虐殺器官の紹介:2017年日本映画。SF小説作家の故・伊藤計劃が遺した作品をアニメーション映画化するフジテレビ「ノイタミナムービー」の一環である「Project Itoh」の第1作であるSFドラマです。近未来を舞台に、アメリカ特殊部隊の軍人が世界各地で勃発した虐殺事件の黒幕を追ううちに、首謀者の言語学者の思惑に巻き込まれていきます。
監督:村瀬修功 声の出演:中村悠一(クラヴィス・シェパード)、三上哲(ウィリアムズ)、梶裕貴(アレックス)、石川界人(リーランド)、小林沙苗(ルツィア・シュクロウポヴァ)、櫻井孝宏(ジョン・ポール)ほか
映画「虐殺器官」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「虐殺器官」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
虐殺器官の予告編 動画
映画「虐殺器官」解説
この解説記事には映画「虐殺器官」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
虐殺器官のネタバレあらすじ:起
2015年、サラエボで発生した小型核爆弾によるテロにより、世界中では内戦とテロが多発する混乱の時代を迎えていました。
それから5年後の2020年。内戦と虐殺が続くグルジアにはアメリカ情報軍の特殊部隊が潜入、虐殺の首謀者を捜索していました。情報軍のクラヴィス・シェパード大尉(中村悠一)らは内戦の首謀者がいると思われる本部へと潜入しましたが、そこにいたのは暫定政府の大臣ただ一人でした。クラヴィスらが大臣に対し、ここで会うはずだったアメリカ人のことを尋問しますが大臣は全く答えず、それどころかなぜこの国が内戦状態に陥ってしまったのか自分でも解らないというのです。その時、隊員のアレックス(梶裕貴)が突如精神に異常をきたして大臣を射殺、クラヴィスはアレックスを始末すると死体痕跡を残さぬ隠蔽工作を施してその場を離れました。
虐殺器官のネタバレあらすじ:承
アメリカに戻ったクラヴィスは、相棒のウィリアムズ(三上哲)とともにペンタゴンに呼び出され、次なる任務を与えられました。次の任務とはチェコ・プラハに飛び、グルジアで現れるはずだったアメリカ人言語学者のジョン・ポール(櫻井孝宏)を追跡することでした。なぜかジョンが現れた国では必ず虐殺が発生しているので、アメリカ政府は要注意人物として行方を追っているのです。
プラハ入りしたクラヴィスとウィリアムズはビジネスマンに扮し、ジョンの愛人ルツィア・シュクロウポヴァ(小林沙苗)と接触を図りましたが、結局この時はジョンの足跡を知る手がかりを得ることはできませんでした。その後、クラヴィスはルツィアからクラブに誘われ、ルーシャス(桐本拓哉)という人物を紹介されました。ルーシャスは「自由は無制限なものではなく、ある種の自由を捨てて別の自由を買う。自由というのも一種の通貨だ」とクラヴィスに語り掛けました。しかし、ルーシャスの正体はジョンの協力者である「計数されざる者」の一員であり、クラヴィスは捕えられてジョンの前に連れてこられました。かねてから言語が人間の行動にいかにして影響を与えるかということを研究していたジョンは、人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる“虐殺文法”が存在することを明かしました。クラヴィスがルーシャスらに殺されそうになったその時、ウィリアムズら特殊部隊が奇襲をかけ、クラヴィスは救出されるもジョンとルツィアは行方不明となってしまいました。
虐殺器官のネタバレあらすじ:転
アメリカに戻ったクラヴィスらは、ジョンがインドとパキスタンの国境付近で虐殺を繰り広げている武装集団にいるとの情報を掴み、一斉に奇襲をかけました。元々脳内に入れられたナノマシンにより感情をコントロールされているクラヴィスらはためらうことなく麻薬で神経を麻痺させられた少年兵たちを次々と倒していき、ジョンを捕えて連行しました。ジョンは“虐殺文法”とナノマシンで感情を制御されているクラヴィスたちは似ていると言ってきました。ところが、突如クラヴィスらの部隊に戦闘ヘリが襲い掛かり、ジョンには逃げられ、部隊の大多数を失ってしまいました。辛うじて生き残ったクラヴィスは、倒した敵兵もまた自分たち同様に感情をコントロールされていたことを知ります。
虐殺器官の結末
ジョンの後を追うクラヴィスは、ヴィクトリア湖畔で演説の草案を書いていたジョンを見つけ、対峙しました。そこでジョンは“虐殺文法”を使う理由を語り出しました。5年前のテロで妻子を失ったジョンは、“虐殺文法”を使って世界を平和な世界と殺伐とした世界に分け、内戦や虐殺を続ける者たちは平和な場所にテロを仕掛けることなく殺し合うだろうと考えていたのです。そこにルツィアが現れ、ジョンを逮捕して全世界にその事実を伝えて欲しいとクラヴィスに頼みました。しかしその時、ウィリアムズが現れてルツィアを射殺しました。ウィリアムズにとっては、ジョンの主張は全く理解できるものではなかったのです。クラヴィスはウィリアムズを倒し、ジョンを連れて逃げようとしましたが、ジョンはクラヴィスにルツィアの最後の願いと“虐殺文法”を託しました。クラヴィスはジョンを射殺し、“虐殺文法”をアメリカに持ち帰りました。
公聴会に召喚されたクラヴィスは、今まで数多くの人々を殺してきた罪を背負い、ジョンとの約束通りに公聴会の席で“虐殺文法”を発動させました。
「虐殺器官」感想・レビュー
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人類が安心安全を買うためにIDによる管理監視システムを許容した世界という舞台設計、網膜投影型ディスプレイや痛覚コントロールを実現した軍特殊部隊の任務遂行、“虐殺の文法”によるテロ発生のコントロール等、近未来やミリタリー物を好む者として面白い作品でした。
また、原作には主人公の心理的葛藤の背景や、同じ部隊仲間の人物描写等がより詳細に描かれています。この映画を観た後に読むと、より物語を楽しむことができると思います。
原作小説のファンで気になって視聴しました。
原作では重要な話題として描かれていた母の死の描写がないため、ナイーブで内省的な青年の雰囲気は薄れています。またジョンとの対話の場面が正義の一つとして描かれているため、全てを諦めた退廃的な結末というよりも希望に満ちたエンディングに近いので、ファンの評価は分かれそうです。