映画「朽ちないサクラ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
朽ちないサクラの紹介：2024年日本映画。第5回徳間文庫大賞を受賞した柚月裕子の同名小説を映画化したミステリー・サスペンス作品です。警察で働く事務職員の女性が親友の不審死の真相を探るうちに警察および公安の闇に迫っていく姿を描きます。
監督：原廣利 出演者：杉咲花（森口泉）、萩原利久（磯川俊一）、森田想（津村千佳）、坂東巳之助（辺見学）、駿河太郎（兵藤洋）、遠藤雄弥（浅羽弘毅）、尾美としのり（坂上管理官）、山野海（高田彰子）、篠原悠伸（宮部秀人）、和田聰宏（臼澤課長）、藤田朋子（津村雅子）、豊原功補（梶山浩介）、安田顕（富樫隆幸）ほか
この解説記事には映画「朽ちないサクラ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛知県平井市。女子大生の長岡愛梨が神社の宮司・宮部秀人に殺害されました。被害者の長岡は宮部からストーカー行為を受けており、愛知県警平井中央警察署に被害届を出したのですが1週間も受理されず、受理されたのは長岡の殺害直前でした。
世間は警察の初動対応の遅れを非難しました。警察側は他の事件の捜査があったと弁解していましたが、地元新聞の米崎新聞は被害届受理が遅れたのは職員の慰安旅行があったためだと独自スクープを出し、世間の警察への風当たりはより一層強くなりました。住民の苦情受付やマスコミ対応を担当する県警広報広聴課の職員たちは警察内部の者が米崎新聞にリークしたのではないかと疑っていました。広報広聴課の行政職員・森口泉は自分がリーク元だと考えていました。
泉の親友・津村千佳は米崎新聞の県警担当記者であり、泉は千佳の家に遊びに行った際に警察学校時代の同期で平井中央署・生活安全課に勤務する磯川俊一からもらった慰安旅行のお土産の菓子を渡しました。千佳は被害届受理が遅れた原因が慰安旅行だと察し、泉はこのことは記事にしないよう千佳に約束させました。
数日後、千佳は上野川の下流で遺体となって発見されました。千佳の死の直前、泉は千佳が約束を破って記事にしたのではないかと疑いましたが、千佳は否定しました。千佳は上司の兵頭洋と不倫関係にあり、千佳は兵頭に指示された可能性もありましたが、千佳はこの件には裏に何かあるとして調べようとしていたのです。
千佳の通夜の日、泉は広報広聴課課長・富樫隆幸に呼び出されました。元公安で“公安のタカ”との異名を持つ富樫は千佳の携帯の通話履歴から泉が事件前に千佳と会っていたことを突き止めていました。泉は自分が疑われていることに苛立ちながらも富樫に千佳とのやり取りの一部始終を打ち明けました。
泉は富樫の立ち会いのもと、捜査一課係長・梶山浩介の事情聴取を受けました。梶山は泉を新聞記者のスパイだと疑いながらも、千佳の検死結果は溺死だが肺の中には川の水の他にも水道水が混じっていたこと、千佳の爪には犯人のものらしき皮膚の断片があったこと、記事が出てから1週間千佳は出勤しておらず何度か小先市に向かっていたという捜査内容を証言しました。
磯川は自分が泉に渡したお土産が事件の発端になったことを後悔していました。泉は独自で千佳の死の真相を探る決意をし、磯川も協力することにしました。
磯川の先輩で生活安全課の巡査長・辺見学は普段は仕事熱心でしたが、先日のストーカー殺人事件に関してはなぜか対応が遅かったのでした。また、生活安全課の嘱託事務職員・百瀬美咲が契約途中で解雇されており、周囲は百瀬がその恨みで慰安旅行の情報をリークしたのではないかと噂していました。磯川は生活安全課職員・高田彰子から百瀬は辺見と不倫していたこと、そして辺見から一方的に別れを告げられたとの証言を得ました。
泉は千佳の実家を訪れ、千佳の母・雅子と対面しましたが、自分のせいで千佳が死んだとは伝えられませんでした。一方、磯川は百瀬が生活安全課を退職していること、百瀬の実家は小先市であるという情報を掴み、泉と共に百瀬の実家に向かいましたが、百瀬は既に自殺していました。
泉は千佳が小先市に行っていたのは、自らにかけられた情報漏洩の疑いを晴らすべく百瀬に会うためだと推測し、梶山にそのことを報告しました。梶山は富樫に促されて捜査状況を泉にも教えました。
千佳の車からは指紋や毛髪などは一切発見されておらず、犯人は車内を徹底的に掃除して痕跡を消した可能性がありました。梶山は犯人は警察の捜査に詳しい人物の可能性があると示唆しました。
泉は富樫に連れられ、新興宗教団体ヘレネスの施設の近くへ行きました。ヘレネスの前身はかつて毒ガステロ事件を起こして多数の死傷者を出したカルト教団ソノフであり、富樫は自分のせいでテロ事件を止められなかったことを今でも悔んでいました。かつてソノフの動向を注視していた警察は慎重に捜査を進めていましたが、ある日張り込みをしていた富樫はソノフを抜けようとして暴行を受けている信者を見つけて助けました。しかし、そのことがきっかけで警察の捜査がソノフに感づかれてしまい、ソノフはテロ決行を早めてしまったのです。
一方、梶山は兵藤の事情聴取を行い、その結果百瀬は兵藤に情報をリークしていたこと、千佳が情報元である百瀬と接触していたことが明らかになりました。百瀬は辺見から神社のおみくじをもらってそれを千佳に渡しており、千佳の遺体の衣服から川の水で溶けたおみくじが発見されていました。
磯川は辺見に事情を聞こうとしましたが、辺見は「私にかまうな」「警察とは何だ？」と言い、程なくして警察を辞めてしまいました。辺見は携帯を解約し、自宅アパートも引き払って音信不通になっていました。
泉は辺見の件を富樫と梶山に報告すると、梶山は警官が自分の職務に失望する時は警察組織のあり方に疑問や不満を抱いた時であり、“サクラ”（公安警察の暗号名）が絡んでいるのではないかと語りました。サクラは職責を遂行するためなら裏から手を回して捜査に介入し、妨害することもいとわないというのです。
梶山からおみくじの話を聞いた泉は磯川と共に宮部が勤めていた神社に行き、そこにヘレネスのマークがあることに気づきました。宮部は実はヘレネスの信者であり、泉から話を聞いた梶山は辺見が宮部のストーカーの件を受理しなかったのはヘレネスから圧力があったからではないかと疑い、千佳はヘレネスによって消された可能性があると推測しました。
梶山は泉に、決して外部に漏らさないことを条件に千佳の行動を記した捜査の資料を密かに手渡しました。今後の捜査には公安課が保有しているヘレネスの信者リストが必要であり、梶山は富樫を通じてこっそりそのリストを入手しました。梶山や捜査官たちはそのリストや千佳の殺害現場近くの防犯カメラなどの映像の解析などの結果、事件現場にヘレネスの信者である浅羽弘毅という男の存在が浮上しました。実はこの浅羽はかつてソノフを抜けようとして暴行を受け、富樫に助けられた信者本人だったのです。
警察は浅羽を尾行し、彼が吸っていた煙草の吸い殻を回収しました。吸い殻に付着していた浅羽の唾液のDNAは千佳の爪にあった皮膚の欠片のDNAと一致しており、警察は浅羽の逮捕状を取ってヘレネスの施設に乗り込みました。しかし、警察が来たことを知った浅羽は車で逃亡し、警察は浅羽を追跡しました。その際に浅羽の車はブレーキが効かなくなり、そのまま路肩に激突して浅羽は死亡しました。ヘレネスの施設からは毒ガスの原料となる化学物質が発見され、千佳殺人事件は容疑者死亡のまま解決したかに思われました。
しかし、泉は梶山からもらった捜査資料を見ているうちにあることに気づき、再び宮部の神社に行って結んであったおみくじの中から「凶」のおみくじを発見しました。これは百瀬が辺見からもらったものでした。一方、磯川は辺見の姿を発見し、事情を聞きました。
泉は富樫に「凶」のおみくじを見せました。おみくじには在原業平朝臣の和歌「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」が書かれており、泉はこのおみくじに込められたメッセージ、すなわち「世の中にサクラ（公安）がなかったら春はどれだけのどかだろうか」を読み解いていました。
泉は磯川が辺見から聞いた情報などと照らし合わせて推理をしていました。千佳は辺見が宮部の件の受理を遅らせたのは公安から圧力がかかったからであり、宮部の本当の正体は公安のスパイではないかと感づいていました。そこで千佳はそのことを公安に確認しようとしたところ、辺見は公安では教えられないというので、元公安である富樫に話を聞こうとしていたのです。しかし、富樫は今でもなお公安と繋がりがあり、富樫は実は公安のスパイであった浅羽に千佳を殺させ、口封じのために富樫を消したのです。富樫は人事異動で公安課の課長になることが決まっていました。
泉は白を切る富樫に、自分は富樫と公安を決して許さないと告げ、今度は自分を殺すのかと問いかけました。富樫は綺麗ごとではこの国は守れないと語り、その場を立ち去っていきました。
泉は再び雅子のもとを訪れ、決して外部に見せないことを条件に千佳の捜査資料を渡しました。そして泉は千佳が自分のせいで死んだことを告白し、雅子は泉は何も悪くないと慰めました。そして泉は行政職員の職を辞め、警察官の採用試験を受けることを磯川に伝えました。
以上、映画「朽ちないサクラ」のあらすじと結末でした。
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