映画「法廷遊戯」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
法廷遊戯の紹介：2023年日本映画。現役弁護士でもある小説家・五十嵐律人が司法修習生時代に書き上げたデビュー作を永瀬廉（King & Prince）、杉咲花、北村匠海（DISH//）の主演で映画化したミステリー作品です。ロースクールの同級生だった3人の男女が学生時代に参加していた模擬裁判「無辜（むこ）ゲーム」にまつわる事件に巻き込まれ、事件の真相を追ううちに3人の隠された真実が暴かれていく様を描いていきます。
監督：深川栄洋 出演者：永瀬廉（久我清義（セイギ））、杉咲花（織本美鈴）、北村匠海（結城馨）、戸塚純貴（藤方賢二）、柄本明（奈倉哲）、倉野章子（隅田春江）、生瀬勝久（釘宮昌治）、大森南朋（沼田大悟）、やべけんじ（古野雄一）、タモト清嵐（留木慎介）、潮田玲子（馨の母）、筒井道隆（佐久間悟）、黒沢あすか（結城葵）ほか
この解説記事には映画「法廷遊戯」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
とある駅のホーム。悲鳴が鳴り響き、男性と女子高生の2人が階段から転げ落ちてきました―――。
―――ここは司法試験合格を目指すロースクールである法都大学大学院。この大学院では「無辜（むこ）ゲーム」という模擬裁判的なゲームが流行っていました。「無辜」とは罪のないこと、またはその人を意味する言葉です。
「無辜ゲーム」のルールは、告訴人が自身が受けた被害を“罪”として指名したうえで必要な証拠調べを請求し、得られた証拠をもとに“犯人”を特定、告訴人が指定した犯人と審判者の心証が一致すると犯人は罰を受け、一致しなければ告訴人が罰を受けるというものです。
「無辜ゲーム」の首謀者は、大学院在学中に司法試験を突破した唯一の人物である“天才”結城馨でした。ある日、何者かにスマホを壊された学生の藤方賢二が「無辜ゲーム」の開催を求めてきました。「無辜ゲーム」は学校の敷地内にある洞窟で開かれ、藤方はスマホの器物損壊罪で犯人を指名しましたが、馨は証拠不十分として犯人を無罪としました。
“セイギ”こと久我清義は弁護士を志し、幼馴染の織本美鈴と共にこのロースクールに通っていました。セイギは奈倉哲先生に呼び出され、「無辜ゲーム」についての情報提供を求められましたが、セイギはゲームの存在は知りながらも一度も参加しておらず、「よく知りません」とのみ答えました。
教室に戻ったセイギは、学生たちがチラシを見ている様を目の当たりにしました。このチラシには数年前に児童養護施設「こころホーム」の施設長がナイフで刺され、この施設に入居していた当時高校1年生の少年が傷害の疑いで逮捕されたという事件が犯人の写真付きで書かれており、学生たちは写真からこの犯人はセイギではないかと噂をしていたのです。
セイギは名誉棄損の罪で「無辜ゲーム」の開催を求め、証人に美鈴を指名しました。美鈴はこのチラシがセイギが奈倉先生に呼び出された時に配られたものではないと証言。セイギはチラシの表面に糊がついていることに気づき、このチラシはシール印刷で2枚重ねになっており、上には自分が呼び出されるまえにあらかじめ配られていた勉強会の案内が印刷されていたことを指摘しました。美鈴はこの案内を剥がすよう指示したのは同級生の藤方であることを証言、セイギは藤方を犯人として指名しました。
藤方は罪を認め、セイギは藤方にチラシの写真の入手経路を明かすよう迫りましたが、藤方はその写真はロッカーに報酬と共に入っていただけと証言しました。既に学校を辞めることにしていた藤方は殺人未遂の犯人がなぜ弁護士を目指すのかと吐き捨てました。
そんなある日、美鈴のアパートのドアにアイスピックが刺さっており、それに例の事件の記事が巻きつけられているのをたまたま訪れたセイギが発見しました。美鈴は自転車がパンクさせられたり、郵便物が盗まれるなど嫌がらせが続いていることを明かし、セイギはこの犯人は藤方を操った人物であり、美鈴の行動を把握している可能性を主張しました。
スクールでは奈倉先生が冤罪と無罪の違いについて授業をしていました。学生のひとりは無罪とは罪を犯していないことであり、冤罪とは有罪とされたが罪を犯していないと認められたものであると答えました。馨は「冤罪は神様しか分からない。無罪は検察が立証に失敗した結果」だと答えました。
セイギと馨は常日頃から法律や司法制度改革などについて意見を交わし合う仲でした。施設出身のセイギに、馨は自身も母を早くに亡くし、男手ひとつで育ててくれた父も亡くなったことを打ち明けました。馨は自分の父は優しくて立派だったと振り返り、ロッカーに入っていたというナイフを見せると、自分に何かあったらリンドウの花を持って自分の墓参りに来てほしいと頼みました。馨は「そろそろ無辜ゲームも潮時だ」と言いました。
美鈴の部屋には盗聴器は仕掛けられておらず、セイギは美鈴の部屋の上階の空き部屋が怪しいと睨んでその部屋に突入しました。そこでは美鈴をこの部屋から盗聴していた謎の男がおり、男は自分はネットで頼まれただけで依頼人のことは知らないと白状するとその場から逃げ出しました。その日依頼、美鈴への嫌がらせはピタリと止まりました―――。
―――それから2年後。セイギと美鈴は司法試験に合格して弁護士となり、馨は研究者として引き続き大学に残っていました。そんなある日、セイギのもとに馨から電話があり、今週の土曜に久しぶりに「無辜ゲーム」をしようと持ちかけられました。馨はこれを最後のゲームとすることにしていました。
ゲーム当日、久しぶりに学校を訪れたセイギは、胸にナイフを刺されて絶命している馨の遺体、そして返り血を浴びた美鈴の姿を発見しました。美鈴はセイギに自分を弁護してくれるよう懇願してきました―――。
―――セイギと美鈴は同じ施設の出身でした。二人が高校生だった時、美鈴は施設長から性的暴行を受けていました。このことを知ったセイギはナイフで施設長を刺し、美鈴は施設長に対し、自分にした行為をバラされたくなければセイギに暴力を振るっていたと嘘をつくよう脅しました。セイギは正当防衛として少年院行きを免れ、セイギを担当した弁護士の釘宮昌治は「暴力は犯罪だ。君を助けるのは暴力ではなく知識だ」とセイギに言葉をかけました。セイギはこのことをきっかけに弁護士を目指すと決意、美鈴も一緒に誘ったのです―――。
―――セイギは下宿先に自身が代表を務める「フィオーレ法律事務所」を開設し、留置所の美鈴と面会するとなぜ自分に弁護を依頼したのか教えてほしいと尋ねました。
公判前整理手続きは被告人・美鈴の欠席のまま始まり、弁護人のセイギは裁判官や検事と事件の争点や証拠について話し合いました。検事は凶器のナイフには美鈴の指紋が付いており、美鈴が浴びた返り血は馨のものであると主張。美鈴は黙秘を続けていることからセイギにどう美鈴の無罪を証明するのかと訊きました。セイギは美鈴には動機がないと答えるしかありませんでした。その夜、セイギはなぜ馨は大学に残ったのか、なぜ誰も答えてくれないのかと嘆きました。
セイギは生前の馨と約束したとおり、リンドウの花を持って馨の墓参りをしました。その後、セイギは馨の伯母（馨の母の姉）・結城葵のもとを訪れました。葵は馨の父の死後に馨を引き取っており、馨の父は女子高生に痴漢をして逮捕され、自殺したことを明かしました。セイギは馨が父のことを立派な人だったと言っていたことを思い出しました―――。
―――セイギと美鈴が高校生だった9年前。電車の中で痴漢に遭った美鈴はセイギと共に犯人を捕まえました。犯人は二人に金を渡して見逃してもらい、これに味をしめた二人は美鈴が痴漢に遭ったかのように装い、道行く人に罪を着せて金を踏んだくる行為を繰り返していました。そんなある時、美鈴はいつものように痴漢に遭ったフリをしましたが、その相手は警察官であり、馨の実の父である佐久間悟でした。悟は美鈴の行動を見抜き、犯罪行為だと指摘しましたが、駆けつけたセイギが悟と揉み合いになった際に悟と美鈴は階段から転がり落ちたのです。その後、有罪となった悟は自ら命を絶ったのです―――。
―――美鈴は面会に訪れたセイギに、このゲームは馨が最後に仕組んだものであり、セイギはプレイヤーだと語りました。セイギは美鈴の殺人動機は9年前の事件にあり、これは裁判の争点になるだろうと確信しました。その後、美鈴は自分が初めて施設に入った日のこと、初めてセイギに会った時のことを思い出していました。
セイギは奈倉先生に会い、馨が書いた司法改革の論文は全て“同害報復”を扱っていること、同害報復で相手を許しつつも罪を償わせる理論だと聞かされました。再び馨の墓参りに行ったセイギは、墓の傍らにUSBメモリがあるのを見つけました。
美鈴の第1回公判が始まり、美鈴は殺人罪で起訴されました。美鈴が黙秘を続けるなか、弁護人のセイジは美鈴は馨を殺しておらず、今回の事件は9年前の悟の痴漢冤罪事件と関係していること、馨は悟の実子であることを主張しました。続けてセイジは2年前に美鈴を盗聴していた男・沼田大悟を証人として第2回公判の法廷に上げ、沼田は独自に盗聴を依頼した人物を探ったところ何と馨であることを証言しました。
第3回公判。美鈴は今まで黙秘していたのは全て裁判で話すためだと語りました。事件当時、馨は美鈴には12時半に、セイギには1時に来るようメールしました。この空白の30分間、ナイフを手にした馨はあらかじめ現場にビデオカメラを仕掛けており、撮影した映像の入ったSDカードをセイギに渡すよう指示しました。事件直後にセイギが受け取ったSDカードにはパスワードがかかっており、美鈴は公判まで非公開にしてほしいと頼まれていたことを明かすとセイギにパスワードを教えました。
法廷でSDカードの動画が公開されました。馨はカメラに向かって父は冤罪だったが警察もマスコミも信じてくれなかったこと、法廷で父の無実を証明して検察と司法に罰を与えると宣言すると自らの胸をナイフで刺しました。美鈴は止めようとして一緒に倒れ、しばらくして血まみれの美鈴が立ち上がったところで動画は終了しました。法廷は騒然となりました。
セイギは記者会見で美鈴の無実が証明されるだろうと述べると、下宿を引き払って事務所を畳みました。その後、セイギは弁護士のバッジを外して美鈴と面会し、弁護人を辞めると告げると本当のことを教えてほしいと頼みました。
セイギが馨の墓で見つけたUSBメモリには薫の日記がありました。馨はあらかじめ美鈴に“演技”をするよう指示しており、馨は急所を外す手筈でしたが、セイギは美鈴が裏切ったために馨は死に至ったと推理しました。続けてセイギは美鈴は自分を守るために馨を殺したこと、自分も悟の事件の加害者であること、そして駅で悟と待ち合わせしていた馨は事件の一部始終を知ってしまったことを伝えました。美鈴は「この日が来ることを待っていた。セイギは関係ない。弁護士を辞めてどうする？ 私を救ってくれた」と話しましたが、セイギは「僕も美鈴と一緒に生きたかった」と言い残してその場を去っていきました。
馨が今回仕組んだ「無辜ゲーム」の目的は悟の冤罪を証明するための再審請求でしたが、請求は被告人の配偶者もしくは直系の親族しかできず（馨の伯母である葵は該当せず）、馨が死んだら請求できる人間はいなくなってしまうのです。このことが腑に落ちなかったセイギは、馨が美鈴に被せようとしていた罪は殺人罪ではなく殺人未遂罪ではないかと推測、9年前の事件の時に悟と美鈴が揉めていた時に悟のカバンを引っ張って階段から突き落としたのはセイギ自身であることを振り返り、現場を目撃した馨は美鈴のみならずセイギにも復讐しようとしていたことを悟りました。
美鈴は悟の無実が証明されればセイギも罪を負うことになることから、打ち合わせを無視して馨を殺し、セイギを救うことを選んだのです。馨は美鈴が裏切った場合の保険としてあらかじめ自らの日記をUSBメモリに入れていたのでした。
裁判の判決が下り、裁判長は美鈴に無罪を言い渡しました。法廷には美鈴の狂ったかのような笑い声が響いていました。
以上、映画「法廷遊戯」のあらすじと結末でした。
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