劇場版あしたのジョー2の紹介:1981年日本映画。高森朝雄(梶原一騎)原作、ちばてつや画のボクシングを題材にしたスポーツマンガ『あしたのジョー』を原作にしたアニメの劇場版映画です。1980年(昭和55年)10月13日から1981年(昭和56年)8月31日に日本テレビ系アニメとして全47話で放映された作品をベースに、前半はテレビシリーズを再編集し、終盤は放映中であったテレビシリーズに先行して制作・公開された映画です。
監督:出崎統 原作:ちばてつや 声の出演:あおい輝彦(矢吹丈)、藤岡重慶(丹下段平)、檀ふみ(白木葉子)、岡田真澄(ホセ・メンドーサ)、細川俊之(力石徹)、ほか
映画「劇場版あしたのジョー2」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「劇場版あしたのジョー2」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「劇場版あしたのジョー2」解説
この解説記事には映画「劇場版あしたのジョー2」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:プロローグ:ジョー対力石・ラストラウンド
矢吹丈対力石徹のラストラウンドが始まりました。お互いノーガード戦法で睨み合ったまま、レフリーの「ファイト、ファイト!」という声に促され、お互い同時に打ちにいきました。ジョーの得意技ダブル・クロスカウンターを交わした力石は、ジョーの顎めがけて、渾身のアッパーカットをおみまいしました。ジョーのマウスピースが飛び、ジョーはリング上に倒れました。その姿を見た力石は「終わったな…。なにもかもが…」と呟きました。ジョーは懸命に立ち上がろうとしましたが、立ち上がれませんでした。ジョーの完敗でした。ついに念願を果たした力石にようやく立ち上がったジョーが、ふらふらになりながら、近づいてきました。「まいったぜ。力石。あそこで止めのアッパーでくるとはな。さすが、力石だ…」と力石に言うとジョーは力石に握手を求めました。力石はにやりと笑顔を見せると、ジョーの握手に応えようとしました。しかし、力石はジョーの手を握ることができず、そのまま、リング上に倒れてしまいました。力石の死亡診断は「過酷な減量と、第6ラウンド、矢吹がはなったテンプルへの一撃、及び、ダウンした際、ロープへの反動で後頭部を強打したことによる脳内出血により、力石徹選手が死に至ったと診断いたします」というものでした。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:帰ってきたジョー
あの力石徹の悲劇的なリング上での死から、ちょうど1年が経ち、リングでは彼の死を悼み、テンカウント・ゴングが鳴り響きました。リングサイドで祖父・白木幹之介と参席していた白木葉子は、矢吹丈が参席しているかもしれないと言う祖父に、「彼が来ているはずないわ」と呟きました。ジョーは力石戦以後、放浪の旅に出て、行方知れずになっていました。ある日の早朝、いつものように、泪橋の下の丹下健闘クラブに目覚まし時計のベルの音が鳴り響きました。マンモス西のロードワークの時間です。寝起きの西は1階に降りていく途中で、階段を踏み外してしまいました。その大きな音で目覚めた丹下段平が、西の言葉に促され、1階のリング脇を見ると、そこには朝日を背に向けて、ジョーが笑顔で立っていました。「ジョー!」と叫んで段平はジョーのもとに駆け寄りました。ジョーが帰ってきたという知らせは、ドヤ街にすぐ伝わりました。次の日、ジョーはミネラルウォーターを買って、港を見下ろす力石徹の墓にお参りに行きました。ジョーは「たっぷり飲めや…力石、もう減量の必要はねえんだからよ」と語りかけながら、力石の墓に水をかけてあげました。ジョーは墓の前で「あのな、力石。ここまでだ。俺は吹っ切るぜ」と言うと、墓から立ち去ろうとしました。そこで偶然にも、白木葉子も力石の墓参りに来て、ジョーのその姿を見ていました。葉子はジョーに「帰ってきたのね。…どこへ1年もの間?」と問いかけました。ジョーは「覚えてねえ。…ただ、もう一度、リングへっていう気持ちだけが残ってな」と言うと、立ち去っていきました。ジョーは復帰以来、対戦相手に強烈なボディブローで、勝利を収めていきました。新聞では「地獄への使者・矢吹丈。なぜならボクサーは顔面をヒットさせられダウンするときは、天国にのぼるような気持ちになるが、ボディーを攻められて倒れるときは地獄の苦しみを味わうと言われるからだ。カムバック以来、矢吹丈は5戦5勝、この全てがボディー攻めによるKOである。かつて、あの力石徹の命を奪ったあの強烈なパンチ力で、ボディーを執拗に攻めたてる矢吹の戦法は対戦相手を震えあがらせている」と報じられました。しかし、白木葉子はそんなジョーに一抹の不安と疑念を感じていました。葉子の祖父は、力石復帰のために立ち上げた白木ジムを売却しようとしていました。葉子は、祖父に懇願し、白木ジムを自分の手で運営することにしました。ある朝、マンモス西は段平に、復帰以来、ジョーがまだ一発も顔面にクリーンヒットさせたことがないことをふと話しました。段平も「そう言えば、そうだな…。まさか…そんなはずはねえ」と猛烈な不安感に取り憑かれました。ジョーは力石の顔面を打ち、彼を死に至らしめました。その後遺症が残っているのではないかと思ったのです。段平はその不安を持ちながら、ジョーを試合に送り出しました。そして、ジョーと全日本バンタム級チャンピオンのタイガー尾崎の試合が開始されました。リングサイドで白木葉子も観戦していました。ジョーはタイガーのボディーを執拗に狙います。しかし、タイガーはそれを悉くブロックしました。そんなジョーの戦い方に苛立った段平は、「ジョー!打ち込め!思いっきり、タイガーのテンプルを打ちのめせ!」と叫びました。そして、ジョーがタイガーのテンプルめがけて、パンチを打とうとした瞬間、ジョーの脳裡にあの力石の姿が浮かび、ジョーのパンチはタイガーのボディーに当たりました。タイガーから反撃をくらいダウンさせられたジョーは「なんだ。なんだって、力石の顔が…どうなってるんだ…ちきしょう」と思いつつ、立ち上がりました。「ふざけやがって!」と憤りタイガーに向かっていくジョーに、レフリーストップが入りました。段平がタオルを投げたのです。段平の不安通りでした。段平はジョーがテンプルを打てないボクサーになってしまったことを打ち明けました。ジョーは「ふざけんな!何を寝言言ってるんだい!」と段平に怒りました。段平はジョーに「残念だが…こいつは寝言じゃねえ。お前は力石くんをテンプルへのパンチで殺した。その罪の意識がお前を、顔面を打てないボクサーにしちまったんだよ」と告げました。その夜、ジョーは河辺でひとり「力石をよ…吹っ切ったんだ。きれいさっぱりとよ」という思いにふけっていると、力石でてきてが「矢吹よ。どうしたい?」と語りかけてきました。ジョーは「どうもしねえさ」と答えました。すると力石は「そうかい…じゃあな」と言って消えてゆきました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:“無冠の帝王”カーロス・リベラ
白木葉子は白木ジムを再開し、海外に向かいました。それはジョーにふさわしい対戦相手と交渉するためでした。その対戦相手のマネージャーは葉子に尋ねました。「いるんでしょうね。日本に強いボクサーが?」と。葉子は答えました。「イエス、ミスター・ロバート。まだ過去を引きずって苦しんではいますけれど、おります。本物のボクサーが…リングでしか、その命を燃やすことができないような…そんなボクサーが、ひとり…」と。ある日のジョーのバンタム級10回戦の試合で、ひとりのボクサーが紹介されました。それは、白木ジムが招聘した南米ベネズエラ出身のWBC世界バンタム級第6位カーロス・リベラでした。彼は、デビュー以来34連勝無敗19連続KO勝ち、チャンピオンへの挑戦資格を持ちながら、チャンスに恵まれず、その実力から「無冠の帝王」と呼ばれていました。リング上で観客の声援に陽気にステップを踏み応えるカーロスに、ジョーは運命的なものを感じ取っていました。試合が開始され、ジョーは1ラウンドからめった打ちにされました。そして、ジョーはロープにもたれかかり、ダウン寸前のように見せかけ、相手のストレートに合わせて、得意技のクロスカウンターをおみまいしました。相手はその一発でダウンしました。しかし、ジョーはヘドを吐いて倒れてしまいました。観戦していた葉子はカーロスとロバートを連れて、帰りました。その夜、ジョーはひとり、ジムでサンドバッグを叩き続けました。ジョーは段平から、顔面が打てない上にヘド吐いてぶっ倒れる今のジョーでは、客は集められないため対戦相手はどこにもいないことを告げられました。ある日、白木ジムで、記者たちが見守る中、カーロスがスパーリングをしていると、ジョーがリングサイドにあがってきました。マネージャーのロバートは、関係者でないジョーを出ていかせるように、葉子に訴えました。ジョーは「実はよ。薄々は知っていると思うがよ。俺、今、リングを干されちまってな。ちょいと小遣い銭に困ってるんだ。それでバイトに来たんだ。…カーロスのスパーリングパートナーを勤めれば、いくらだ。…それにこの先生とは、是非一度、グローブを交えてえと思ってな」と言いました。ロバートは自分の計画通りにトレーニングメニューを組んでいるため、イレギュラーなジョーの進言を断りました。しかし、葉子は「ロバート、私からお願いしてもいけませんか? 但し、グローブは16オンス。お互いダメージを受けない一番大きいものを使うこと」と言い、ロバートにお願いしました。ロバートは葉子の願いを聞き入れました。カーロスはジョーに「Let’s dance!」と言うと、トレーニング中にいつもかけている音楽をかけ、ジョーとスパーリングを始めました。開始早々からカーロスはジョーを倒しにいきました。そして、ジョーがへばった瞬間を狙って、カーロスはストレートを放ちました。ジョーは待ってましたとばかりに、得意のクロスカウンターをおみまいしました。そのパンチ力でカーロスのヘッドギアはちぎれ落ち、カーロスは軽い脳しんとうを起こし、リングに跪いてしまいました。ジョーもヘッドギアを脱ぎ、「どうだい。俺のクロスはよ」とカーロスに言うと、カーロスは音楽を止めるようにロバートに指示しました。そして、いよいよこれからというとき、ジョーはまたリング上でヘドを吐き、ぶっ倒れてしまいました。見ていた葉子は思わず、顔を背けました。そこに噂を聞きつけた段平が駆けつけて来ました。段平はジョーに注意しました。その姿を見ていたカーロスに、ロバートが「茶番は終わった。シャワールームへ行こう」と声をかけに来ました。しかし、カーロスはロバートに言いました。「まだ、終わっていない。彼を見ろ。まだファイティングポーズをとっているじゃないか。それに私はいいのを一発もらった。このままでは終わらない」と。ジョーとカーロスはスパーリングということを忘れ、互いにかかっていきました。ジョーはカーロスの強烈はパンチにダウンさせられました。しかし、ジョーはその痛みの中で、あの少年院時代に力石から最初にもらった骨がバラバラになるような強烈なパンチを思い出しました。ジョーは笑いながら、生き返ったように立ち上がり、カーロスに対して笑みを浮かべると「少しずつだかよ…ベネズエラの大将!…俺は燃えてきたぜ」と呟くと、カーロスに果敢に挑んでいきました。ジョーは何度もカーロスの顔面にパンチを打ち込みました。もうスパーリングにはなっていないと判断したロバートと段平は二人の間に入り、止めさせました。その様子を見た葉子は無言でその場を立ち去りました。ジョーは段平と共に丹下ジムへの帰路につきました。美しい夕焼けの中、段平はジョーに「おめえはよ。何度も何度もカーロスのテンプルへパンチを繰り出していたが、途中から全く何ももどさなくなったぞ」と嬉しそうに語りかけました。ジョーは段平に「今夜はよ。なんか…よく眠れそうだぜ」と言いました。ある日、ロバートのもとに、チャンピオンのホセ・メンドーサが次の対戦相手としてカーロスを指名してきたという連絡が入りました。試合は4週間後、場所はラスベガスでした。ロバートはカーロスに「おめでとう。いよいよ、君が“無冠の帝王”の名を返上するときが来たんだ。日本を発つのはクリスマスの日だ」と告げました。ただ、なぜかカーロスの脳裡にジョーの姿が浮かびました。クリスマスの前日、ドヤ街の子供たちがサンタクロースからプレゼントをもらったと言って、はしゃぎ回っていました。子供たちが泪橋からそのサンタクロースを指さすと、そこには子供たちに囲まれたサンタクロースがいました。その正体はカーロスでした。カーロスは子供たちひとりひとりにプレゼントをあげていました。泪橋の上で再会した二人は、近くの公園に行きました。カーロスがブランコに座りながら、ウクレレを弾いていると、ジョーはカーロスに「スパーの決着。俺は別にリングでなくてもいいんだぜ。ここで決着をつけようぜ。この公園でよ」と言い、挑発しました。するとその時、天空から雪が舞い降りてきました。初めて見る雪にカーロスは、はしゃぎ、シャドーをすると、「Come on! Joe!」と言ってファイティングポーズをとりました。ジョーは「行くぜ!南の大将!」と呟くと、カーロスに向かっていきました。カーロスは華麗なフットワークとウィービング、スウェーを使い、ジョーのパンチを悉くかわしました。そして、ジョーの出足を脚で躓かせると、滑り台の上にのぼり、ジョーのパンチの隙を狙って、指1本でジョーのおでこに触れると、ジョーはバランスを崩し、滑り台から滑り落ちてひっくり返りました。その様子を見て、カーロスは笑い、ジョーもそれにつられて笑いました。冷たい雪が降る中、二人は家路を歩いていました。そこに心配したロバート、段平、葉子が現れました。「明日、日本を発つというときに…」とカーロスに言うロバートに、カーロスは「You are my friend. そればかりか、君は時として兄であり、父親でもある。Help me, Robert. 日本を発つ前にジョー・ヤブキと試合がしたい。正式なリングの上で思い切り、私は私の全てのプライドをかけ、ジョー・ヤブキと約束した」と懇願しました。ロバートは彼の熱意にほだされ、了承しました。しかし、ロバートは決まっている試合を延期する莫大な違約金をどうすればいいか悩みました。すると、葉子は「もし、よろしければそのお金、白木ジムがお支払いいたしますわ。矢吹くんとカーロス選手へのクリスマスプレゼントとして」と言いました。カーロス、ロバート、ジョー、段平は驚きました。葉子は「ではご異存がなければ、この試合の全て、私がプロモートさせていただきます。メリー・クリスマス」と言いました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:ジョー対カーロス
ジョーとカーロスの試合が開始されました。ジョーは「俺からは絶対に音を上げねえ。それがよ、俺のためにわざわざ大事な世界タイトル戦を棒に振ってまで、俺との試合をやってくれたベネゼエラの大将への礼儀ってもんさ」と思い、全力で戦いました。カーロスは腕でロープの反動を封じ、ジョーのクロスカウンターを封じ、丈をアッパーでダウンさせようとしますが、逆に丈に攻撃をかわされアッパーでダウンさせられました。それでもカーロスは起きあがりました。次のラウンドでは、カーロスはホセ戦のためにとっておいたノーモーションからの稲妻のような速さのパンチを繰り出し、ジョーをダウンさせました。しかし、ジョーはそのパンチを天性の勘でブロックし、カーロスの隠れた野獣の面をさらけ出させ、またも強烈なパンチを浴びました。第7ラウンド、両者渾身の顔面へのストレートがカウンターで決まり、二人ともダウンしてしまいました。しかし、二人とも起きあがりました。そこでゴングがなり、二人はコーナーに戻りました。ジョーはコーナーに戻り、目を閉じて「起こしてくれ…とっつぁん…まだ、やるぜ」と呟いていました。段平は目から涙を流しながら、ジョーを振るい起こし、「さあ、カーロスをKOしてこい。もうちょいとだ」と言うと、ジョーは静かに目を開け、第8ラウンドに向かっていきました。
その後、ラウンドが進むにつれて、二人の攻防は熱く、激しさを増し、最後のほうは防御せずに殴り合いでの勝負となっていきました。その試合を見ていたロバートは「カーロス、おめでとう。本当に素晴らしい試合だよ」と感動していました。観客も二人に声援を送りました。最終ラウンド終了のゴングがなり、両者引き分けとなりました。カーロスとの試合後、ジョーは、段平の代わりに白木ジムに行き、カーロスとの残り半分のファイトマネーを受け取りに行きました。ジョーはファイトマネーを受け取り、帰ろうとすると、事務員がテレックスを持って駆け込んできました。それはカーロスとホセとの世界タイトル戦の結果でした。葉子は「ばかに早いわね。ちょうど現地ではゴングが鳴ったばかりのはずだけど…」と聞くと、結果は第1ラウンドの僅か1分33秒でカーロス・リベラがチャンピオンのホセ・メンドーサにKO負けをしたというものでした。ジョーも葉子も驚きました。続いて、カーロスのマネージャーの談話が入ってきました。それによると「カーロスは東京での矢吹戦で形の上では引き分けだが、実際は骨の随まで届く深いダメージを受け、反射神経や運動神経を冒され、悪質なパンチンドランカーとなって、階段の上り下りさえ支障をきたすほどになっていたんです。カーロスはもうダメだ。ジョー・ヤブキにスクラップにされてしまった。カーロスはもう廃人だ。全てが終わったのだ」というものでした。ジョーは右の拳を握りしめ「今度は…今度は…カーロスかい…」と言い残して、白木ジムを出ていきました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:林紀子の思い、ジョーの思い
ある日、ジョーは冷蔵庫からリンゴを1個取ると、ジムを出てパチンコを打ちに出かけました。偶然、途中でジムに差し入れを持っていこうとしてきた林紀子と会いました。紀子はもう雨が止んでいるのに、傘をさして歩いていました。ジョーは「雨、もうとっくにあがってるぜ」と紀子に言うと、紀子は恥ずかしそうに顔を赤らめて、傘を閉じました。「紀ちゃん、行くかい? 玉姫公園」とジョーが誘うと、紀子は戸惑い、驚きながらもジョーについて行きました。「嬉しい。矢吹くんに誘われたの初めてだもの」とブランコをこぎながら、紀子はジョーに言いました。二人公園で夕方まで静かに一緒に過ごしました。そして、夜、二人は街に出ました。ディスコでは若者たちが酒を飲み、楽しそうに踊っていました。道路では、若者たちがバイクに乗り、はしゃぎ回っていました。帰り道、紀子は突然、ジョーに問いかけました。「矢吹くんは…寂しくないの?同じ年頃の青年が突っ走り、踊り狂い、街に海に山に青春を謳歌しているというのに…矢吹くんときたら、来る日も来る日も汗とワセリンと松ヤニの臭いが漂う薄暗いジムに閉じ籠もって、なわとびをしたり、柔軟体操をしたり、シャドー・ボクシングをしたり、サンドバックを叩いたり…、たまに明るい所へ出るかと思えば、そこは眩しいほどの照明に照らされたリングという檻の中、そこでまるで闘犬のように血だらけになって殴り合うだけの生活…。しかも、まだ体はどんどん大きくのびようとしているのに、体重をおさえるために食べたいものも食べず、飲みたいものも飲まず…。それが…それが矢吹くんの青春?」と。ジョーはそう言う紀子にこう答えました。「よく分からねえけど…ひとつだけは、はっきりしてるよ。俺、拳闘ってやつが好きだからやってきたんだ。こいつは本当なんだよ。ほんとなんだ、紀ちゃん。…紀ちゃんの言う青春を謳歌するってこととはちょっと違うのかもしれないけど、なんて言うか、俺は俺なりに今まで燃えるような充実感を何度も味わってきたよ…血だらけのリング上でさ。ブスブスとそこいらの不完全燃焼とはわけが違う。ほんの瞬間にせよ。まぶしいほど真っ赤に燃えあがるんだ。そして…あとには真っ白な灰だけが残る…。燃えかすなんか、残りゃしない…真っ白な灰だけだ。力石だって、あのカーロスだって、きっとそうだったんだ!」と。そのジョーの言葉を聞いた紀子は、「私…ついていけそうにない」と呟き、ジョーに背を向けて歩いて帰りました。ジョーはひとりになり、ジムに帰っていきました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:ジョー対“東洋太平洋バンタム級チャンピオン”金竜飛
冷徹までの正確無比の技術から、「氷のチャンピオン」「精密機械」「戦うコンピューター」などの異名を持つ金竜飛に、東洋太平洋バンタム級チャンピオンの座を狙い、ジョーは戦いを挑みました。金はジョーに、ロープ際で相手をダウンさせる隙を与えないほど殴り続ける“チョムチョム(舞々)”を繰り出しました。「舞うんだ、矢吹!死ぬまで踊れ!踊れ!踊れ~!」と念じながら、金はジョーを殴り続けました。しかし、力石の死を思い出して奮起したジョーは倒れませんでした。ジョーは頭から血を流しながら「それで終わりか!」と金に呟きました。鬼気迫るそんなジョーの姿から、金は子供の頃の朝鮮戦争でほんの僅かな食料のために自分の父親を石で叩き殺した凄惨な過去を思い出しました。混乱した金は、ジョーの強烈なパンチを受け、リング下に落ち、KO負けしました。ジョーはこれで“東洋太平洋バンタム級チャンピオン”となりました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:“キング・オブ・キングス”ホセ・メンドーサ
ある雨の日の夜、ホテルで矢吹丈“東洋太平洋バンタム級チャンピオン”獲得の祝賀会が、盛大に行われました。段平はタキシードを着て、酒を飲みながら、ジョーと初めて出会った日のことを嬉しそうに話していました。ジョーはいつものベージュのコートと赤いハンチング帽で出席していました。ジョーはひとり窓からホテルの庭を眺めていました。そこに白木葉子が声をかけてきました。ジョーは、窓に映るある男の姿に目が釘付けになりました。ジョーは側にいた葉子にその男に見覚えがないかと聞きましたが、葉子も分かりませんでした。その男は薄いサングラスをかけていましたが、ジョーを見ていました。すると、その男はおもむろにサングラスをはずしました。その男はなんとホセ・メンドーサでした。集まっていた記者たちも、ホセに気付き始め、会場はざわめきました。ホセはゆっくりとジョーに歩み寄っていきました。イヤな予感がした段平は、ホセとジョーの間に割って入り、下手な英語で何とかとりなそうとしました。そんな段平にジョーは「どいてなよ。とっつあん。チャンピオンは俺に用があるらしい」と言い、段平をどかし、ホセと対峙しました。ホセはゆっくりとジョーに近づき、両肩をほんの少し握り、ポンと両肩を叩き、「Good Luck.」と言うと去っていきました。ジムに帰ったジョーは、興奮を覚ますため、上着を脱ぎ、サンドバッグを叩き始めました。段平はジョーの両肩を見て驚きました。ジョーの両肩に手形の痣ができていたのです。段平は「すごい握力だな。桁外れだ。ほんの少しおめえの肩に触れただけだと思ってたが、そんなにはっきりと痣になっちまって。あのホセちゅう男、そんじょそこらのボクサーとはちーとわけが違うぞ。なるほどな、以前奴が倒したカーロス・リベラが、実はリングにのぼる前におめえにぶっ壊されてたというのが話題になった。それがどうにもおもしろくねえ。そこでお忍びでわざわざ、おめえがどんな奴か見に来たんだとわしは思う」とジョーに言うと、ジョーは「俺の実力がどの程度だってか?…もうちょい時間がありゃ、見せてやったのによ!」と言うと天空にパンチを放ちました。そして、ジョーはホセのマネをして「じゃあな、おっつあん。グッドラック」と言い、寝床につきました。本国メキシコに帰ったホセは、トレーニングルームでトレーニングをしていました。ホセは矢吹丈がハワイにホセの試合を見に来るという情報を耳にしましたが、「ロードワークの時間だ」と言って、荒野の中を黙々と走り始めました。ジョーはテレビ局員の案内で、段平とハワイに到着しました。ジョーはホテルに向かう前に、ホセがトレーニングをしているというジムに直行しました。ジョーはジムに着きましたが、ホセはいませんでした。すると大男がジョーを抱きかかえ、壁に貼ってあるポスターの前に連れていきました。そのポスターには懐かしいカーロスの写真が載っていました。ポスターをよく見ると、それは今度のホセの試合のポスターでした。大男はジョーにポスターに書いている内容を説明しました。それは、ホセ・メンドーサは“無冠の帝王”と呼ばれた男カーロス・リベラをゴングと同時に完全に破壊した偉大で強いチャンピオンであるという内容でした。それを聞いたジョーは怒りに震え、大男の制しを振り払い、ポスターのホセの顔写真めがけて、パンチを打ちました。そして、ホセの居所を聞くと、段平をほったらかして、単身、ホセのもとに行きました。ホセは乗馬クラブにいました。ホセは家族と一緒でした。なぜか白木葉子もそこにいました。ジョーは馬に乗って、ホセに挨拶すると、彼を挑発するように馬を走らせました。ホセはジョーの後を追い、抜き去り、馬から降りずにジョーが落とした帽子を拾いあげると、「用があるのでこれで失礼する」と言い、帽子をジョーに渡し、帰ろうとしました。ジョーは帰ろうとするホセを呼び止め、彼に「どうにも腹に据えかねていることがある。なんだって自分の試合の宣伝ポスターに、カーロスを使ったりしたんだい!戦いを終えてリングを去ったボクサーを讃えるなら、まだしも、コケにする権利があんたのどこにあるっていうんだい!偉大なチャンピオンさんよ!」と語気を荒げて言いました。ホセが家族と乗馬クラブから帰ろうとしたとき、ホセは自分の今度の試合のポスターを見つけました。それにはカーロスの写真も載っていました。ホセは、ポスターを子供に見せ、カーロス・リベラは自分のすばらしいライバルだったと教えて、帰って行きました。その夜、ホテルの野外レストランでジョーと段平がくつろいでいると、白木葉子がやって来ました。葉子は二人に「重要なお話があります。実はつい先程、ホセ・メンドーサと正式に契約を結びました。ホセ・メンドーサの日本における試合の興行権の独占契約です。…つまり、私の許可なしには、例えテレビ局といえども、ホセ・メンドーサの試合を日本で行うことができないということです。彼が日本で行う試合は、一試合。もちろん、世界タイトル防衛戦です。会場、日時は未定。但し、時期は1年以内、早ければ秋。そして、もちろん対戦相手の第1候補は“東洋太平洋チャンピオン”矢吹丈。異存ありませんね」と言うと、ジョーはにやりと笑い「あるわけねえ」と答えました。ジョーは葉子に誘われ、浜辺に行きました。ジョーは葉子の心配をよそに、葉子を助手席に乗せて、浜辺で車を走らせました。ジョーは「これくらい走れたら、俺も車の免許とれるかな」と葉子に言うと、ハンドル操作をちょっと間違え、車をスピンさせて、ようやく止めることができました。ホッとしたジョーを見て、葉子は笑いだし、ジョーもつられて笑いました。そして、二人は車をおりて、浜辺を散歩しました。ジョーの後について歩いていた葉子は、途中でハッとして立ち止まりました。葉子はジョーの足跡が気になったのでした。ジョーはハワイでのホセの試合を観戦しに行きました。挑戦者サム・イアウケアは、めっぽう腕っ節が強く今までのKO率は90%を誇り、アメリカ本土でも「ハワイの猛牛」と恐れられたハードパンチャーでした。ゴングが鳴りました。ホセはサムの攻撃をかわすと、たった2発のパンチでKOしました。試合が終了すると同時に、雨が強く降ってきました。観客たちが次々と席を立ち帰っていく中、ジョーは立ち上がりリング上のホセを見続けました。ホセもジョーの視線に気付き、ガウンを着てリング上からジョーを見つめました。会場には二人だけになりました。ジョーはリング上のホセの所へ近づいていきました。ジョーはホセに「すごかったぜ。ミスター、今日のはよ。この俺が言うんだ。間違いねえ。てえしたもんだ。ほんとによ。待ってるぜ、しっかりとよ、日本でな。じゃあな」と言い、帰ろうとすると、ホセはジョーに「See you again.(また会おう)」と言いました。ジョーにはその言葉の意味は分かりませんでしたが、ホセのその言葉が気に入り、「シー・ユー・アゲイン」とホセに向けて叫び、会場を出ていきました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:カーロスとの再会
ハワイから戻ったジョーは、ある雨の日、東洋太平洋タイトルマッチに臨みました。挑戦者はマレーシア出身の野生児ボクサーで「マレーシアの虎」と呼ばれたハリマオでした。第1ラウンドからジョーは攻勢に出ました。しかし、ジョーが挑発すると、ハリマオは野性味あふれる奇想天外な動きと小柄な体格を駆使して、ジョーを2回もダウンさせました。ジョーはちょこまかと動くハリマオに業を煮やし、第2ラウンド2分45秒でハリマオをKOしました。この試合をひとりのみすぼらしい格好をした男が見に来ていました。リングサイドで見ていた白木葉子は、帰ろうとしたとき、その男とすれ違いました。葉子は「どこかで見た顔…。カーロス・リベラ?まさか!」と思い、立ち止まりました。その男はリングサイドに上がろうとしていました。タイトル防衛に成功したジョーは、インタビュー中に、その男をリングサイドで見つけました。ジョーは一目でその男がカーロスだと分かりました。ジョーはカーロスを自分の控え室に連れて行かせると、表彰状とトロフィーを受け取ると、走ってカーロスが待つ控え室に向かいました。ジョーはその途中、急に躓いて、転倒してしまいました。カーロスは自分の名前も分からないぐらいにボケていましたが、ジョーを見ると「Oh! Oh! Joe Yabuki. You are very very strong man. Hey, meもVery very strong manね」と言いました。そして、ファイティングポーズをとり、おぼつかない脚で立ち上がり、「Joe! ここでもう一度、どちらが強いか、試合しましょう。Fight! Fight! 楽しいね~」と言うと、カーロスは渾身の力でジョーにジャブを放ちました。ジョーはそのパンチを掌で受け止めました。「なんてこったい…あの稲妻みたいなジャブがこんなになっちまって…。こんなに見る影もねえ程、ボロボロによ」とジョーは目に涙をためて悲しみました。カーロスはジャブを収めると、ジョーを相手にボクシングを始めました。彼のパンチはボロボロで、ジョーは涙を流しながら、それを受け続け、やめようとしないカーロスを抱きしめました。そして、ジョーは泥だらけの服装のカーロスを椅子に座らせると、自分の新しいシャツを着させようとしました。その光景を見ていた葉子に気がついたジョーは、「見るんじゃねえ!出てけ!ここは女の来る場所じゃねえ!」と烈火のごとく葉子に言いました。葉子は「今夜はともかく、明日からカーロス・リベラは責任をもって白木ジムが預かりたいと思います」と静かに言いました。ジョーは「そうはいくかい。カーロスは俺を訪ねて来たんだ。…責任って、何の責任だよ!」と葉子に詰め寄りました。「ジョー」という西の呼び声で、振り向いて見ると、カーロスがシャツを着られずに泣いていました。ボタンが自力ではめられないのです。ジョーは見かねて、カーロスのシャツのボタンをはめてやろうとしましたが、ジョーにもできませんでした。ジョーは西にカーロスのシャツのボタンをはめてやるように言うと、自分への憤りに耐えきれず、そばにあった茶碗を床に投げつけて割りました。カーロスは結局、白木ジムで預かることになりました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:パンチドランカー
ホセ・メンドーサと矢吹丈との世界バンタム級タイトルマッチの試合が正式に決定しました。会場は日本武道館で行われることになりました。白木葉子はDr. キニスキーを日本に呼びました。彼はボクサーの健康管理の研究では世界的な権威で、パンチドランカーの症状を診断する見識に優れた医学博士でした。彼によると、パンチドランカーの兆候として、自分では真っ直ぐ歩いているつもりでも右に左に蛇行してしまったり、何でもないときに急に平衡感覚を失い躓いたように転倒してしまったりするといったものがありました。パンチドランカーとは、パンチを浴びたことにより脳の中枢神経が冒され、酒を飲んで酔ったような情態になることで、軽い場合は試合後、ある程度時間をおけば自然治癒しますが、慢性化した場合は日常生活にも支障をきたし、最悪の場合は失明・記憶喪失・思考力も喪失し廃人となり、そうなると全治する見込みが無くなってしまう病でした。葉子はジョーのことが気になり、Dr. キニスキーに尋ねました。「例えば、ボタンをはめたりする場合、何度も何度もやり直して、結局できなかった」というジョーのあの時の様子を話しました。Dr. キニスキーは「十分あり得る話です」と答えました。葉子は事前に矢吹丈の資料と、ハリマオ戦でのビデオをDr. キニスキーに診てもらっていました。Dr. キニスキーの矢吹丈への診断結果は、かなり重傷のパンチドランカーというものでした。それを聞いた葉子はある決断をしました。ジョーの活躍で丹下健闘クラブも門下生がたくさん入り、新しいトレーニングジムを泪橋の近くに建てました。ジョーもそこでトレーニングをするようになりました。葉子はジョーに話をするため、何度も何度も電話をかけましたが、ジョーは居留守を使ったりして葉子との話を拒否し続けました。ジョーは対ホセ戦に向けて、日々、過酷なトレーニングをこなしていました。西は丹下ジムでジョーと共に真面目にボクシングに取り組んできましたが、骨折してから成績が上がらず、ボクシングを諦めて林屋食料品店に就職し、その店の看板娘の林紀子と、ジョーのタイトル戦の2日前に結婚することになりました。ジョーはロードワークの途中、西たちの新居に寄り、西にセコンドに加わらず、新婚旅行に行ってほしいと言いますが、西は「わしはこれからもずっとお前と一緒や。…アホなこと言うな」と言って、セコンドにつくことを告げました。一方、葉子はジョーに会って話をするため、1日に3回は電話をしてきて、ついには丹下健闘クラブの前で、雨の日も風の日も待つようになりました。いくらやっても会ってくれないジョーと段平に、葉子は速達である資料を送ってきました。それには1枚の頭部のレントゲン写真と葉子からの手紙が入っていました。その手紙にはこう書かれていました。「取り急ぎ、私が知り得た事実をまずお知らせ致します。世間も私も、そしてあなたまでもが恐らくは信じていた定説が間違っていたことが証明されました。このキニスキー博士がお撮りになった1枚のレントゲン写真は、カーロス・リベラを廃人にしたのは矢吹丈だという定説を見事に覆したものです。この写真に見られるテンプル部分の複雑な亀裂、この複雑なひびは決して直線的な衝撃で生じないそうです。これこそ“コークスクリューパンチ”。つまり、手首をスクリュー状にひねってダメージを倍加する高等打法によって起こる独特の亀裂だそうです。もはや、お分かりいただけたと思いますが、カーロス・矢吹戦を何度見直しても、あなたはカーロスに対して、テンプルはおろか、一発もコークスクリューパンチたるものを打っておりません。それに対し、メンドーサはカーロスをKOした一撃は紛れもなくテンプルにひねり込んだコークスクリューパンチであったのです」と。段平はジョーに「わしらが唯一頼みの綱としていた心理的していた心理的優位というやつは、ものの見事に消し飛んだのさ。おめえじゃなかった。あのカーロスをぶち壊したのは…」と語りかけると、ジョーは「コークスクリューか…」と呟いて段平のもとから去りました。その葉子の手紙にはこう続きが書かれていました。「そして、矢吹くん、私はもう一つの事実を知って欲しい。これはあなたに直接会い、直接お話ししたいことなのです。どうか1日も、いえ、一刻も早く、私と会う機会をつくってください」と。翌日、葉子からまた電話がかかってきました。ジョーは後輩に「切れ」と言い放ちました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:白木葉子の思い
そしてついに、“チャンピオン”ホセ・メンドーサ対矢吹丈のタイトル戦の日がやってきました。会場の日本武道館は人の波に埋まりました。ジョーは控え室から入ってくる観客たちを見ていました。ジョーは記者たちの試合前にインタビューを断り、ひとり控え室に籠もりました。暫くしてドアを開ける音がしました。ジョーが振り返ると、白木葉子が部屋に入ってきました。「こんばんは、矢吹くん…さんざん逃げまわったけど、この武道館の控え室にだけはやってこないわけにはいかなかったわね。矢吹くん、リングへあがるのはおやめなさい。…手紙に書いたあなたにとってもうひとつの事実というのを言います。…矢吹くん、あなたの全身はパンチドランカー症状にむしばまれています。しかも、そうとう重症の…。これは斯界の権威ドクター・キニスキーの診断であり、厳然たる事実です」と葉子はジョーに言いました。するとジョーは「だからどうした」と答えました。葉子は驚きました。「だから…どうした…?そう…知ってたのね」と葉子はジョーに言いました。ジョーは水を飲むと「自分の体だもんな。だいぶ前から薄々とな…」と答えました。葉子は「知ってるんなら、なおさらだわ!今すぐ、引退を表明して!」とジョーに言うと、ジョーは「今月は墓参りしたのかい? 力石の…」と尋ねると、葉子は「あなたもカーロスのようになりたいの? あのかわいそうなカーロス・リベラのように」と言い返しました。ジョーは「よしなよ。カーロスのことはよそうや…」と言いました。葉子は自分に背を向け窓際に立っているジョーに駆け寄り、「いまさら…、いまさら試合を中止するとすれば、当然莫大な違約金をチャンピオンや主催者たちに支払わなければならないでしょう。でも、そんな事は私が全て責任を持ちます。だから…」と言いました。するとジョーは振り返りながら葉子に、「もう既にポンコツだからとか。勝ち目があるとかないとか、そんなことじゃない…。それはあんたもよく知ってるはずだ。俺はそうやってここまで来た。そして、これからもだ。…せっかくだが、出てってくれ。ここは女の来る場所じゃねえ。…あんたが出て行かないのなら、俺が出ていく」と言い、ドアの方に歩いていきました。葉子は目から溢れそうな涙をこらえながら、「待って、矢吹くん!…お願い!…待ってちょうだい!…頼むから、リングへあがるのだけはやめて…一生のお願い…!」と懇願しました。しかし、ジョーはそんな葉子に背を向け、ドアの方に歩いていきました。すると葉子はドアの方に走り、ドアの前に立ちはだかりました。葉子は目に涙をため「好きなのよ、矢吹くん!あなたが!…好きだったのよ…最近まで気がつかなかったけど…。お願い…私のためにリングへあがらないで!この世でいちばん愛する人を…廃人となる運命の待つリングへあげることは、絶対にできない!」と声を震わせながら告白しました。すると、ドアの後ろから、段平が「おい、ジョー!そろそろ出番だ。どうした、開けろ!ジョー!」と叫ぶ声が聞こえてきました。ジョーは、ドアの前で涙目で立ちはだかる葉子の肩に優しく手を置くと、彼女の目をまっすぐに見つめ、「リングでよ。世界一の男が俺を待っているんだ。だから…行かなけりゃな。…ありがとう」と言うと、葉子をドアから離し、ドアを開けてリングに向かいました。閉まるドアの後ろで、「矢吹くん…」と葉子は泣き崩れながら呟きました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:ジョー対ホセ・メンドーサ、運命の戦い
日本武道館は観客で超満員でした。両者の母国の国旗が掲げられました。そしてまず、チャンピオンのホセ・メンドーサの母国メキシコ国歌が流れました。ホセは“キング・オブ・キングス”と呼ばれる風格を漂わせながら、静かに立っていました。続いて、日本の国歌「君が代」が流れ、アナウンサーは矢吹丈をこう紹介しました。「迎え撃つ我が日本ボクシング界のホープ・矢吹丈。“殺し屋”、“野生の男”、“地獄よりの使者”。そして、いろいろと話題をつくりました。たくさんのすばらしいファイトでファンを喜ばせました。その矢吹が晴れて堂々の世界挑戦です。燃えているでしょう。きっと炎よりも赤く」と。リング上で両者が紹介されました。観戦に来ていたドヤ街の人たち、子供たち、林紀子もジョーに声援を送りました。段平はジョーに「まずはスタミナ温存。チャンスまで辛抱できるかどうかが勝負の分かれ目だ」とアドバイスをしました。そして、第1ラウンドのゴングが鳴りました。ジョーはゴングの音とともにホセを急襲、段平のアドバイスを無視し、ホセにパンチを連打し、嵐のような先制攻撃をしました。ジョーはまるで最終ラウンドであるかのように、猛然と撃ちまくりましたが、ホセは殆どスウェー、ブロックでジョーのパンチをかわしました。ホセは少し反撃しましたが、ジョーはホセに攻撃し続けました。第1ラウンド終了のゴングが鳴りました。ジョーは段平に羽交い締めされ、コーナーに戻りました。段平はジョーに「今のあの攻撃、ありゃ、格下の相手を一気に攻め落とすときのやり口だ。いったい、誰と対戦してると思ってるんだよ!次からでも遅くはねえ、わしの言う通り、スタミナ温存のペースに切り換えるんだ。でねえと、恐ろしい結果になるぞ。おい、聞いてるのかよ!?」と注意しました。ドヤ街の人たちは、「必勝矢吹」という横断幕のもと、声援を送りました。第2ラウンド開始のゴングがなりました。ジョーはまたもや、ホセに突進し、パンチを連打しました。このジョーの戦法を見たアナウンサーも「ただこれはめくらめっぽうという感じです」とアナウンスしました。ホセはジョーの隙をつき、アッパー、右ストレート、ボディブローを放ちました。ホセの強烈なボディブローでジョーはマウスピースを吐き出し、ダウンしかけましたが、気力で踏みとどまりました。ジョーは仁王立ちのホセに果敢に挑みましたが、ホセから初めてコークスクリューパンチを受け、再びダウン寸前にロープに手をかけ、ロープに背もたれし、ようやく立ち上がりました。そこにホセがノーガードで迫り、ジョーの顔面に再びコークスクリューパンチを一発撃ち込みました。ジョーは倒れかけましたが、立ち上がり、ホセにパンチを繰り出し続けました。そんなジョーを見ていたウルフ金串は「もっとシャープに、シャープにいけ!」と、カーロスは「Joe Yabuki!」と声援を送りました。第2ラウンド終了のゴングが鳴りました。コーナーに戻ったジョーに、段平は「最悪だ。最悪の事態ってやつだ。こっちはいたずらに体力を消耗。向こうは軽く流しながら、楽々おめえにダメージを与えてる」と言うと、ジョーは「わめくなよ。おっつあん。のんびりいこうぜ。のんびりと精一杯によ」と言うと、第3ラウンドの開始のゴングが鳴るやいなや、ジョーは再びラッシュをかけました。しかし、ホセは自分の体勢を崩さずに紙一重でかわす“見切り”という高度な防御テクニックを使い、ジョーのパンチを悉くかわしました。そして、ホセはコークスクリューパンチを一発、ジョーの顔面に見舞い、ジョーをダウンさせました。ジョーは白目をむいていました。段平は「決まった…。そうか、ジョー。これほどの完璧なチャンピオンには万に一つの勝ち目もねえ。そいつを知って、ジョー。せめてもの玉砕戦法かい。なるほど、おめえらしかったよ」と思いながら、リングに上がろうとしました。その時、観客の声援が大きく響き、西が段平の足をつかみ止めました。ジョーはレフリーの7カウントで立ち上がり、ファイティングポーズをとりながら、おぼつかない足どりでホセに向かっていきました。段平は「無駄だ、ジョー。立つんじゃねえ!殺されちまうぞ!」と叫びましたが、ジョーは向かっていきました。ホセのセコンドから「Finish!」というサインが出ましたが、ホセはジョーにフィニッシュをかけませんでした。そして、普通のパンチでジョーを打ち、ロープダウン寸前までもっていきました。その様子を見ていたカーロスは興奮し、立ち上がって「Joe Yabuki!」と声援を送りました。ジョーは辛うじて終了のゴングに助けられました。第3ラウンド終了後、ホセはセコンドに「フィニッシュなどする必要はないよ。彼はもう壊れている。コークスクリューパンチなど打たなくても自滅する」と言いました。セコンドアウトのベルが鳴り、ホセは立ち上がり思いました。「ジョー・ヤブキ。本当に彼はジョー・ヤブキなのか?あのハワイで会った。残念だが、期待外れのチャレンジャーだった」と。第4ラウンド開始のゴングが鳴りました。カーロスがリングサイドまで歩いてきて、「Joe Yabuki! Very very strong man.」とジョーに声援を送りました。ホセはその声を聞き、カーロスに目を奪われました。その隙をついて、ジョーはホセの顔面に右ストレートをヒットさせました。ロープ際にホセを追い詰め、ジョーはパンチを連打し、ヒットさせました。思わぬカーロスの存在とジョーのしつこさに苛立ったホセは、「しつこいスクラップめ!もう遊びはこれまでだ。おとなしく寝てもらおう」とコークスクリューパンチを連打し、ジョーをダウンさせ、「The end.」と呟きました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:ジョーの反撃
しかし、ジョーはまた立ち上がってきました。ジョーは「いけねえや。右目がかすんできやがった。でもよ、こっちはどのみち最初からやけっぱちのパンチドランカーさ」と思いながら、ホセに向かっていきました。すると、ジョーのパンチがおもしろいように、ホセの顔面にヒットし出しました。ホセは見切っているはずなのに、パンチが当たるので戸惑いました。逆にジョーは「もろだ!もろに俺のパンチが当たりやがる」と思い、ホセにパンチを浴びせました。終了のゴングがなり、ホセはセコンドにカーロスに目を奪われて打たれたと告げましたが、心の中では後半から自分の見切りが破られたことにショックを受け、「ジョー・ヤブキはまだ生きている」と思い始めました。第5ラウンド開始のゴングが鳴りました。ジョーはマウスピースを段平の手から強引に口に入れると、猛然とホセにかかっていきました。ジョーはホセを滅多打ちし、初めてホセをダウンさせました。起き上がってきたホセに、ジョーはラッシュをかけました。段平はジョーのパンチを見て、驚きました。ジョーのパンチが徐々にコークスクリューパンチになってきていたのです。段平は「あの野郎、こんな土壇場の大舞台で、ホセのパンチを盗みやがった!つくづくすごい奴だと思うぜ」と笑顔で言いました。第6ラウンドも両者壮絶に打ち合い、第7ラウンドでは、ジョーが打ち合いの末、ホセから二度目のダウンを奪いました。しかし、起き上がったホセは、ジョーが右目をこする仕草を見て、彼の右目が見えなくなってきていることを悟りました。ホセはジョーの視覚、視覚へとかわすようになり、ジョーのパンチは当たらなくなりました。第7ラウンド終了のゴングで、コーナーに戻ったジョーは、段平に右目がもう殆ど見えないことを告げ、それでパンチがヒットしていたことを打ち明けました。そして、ジョーは「もうダメだ。あいつ、それに気づいちまったよ。俺の視覚、視覚へと回り始めた」と言いました。段平が「目か…」と呟き悲しそうな顔をするので、ジョーは「情けねえ面すんなよ。見えねえのは、おっつあんと同じ片っぽだけさ。なんとかなる。大丈夫だ」と励ましました。一方、ホセはセコンドに「ヤブキのコーナーに行って、試合を放棄するように伝えてくれ」と言いました。セコンドはそれはできないと拒否しました。ホセは「残念だが、仕方が無い。これ以上やれば、カーロスと同じ道を歩むことになる」と思いつつ、第8ラウンドに向かいました。ホセはジョーにコークスクリューパンチを連打し、ジョーを跪かせますが、ジョーは立ち上がり、彼に向かっていきました。ジョーはもうボロボロで、最後はホセに抱きつき、終了のゴングに救われた形となりました。コーナーに戻ったジョーは、「強い…やっぱり強いや…ホセは。完璧だ。すげえボクサーだ」と呟きました。段平は「よそうか、ジョー?その偉大な男相手にしかも片目だけで、こんなに立派にやったんだ。よそう。終わりにしよう」とジョーに言うと、ジョーは「ダメだよ。おっつあん。俺はまだ真っ白になってねえ。…頼むよ、おっつあん。どうなるまで、何にも言わねえで、やらしてくれや」と段平に頼みました。第9ラウンド開始のゴングが鳴り、ジョーはホセに滅多打ちにされました。その姿を見かねた白木葉子は走って、武道館から出て車のラジオ中継も消して、乗り逃げようとしました。しかし、「これからというときに逃げ出すなんて、今までの私はいつもそうだった。でも、もう逃げないわ。決して降りたりはしない。矢吹くん、始まるのよね。これから何もかもが。そうよね」と思い直して、武道館に車を戻し、また、武道館に入り、彼の戦っている姿を見に戻りました。ジョーはホセと打ち合っていました。第9ラウンド終了のゴングが鳴り、コーナーに戻ったホセを見て、セコンドはホセに異常を感じました。ホセは「ジョー・ヤブキ。彼はいったいどういうつもりなのだ。死んだりするのが、恐ろしくないのか?彼には悲しむ人間がひとりもいないのか?私は…私は違う。私は恐ろしい。私には愛する妻と子供たちがいるのだ。彼は違うんだ。私などとは別のタイプの男なんだ」と呟いていました。一方、ジョーのコーナーでは、段平はジョーに「もうわしの忍耐も限度を超えた。いいか、もし次のラウンドでちょいとでもよろけようもんなら、迷わずこいつを放り込むぞ」と手にタオルを持って言いました。ジョーは段平からタオルを取ると、リング下で放り投げました。するとそこには、葉子が立っていました。葉子はタオルを取り、段平に渡そうとしましたが、わざとタオルを落とすと、葉子はジョーに向かって「もう少しじゃないの、矢吹くん。がんばるのよ!あなたがあの世界一強い男とどこまで立派に戦い抜くか、このリングの下から、しっかりと見届けさせてもらうわ。さあ、いいわね。力一杯、打つのよ!渾身の力を振り絞って、悔いの無いように、しっかり!」と言って励ましました。段平は驚きながら「お嬢さん、そんな無茶な!」と言いましたが、葉子は「がんばるのよ!私、見ている」となおも言って励ましました。ジョーは葉子の目を見つめて聞いていました。ラウンドは進み、第13ラウンドまで来ました。ジョーはゆっくりとホセに向かっていきました。対するホセは焦り、苛立ち、ラッシュをかけてきました。葉子は涙を流しながら、リングサイドから「矢吹くん!打ちなさい!力一杯!」と声援を送りました。ジョーはホセのパンチを顔面に何度もくらいますが、倒れず、殴り返しました。ファイティングポーズをとり、鬼気迫る表情でホセに迫るジョーの目の奥に、白い炎のようなものを見たホセは、一時的精神錯乱状態に陥り、叫び声を上げて、ジョーの背中を殴り、顔面に肘打ちをし、ジョーにヘッドロックをかけて頭を殴り続け、反則をとられ、減点をとられてしまいました。終了のゴングがなり、コーナーに戻ったホセは全身に鳥肌を立てていました。第14ラウンド開始のゴングが鳴りました。両者、一進一退の打ち合いを演じました。ホセは「私は…私は、いったい誰と戦っているのだ。ここにいる男は誰だ。ジョー・ヤブキ。あ~、そんなはずはない。彼は私のパンチを数限りなく浴び、とうに死んでいるはずだ。でも、現に今、こうして向かってくるこの男は、打っても、打っても向かってくるこの男は…。今、私は恐ろしい夢を見ている。おそらく私はかつて、ジョー・ヤブキと言われたボクサーの幻と、幻影と戦っているのだ。勝てるはずがない。幻などにこの私が…」と心の中で思いながら、ジョーと戦っていました。
劇場版あしたのジョー2のネタバレあらすじ:運命の最終ラウンド
さあ、最終ラウンドのゴングがなりました。ホセはゆっくり近づいてくるジョーを相手に誓いました。「たとえ幻影であっても、私は“キング・オブ・キングス”!」と。そして、ジョーにコークスクリューパンチの連打を浴びせました。ジョーはたまらずダウンしました。リングサイドにいた葉子は「矢吹くん、しっかり!そう立つよの!今までのように、何度も何度も!そう、そうよ!矢吹くん!」という声援に応えるように、ジョーは立ち上がりました。そして、ホセが左ストレートを打ってきたところを狙って、ジョーは得意のクロスカウンターをホセにお見舞いしました。また、両者打ち合いになりましたが、ジョーは今度はトリプルクロスをホセにくらわしました。ホセはたまらずダウンしました。ホセはそれでも起き上がり、ジョーと殴り合いました。最終15ラウンドの終了ゴングが鳴り響きました。大歓声の中、観客席から座布団が舞い、ホセはセコンド陣に肩を担がれて、自分のコーナーの席に座りました。ジョーは段平と西の間に立ち、ホセを見つめながら「燃えたよ…燃えつきた…真っ白によ…」と心の中で呟きました。
劇場版あしたのジョー2の結末:エピローグ:真っ白に燃え尽きて…
試合は終了し、レフェリーがリング上で採点カードを集めていました。ジョーは段平に「おっつあん…おっつあんよ…グローブ…はずしてくれ」と囁くと、段平はジョーのグローブをはずしました。ジョーは葉子を小声で呼ぶと、リングサイドに来た葉子を見つめて、「こいつ、こいつをよぉ、もらってくれ…。あんたによぉ、もらってほしいんだ…」と言い、はずしたばかりの血だらけのグローブを葉子の手に渡しました。そして、ジョーはリングに目をやり、静かに目を閉じました。レフェリーは採点カードの集計結果を見て、「ホセ!」と判定を下しました。ジョーの善戦むなしく、勝者はホセ・メンドーサと判定され、レフリーがホセの左手を持ち上げました。そのホセの姿を見た観客はどよめきました。なんとホセの髪の毛は白髪と化し、その様相はまるで老人のようになっていました。段平はコーナーの椅子に座っているジョーに「おしかったな、ジョー。しかし、よくやったぞ。わしゃあ、もう何も言うこたあない。ほんとにようやった」と話しかけましたが、ジョーは目を閉じてピクリとも動きませんでした。「ジョー…」という段平の声に、観客たちは声を失い、次々と立ち上がり始めました。武道館は静寂に包まれました。葉子は預かったグローブを思わず落としてしまいました。その音は武道館に響きわたりました。真っ白に燃え尽きたジョーは、うっすらと笑みを浮かべて眠っているようでした。
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