ネオン・デーモンの紹介:2016年フランス・アメリカ・デンマーク映画。両親を失った16歳の自立したモデル、ジェシーはトップモデルを目指して、華やかな世界へと足を踏み入れた。名女優、ダコタ・ファニングの妹エル・ファニングがダークな世界に飛び込んだ小悪魔で自立心ある少女を熱演!
監督ニコラス・ウィンディング・レフン 出演:エル・ファニング(ジェシー)、キアヌ・リーブス(ハンク)、カール・グルスマン(ディーン)、クリスティーナ・ヘンドリックス(ロバータ・ホフマン)、ジェナ・マローン(ルビー)、ほか
映画「ネオン・デーモン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ネオン・デーモン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ネオンデーモンの予告編 動画
映画「ネオン・デーモン」解説
この解説記事には映画「ネオン・デーモン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ネオンデーモンのネタバレあらすじ:起
ジェシーは16歳にして早くに両親を亡くし、たった一人で生きてきました。冒頭で、彼女はソファーにもたれ掛り、血を滴らせる遺体というショッキングなテーマで、トップモデルを目指す為に宣伝用の写真撮影を行います。彼女の撮影を担当したのはネットで知り合ったカメラマンのディーンでした。
撮影後、メイク担当のルビーが彼女に気さくに話しかけてくれ、ジェシーは自分が両親がいない事、現在、パサデナの安いモーテルで一人暮らしをしているといった身の上話をします。2人は意気投合して、モデル達が集まるパーティへ出かける事になりました。
会場に到着すると、先輩モデルのジジとサラがいて、ジェシーは彼女達と初めて会います。2人もまた、トップモデルを目指すライバルになるのです。ジェシーのあどけなさと大人びた艶やかな容姿に嫉妬した2人。ジジは整形手術で変わった自身の自慢の顔を自慢し、サラに至っては性的な言葉で攻撃してジェシーを早くから敵対視する態度をみせました。ジェシーはそんな彼女達の意地悪に怯むことなく、パーティを楽しみます。
会場のステージでは、ストロボライトを発光させて、裸体のモデルが映し出される幻想的でエロティックなショーが始まりました。ジェシーは感動して見とれていましたが、先輩モデル達は若くて可愛い彼女に冷ややかな視線を送っていました。
モデル事務所でジェシーは採用担当者と面接をし、担当者に将来有望と認められます。しかし、モデルになるには保護者の同意が必要で、両親を亡くしたジェシーにとってはどうしたらいいか分からない状況でした。担当者はその事を知ると、年齢を19歳に偽るよう、ジェシーに勧めたのでした。その結果、晴れて彼女は契約書にサインが出来、モデルデビューする事に成功します。
ネオンデーモンのネタバレあらすじ:承
モデル事務所への採用が決まったジェシーは、ディーンにその事を伝え、2人はお祝いにと、夜景の見える小高い丘へ行ってデートを楽しみます。ディーンはジェシーの身を案じ、年齢を偽って仕事をする行動を心配し、ジェシーに大人として「正しい選択をするように」と忠告するのでした。
ジェシーは初仕事として、プロのカメラマン、ジャックをルビーから紹介されました。ジャックはかなりの職人気質でこだわりがあり、新人モデルとは滅多に関わりを持とうとしない偏屈者として業界では有名でした。ジャックは撮影の一環として、ジェシーに下着姿になるよう指示し、素手で彼女の体にゴールドのペンキを塗りたくったのです。思春期の少女と社会人が同居したようなジェシーは渋々、仕事としてその行為を拒まずに受け入れました。その後、撮影がされ、終わってからルビーに報告するジェシー。気難しがりのジャックが異例の行動を取った事に驚いていました。
ルビーはレストランでサラとジジと会い、仕事仲間として情報交換をしています。ルビーはジェシーとジャックの撮影の一件を2人に伝え、ジジとサラはジェラシーを掻き立てられます。ルビーは2人をなだめながらもジェシーには才能があるのではないかと話しました。
ジェシーは自宅のモーテルにて、不審な動きに気付き、何者かが彼女の部屋を引っ掻き回しているところを目撃します。モーテルの管理人、ハンクに泥棒がいると伝えたジェシー。ハンクは客の一人だろうと冷たい態度をとりつつも渋々ジェシーに付き添って様子を見に行き、鍵のかかったドアを壊して部屋の中を確認すると、野生動物が忍び込んでいたのです。かんかんに怒ったハンクはジェシーにドアを壊した損害賠償として修理代を払うよう要求してきました。しかし、ジェシーには払うお金がなく、若手ファッションデザイナーのオーディションを受けに行きます。
オーディションにはサラもいて、ジェシーを睨みつけます。ジェシーはオーディションに合格し、嫉妬に狂ったサラは化粧室で鏡をゴミ箱で割ります。そして、心配したジェシーに怪我を負わせ、その傷跡に噛みついたのです。サラの異常行動にジェシーは家へ逃げ帰って怪我の手当てをしますが、その後、ジェシーの家を訪れたディーンに泣きつき、介抱されます。ディーンはハンクにドアの修理代を払ってくれました。
ネオンデーモンのネタバレあらすじ:転
オーディションに合格したジェシーはランウェイの仕事を引き受けている最中に不思議な幻覚を見ます。ショーが終わり、打ち上げの際、デザイナーはジェシーを高く評価し、ジジを貶します。その場にいたディーンにもジェシーのほうが美しいと思わないかと同意を求めてきますが、心優しいディーンは反論します。その後、彼はジェシーにその場を立ち去る事を勧めますが、モデルとしてすっかり野心家となったジェシーは彼とあっさり別れます。
その夜、ジェシーは管理人のハンクが自分の口にナイフを入れてくる残酷な悪夢を見て目を覚まします。その後、隣人の13歳の家出をした子どもの部屋から尋常じゃないくらいの泣き叫ぶ声と誰かが彼女に暴行を働いているような音を耳にして、ルビーと連絡を取り、彼女に保護されました。
ルビーは大きな広い屋敷に一人暮らしで、ジェシーに優しく接していましたが、実は同性愛者で、ジェシーの事もメイク担当として働きながら目をつけていた事が分かります。ルビーに肉体関係を強要され、乱暴されそうになったジェシーは咄嗟に恐怖心から彼女を突き飛ばします。そこからが本当の恐怖の始まりでした。
ルビーには別の顔があります。遺体安置所にて、死に化粧を施すバイトをしていました。ルビーはジェシーを恋人に出来なかった欲求不満を偶々、ジェシーと似た顔の遺体にぶつけるのでした。
ネオンデーモンの結末
ルビーは普段と変わらない様子で帰宅します。ジェシーは今だ、ルビーの家にいました。そして、彼女をナイフを手にしたジジとサラが襲い掛かり、ルビー宅のプールサイドまで追い詰めると、必死で恐怖に逃げ惑う彼女をルビーが突き落とし、僅か16歳の彼女の人生を奪います。
サラとジジ、ルビーにはもっと残酷な裏の顔がありました。彼女達はカニバリズムを肯定するサイコパスな女性だったのです。ジェシーを食べてしまった三人は翌日は何事もなく生活していました。ルビーはジェシーの遺体を庭に埋め、サラとジジはジャックとの撮影でとあるビーチハウスに来ていました。撮影中、体調を崩したジジをサラが心配して様子を見に行くと、ジジはジェシーの目玉を口から吐き出してしまったのです。
ビーチハウスという撮影所にて、炎天下のなか彼女はジェシーがプールサイドで命を落とした事を思い出したのか、「彼女を出してあげなくちゃ!」と自分の行いを悔いて泣きながら腹部を鋏で突き刺して絶命しました。サラは、ジェシーが何を吐き出したのか知りながら、ジェシーの目を平然と口にして何食わぬ顔で仕事に戻っていったのでした。
以上、映画「ネオンデーモン」のあらすじと結末でした。
「ネオン・デーモン」感想・レビュー
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「ベベジュモーやアーテー」などはアンティークビスクドールの代表的な工房の名称で、それがそのまま人形の名前にも使用されている。私は公私にわたりアートの世界に身を置いてきた。そういった流れの中でアンティークビスクドールのコレクションもまた必然性を帯びたライフワークの一環なのかも知れない。この「ネオン・デーモン」の主役を演じているのが若手女優のホープたるエル・ファニング。そのエル・ファニングのユニークな容貌が何となくアンティークドールの「ブリュ」などを想起させるのだ。エル・ファニングが子役デビューした映画やテレビドラマなど数多くの出演作品を観て来た。彼女は出演する映画によってその度に相貌が微妙に変化する誠にミステリアスな女優なのである。そう、とてもミステリアスでレアな魅力に富んだ宝石のような女優こそがエル・ファニングその人なのである。この映画のコンセプトにも共通するシュールな世界観のジョルジュ・バタイユの小説「眼球譚」。そのバタイユの小説に登場する大胆で挑発的なエロ少女とエル・ファニングのイメージ(キャラクター)が被るのである。ファニングのこの世のものとは思えない稀有な美貌は、「美しい幽霊」かはたまた「セクシーな妖精」か。天上界の無垢の天使が俗塵にまみれて堕天使からデーモンに成り果てる。これがエル・ファニングがシュールでエロティックな問題作で開眼するキッカケになる筈だった。だから「ネオン・デーモン」がそのコンセプトと作品のプロットや実験的で挑発的なインパクトにおいてファニングの代表作になるのではないかと注目し期待していた。結果として見事に裏切られたとまでは言わないが、彼女の潜在能力(無限に開かれた美の源泉)や特異なキャラクターを活かしきれなかったのが残念だ。また作品の全般にわたって中途半端な消化不良とわざとらしい演出や美術面での悪趣味が鼻についた。この作品はユニークなホラー映画や怪談として、或いは上質のアートフィルムやカルトムービーの傑作として歴史に名を刻む素養(或いはチャンス)に恵まれていた。ニコラス・ウィンディング・レフン監督はマルチな才能を生かし全身全霊を投入して「ネオン・デーモン」を完成させた。独自の世界観と圧倒的な視覚効果やビジュアルデザインなど時代の先端を走る意気込みと自負は高く評価できる。しかしながら如何せん映画は総合芸術の頂点に君臨する巨大な摩天楼なのである。一つ一つの過小なズレや計算違いが大きな歪となって欠陥住宅を生み出してしまったのである。こんなにも惜しいと思った映画は後にも先にもごく僅か。まさか私が期待をかけていた「ネオン・デーモン」がこんな結果に終わるとは。この作品をこれまで3回観ているがまたいつか観るときもあるだろう。私はこの作品を敢えて偉大なる失敗作と呼ぶことにする。
キアヌリーブスが何とも言えない役ですな
悪役でロリコンという役どころ
エルファニングもアビーリーカーショウも甲乙つけがたい美しさストーリー抜きで楽しめました