愛を積むひとの紹介:2015年日本映画。エドワード・ムーニー・Jr.の小説『石を積むひと』を映画化。石塀造りを通して繋がっていく人々の絆を描いたヒューマン・ドラマ。東京の町工場を畳んで北海道に引っ越した良子は、夫の篤史に家を囲む石塀を造ってくれるよう頼む。仕方なく取り掛かった篤史は次第にやり甲斐を見出し、交流の輪も広がっていった。その矢先、良子が長年患っていた心臓病のために他界してしまう。悲しみに打ちひしがれる篤史は、良子が遺した手紙に導かれ再び人生を見つめ直していくのだった。
監督:朝原雄三 出演者:佐藤浩市(小林篤史)、樋口可南子(小林良子)、北川景子(小林聡子)、野村周平(杉本徹)、杉咲花(上田紗英)、森崎博之(平間造園の親方)、佐戸井けん太(刑事)、岡田義徳(鈴原)、吉田羊(上田美智子)、柄本明(上田熊二)、ほか
映画「愛を積むひと」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛を積むひと」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
愛を積むひとの予告編 動画
映画「愛を積むひと」解説
この解説記事には映画「愛を積むひと」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛を積むひとのネタバレあらすじ:新天地
舞台は現代日本、北海道美瑛町。小林篤史とその妻良子は、ひと月ほど前に東京から美瑛町に引っ越して来ました。借金がかさんだ町工場を畳み、北海道で第二の人生を送ることにしたのです。以前外国人が暮らしていたという赤い屋根の洋館で、穏やかな生活を始めた2人。しかし良子がガーデニングや内装に精を出す一方、仕事一辺倒だった篤史は手持ち無沙汰な毎日を送っています。そこで良子は、篤史に家を囲む石塀を造って欲しいと頼みました。冬の休みを含めれば1年以上かかる大仕事です。難色を示す篤史でしたが、良子に押し切られ結局取り掛かることにしました。石を運び、積んでいく作業は大変な重労働です。そこで2人は、近所の造園会社から見習いの青年を寄越して貰うことにしました。彼の名前は杉本徹。高校を中退して働いている彼は、酷く無愛想でろくに返事もしません。しかし根気強く話しかけ続け、しばらくすると一緒に食事をする仲になりました。
そんな折、徹の部屋に不良時代の先輩が押しかけて来ます。彼に逆らえない徹は、小林夫妻が留守にする日と時間帯を教えてしまい、一緒に泥棒に入る羽目になりました。しかし思いがけず良子が帰宅したため慌てて逃げ出します。その際体当たりされた良子は倒れて気絶してしまい、しばらく入院することになりました。徹は罪悪感に苦しみ篤史を訪ねますが、どうしても真相を打ち明けられません。何も知らない篤史は良子への想いを語り始めました。良子は元々心臓病を患っています。東京では仕事に打ち込むあまり、彼女にたくさんの負担をかけてきました。その感謝と侘びのつもりで、工場を畳んだ後は良子の希望通り北海道に移住したのです。
愛を積むひとのネタバレあらすじ:真珠のネックレス
やっと退院を迎えた良子は、自宅で徹の恋人上田紗英を紹介されました。徹の中学の同級生で、牧場の一人娘だそうです。明るく積極的に世話を焼いてくれる紗英と良子はすぐに仲良くなりました。それから4人は楽しい時間を過ごしますが、良子には気がかりなことがありました。東京で暮らしている、一人娘の聡子のことです。5年前、聡子はたくさんの人を傷つける恋愛をしました。それが原因で篤史とは疎遠になってしまったのです。どうしても聡子と向き合おうとしない篤史に、焦れた良子は思わず「私が死んだら篤っちゃんにはあの子しかいないのよ」と叫んでしまいました。顔色を変える篤史に、良子は慌てて取り繕います。
しばらくして、良子は北海道で初めての誕生日を迎えました。良子は篤史にプロポーズされたのは十勝岳の山頂だったと思い出を語ります。篤史は石塀が完成した時には、記念にもう一度登ろうと約束しました。篤史は小さな箱に入った1粒の真珠を良子にプレゼントします。篤史は結婚してからずっと、毎年種類も大きさも違う真珠を1粒ずつ贈っていました。高価な物ではないけれど、いつか良子のためだけのネックレスになるはずだった真珠。しかしそれは先日の泥棒に盗まれてしまったと小林夫妻は肩を落とします。その瞬間、徹はもちろん彼の犯行だと知っている紗英も動揺を隠せませんでした。
愛を積むひとのネタバレあらすじ:良子の手紙
良子は心臓病が悪化していることを篤史に黙っていました。そしてある秋の日、突然倒れた良子はこの世を去ってしまいます。篤史は悲しみに打ちひしがれ、家に篭るようになりました。そんな時訪ねて来た紗英は、以前良子から預かったという手紙を渡します。死期を悟った良子は、篤史のために手紙を遺していたのです。手紙には幸せだったこと、出来れば石塀を完成させて欲しいことが綴られていました。積まれた石に囲まれた家を、石を積む篤史の姿を、空の上から見つめていたいのだと。手紙を読んだ篤史は石塀造りを再開する決意をしました。
ところがその矢先、徹が泥棒の件で警察に捕まったと知らせが入ります。篤史は戻ってきた真珠のネックレスを手に警察署から帰宅。複雑な思いで引き出しを開けると、そこには良子からの手紙が隠されていました。実は、良子は徹が犯人だと分かっていたのです。徹の後悔を感じ取った良子は、石を篤史と積む経験が、きっと刑罰より意味のあることになると考え口を閉ざしていました。手紙を読んだ篤史は被害届を取り下げ、職も住む所も失った徹をしばらく家に置いてやることにします。徹は前にも増して真剣に石を積むようになりました。
愛を積むひとのネタバレあらすじ:徹と紗英のけじめ
徹も落ち着いてきた頃、思いがけないことが発覚します。紗英の妊娠です。彼女の両親は激怒し、徹との仲を裂こうとしました。紗英と結婚する資格も、子どもの父親になる覚悟も無いと感じる徹は深く項垂れます。そんな徹に、篤史は誰もが必ず居場所を持っていること、石を積みながらそれを感じたことを話し、後日一緒に上田牧場へ挨拶をしに行きました。紗英の実母美智子は中絶させるつもりでしたが、義父の熊二は紗英の希望通りに産ませてやる考えでした。しかし徹との結婚は絶対に認めないと言い放ちます。徹は何度も土下座して紗英と会わせてくれるよう頼み込みました。話し合いの結果、徹は石狩の牧場に1年間婿修行に出ることになります。篤史は穏やかに笑って徹の再出発を祝いました。
やがて北海道に厳しい冬がやって来ました。徹と紗英の騒動以来、すっかり親しくなった熊二と酒を呑んでいた篤史は、話の流れで古いアルバムを開きます。聡子の写真に涙ぐむ篤史は、アルバムに挟まれていた良子の手紙を見つけました。急いで読んでみると、聡子にきちんと愛情を伝えてやって欲しいと書かれています。その後紗英は元気な男の子を出産し、篤史は熊二の手伝いも借りて石塀造りを再開しました。そんな折、知人から結婚式に招かれた篤史は東京へ向かいます。意を決して聡子に会いに行った篤史は、そこで思わぬ光景を見ました。聡子が見知らぬ幼い女の子の世話をしていたのです。詳しく話を聞いてみると、女の子は聡子の交際相手の子どもで、結婚を考えているとのことでした。急なことに気持ちの整理がつかない篤史は、逃げるように北海道へ帰って来てしまいます。
愛を積むひとの結末:石塀の完成
結局聡子とは気まずいまま、小林家の石塀は完成しました。篤史は良子との約束を胸に、彼女の写真を連れて十勝岳に登ります。しかし途中で天気が急変し、雨で足を滑らせた篤史は数メートルも転落してしまいました。発見された時は意識不明でしたが、幸いにも命に別状はありません。知らせを聞いて慌てて病院に駆けつけた聡子は、説明を受けて安堵しました。病院を出た聡子は両親の家に泊まることにします。良子の写真に手を合わせた聡子は、隣に置いてある紙袋に目を止めました。中には良子の真珠のネックレスと、「お母さんの形見が君を見守ってくれればと思います」という篤史からの手紙が。父の気持ちを知った聡子は大粒の涙をこぼします。
翌日、病院へ向かった聡子は目を覚ました篤史に感謝を伝えました。聡子の首に光るネックレスを見た篤史は、いつか交際相手を北海道へ連れて来るよう語りかけるのでした。しばらくして徹が修行を終え帰って来ました。完成した石塀に沿って歩くのは良子の幻です。愛しそうに歩く彼女の後ろ姿を映しながら、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「愛を積むひと」のあらすじと結末でした。
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