明け方の若者たちの紹介:2021年日本映画。俳優、アーティストとして大活躍の北村匠海主演の本作は、大好きな“彼女”と過ごした魔法のような数年間を追った切ない恋愛映画だ。明大前や高円寺、下北沢を舞台に、大学生から社会人になる時期の、現実に打ちひしがれながらもがいていく若者たちの姿を描いている。共演は、2022年NHK連続テレビ小説のヒロインが決まっている黒島結菜と、『ウルトラマンタイガ』主演の井上祐貴。主題歌は、マカロニえんぴつ『ハッピーエンドへの期待は』。
監督:松本花奈 脚本:小寺和久 原作: カツセマサヒコ キャスト:北村匠海(僕)、黒島結菜(彼女)、井上祐貴(古賀尚人)、楽駆(石田)、菅原健(黒澤)、高橋春織(桐谷)、佐津川愛美(ミカ)、山中崇(中山)、高橋ひとみ(僕の母)、濱田マリ(女将)ほか
映画「明け方の若者たち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「明け方の若者たち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
明け方の若者たちの予告編 動画
映画「明け方の若者たち」解説
この解説記事には映画「明け方の若者たち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
明け方の若者たちのネタバレあらすじ:起
2012年4月。大学の知り合い・石田(楽駆)の呼びかけで、早くも内定が決まった者だけが集まる「勝ち組飲み会」に参加していた“僕”(北村匠海)は、退屈そうな顔をした女性(黒島結菜)に目を奪われます。
その女性に誘われて店を抜け出した僕は、明大前の公園でハイボール缶を飲みながら、終電の時間まで好きな音楽や就職先のことなどいろいろな話をします。少し年上の彼女にすっかり心を奪われた僕は、帰り際に「俺といたら楽しいよ」と伝えました。
数日後。彼女から連絡があり、下北沢で演劇を観ることになった僕。その芝居は、就職したあと、描いていた理想と違う現実に悲観した主人公が最後に自死するという内容でした。彼女は「あの勝ち組飲み会のつづきみたいだね」と言い、何者かになれるかと思ったのにそんなことないんだなあ、と感想を話します。
そのあと二人は飲みながら食事をし、他愛もないクイズで大盛りあがりします。店を出た二人は自然に手をつなぎ、彼女の巧みな誘導でホテルに入ります。キスしようとして歯がぶつかってしまい大笑いする二人。「楽しいね」と二人は抱き合い、深くキスをしながら僕は「すげー好き」と気持ちをぶつけます。
翌朝7:00。彼女のスマホから、アラームで設定された音楽が流れます。止めようと伸ばした彼女の手をつかみ、僕は「なんて曲?」とたずねます。「『エイリアンズ』キリンジ」と彼女は答え、二人はまた抱き合うのでした。
それ以降も二人はデートを重ね、思い出を増やしていきます。僕の誕生日を祝ったカフェ、ショッピング、ゲームセンター、バッティングセンター…。冬に神社の境内で花火をしたこともありました。どんなものにも終わりがある、だから今のうちに楽しもうと彼女は言います。
就職が決まった僕は大手印刷会社の内定式で、5人のグループでプレゼンテーションをするというワークに取り組みます。率先して仕切った古賀(井上祐貴)という男は優秀で、見事僕のチームは表彰されました。
彼女と待ち合わせた僕は古賀の話をし、社会人としての夢を語ります。彼女もアパレルブランドで働く未来について楽しそうに話し、お互い頑張ろうと誓い合いました。
明け方の若者たちのネタバレあらすじ:承
入社した僕は、希望とは反して地味な総務部に配属されました。同期の古賀も営業部に。ウマの合う二人はよく飲みに行き、愚痴を言いながらも自分たちの考える理想の企画を話し合っていました。
そのうち僕は実家を出て、古賀の住む高円寺でひとり暮らしを始めました。彼女と古賀と明け方まで飲んで騒ぎながら、僕たちは叶いもしない理想を語り笑い合います。今のこの時間が終わらなければいいと願う三人は、太陽が出てくる方向に背を向け、逃げるように走り出すのでした。
二年目の夏。職場では既に残念な人という評価が定着しつつあった僕は、優秀な後輩・桐谷(高橋春織)のようにうまく立ち回れない日々を送っていました。先輩社員の中山(山中崇)が、有給休暇を使って毎年フジロック・フェスティバルに行っていることを知ると、ソワソワしながら僕は彼女にその話をして誘います。しかし彼女はそれを拒み、代わりに行き先を決めずに旅行に行こうと提案してきました。
レンタカーに乗り、行き先を「西の海」に決めた二人。彼女が車中で予約したオシャレなホテルにチェックインすると、部屋のバルコニーから大きな富士山が見えました。部屋でシャンパンを飲み、キャンドルが灯った泡のお風呂に二人で入り、夢のような時間を満喫します。
「もういっそ死んじゃいたいよ」と口にする彼女。ひとりになったら死んでるのと一緒だと僕が言うと、ちゃんと生きなきゃダメだと彼女は諭します。愛し合いながら、僕は涙をたたえた目で彼女を見つめ「好きだよ。全部好き」と伝えます。彼女は「ん、ありがと」と言って僕を抱きしめるのでした。
翌日。美しく光る海をひとり見つめる彼女。横に立った僕に「魔法みたいな時間だったね」と寂しく言うと、「行こうか」と彼女は歩き出します。
旅行から戻り、僕は自分の部屋で2ショット写真と「またいつか行こう」とメッセージを送りますが、彼女からの返信はありません。
ある日、仕事のトラブルで工場に駆り出された僕と古賀は、従業員の事故に遭遇します。機械に切断された指を探し、指示されて用意した氷入りのビニール袋にそれを入れて救急隊員に渡した僕は、古賀に不謹慎だけど興奮したと告白します。いかに退屈な毎日を過ごしているか思い知らされた、と。
その後二人はバッティングセンターに行き、彼女との関係に悩む僕を心配して古賀は言います。
「いくら好きでも相手が結婚してたらハッピーエンドは望めないよ」
明け方の若者たちのネタバレあらすじ:転
“そんなこと、最初からわかってたよ”
初めて会った日、明大前の公園で彼女は、夫が三年間の海外出張中だと話していました。それでも彼女に惹かれる気持ちが止められなかった僕は、どんどんその沼にハマっていったのです。
初めて結ばれた翌朝、『エイリアンズ』を聴きながら僕はなぜ自分だったのかたずねました。その答えは、横顔が夫に似ていたから。決してはずさない指輪をはめた左手を、僕は包むように握りました。
返信のないメッセージアプリにさらに僕は入力します。
「次いつ会える?このままじゃ曖昧すぎるから、ちゃんと話がしたくて」
2014年12月。事情を知らない桐谷になぜか励まされたその日の夜、僕は新宿三丁目で彼女と待ち合わせをしました。いつもの喫茶店でしばらくの沈黙のあと、突然夫が帰ってきたのだと彼女は話し始めます。
とりとめのない言い訳を聞くことをやめ、僕は「少しは好きでいてくれた?」とたずねます。彼女は「ごめんね」と謝り、絞り出すように「ちゃんと、すごく好きだったよ」と言いました。
数日間、体調不良で会社を休んでいた僕。荒れ放題の部屋の床から彼女の服を拾い上げ、顔を埋めて匂いを嗅ぎます。浴室で2本の歯ブラシが入ったコップを払いのけ、シャワーヘッドを叩きつけ、鏡に額を何度も強く打ちつけその場に倒れ込んでしまいます。
そんな僕を心配して訪ねてきてくれたのは古賀でした。砂糖たっぷりの紅茶を淹れてくれた古賀は、「この機会にめっちゃイイ男になろうぜ!」となぐさめてくれました。
なんとか職場復帰した僕は、古賀に誘われ同期の黒澤(菅原健)と三人で飲みに行きます。帰りに無理矢理風俗店に連れて行かれた僕は、相手の女性・ミカ(佐津川愛美)から元カノはどんな人だったの?と聞かれます。失恋を見抜かれた僕は、ポツポツと彼女について語り始めます。
一目惚れなんて初めてだったこと、何もかも全部好きになってしまっていたこと、でも相手は結婚していて、幸せではいてほしいから、2番でいいから、会っているときだけは自分だけをみてほしいってそれだけだった、と。不倫とかよくわかんなくて、どうでもよくて…。
「でも誰も許してくれないじゃん」
ただ欲しかっただけだったと泣く僕の頭を、背後からミカが撫でていました。
明け方の若者たちの結末
2016年12月。僕の職場に、退職届を持った古賀がやってきました。聞けば、知り合いの社長に誘われて社員6人の編集プロダクションに転職するとのこと。不安を自信で隠したような表情の古賀は、「よいお年を」と言って去っていきました。
その夜、自室で転職サイトを眺めていた僕は、SNSで黒澤がアップした子どものお宮参りの写真を見つめるのでした。
2017年3月。久しぶりの石田からの連絡に、僕は会ってみようという気になっていました。一緒に仕事がしたいという石田のメールに興味があったからです。しかし期待に反して、その内容はマルチ商法の勧誘でした。早々に話を切り上げると、僕は古賀を呼び出します。
懐かしい明大前の店で会った古賀は、少しやつれて見えました。社内での新規事業に異動願いを出したと僕は近況報告をし、メインの石田の話で二人は盛り上がります。深夜まで飲んだ二人は、明大前の町を歩きながら新入社員だったころの話をします。
時間と金はいっぺんには手に入らない。でも、23、4歳のころは学生時代より金があって、頑張れば夏休みも取れて、体力があったからオール明けでも出勤できた。「こんなハズじゃなかったー」と高円寺の片隅で飲んでたあの時間こそが“人生のマジックアワー”だったんじゃないかって、今になって思うよ。
そう古賀は語ります。
古賀の乗ったタクシーを見送り、僕は懐かしい明大前の町を歩きます。歩道橋を渡り、彼女と二人で話したあの公園にやってくると、あの日と同じようにベンチにハイボールの空き缶が並んでいました。写真でも撮るか、とスマホを取り出そうとして僕は異変に気づきます。
あれ?ケータイなくした?
僕は道路から明け方の空を見上げるのでした。
以上、映画「明け方の若者たち」のあらすじと結末でした。
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