アントキノイノチの紹介:2011年日本映画。複雑な過去により心を閉ざしてしまった若者たちが、遺品整理という仕事を通して再生していく姿を描く。原作となったのはさだまさしの小説。キャッチコピーは「それでも、遺されたのは未来」。題名からアントニオ猪木を連想するが、この作品とは一切関係なく、出演もしていないが、作品を最後まで観ると題名の意味がわかります。
監督:瀬々敬久 出演:岡田将生(永島杏平)、榮倉奈々(久保田ゆき)、松坂桃李(松井新太郎)、鶴見辰吾(古田)、宮崎美子(美智子)、原田泰造(佐相)、ほか
映画「アントキノイノチ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アントキノイノチ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アントキノイノチの予告編 動画
映画「アントキノイノチ」解説
この解説記事には映画「アントキノイノチ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アントキノイノチのネタバレあらすじ:起
ハサミが刺さった制服。主人公の永島杏平(岡田将生)が裸で屋上に座っている。そして「僕は二度、親友を殺した。そして、僕の心は壊れた」という衝撃的な言葉で物語は始まる。
杏平は生まれつき軽い吃音があり、咄嗟に言葉がでないという病も抱えている。そのせいで、同級生の松井(松坂桃李)からしょっちゅういじられている。それは杏平だけではなく、杏平の親友・山木(染谷将太)もまた同じだった。
熱帯魚好きの山木を馬鹿にしたネット投稿があり、山木はそのすべてが松井の仕業だと決めつけている。しかし松井がやったという証拠はない。そのことを杏平が指摘するも、山木は「永島君だってあいつがやったって気付いてるんだろ?僕たちそれでいいの?」と強く責められてしまった。杏平は謝り、その場から逃げ出すことしかできなかった。
翌日、教室にいた山木は松井にナイフを向ける。教師が駆けつけその場で山木は取り押さえられてしまった。その時に「永島君は味方だと思ってたのにな…。でももういいんだよ」と言い、山木は飛び降り自殺をしてしまう。
山木が死んでからというもの、松井の悪意は杏平に向くようになる。山岳部の杏平は、山登りの最中に松井を崖から落として殺そうとする。しかし寸前のところで松井の腕を掴み助ける杏平。後から来た顧問や仲間に松井は自分が杏平を助けたように言いふらす。
その後の文化祭の日、杏平が松井を助けている決定的瞬間の写真が貼りだされていた。杏平は顧問から「本当は永島が松井を助けていたことはみんな知っていた」と言われ、どうしてその時に誰も何も言わずに黙っていたのかと尋ねる。「全員おかしいよ!」と感情を爆発させる杏平。
貼りだされた写真を見て動揺する松井に、杏平は「君だけのせいじゃないよ。山木が死んだのももうみんな忘れてるし…」と告げる。すると松井が持っていたカッターナイフで杏平に切りかかる。杏平はとっさによける。そして松井に乗りかかり、カッターで逆に襲い掛かった。
その様子を大勢の生徒が見ているが、誰も止めようとしない。「どうして誰も止めないんだよ!」と叫ぶ杏平は、写真を切りつけるのだった。
アントキノイノチのネタバレあらすじ:承
高校を卒業した杏平は、遺品整理業者『クーパーズ』で働き始める。仕事初日、杏平は親切で真面目な先輩・佐相博(原田泰造)と久保田ゆき(榮倉奈々)との三人で現場に向かった。心筋梗塞で死亡し、死後一か月たってから発見された大沢秀治(76歳)の家を片付ける杏平たち。
発見までに時間が経っていることもあり、家の中には大量の虫が発生していた。ゆきから遺品の整理の仕方を教わっていた杏平は、彼女の腕にたくさんのリストカットのあとを見つける。
会社に戻った杏平は、ゆきから「永島君って何考えてるかわからない人?この会社に入っても、一日で辞めちゃう人が多いの。どうして一生懸命に整理してたの?」と聞かれる。杏平は「綺麗になるから…」と答えるが、ゆきに「勘違いしてる。あとは消えないよ」と言われてしまった。
家に帰った杏平が、父親と鍋を囲む。「お母さんから電話があり、会いたがっていた」と父親から聞かされた杏平は、「今更母親だと思えない」と言い捨てる。「俺も浮気したことがある。だから責めることはできない…」と語る父親。すると杏平が「そんな話聞きたくないよ。やめてよ!」と怒りをあらわにした。
翌日、肝臓を患い突然死した北島敏博(58歳)の家を訪れた杏平は、昨日よりもひどい現場を目の当たりにしてしまう。家中に虫がわき、悪臭が漂う。悲惨な光景を見た杏平は過去を思い出し、その場から逃げ出してしまう。
その夜、仕事帰りの杏平の後をゆきがついてくる。仕事中に逃げ出した杏平を心配してのことだった。ゆきが杏平を飲みに誘う。居酒屋に入った杏平は、かつて重度の躁うつ病を患っていたことをゆきに打ち明けた。
アントキノイノチのネタバレあらすじ:転
翌日も杏平たちは北島の家の遺品整理をしている。そこへ北島の妹・美智子(宮崎美子)がやってきた。何度も礼を言い帰っていく美智子。会社に戻ると、初日に訪れた大沢の息子が来ていた。彼は「大事な書類がどこかにあるはずだ!」と、遺品が入ったダンボールの中身を手荒く探し出す。書類を探す手伝いをしていたゆきが茶封筒を見つけた。
すると大沢の息子がゆきの腕をつかむ。「キャッ!」と声をあげるゆき。彼女の反応を見た杏平は気になり、帰り道、ゆきを待ち伏せすることに。どうしたのか尋ねられたゆきは、高校時代の辛い経験を杏平に打ち明ける。それは同級生にレイプされ妊娠、子供を流産したという悲惨な過去だった。
母親と共に相手の家に行ったゆきは、相手の両親から「お前が誘ったんだろ」と酷い言葉を投げつけられる。辛いゆきが母親の手を握ろうとしたところ、「どうしてあんな男に近づいたんだ?」と追い打ちをかけるような言葉を投げかけられた。それからはすべては自分が悪いのだと思い込むゆき。何度もリストカットして死のうとした。
そんな時にお腹の子どもを流産。「赤ちゃんが自分でおりちゃった。私のために自殺したんだ。私の人生を考えてくれたんだ。そう思わないと、生きていけなかった」と、涙にくれながら告白するゆき。彼女は流産した子供の命を失ったことで、自分を責め続けていたのだった。
風俗店で働く母親が、若い男と遊ぶために3歳と1歳の幼い子どもを残して餓死させてしまう事件が起こる。その現場となった部屋を整理する杏平たち。子どもが暮らした形跡のある部屋に動揺するゆき。ついに子ども服を手にしたゆきは泣き出してしまう。そして「ちゃんと生きたい…」との言葉を残し、ゆきは突如仕事を辞めてしまった。
その二カ月後、がんで入院中に亡くなった岸本希美子(64歳)の遺品整理をする杏平と佐相。36歳の時に家庭を捨てた岸本には娘がいるが、娘はすべての遺産を放棄している。そんな娘への手紙を見つけた杏平は届けようと考えるが、佐相から「おせっかいはやめろ」と叱られてしまった。
それでも娘に手紙を渡そうとする杏平。娘は杏平を追い返すが、杏平は手紙を置いてその場を去った。このことで自身の母親に会いに行く決心がついた杏平は、久しぶりに母親と会話を交わす。病院に入院中の母親。杏平は母親の手を握るのだった。
アントキノイノチの結末
杏平には、遺品から亡くなった人の声が聞こえるような気がしていた。人間死ぬときは一人。しかし生きている時は誰かと繋がっていたい。ゆきが仕事中に遺品の写真を撮っていた理由が、今の杏平にはわかる気がした。
この頃ゆきは、老人ホームで働いていた。そのことを知った杏平がゆきに会いに行く。そして彼女にこう言った。「全部、あの時の命なんだ。あの時亡くなった命が今、ゆきちゃんにつながって、俺、ゆきちゃんに会えた」と、杏平は自分の気持ちを告白。その後海辺へ場所を移動した二人。
ゆきは杏平に「あの時亡くならなかった命が、永島君とつながってる。忘れなくてもいいんだよね」と告げる。ゆきは「みんなに言う言葉が見つかった」と言って、海に向かって「元気ですか~」と叫ぶ。杏平も同じ言葉を叫んだ。ゆきは初めて笑った杏平の顔を見たと言い、杏平の心臓に手を当てる。
そして去ろうとするが、杏平が後ろからゆきを抱きしめる。二人はお互いの過去を振り返り、互いが会えたことに感謝しながら、生きていくことを決意するのだった。
もう一人ではないと感じたゆきは、その後も老人ホームで介護の仕事を続ける。みんなに誕生日を祝ってもらい笑顔のゆき。自分の居場所を見つけたゆきだったが、ある日彼女はトラックにひかれそうな少女を助けるために、身代わりとなり亡くなってしまう。
そんなゆきの遺品整理を杏平と佐相が担当。遺品にはアルバムがあり、中にはゆきが撮った杏平の写真があった。杏平が気付いていないだけで、何枚も彼の姿を写真におさめていたゆき。それを見た杏平は涙する。
最後の写真は海辺で撮られたもので、写真の下には「アントキノイノチ」と書いてあった。そんな時、ゆきが助けた少女とそのお母さんがお礼を言うために訪ねてくる。杏平は少女に「元気ですか~?」と尋ねる。すると少女はにこりと笑顔で応えるのだった。
以上、映画「アントキノイノチ 」のあらすじと結末でした。
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