くちづけの紹介:2013年日本映画。2010年に初演された宅間孝行の脚本による舞台劇を映画化したものです。舞台劇では「舞台史上一番泣ける」という話題を呼びました。この物語のモチーフは宅間が実際に見つけた新聞の小さな記事で、映画のキャッチコピーは「神さま、もう少しだけ、一緒にいさせてー」です。マコを演じた貫地谷しほりは、この作品で第56回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞しました。そして、この作品はイタリア・ウディネ・ファーイースト映画祭で、2013年4月20日にANGELHOMEという英題で上映されました。
監督:堤幸彦 出演:貫地谷しほり(阿波野マコ)、竹中直人(愛情いっぽん/阿波野幸助)、宅間孝行(うーやん)、田畑智子(宇都宮智子)、橋本愛(国村はるか)、ほか
映画「くちづけ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「くちづけ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
くちづけの予告編 動画
映画「くちづけ」解説
この解説記事には映画「くちづけ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
くちづけのネタバレあらすじ:起
「グッバイ・マイ・ガール、この街角で、グッバイ・マイ・ガール、歩いてゆきましょう~♪」と歌う主人公・うーやんは、35歳の知的障害者です。その日は12月25日、クリスマスで恋人マコちゃんの誕生日、そしてうーやんがマコちゃんと結婚する日でした。うーやんはそのためのパーティの準備をしていました。そこにうーやんの妹・智子がやってきます。智子は「マコちゃんとは結婚できないの」とうーやんに言います。「どうしてですか」と聞くうーやんの前に1枚の悲しい知らせを載せた新聞の切れ端が舞い込みます。そして、ニュースで「昨夜、埼玉の自立支援を目的とした知的障がい者が集団で生活するグループホーム『ひまわり荘』で、漫画家の愛情いっぽんさん(63歳)の長女・阿波野マコさん(30歳)が亡くなっているのが見つかりました。…」というニュースが放送されているところから物語は始まります。
くちづけのネタバレあらすじ:承
知的障がいで男の人を怖がる一人娘・マコを暖かく見守りながら育ててきた愛情いっぽんは、昔、ヒット作品を出したことのある有名漫画家でした。妻がマコを産んだ直後に亡くなったので、彼はマコを一人で育ててきました。そのため、漫画家の仕事はあまりできないでいました。そして、高齢になった彼は、これからも愛娘・マコを育てつつ、仕事ができる場所を探していました。いっぽんは、知的障がい者の自立支援を目的としたグループホーム「ひまわり荘」でマコと一緒に住み込みで働くことにしました。「ひまわり荘」には、医師・国村先生をリーダーに、その妻・真理子、娘のはるか、現実主義的な袴田といったスタッフと、入居者のうーやん、仙波さん、島ちん、頼さんといった個性豊かな人たちが住んでいました。いっぽんは、男性ばかりの入居者の中で、マコがうまく過ごしていけるかが気になっていました。しかし、マコは父の心配に反して、入居の初日からうーやんと会話をして、「ひまわり荘」の入居者となじんでいきます。特に、うーやんとは特別な関係になっていきました。
くちづけのネタバレあらすじ:転
季節は夏になり、いっぽんは最近自分の体調が優れずいました。そしてついに、便所で大量の血を吐いてしまいます。いっぽんは医師の診断を受けます。その結果、いっぽんは自分の命はあと3ヶ月と知ります。そんなある日、警察官の酒巻が編集者の夏目に「刑務所にいる人の障がい者の比率が一般社会に比べて異常に高いんだ。保護者に見放されて一人で生きていくすべをもたない知的障がい者は結構多くて、そういう人たちは結局、繰り返し犯罪を犯して刑務所に戻ってくるだって…」という話をします。それを聞いていたいっぽんは怒ります。「事件が起きて、犯人が捕まらなかったりすると、知的障がい者に罪をなすりつけたりするんだよ!障がい者をもった子が警察に尋問なんか受けたらどうなると思う?怖くて、やってなくても、やりましたって言ってしまうんだよ。…生きるすべがなかったら、生きていていけるような世の中にすべきじゃないのか!」と激怒します。そして、いっぽんは、自分がいなくなったあとのマコがどうなるのか不安になるのでした。そんな中、ちょっとしたトラブルが起こりました。娘のはるかの同級生を「ひまわり荘」の入居者の頼さんが痴漢をしたという事件でした。「キモイ」と言われ、いっぽんは、知的障がいを抱えている人が生きていくのは、改めて難しいと思ったのでした。うーやんにも辛いことがありました。妹の智子の婚約が破棄されたのでした。原因はうーやんでした。うーやんはそのことで、急に発作が起き、暴れ出したりします。そんな兄を見て、妹の智子は兄・うーやんの世話をして生きていく決心を、ひまわり荘を卒業させることにしました。うーやんは妹に連れられ、ひまわり荘を去ります。去り際にうーやんとマコは、マコの誕生日である今度のクリスマスの日に、結婚することを約束します。
くちづけのネタバレあらすじ:結末
ひまわり荘は、入居者の保護者からのお金が入ってこないことなどもあり、実は経済的に火の車で、閉鎖されるかもしれないことを、いっぽんは聞きます。それを聞いたいっぽんは、自分の身体の状態とそんなひまわり荘の状態を考え、ある決心をします。それはマコを施設に一人預けることでした。いっぽんはマコに「これからはいっぽんと別々に暮らすんだよ」と言いますが、マコは号泣しながら「いっぽんと一緒じゃなきゃ、生きていけない」と訴えるのでした。そして10月25の夜、マコは施設を飛び出し、閉鎖されたひまわり荘に逃げていました。いっぽんはひまわり荘でマコに会います。マコは「施設には行きたくない。いっぽんと一緒じゃなきゃ嫌だ」と言い張ります。いっぽんとマコは二人、閉鎖されたひまわり荘で過ごします。11月4日の夜、誰もいないひまわり荘で、いっぽんは娘・マコの行く末を案じ、意を決して、マコの首に手をかけ、絞め殺してしまうのでした。クリスマスの日、マコちゃんの誕生日、そしてうーやんとマコちゃんの誕生日、誰もいなくなったひまわり荘に、スタッフ、元いた居住者が集まっていました。悲しみにくれるみんなに、編集者の夏目が、いっぽんが最期に描いた入賞漫画を見せます。それはうーやんとマコが結婚する物語でした。うーやんはマコといっぽんの死を認識できず、結婚をするつもりのうーやんは楽しげでした。そんなうーやんを見て、みんなはアルバムのマコといっぽんの写真をスライドショーにして、結婚式をします。結局、うーやんとマコの恋愛は実りませんでした。そのやりきれない切なさに花を添えるように『グッド・バイ・マイ・ラブ』が流れます。
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