子ぎつねヘレンの紹介:2005年日本映画。写真家・エッセイストとして活躍する獣医・竹田津実のノンフィクション『子ぎつねヘレンがのこしたもの』を原作にした、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009ファンタランド大賞受賞作です。「忘れない―。あの春、かけがえのない友だちと出会ったことを。」というキャッチで、目と耳が不自由な子ぎつねヘレンと一人の少年の交流を描いた感動の物語です。
監督:河野圭太 出演者:大沢たかお(矢島幸次)、松雪泰子(大河原律子)、深澤嵐(大河原太一)、小林涼子(矢島美鈴)、田波涼子(山口先生)、阿部サダヲ(派出所の警官)、吉田日出子(森に住む謎の老婆)、藤村俊二(上原教授)、ほか
映画「子ぎつねヘレン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「子ぎつねヘレン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
子ぎつねヘレンの予告編 動画
映画「子ぎつねヘレン」解説
この解説記事には映画「子ぎつねヘレン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
子ぎつねヘレンのネタバレあらすじ:起・出会い
ここは美しい自然が広がる北海道です。小学生・大河原太一の母・律子はカメラマンで、現在ミクロネシアという国で生き物の写真を撮っていました。太一は、そんなシングルマザー・律子の恋人が住む北海道に、一人で引っ越してきました。転校したばかりで、学校にもまだ馴染めず、また母と離れ離れで、太一は寂しい想いを募らせていました。そんなある日、太一は道端で1匹の子ぎつねを見つけました。「お前のお母さんも自由人か?」と、太一は親ぎつねと離れてしまった可愛い子ぎつねに、自分自身を重ね合わせました。
あどけない瞳をしたそのおとなしい子ぎつねを、どうしても太一は放っておけませんでした。太一は子ぎつねを抱え、駐在所に行きました。太一は警官に親ぎつねを見つけてほしいと頼みました。警官は困り果てますが、ふと、どんな野生動物でも面倒を見てくれる所があることを思い出しました。警官は太一を連れて、そこへ向かいました。霧が立ちこめる怪しい森を抜けると、一軒の古い洋風の家がありました。そこは矢島動物診療所という所でした。
子ぎつねヘレンのネタバレあらすじ:承・子ぎつね「ヘレン」
警官がチャイムを鳴らすと、出てきたのは獣医・矢島幸次とその娘で助手の美鈴でした。「お前か…」「あんただったの…」と、二人は睨みつけると、子ぎつねを抱えた太一を強引に家の中に引き入れました。伝染病の疑いがあるため、早速、幸次は狐を洗い、美鈴が太一を洗いました。実は、太一の母・律子の恋人とは幸次のことでした。美鈴は「コブがコブを連れてきてどうするの」と皮肉を言い、子ぎつねを連れ帰って来た太一を叱りました。子ぎつねを飼いたいと太一は言いますが、獣医の幸次は「野生動物を飼うのは法律違反」なのでダメだと叱りました。しかも、幸次は太一に入院費を求めました。払うことができない太一は、入院費として診療所に預けられている動物の世話の手伝いを始めました。
そんな太一に、幸次は子ぎつねに近づかないように注意しました。それはキツネの体内には稀に寄生虫がいて、感染すれば大変なことになるためでした。しかし、子ぎつねのことが心配になった太一は、幸次の注意を無視して子ぎつねに近づくのでした。幸次は太一を叱りとばしました。その時、子ぎつねの検査結果の電話が幸次のもとに掛かってきました。「さっさと殺したほうがいい」という幸次の言葉を耳にした太一は、子ぎつねが殺処分されると思い、自転車の籠に子ぎつねを入れて家を飛び出しました。
太一は子ぎつねと共に生きていこうと思いましたが、その夜、警官に保護されて診療所に帰りました。戻った太一は、幸次の「殺す」という言葉が寄生虫を殺そうということだと知り、安堵しました。その時、幸次は子ぎつねがあまりにも大人しいので異変を感じました。子ぎつねは鳴き声も出さず、目の前の手の動きや音にも無反応でした。目立った外傷がないので、脳の損傷から目と耳が不自由になっている可能性が高いと幸次は考えました。「まるでヘレンケラーのようだ」と幸次は呟きました。幸次に子ぎつねを治してあげる力はありませんでした。困り果てる幸次をよそに、太一は子ぎつねを「ヘレン」と名付けました。
子ぎつねヘレンのネタバレあらすじ:転・不安と恐怖
幸次はヘレンを安楽死させる方が良いのではと考えていました。そんな父・幸次に美鈴は母が生きていたら反対していたはずだと告げました。それでも悩む父に美鈴は苛立ちました。父の優柔不断な性格から、動物だけでなく恋人・律子の子供・太一までも抱え込む形になってしまったからでした。幸次は美鈴にお母さんが必要ではないかと尋ねましたが、美鈴にとって母親は死んだ母1人だけでした。
目と耳が不自由なヘレンにとっては、ミルクでさえも得体の知れない恐怖の対象でした。ヘレンは中々ミルクを飲んでくれません。幸次は安楽死を薦めますが太一の懸命な世話の結果、なんとかヘレンはミルクを飲めるようになりました。何がヘレンにとって幸せなのか、太一は自分と母のことを思い出し、ヘレンを野生の親元に返すことだと考えました。そのためには、ヘレンの体を治す必要がありました。手術で治る可能性はゼロではありませんでした。太一は喜びます。
そんな太一に幸次はある日、耳栓をして目隠しをしました。それはヘレンがどのような世界で生きているのかを太一に教えるためでした。太一は暗闇の中で今まで味わったことのない恐怖を感じました。ヘレンの辛い思いを悟った太一は、必死に世話をし続けました。お蔭でヘレンの体重は増加し、幸次は大学の恩師・上原教授に手術を依頼し、ヘレンを預けました。しかし、上原教授の結論は手術しても治る見込みがないということでした。上原教授のもとでも治らないなら自分が育てると太一は言い張りますが、逆に幸次から「お前に何ができる」と反論されてしいました。しかし、太一はヘレンと別れることはできませんでした。
太一は思い余り、ヒッチハイクをしてヘレンがいる大学病院まで向かいました。そこで太一はヘレンを見つけました。太一は上原教授に「ヘレンを返せ」と訴えました。すると突然、ヘレンが鳴き声を上げました。それはヘレンの初めての鳴き声で、子ギツネが母ギツネを呼ぶときの声でした。心配し駆けつけた幸次は、そんなヘレンを見て、太一に託すのが一番だと悟りました。
子ぎつねヘレンの結末:本当の幸せ
太一の母・律子が帰国し、幸次たちの家にやって来ました。楽観的な律子は、勝手に幸次からプロポーズされたと思い、幸次のもとに太一を預けて行ったのでした。幸次は律子の「自分が幸せなら周りも幸せ」という考えに呆れますが、結局は許してしまうのでした。
ヘレンの体の具合は次第に悪化していきました。ヘレンに死期が近づいていました。取り乱す太一に「できることがまだあるはずだ」と幸次は励ましました。太一はヘレンと遊びながら、見えない世界を教えることにしました。しかし、太一の不安な気持ちは拭えませんでした。涙が止まりませんでした。まるで励ますかのようにヘレンは、太一の涙を舐めました。ヘレンにとって太一は、ヘレンの母親のような存在となっていました。
太一はヘレンを連れて、浜辺に向かいました。ヘレンの鳴き声が聞こえました。太一はヘレンの周りに美しい花を撒きました。すると突然ヘレンが倒れて動かなくなりました。ヘレンの最期でした。ヘレンの遺体を抱き締めて悲しむ太一を、幸次や律子、美鈴は見守りました。幸次は太一がゆっくりヘレンの親になったように、自分自身も律子と時間をかけて親になろうと決心しました。
季節が移り、幸次はヘレンが幸せそうにしていたこと思い出し、太一に「“辛い”という字に一を足すと幸せという字なる。死んだほうが幸せだというのは間違いだった」と太一に伝えました。嬉しそうに太一は耳を傾けました。美鈴と律子は太一が撮っていたヘレンの写真を乾かしながら、ゆっくりと関係を育みたいという気持ちを伝え合いました。夏の海岸でヘレンは幸せそうに微笑んでいました。
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