越年 loversの紹介:2020年台湾,日本映画。日本・台湾・マレーシアの年越し風景を舞台に、素直になれない3組の不器用な男女が織り成す物語を綴ったオムニバス形式のラブストーリーです。岡本かの子の短編小説集をモチーフに、いきなり同僚の男にビンタされた女、初恋の女性と再会するために数十年ぶりに帰郷した男、そして亡き母の家を片付ける女のそれぞれの行方は…。日本パートでは共に山形県出身である「銀杏BOYZ」の峯田和伸と橋本マナミがダブル主演を務めています。
監督:グオ・チェンディ 出演者:峯田和伸(佐藤寛一)、橋本マナミ(西村碧)、ヤオ・アイニン(シャオラン)、オスカー・チュウ(インシュー)、ユー・ペイチェン(モーリー)、ウー・ホインシュウ(チェンナン)、レニー・リー(イエナ)、吉村和彬(啓二)、菜葉菜(文月)、結城貴史(太郎)ほか
映画「越年 lovers」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「越年 lovers」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
越年loversの予告編 動画
映画「越年 lovers」解説
この解説記事には映画「越年 lovers」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
越年loversのネタバレあらすじ:第1話『シャオラン』
台湾・台北のとあるオフィス。この日は年末のボーナス日でした。仕事を終えた女性社員のシャオラン(ヤオ・アイニン)は他の同僚たちと共に退社の準備をしていました。シャオランの机の上には岡本かの子の著書『老妓抄』がありました。
オフィスを出ようとしたシャオランは、その場に居合わせていた同僚の男性社員インシュー(オスカー・チュウ)にいきなりビンタされました。インシューは無言のまま立ち去り、一部始終を目撃していたシャオランの同僚で親友のイエナ(レニー・リー)はシャオランに病院に行くよう勧めましたが、シャオランは断りました。シャオランは帰りのタクシーの中で涙を流していました。
翌日、オフィスで昼食を採っていたシャオランは、イエナと上司からインシューは昨日付けで退職したことを知らされました。シャオランはかれこれ故郷のマレーシアから台北に来て3年になるインシューとはほとんど会話をしたことはなく、恨まれる覚えも筋合いもありませんでした。事をあまり大げさにしたくないシャオランでしたが、イエナは事情をはっきりさせるべきだと諭しました。
インシューはこの会社では、20世紀に活躍した中国の女優・白光の昔の映画の修復作業を手がけていました。この映画では白光が相手役の俳優とビンタし合っていました。シャオランとイエナは映像修復室の社員から、インシューはマレーシアに帰ったら、この地で生涯を閉じた白光の墓参りに行きたいと言っていたと教えてくれました。
シャオランとイエナは、友人からインシューが迪化街に住んでいたと聞き、早速彼の行方を捜しましたが5日経っても中々見つかりませんでした。疲れ果てたシャオランは「ビンタされたくらいで復讐するのか?」と探すのを諦めようとしましたが、イエナや同僚たちは引き続き探すよう発破をかけました。
その時、シャオランとイエナは通りの向こうにインシューを見つけ、後を追いましたが見失ってしまいました。折しもこの日は大晦日であり、間もなく新年を祝う花火が打ち上がりました。
新年を祝ったシャオランとイエナはそのまま初詣に出かけ、そこで「縁ありて海を渡る」というおもくじを引き当てました。しかし、シャオランには海外に行く予定はありませんでした。その後、シャオランとイエナはようやくインシューの姿を見つけ、シャオランはインシューになぜ自分をビンタしたのか理由を問い質しましたが、インシューは何も答えませんでした。堪りかねたシャオランはインシューにビンタしました。
あくる日、シャオランはいつものように出勤していました。するとシャオランの机にはインシューからの国際郵便がありました。中には「マレーシアに戻りました。転職が決まって唯一心残りだったのは、君へ告白できなかったこと。だったらいっそ君と喧嘩別れしようと思った。君から嫌われれば、気持ちの整理がつく」と書いてありました。
そのインシューはマレーシアにある白光の墓参りをしていました。シャオランはインシューの元に現れるとその頬を殴り、インシューもまた殴り返しました。二人は何度も何度も互いの頬を殴り続けていました。
越年loversのネタバレあらすじ:第2話『寛一』
年末の日本。東京の会社で働く独身男の佐藤寛一(峯田和伸)は幼馴染の太郎(結城貴史)から故郷の山形に帰って来いとのメールを受け取りました。渋谷駅の岡本太郎(原作者・岡本かの子の息子)作の壁画「明日の神話」の前を通り過ぎた寛一は、太郎からの留守番電話で、太郎が恋人の西村碧(橋本マナミ)と別れたことを知りました。
大晦日、寛一は夜行バスに乗って山形に向かいました。途中で新年を迎えた寛一は山形市のバスターミナルでバスを降り、とあるバーを訪ねてバーテンダーに太郎の行方を尋ねました。太郎はこのバーで朝まで飲んでいたのですがいつの間にかいなくなっており、寛一は太郎から預かった封筒をバーテンダーから受け取りました。封筒の中には写真のネガと裏に「アオイ すまん」と書かれたコースターが入っていました。
寛一はバスに乗り、山形市内を探して回りましたが太郎の手がかりは中々掴めませんでした。その頃、碧は恩師の斎藤先生の家を訪ね、今は廃校になった小学校の懐かしい写真を見ていました。碧が帰った後、入れ替わりに寛一が斎藤先生の家を訪れてきました。斎藤先生の娘・文月(菜葉菜)が寛一を出迎え、寛一は友人の啓二(吉村和彬)と15年ぶりの再会を果たしました。
啓二は酒を飲んでいたので、寛一が代わりに啓二の軽トラックを運転して碧が向かった叔母の家へと向かいました。しかし、雪道の運転に慣れない寛一は誤って道路脇の吹き溜まりに突っ込んでしまい、二人は何とか軽トラを動かそうと試みましたが上手くいきませんでした。そこに碧が現れ、寛一はかつての初恋相手だった碧と数十年ぶりの再会を果たしました。
寛一と碧はレストランでコーヒーを飲み、寛一は碧に助けてもらった事を感謝しました。このレストランはかつて寛一が太郎と一緒に訪れたところであり、寛一は碧に太郎と何があったのか訊きましたが、碧は何も語ろうとはせずにその場を立ち去って行きました。
その後、寛一は碧の実家である「西村写真館」を訪れましたが彼女はまだ戻ってきておらず、太郎に電話をかけたところ「大阪にいる。碧とは別れた」と告げられました。寛一はせっかく東京から山形に戻ってきたのにとキレ出し、郵便受けに太郎の封筒を入れようか悩んだ末に結局入れませんでした。
その頃、碧は入院中の母の見舞いに行き、寛一が帰ってきたことを報告していました。結局、寛一は軽トラの中で夜を明かしました。翌朝、見かねた碧はすっかり凍えていた寛一を車から引きずり出し、自宅のこたつに入れると無言のまま二人で雑煮を食べました。
すっかり眠り込んでいた寛一が目覚めると、碧は2階の仕事場で愛用のカメラの手入れをしていました。寛一はテーブルの上に置かれていた岡本かの子著『老妓抄』を手に取り、「もう何年も弾いていない」と言いつつ椅子にあったギターを弾き始めました。碧はその様子をカメラで撮影しました。その後、寛一は碧に太郎の封筒を手渡し、碧は「太郎に言われたから来たのか」と問いました。
翌日、碧は蔵王の樹氷の撮影に向かい、寛一も荷物持ちを手伝いました。二人は蔵王ロープウェイに乗り、樹氷を撮影していきました。その後、寛一と碧は蔵王温泉街のコーヒーショップで食事を採り、碧は雪原で寛一に「この嘘つき!」と掴みかかりました。二人は雪の上に倒れ、寛一は碧に「一緒にいさせていい?」と想いを打ち明けました。もうどこにもいかないのかと聞き返す碧に、寛一はもうどこにも行かないと約束しました。
季節は流れて春。桜が咲き乱れるなか、「西村写真館」のスタジオでは寛一がギターを弾き、碧は『老妓抄』を読んでいました。太郎が封筒に残したネガは高校時代の寛一、碧、太郎が桜の写真を撮りに行った時のものであり、碧が撮った写真に写っていたのは寛一の姿ばかりでした。
越年loversのネタバレあらすじ:第3話『モーリー』
台湾・彰化、故郷に戻ってきたモーリー(ユー・ペイチェン)は、かつて亡き母が営んでいた実家の食堂の片づけをしていました。もうここには二度と戻らぬと固く心に誓ったモーリーは、既に空き家となっているこの食堂で、亡き母との思い出に浸っては涙を流していました。
そこにチェンナン(ウー・ホインシュウ)がトラックで店の修理にやって来ました。チェンナンはモーリーの手伝いをしながら、「この丈夫な家を空き家のままにしておくのは良くない」と修繕を開始しました。モーリーの母はこの店のカウンターで、大きなガラス瓶を水槽代わりにして魚を飼っていました。
外は風が強くなり始めていましたが、モーリーは外に出ると牡蠣の養殖中の港に向かい、海岸で涙を流しました。その後、戻ってきたモーリーは母の死後にガラス瓶の魚に餌を与え続けてくれたのはチェンナンなのかと問いますが、チェンナンはそれを否定しました。
作業を終えたチェンナンは、モーリーから金を受け取らずに帰路につこうとしました。その時、折からの強風で家の戸が閉まり、大雨により二人は家の中に閉じ込められました。二人は風が止むまでここに留まることにし、モーリーは「女は死ぬまでここにいて、料理を作って、男に喜んでもらうのが大変だ。母と同じ人生は嫌だ」と打ち明けました。雨漏りがするなか、モーリーはチェンナンに抱きついてキスをしました。
翌朝、モーリーとチェンナンはそうめんを茹でて食べました。モーリーはこの家を売るつもりであり、チェンナンに水槽の魚の面倒を頼みましたが、チェンナンは「本心なのか?」と問いました。二人は水槽をカウンターに置いたまま、それぞれの場所へと帰っていきました。
時は流れ、この店ではチェンナンが店長を務め、モーリーは牡蠣をもみながら店の定番料理である牡蠣そうめんを作っていました。この牡蠣そうめんは母の思い出の料理であり、常連客から大変喜ばれていた一品でした。
モーリーが岡本かの子著『老妓抄』の1節を振り返りました。「風は吹きたいように吹いている。波は打ち寄せたいように打ち寄せている。来年はどこにいるのか。だた1つ確かなのは、私はここにいる。年を越えれば、新しい人生に出会えるかもしれない…」
以上、映画「越年 lovers」のあらすじと結末でした。
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