大名倒産の紹介:2023年日本映画。直木賞作家・浅田次郎による同名時代小説を神木隆之介の主演で映画化した痛快時代劇です。江戸時代後期の架空の小藩を舞台に、思いがけず大名家の家督を継いだ若き藩主が藩が抱えている莫大な借金に向き合っていく姿をコミカルに描きます。
監督:前田哲 出演者:神木隆之介(松平小四郎)、杉咲花(さよ)、松山ケンイチ(松平新次郎)、小日向文世(間垣作兵衛)、小手伸也(橋爪左平次)、桜田通(松平喜三郎)、宮﨑あおい(なつ)、キムラ緑子(タツ)、梶原善(天野大膳/天野中膳/天野小膳)、勝村政信(板倉周防守)、石橋蓮司(仁科摂津守)、髙田延彦(小池越中守)、藤間爽子(お初)、カトウシンスケ(白田新左エ門)、秋谷郁甫(黒田市ノ進)、ヒコロヒー(橋爪しの)、浅野忠信(磯貝平八郎)、佐藤浩市(一狐斎)ほか
映画「大名倒産」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「大名倒産」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「大名倒産」解説
この解説記事には映画「大名倒産」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
大名倒産のネタバレあらすじ:起
江戸時代後期の1840年。越後の小藩・丹生山(にぶやま)藩は古くから地元の名産品・塩引き鮭で栄えてきた藩です。藩の鮭役人であり、塩引き鮭作りの名人である間垣作兵衛の息子として育った小四郎は鮭売りとして今日も威勢よく塩引き鮭を売り歩いていました。
作兵衛は小四郎には主君のためには命をもかける立派な武士として育ってほしいと願っていましたが、亡き母・なつは武士道とは決して命を粗末にするものではなく、懸命に生きて人の役に立つことだと説いていました。なつの影響を受けた小四郎は作兵衛の思惑とは裏腹に心優しくお人好しな好青年として育っていました。
そんな小四郎の運命が大きく変わることになったある日。作兵衛の家に藩の役人がやってきました。この日も鮭売りをしていた小四郎が帰宅すると、作兵衛は突然小四郎を「若様」と呼んでひれ伏しました。実は小四郎は作兵衛の実子ではなく、丹生山藩12代目藩主・一狐斎の実子だったのです。
丹生山藩の歴代藩主は徳川家康の血を引く名門・松平家です。隠居を考えていた一狐斎は家督を誰に譲ろうか悩んでいました。長男は落馬で早世し、次男・新次郎はうつけ者、三男・喜三郎は病弱と家督を継がせるには心もとなく、そこで一狐斎はかつて奉公をしていたなつに産ませた妾腹の四男・小四郎を作兵衛に預けていたままだったことを思い出し、急遽白羽の矢を立てたのです。そして一狐斎は恐るべき思惑を内に秘めていました。
大名倒産のネタバレあらすじ:承
早速江戸の藩屋敷に連れてこられた小四郎は一狐斎と対面。一狐斎はその場で小四郎に家督を譲って隠居すると宣言しました。こうして庶民から一国の殿様という大栄転を遂げた丹生山藩13代目藩主・松平小四郎でしたが、早速幕府からお呼び出しをくらいました。
小四郎は藩から幕府への献上金が支払われていないと叱責され、藩の帳簿を確認したところ、何と石高3万石の丹生山藩は25万両(現代の金額で100憶円)ものの莫大な借金を抱えているという驚愕の事実を知ることとなりました。
小四郎は一狐斎にこのことを問い質しましたが、今や風流人として優雅な隠居暮らしを送る一狐斎は「策はある」とだけ告げました。実はこの策とは“計画倒産”であり、藩のお取り潰しと引き換えに借金を踏み倒すというものでした。そして倒産となった場合は藩主は全ての責任を取って切腹せねばなりませんでした。一狐斎は全ての責任を小四郎に擦り付けるために家督を譲ったのです。
一狐斎は速やかに、しかし幕府にバレないように“大名倒産”を進めるよう小四郎に命じました。藩主就任早々に切腹か借金完済か二択を迫られた小四郎は、藩の民のためにも何とかして借金を完済しようと決意しました。
大名倒産のネタバレあらすじ:転
小四郎はたまたま江戸に商売に来ていた幼馴染の町娘・さよの協力を得て、家臣たちの不満を押し切って大胆な倹約策に打って出ました。まず手始めに藩の蔵を整理し、使わない武具や家財を売却しました。続けて小四郎は藩屋敷を手放し、新次郎と喜三郎の住む離れ屋敷を間借りすることにしました。
うつけ者といわれる新次郎は持ち前の庭師の技術を活かして小四郎を手助けし、喜三郎も快く受け入れてくれました。毎度莫大な支出を強いられる参勤交代においては、一切宿は取らず野宿でしのぐことにしました。そして肥料として使える肥溜めの糞尿、小四郎の糞尿までも金になるものはなりふり構わず売っていきました。
小四郎の奮闘あって藩士たちの心はひとつにまとまろうとしていましたが、実は小四郎の知らぬところで一狐斎は老中首座・仁科摂津守、そして藩の借金の大半を貸し付けている大坂の豪商、両替商「天元屋」の女主人タツと水面下で密会していました。
参勤交代で久々に国元の丹生山に戻った小四郎は、その足で育ての親・作兵衛を訪ねました。かつて小四郎が作兵衛と共に暮らした村は今やすっかり寂れ、作兵衛は藩から塩引き鮭の事業を止められて今や不慣れな土木工事をさせられていました。
小四郎は藩の金の流れに疑念を抱き、さよや家臣たちの協力を得て片っ端から帳簿を調べ上げていきました。一方、一狐斎は小四郎の教育係である磯貝平八郎に小四郎の監視を命ずるとともに、口封じのため勘定方の橋爪左平次を抹殺するよう命じていました。
橋爪は自らの命が狙われていることを悟り、家族に影響が及ばないよう自ら死を選ぼうと考えていました。小四郎は決して命を粗末にするなと橋爪を説得し、思い留まらせることに成功しました。小四郎の懸命ぶりに心を動かされていた磯貝も橋爪の暗殺を思い留まりました。橋爪は天元屋が中抜きをしていた事実を記した帳簿を作っており、小四郎とさよたちは藩の帳簿と照合する作業に入りました。
大名倒産の結末
丹生山藩の借金の件が幕府にバレてしまい、小四郎は幕府から呼び出しを受けました。小四郎は単身で仁科と老中・板倉周防守と対面、天元屋が中抜きをしていた件を告発しました。小四郎は証拠はあるのかと迫られましたが、昨晩に何者かが投げ入れた着服金の在り処を示す投げ文を元に、天元屋の蔵から丹生山藩の印が刻まれた大量の小判を発見されていました。
さらに驚くべきことに、仁科も天元屋と同様に他の藩からの他藩からの献上金を横領していたことが判明しました。仁科は否定しましたが、そこに一狐斎が現れ、仁科のこれまでの悪事を洗いざらい暴露すると、他藩の藩主から集めた署名を突き付けました。小四郎に天元屋の着服金の在り処を知らせたのは一狐斎でした。
小四郎は着服金に加え、残りの借金は一狐斎から回収すると告げ、ひとまず借金の完済の目途をつけました。しかし、幕府側としては丹生山藩がこの先どうやって収入を確保するのか見定める必要がありました。
その時、丹生山から江戸に大きな船が到着しました。作兵衛が大量の塩引き鮭を持って駆けつけたのです。船を提供したのは幕府の旗本大番頭で新次郎の婚約者・お初の父である小池越中守でした。小池は新次郎とお初の結婚を認めていなかったのですが、お初の意思の揺るぎなさ、小四郎の情熱、そして丹生山の塩引き鮭の美味さに感動して小四郎に力を貸すことにしたのです。こうして小四郎は切腹を免れ、大名倒産を回避し、丹生山藩を救うことに成功しました。
以上、映画「大名倒産」のあらすじと結末でした。
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