは以前にオッペンハイマーを天才物理学者アルベルト・アインシュタインと引き会わせた後、自分がアインシュタインから無視されたのはオッペンハイマーがアインシュタインに何かを吹き込んだからではないかと思い込んでいました。
しかし、ことの真相は、ストローズはアインシュタインと旧知であるオッペンハイマーに、アインシュタインは大量破壊兵器を作った決着を受けるべきだと厳しく言い放ったのですが、オッペンハイマーは以前に話した核の連鎖反応について自分は成功したと思っていることを話していました。その言葉を聞いたアインシュタインは言葉を失い、強張った表情でその場を立ち去っていきました。
オッペンハイマーは池の水面を見つめていました。オッペンハイマーの脳裏には原爆が爆発する瞬間が何度もフラッシュバックしていました。
以上、映画「オッペンハイマー」のあらすじと結末でした。
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