父親たちの星条旗の紹介:2006年アメリカ映画。年老いた葬儀社の社長が倒れた。彼は硫黄島で星条旗を立てた英雄の一人とされた元衛生兵だった。双方にとって地獄だった硫黄島、資金難に喘ぐ国が取ったプロパガンダ活動。死に際にすら語らなかった星条旗に翻弄された戦争の記憶を、その息子が彼の戦友達から聞き取り、辿る事で知る、戦争の真実を描く戦争映画。『硫黄島からの手紙』と対になるアメリカ側の視点。2016年、ドクことブラットリーが写真に写って居なかったという事が証明されたが、映画公開の時点で既に考慮されて居たような雰囲気もある。
監督:クリント・イーストウッド 出演者:ライアン・フィリップ(ジョン・“ドク”・ブラッドリー)、ジェシー・ブラッドフォード(レイニー・ギャグノン)、アダム・ビーチ(アイラ・ヘイズ)、ジェイミー・ベル(ラルフ・“イギー”・イグナトウスキー)、バリー・ペッパー(マイク・ストランク)、ポール・ウォーカー(ハンク・ハンセン)、ほか
映画「父親たちの星条旗」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「父親たちの星条旗」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
父親たちの星条旗の予告編 動画
映画「父親たちの星条旗」解説
この解説記事には映画「父親たちの星条旗」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
父親たちの星条旗のネタバレあらすじ:第1幕
年老いたブラットリーは、荒れ果てた硫黄島で自分を呼ぶ声を聞き、目が覚めます。戦争を知らぬ者程戦争を語りたがる、単純な善対悪、英雄譚、だがヒーローは両軍に居て、そんな単純な物ではないと、彼等は心に秘めて来ました。ブラットリーはある突然倒れ、あいつはどこだ?とうわ言を口にします。そんな父を見て息子は、父を知る為に父の戦友達を訪ね始めました。息子は、誰も彼も島の事を話したがらず、あの島で撮られた写真も見たがらないと聞かされます。硫黄島で撮られた劇的な1枚の写真、その擂鉢山に星条旗を掲げた写真は、瞬く間にアメリカを席巻し、破産寸前で厭戦ムードの国内を一変させました。その写真に写った尻で、我が子の元気な姿に喜ぶ母も居ました。ソルジャーフィールド、満員の観衆を前に、山頂に見立てた張りぼてに星条旗を掲げる3人の兵士が居ました。その一人“ドグ”・ブラットリーは、本土に居る筈なのに心は硫黄島にあり、衛生兵と自分を呼ぶ声に耳を澄ませていました。彼は硫黄島の砲弾跡で、容赦なく襲ってくる敵兵を殺しながら救護を続けます。しかし少し前まで一緒に居たイギーが姿は消していました。タラワ島でドグ達は訓練を受けました。そして、硫黄島での作戦が公表され、大艦隊が組まれ、彼等は戦場に向かいます。艦隊は硫黄島に到着し、島に一斉艦砲射撃を加えます。しかし、当初十日だった砲撃は、弾薬節約の為三日に縮められていました。上陸が近付き、兵士達の間に緊張が満ちて来ます。リラックスさせようと、ラジオがジャズの流れるチャンネルに合わされます。しかしそれはトーキョーローズの放送で、出回っていた日本兵が行ったとされる捕虜虐殺写真と共に、兵士達の不安を煽って行きます。砲撃が終わり、変り果てた硫黄島に兵士達は上陸して行きます。しかし敵の姿はなく、全滅したかと思う者もいました。ですが前進を開始すると、待ち伏せしていた日本軍の猛攻撃に晒されます。ドグは、姿の見えない敵に撃たれ、次々と倒れて行く仲間達の救護に奔走します。上陸地点は、アメリカ兵の死体に埋め尽くされ行くような勢いでした。
父親たちの星条旗のネタバレあらすじ:第2幕
レイニーは上官に報告する為、アイラを含めた旗を掲げた6人の名前を上げます。しかいアイラは、自分は居なかったと言い切ります。ですが一人名前が間違っている事を指摘しました。レイニーは気軽に自分の間違いを認めますが、アイラは居た事を認めません。本土への帰還をチラつかせますが、アイラは頑なに拒み、銃剣で喋るなと脅します。しかし結局彼は、アイラの名前を出してしまいます。アイラは、レイニーに続き、英雄として帰還をさせられます。それは、病院に居たドクも同様でした。後に彼等の戦友は、あの旗は勝利を意味する物だったと信じていたと回顧します。間違えは訂正されず、ハンクの母親は、自分の息子が英雄として死んだと記者に知らされ、取り違えられたハーロンの母親は夫に向かい、その写真を使って息子が戦死した事実を責めました。本土に帰還した3人は、国中から英雄扱いを受けていました。軍はその人気にあやかり、国債キャンペーンの広告塔に起用します。3人はそ打ち合わせで、金星章の授賞式に無関係なハンクの母が招待されている事に気付きます。そこで旗を掲げた6人の名が間違っていた事が露見します。アイラがハンクは、本物の旗を立てた時に居たと訂正し、旗は一度交換され、その2枚目を掲げた時に撮られた写真だと説明します。上層部が聞かされていたのは伝聞の伝聞でした。しかしアメリカは資金難で戦争継続が難しく、日本の要求に屈し休戦を余儀なくされる程でした。その写真の真偽に関わらず、それに縋って国債を売らなければならなかったのです。彼等はそのまま戦地の仲間の為に、英雄として全国を巡る事になりました。如才なくレイニーが立ち振舞うのを余所に、ドクとアイラは浮かない顔でした。戦場にいる戦友達を気にしていました。写真がやらせではないかと言う疑惑の中、巡業に集まってきた聴衆達は、好き勝手に彼等を英雄と褒めた称えます。レイニーは、旗を立てた功績より、亡くなった戦友達を称えつつ国債購入のスピーチをします。アイラは伝令でしかなかった彼が大きな口を利くのが気に入りませんでした。ドクは、パーティーで出た写真をもしたアイスクリームに真っ赤なストロベリーソースが掛けられのを見て、戦場を思い出します。島は両軍兵士達の血で染まって居ました。何度目かの擂鉢山攻略が行われます。激しい戦闘の中、ドクは決して救護の手を緩めませんでした。
父親たちの星条旗のネタバレあらすじ:第3幕
金星章の受賞パーティが催されます。3人はそれぞれ、戦死した3人の母親達に会います。レイニーはフランクリンの母親といつもの調子で話を合わせます。しかしアイラはマイクの母親に会うと彼を思い泣き崩れてしまいます。そしてドクはハンクの母親から、写真に写っているのが本当に自分の息子かどうか問われます。ドクは、記憶が曖昧だと言って適当に誤魔化して説明しました。3人はいたたまれなくなり、泣き止まないアイラを上層部が無様だと言うので連れ出す事が口実になり、パーティを抜け出します。ホテルに戻ったアイラは戦場を思い出します。日本兵は神出鬼没に襲い掛かり、休む暇を与えません。しかし、攻略が一段落した擂鉢山では、隊長が大隊の旗を掲げろと命令を出します。それに従い、一枚目の小さな旗が掲げられました。それを見た兵士達は士気を上げます。所がそれを見ていたスミス中将はその旗を欲しがります。それを命じれた隊長は大隊の旗を渡す気になれず、別の旗と交換するよう命じます。そして山頂では、新たな星条旗が立てられました。その写真がローゼンタールのカメラに収められ、世に広まりました。国中が英雄と称える中、3人はただ旗を立てただけだと言う事をわきまえていたと、彼の戦友は息子に語ります。彼等の茶番のような巡業は続き、どんどんアイラは追い詰められ酒に溺れ行きます。時には、白人ではないという理由で酒場への入場を拒否され、暴れる事もありました。彼等が体験した硫黄島の激戦は酷いもので、日本兵は栗林中将から禁じられていた自決を行うまでに至っていました。追撃するアメリカ兵、抗戦するに日本兵、双方は唯々必死に、お互いの国の為に戦っているだけでした。そんな地獄を体験した彼等にとって、巡業は冒涜にも近い思いでした。ソルジャーフィールドでのパフォーマンスで、彼等は戦友3人の死に様を思い出します。そしてドグは、イギーが日本兵の捕虜になり、虐殺されていたのを思い出しました。この直後、アイラは軍の幹部に酔って吐いている姿を見られ、恥さらしと罵られた挙句、前線に送り返されます。アイラは資金調達の必要性は知りながらも、英雄だと言われる事に耐えられなかったと言い、快く了承しました。巡業はドクとレイニーの二人で続けられ、その内マスコミは、旗を立てた時にやらせがあったかどうかを追い始めます。
父親たちの星条旗の結末
戦友の一人が息子に、ドクは重傷を負っても衛生兵の任務を続けたと話します。仲間の為に死ぬという事を喧伝する復員兵は十中八九嘘付きだが、ドクは紛れもなくそれに命を掛けた男だと賞賛しました。彼は、多くの兵士の命を作った英雄でした。ブラットリーが家に帰ったのは戦争が終わってからでした、彼はまず妻になる女性にプロポーズしたのでした。アイラは戦地での出来事を忘れようとして生きようとし、政治活動にも関わろうとしましたが、白人は誰も彼もが彼を英雄と言い、しかしネイティブであるが故に正当な扱いを受けられず、いつしか仲間からも孤立して行きます。レイニーは巡業で得たコネを活用としようとしましたが、忘れられた英雄は戦後誰も相手にせず、用務員として一生を終えました。警察沙汰を繰り返していたアイラはある日、徒歩とヒッチハイクでアリゾナから遠く張られたハーロンの父親の父に会いに行き、真実を告げました。母親は戦地に行かせた夫を許せず、家を出ていました。アイラにとっては何の価値もない旗は、ハーロンの両親には重要な価値があったと考えての行動でした。ハンクの母親は、真実をマスコミから聞かされます。暫く後、彼等は硫黄島の旗をモチーフにした戦没者追悼記念碑の除幕式で再会します。最初の旗の時居たのは事実なのに、ハンクの母親は招かれませんでした。誇らしげな軍幹部、政治家達とは対照的に、彼等は複雑な表情でそれを見上げました。それから間もなく、アイラが路上で死んでいるのが発見されます。ブラットリーは、イギーの最期を彼の遺族に語りはしましたが、真実ではなかったようです。そして一人、悩み続けていました。彼は追悼セレモニー等の出席は全て断り、家族の為にその一生を捧げました。息子は、父本人から戦争の事を聞く機会を殆ど得ませんでした。死の床でブラットリーは、あいつはどこだ?とうなされ続けます。息子は、イギーはここに居ないと告げます。しかし父は、息子を探していたと言います。そして、良い父親じゃなかったと謝ります。ブラットリーは戦争で得たのは辛い思い出だけではないと息子に言い、旗を立てた後、泳ぎに行った時の事を楽しそうに語ります。息子は、父が英雄と言われるのを嫌っていた理由を理解しました。英雄とは人が必要に応じて作り上げ、国の為に命を奪い合う異常な状態に意味を持たせるもので、彼等は国の為に戦ったのかもしれないが、死んだのは仲間の為でした。彼等の栄誉を称えたいなら、父のように彼等の本当の姿を覚えて置くべきだと彼は深く感じました。彼等が束の間の安息を得た海岸は、今は唯、静かに波が打ち寄せるだけでした。
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