それでも夜は明けるの紹介:2013年イギリス映画。19世紀半ばのアメリカで奴隷として売られてしまった自由黒人ソロモン・ノーサップ著の体験記『Twelve Years a Slave』を基にした、12年間もの間奴隷として白人に虐げられながらも誇りを失わなかった男の実話を描いた衝撃の実録映画です。第86回アカデミー賞作品賞をはじめ、数々の賞に輝いています。
監督:スティーブ・マックイーン 出演:キウェテル・イジョフォー(ソロモン・ノーサップ/プラット)、マイケル・ファスベンダー(エドウィン・エップス)、ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・フォード)、ポール・ダノ(ジョン・ティビッツ)、ギャレット・ディラハント(アームスバイ)、ポール・ジアマッティ(セオフィラス・フリーマン)、スクート・マクネイリー(ブラウン)、ルピタ・ニョンゴ(パッツィー)、サラ・ポールソン(メアリー・エップス)、ブラッド・ピット(サミュエル・バス)、アルフレ・ウッダード(ハリエット・ショー夫人)、クリス・チョーク(クレメンズ・レイ)、タラン・キラム(ハミルトン)、クワベンジャネ・ウォレス(マーガレット・ノーサップ)ほか
映画「それでも夜は明ける」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「それでも夜は明ける」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
それでも夜は明けるの予告編 動画
映画「それでも夜は明ける」解説
この解説記事には映画「それでも夜は明ける」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
それでも夜は明けるのネタバレあらすじ:起
白人の指示を受けながらサトウキビを刈る仕事をする黒人奴隷たち。ある朝の食事にブラックベリーがあり、その汁で手紙を書くことを思いついた主人公のソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は、夜、枝を削って万年筆のようなものを作り、ブラックベリーの汁で文字をしたためようとしますが、うまく書けません。イライラして汁を入れていたカップを払いのけ、寝床に戻っても眠れません。ノーサップは妻と子供たちと幸せに暮らしていた頃を回想します。
1841年、まだ奴隷制度が存在していた頃のアメリカ・ニューヨーク州サラトガ。自由証明書により自由黒人として認められているヴァイオリン奏者のノーサップは、妻と二人の子供と幸せな生活を送っていましたが、ある日、ノーサップが一人で歩いていると友人から紹介された二人組の男(スクート・マクネイリー、タラン・キルラム)に金を稼げるからと彼らの周遊公演に参加しないかと誘われました。ところがこれは罠であり、ノーサップは薬で眠らされてしまい、気がつけば暗い部屋の中で手首を鎖で拘束されていました。ノーサップはジョージアの逃亡奴隷ということにされており、自由黒人だという主張も虚しく奴隷商人に売られることになりました。奴隷商人は、「お前は南部から逃げ出してきた奴隷だ」と怒鳴りながらノーサップを何度も鞭打ちました。
奴隷商人の施設には、ノーサップの他、クレマンス・レイ(クリス・チョーク)やロバート(マイケル・K・ウィリアムズ)、幼い息子と娘もいっしょに捕まったイライザ(アデペロ・オデュイエ)がいて、彼らは護送船で移送されることになりました。ロバートは戦って護送船を乗っ取ろうと企てていましたが、ロバートはイライザをレイプしようとした一人の奴隷商人を止めようとして刺殺されてしまいました。奴隷商人たちはノーサップとクレマンスにロバートの死体を川へ捨てるよう命じました。クレメンスは港で主人が迎えに来ており、手のひらを返したように主人に付き従って行きました。
それでも夜は明けるのネタバレあらすじ:承
クレメンスと別れたノーサップは奴隷商人の元締めセオフィラス・フリーマン(ポール・ジアマッティ)から“プラット”と名付けられます。奴隷を売り買いする会場では、丸裸にされた奴隷たちが体をきれいに洗わされ、男も女もなく一つの部屋に並ばされ、白人たちに品定めされています。ノーサップは農園主のウィリアム・フォード(ベネディクト・カンバーバッチ)に娘と引き離されたイライザと共に売られることになりました。イライザは誰よりも忠実にお仕えするから子どもたちも一緒に買ってくれと願い、フォードも娘も一緒に買いとろうとしますが、奴隷商人はあの娘はこれから成長して高く売れるからと言って、売ってくれません。結局農場主も奴隷商人の言いなりとなり、ノーサップは1000ドル、イライザは700ドルで買い取りました。息子と娘とも引き離されました。
幸いにもフォードは信仰心が厚く温厚な性格の持ち主であり、ときどき奴隷たちを集めて聖書を読んで聞かせました。ノーサップは材木を切る仕事に従事することになりました。ある日、奴隷たちが森で仕事をしていると、アメリカン・インディアンのグループに出会いました。彼らと焚火を囲んでダンスなどをしました。インディアンの弦楽器を見つめるノーサップでした。
ノーサップは材木の水運を提案し、フォードにその能力を高く評価され、その礼にヴァイオリンをもらいました。イライザは子どものことで泣き続け、ノーサップは「泣くな」と怒鳴ります。イライザはノーサップが主人にいい顔をしようとしていると言いますが、ノーサップは「生き残るためだ」と言います。奴隷監督のジョン・ティビッツ(ポール・ダノ)はノーサップを快く思わず、執拗に嫌がらせを加えました。ノーサップはティビッツから鞭を奪って返り討ちにするも、逆上したティビッツは報復としてノーサップを木に吊し、もう少しで窒息しそうになったところを帰宅したフォードに助けられました。フォードはノーサップの手当てをしますが、ティビッツはノーサップを殺すまで諦めないだろうと考え、エドウィン・エップス(マイケル・ファスベンダー)にノーサップを売ることにしました。実はフォードはエップスに借金があり、エップスは奴隷には無常な男だと分かっていたのですが、借金のかたにノーサップをエップスに売ったのです。
エップスは自身の経営する綿花プランテーションで奴隷たちに過酷なノルマを課しており、収穫量が少ない者は勿論のことエップスの気分次第で奴隷たちは日常的に鞭打ちを受けていました。そんななか、若い女奴隷のパッツィー(ルピタ・ニョンゴ)は毎日200kgものの大量の綿花を摘む優秀な働きぶりで、エップスから鞭打ちを受けることもなかったのですが、その代わりにエップスから日常的に性的暴行を受けていました。それに気づいているエップスの妻メアリー(サラ・ポールソン)は、パッツィーをよそに売ってほしいと言いますが、彼はあれを売るくらいならお前を捨てる、と言います。
ある日エップスの妻はノーサップに買い物を頼みます。「余計なことをしたら鞭打ちよ」と言ってノーサップを使いに出します。しかしノーサップは逃げることを考え、林の中を走ります。そして林の中で、白人たちが黒人奴隷2人を絞首刑にするところに出くわします。ノーサップは見逃してもらいますが、それを見て思い直し、主人の妻に言われた店に行き、頼まれたものを買って帰るのでした。
それでも夜は明けるのネタバレあらすじ:転
ノーサップはまた買い物を頼まれ、帰りに、その時に買った紙を少し盗み、家の袋の中に隠します。
ある夜、ノーサップが眠っていると、パッツィーに起こされます。頼みがあると言います。沼に行き、自分を沈めて殺してほしいと言うのです。ノーサップは彼女に「暗く考えるな、一時的なものだ。何をそんなに絶望している?」と言い、断ります。
綿花農場は害虫にやられてしまいます。エップスはこれは奴隷たちのせいだと言い、奴隷たちに鞭を加えます。綿花農場がだめになったので、エップスは奴隷たちを判事の畑で働かせます。そこが冒頭のサトウキビ畑です。あの時手紙を書こうと使った紙は、エップスの妻から盗んだものだったのです。ある日判事は、ノーサップに上流に住む友人の家で開かれる誕生日会でヴァイオリンを弾いてほしいと言います。謝礼はお前のものだが用心しろ、と。ノーサップはヴァイオリンに妻と子供たちの名前を彫ります。誕生会のダンスパーティーでヴァイオリンを弾くノーサップ。
綿花農場の被害は過ぎ去り、再びエップスの元に戻らされる奴隷たち。迎えたエップスは、まだ幼い少女の奴隷の手を引いています。エップスはノーサップに「判事のお気に入りだって?」と嫌味な笑顔を浮かべて言います。顔をケガしているパッツィーには目もくれず、黒人の女の子を抱き上げて家に入っていくエップス。
そんなある日、エップスの農園にアームスビー(ギャレット・ディラハント)という白人奴隷がやってきました。彼はかつては農園の監察官でしたが、不祥事を起こして奴隷に身を落としていたのです。アームスビーを信用することにしたノーサップは、以前判事のところに出向いた際にヴァイオリンを弾いてもらったギャラをアームスビーに渡し、彼を通じて友人に手紙を届けてもらうことに決めました。それであの手紙を書いたのです。しかし、手紙を届ける直前で保身に走ったアームスビーはノーサップを裏切り、エップスに告げ口をしてしまいますが、ノーサップは機転を利かせて難を逃れるとせっかく書いた手紙を燃やします。涙を浮かべた目で手紙が灰になっていくのを見つめるノーサップ。
綿花摘み中に突然死した奴隷を土に埋め、奴隷たちは弔いに黒人霊歌を歌います。「ヨルダン川、流れよ、川が流れる限り、わが魂は天国に届く」と。ノーサップは理不尽への怒りをかき消すように大声で歌います。
それでも夜は明けるの結末
月日は流れ、未だに奴隷から解放されずにいたノーサップは奴隷反対論者のカナダ人大工サミュエル・バス(ブラッド・ピット)と出会います。エップスの元で、バスと一緒にノーサップは家を建てていました。エップスはバスには暑くないかと気を使いますが、奴隷たちのことは心配しません。バスは自分だけに休むように言うエップスに、働く人たちの労働環境が良くないと伝えます。エップスは雇用しているのではない、所有物だと言います。そこに「白も黒も平等さ」とバス。
ある日、パッツィーが姿を消し、逆上するエップス。パッツィーを見つけたエップスは手を上げますが、彼女は初めてエップスに抵抗し、抗議します。しかしエップスは彼女を裸で木に縛り付け、ノーサップに鞭で叩かせます。
バスと小屋を建てているとき、バスの良心に賭けたノーサップは自らの素性を彼に明かし、北部にいる知人に手紙を送ってもらえるよう頼みました。自由黒人の証明書を送ってほしいという手紙です。また家族に会いたい、とバスに涙ながらに話します。手紙を届けることで自分の信念を強めたい、とバスは言います。
その数日後、エップスの農園に保安官と共にノーサップの知人パーカーが訪れ、改めてノーサップが自由黒人であることを証明、エップスに所有権を放棄させ、晴れてノーサップは12年ぶりに自由を勝ち取ることとなりました。故郷に戻ろうとするノーサップにパッツィーは駆け寄り泣き崩れました。
ワシントンに帰ったノーサップはようやく家族と再会を果たしました。幼かった娘も結婚し、孫が生まれていました。孫はソロモン・ノーサップ・ストートンと名付けられていました。「許してくれ」と言うノーサップに妻は「あなたは何も悪くない」と言い、赤ちゃんを中心に家族で肩を抱き合い涙を流しました。
以上、映画「それでも夜は明ける」のあらすじと結末でした。
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