楽園の紹介:2019年日本映画。吉田修一の短編小説集『犯罪小説集』の中から『青田Y字路』『万屋善次郎』の2つのエピソードをひとつの映画にまとめ、綾野剛・杉咲花・佐藤浩市のトリプル主演で製作されたヒューマン・サスペンスドラマです。未解決の幼女誘拐事件が起こった限界集落で12年後に起きた2つの事件を巡り、容疑者と疑われる青年、心に傷を負った少女、周囲から孤立していく中年男性の交差していく人生を克明に綴っていきます。
監督:瀬々敬久 出演者:綾野剛(中村豪士)、杉咲花(湯川紡)、佐藤浩市(田中善次郎)、村上虹郎(野上広呂)、片岡礼子(黒塚久子)、黒沢あすか(中村洋子)、石橋静河(田中紀子)、根岸季衣(藤木朝子)、柄本明(藤木五郎)ほか
映画「楽園」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「楽園」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
楽園の予告編 動画
映画「楽園」解説
この解説記事には映画「楽園」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
楽園のネタバレあらすじ:起
12年前。
当時まだ幼かった湯川紡は、親友の愛華と一緒に下校していました。いつものように道端で遊んだ二人は、いつものようにY字路で別れましたが、その日を最後に愛華は消息を絶ってしまいました。
同じ日、村の古い神社で開かれていた骨董市の場で、偽ブランド品を売る女・中村洋子(黒沢あすか)がみかじめ料を払えないことを理由に、チンピラから暴行を受けていました。洋子の息子・中村豪士(綾野剛)は、すぐさま村の世話役の藤木五郎(柄本明)らに助けを求め、五郎の仲裁によりその場は収まりました。
元々カンボジアの難民だった中村親子は日本に逃れて帰化したのですが、片言の日本語しか話せず、そのため定職にありつけないままでいたのです。中村親子の身をはかなんだ五郎は仕事を世話してやろうとしたその時、五郎の孫である愛華の行方不明事件が発生したのです。必死の捜索にも関わらず愛華は見つからず、そのまま時間だけが流れていきました。
楽園のネタバレあらすじ:承
事件から12年後。
高校を卒業した湯川紡(杉咲花)は地元のホームセンターでアルバイトをしていましたが、あの日の出来事の衝撃から今も心を閉ざしたままでした。紡と共に地元に残った同級生で幼馴染の野上広呂(村上虹郎)は紡に想いを寄せていましたが、彼女はその気持ちに応えようとはしませんでした。
やがて村祭りの日が近づき、紡も祭りの神楽の稽古に駆り立てられました。その帰り道、自転車のタイヤがパンクしていた紡は、たまたま車で通りがかった豪士と会い、送ってもらうことにしました。
祭りの当日、紡は縁日で移動リサイクルショップを出すという豪士を神楽に誘いました。ところがその時、愛華が行方不明になったあのY字路で学校帰りの女児小学生が行方不明になったとの知らせが入り、村人たちは12年前の状況から豪士が女児を誘拐したのではと疑い、更には12年前の愛華の事件も豪士の仕業だと疑いました。
村人たちは五郎を筆頭に豪士が暮らす町営住宅になだれ込みました。その場に戻ってきた豪士は異様な光景に、かつて自分たち親子がいわれなき差別と迫害を受けていた過去がフラッシュバックしていました。そして豪士はこの場から逃げ出しました。
その頃、神社では神楽が始まっていました。紡は相変わらず広呂から口説かれていましたが全く意に介しませんでした。それでも広呂は紡にキスを迫ってきましたが、たまたま愛犬を連れて通りがかった養蜂家の田中善次郎(佐藤浩市)に助けられました。その時、村人から逃げ回っていた豪士は近くの飲食店に逃げ込み、身体に灯油を被ると自らの身体に火をつけました。その炎は空を焦がすかのように燃え盛っていました。
楽園のネタバレあらすじ:転
その翌年。紡は村を離れて東京に移り住み、青果市場で働いていました。やがて広呂も村の閉塞感から逃れるように紡を追って上京、同じ青果市場で働き始めました。紡はようやく広呂と腹を割って話し合えるようになりましたが、実は広呂の身体は病魔に蝕まれつつありました。
その頃、村では善次郎が黙々と村人のために草刈りや電気工事などを行っていました。善次郎は10数年前に親の介護のためにこの村に帰ってきたのですが、妻・紀子(石橋静河)に先立たれてからは愛犬だけが心の支えになっていました。
ある日、善次郎は村の寄り合いの席で、世話役のひとりの娘・黒塚久子(片岡礼子)と出会いました。やがて善次郎は久子と心を通わせ合うようになりますが、この噂は瞬く間に狭い村の中に広まっていきました。
そんなある日、善次郎が提案した村おこしのプランを巡って村の相談役たちとトラブルになり、この日を境に善次郎は村中から村八分を受けるようになりました。身に覚えのないことであらぬ噂を立てられ、せっかく作ったハチミツも売れなくなり、更にはかつての愛華の事件のことで警察から事情聴取を受けたり、愛犬が老人に噛みついたことから檻に閉じ込められてしまったりと、次第に善次郎は精神的に追い詰められていきました。
それでも久子だけは善次郎の唯一の味方であり、一緒に温泉に行くほどの仲に進展していきましたが、この様子も村人たちの怒りを買うことになってしまいます。やがて善次郎は実家の墓が何者かによってペンキで塗りたくられ、しまいには大事な土地が無理矢理に行政代執行によって取り上げられ、せっかく育て上げた樹木も切り倒され、しまいには妻の遺骨を埋葬した土地も重機で踏み荒らされてしまいました。そして善次郎の心は遂に折れてしまいます。
その頃、紡の元に母から手紙が届いたことをきっかけに、彼女は久しぶりに村に帰って豪士の母・洋子に会いに行きました。あの日の後、行方不明になっていた女児は無事保護され、真犯人も逮捕されていました。紡は洋子から、豪士が生前に紡に宛てた手紙を託されました。そこにはたどたどしい日本語で「つむぎさんはわるくない」と書かれていました。今でも我が子の死に心を痛めていた洋子は、12年前に警察の事情聴取を受けた豪士が意味深な笑顔を見せていたこと、そして豪士は日本に来た時にこの国を“楽園”だと信じ切っていたことが脳裏に鮮明に焼き付いていたのです。
楽園の結末
その時、事件は発生しました。遂に気持ちの切れた善次郎は鎌を手にして次々と村人たちを惨殺、久子の両親にまで手をかけてしまいました。そして全身に返り血を浴びた善次郎は一人で山へ登り、老人たちの血で染まった鎌で割腹自殺を遂げました。
その頃、紡はかつてのY字路に立っていました。小学生だったあの日、ちょっとしたことで愛華と喧嘩した紡は彼女からの遊びの誘いを断って家に帰っていたのです。その時、母が虐げられている現場から逃げ出していた豪士は偶然にも愛華と出会っており、彼女は豪士を慰めるとバイバイと告げて家路に向かっていきました。
豪士が愛華の後を追って歩き出したその頃、Y字路の近くでは、善次郎が犬を飼いたいという妻のために捨て犬を拾っていました。
…過去を振り返った紡は今なおY字路に立てられている不審者への注意喚起の看板を引き抜いて投げ捨てました。そこに現れた五郎は、豪士が死んだあの時、これで区切りがつけられると村人の誰もが思ったと紡に打ち明け、紡は村人の身勝手さに憤りを覚えました。
幸いにも広呂は病魔を克服しつつありました。紡はようやく過去から抜け出して前を向いて生きる決心を固めていました。紡と広呂が初めて飲んだ日、夜の雑踏の中で愛華の名を呼ぶ声が聞こえました。紡にとってその女性は本当に愛華だったのかは定かではありませんでしたが、それでも紡は今でも彼女が生きているような感じを受けました。そして紡の耳には広呂の一言が残っていました。「紡、俺たちの“楽園”を作って…」と。
以上、映画「楽園」のあらすじと結末でした。
「楽園」感想・レビュー
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ほかのあらすじサイトも見ましたが、ここの解説は秀逸です。映画の内容を簡潔で正しく伝えていますね。偉そうですみませんが、素晴らしいと思います!
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アマプラで観ながら、さっぱりわけわからんと思いて助けを求めました。
ありがとうございます。
いろいろ腑に落ちました。実はもう一つ別のサイトでもあらすじを読んだんですが、
二回目のここのあらすじですべてすっきりしました。映画の感想としては、
なんともやりきれない筋書きで、
とても悲しいです。
思い起こせば、新潟のシングルマザーで、
自分の子供と隣家の子供を無残にも殺した事件がありましたね。
養蜂家の田中の村民虐殺は、津山三十人殺しを思い浮かばせます。
田舎の狭い人間関係は人を追い込むなあと。 -
結局愛華は殺されたんですか?
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紡が居酒屋で枝豆を食べながら話すシーンで、栃木のレンコンは有名じゃない事が違和感でした。レンコンは茨城なので、市場で働いているという設定では、キチンとした取材をした方がいいです。
シビアさを描いた作品だなと思いましたし、また主題歌が胸に響いて涙が出てきました。