イン・ザ・ヒーローの紹介:2014年日本映画。特撮作品などで、ヒーローや怪獣スーツなどの着ぐるみを着て演技をするスーツアクターに焦点を当てたヒューマン・アクションドラマです。「オレがやらなきゃ誰も信じなくなるぜ。夢は必ず叶うってことを」というキャッチコピーで、スーツアクター一筋のベテラン俳優と新人若手俳優との心の交流、スポットが当たることはないが作品に命と懸けるスーツアクターたちの生き様とその業界の内部を描いています。福士蒼汰はこれで第38回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。
監督:武正晴 出演:唐沢寿明(本城渉)、福士蒼汰(一ノ瀬リョウ)、黒谷友香(大芝美咲)、寺島進(海野吾郎)、草野イニ(真鍋満)、日向丈(森田真澄)、小出恵介(門脇利雄)、杉咲花(元村歩)、ほか
映画「イン・ザ・ヒーロー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「イン・ザ・ヒーロー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
イン・ザ・ヒーローの予告編 動画
映画「イン・ザ・ヒーロー」解説
この解説記事には映画「イン・ザ・ヒーロー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
インザヒーローのネタバレあらすじ:1.プロローグ:「誰も知らないヒーロー」
「♪ダダッ♪ダッ♪ダダッ♪誰も知らないヒーロー♪~」という音楽と共に、戦隊ヒーローTV番組『神龍戦士ドラゴンフォー』が始まりました。変身した赤、ブルー、グリーン、ピンクの4人のヒーローたちが颯爽と登場、敵の怪人たちを倒していきます。子供たちの人気番組です。4人のヒーローは最後の決めのポーズをビッシッととりました。監督の「ハイ、カット~!」の声がかかり、撮影収録が終わりました。4人のヒーローや怪人たちが控え室に帰って行きました。控え室に入ると、スーツアクターたちはスーツを脱ぎ始めました。背のあまり高くない最年長の海野吾郎は、女性役のピンクのヒーロースーツを着ていました。汗だくになりながら、海野はスーツを脱ぐと早速、一服吸いました。そして、リーダー「ドラゴンレッド」役の赤のスーツを着ていたのは、スーツアクター一筋25年のベテラン・本城渉でした。本城は自身が結成した「下落合ヒーローアクションクラブ」(通称:HAC)の代表でもありました。海野もHACの一員でした。ブルー(男性役)には、女性ですが背が高く気も強い大芝美咲が、グリーンには、筋肉質な体型をした森田真澄が演じていました。大柴も森田も本城の人柄を慕うHACのメンバーでした。みんな、汗だくでした。
インザヒーローのネタバレあらすじ:2.スーツアクター・本城渉
本城は着替えが終わると、次のアトラクションショーに出るため、撮影所を出て行こうとしました。その時、松方弘樹が車から本城に声をかけてきました。本城は、松方の斬られ役を何度も務めていたので、松方とは親しい間柄でした。本城の仕事「スーツアクター」は、殺陣やアクション、危険なスタントなど肉体を酷使する極めて特殊で危険な仕事でした。また、TV番組の字幕スーパーには自身の名が載らないという、決して表にでない裏方の仕事でした。しかし、本城はそんな役者が映画やドラマには必要不可欠だと、自身の仕事に誇りを持っていました。そんな本城でしたが、一方ではいつか「顔出し」の仕事をして、字幕スーパーに自身の名が出る仕事をするのが夢でした。本城は他のメンバーと野外公園でのヒーローショーに出演し、1日を終え、家に帰りました。本城は、妻であった元村凛子と娘・元村歩と離縁し、独り暮らしをしていました。なぜなら凛子は、そんな夢を子供のように追いかける本城に、ほとほと呆れ果て共に生活できないと思ったからでした。凛子は娘・步を連れて実家の薬局へ帰り、薬剤師をしていました。独り暮らしの本城の部屋は、ブルース・リーのポスター、妻と娘との写真、HACのメンバーたちとの写真、そして至る所に「人に勝つ道は知らず、我に勝つ道を知りたり」「我、事において、後悔せず」という教訓を書いた紙などが貼ってありました。本棚には『五輪書』『葉隠入門』『燃えよ剣』『宮本武蔵』など、武士道に関する本が並んでしました。本城はブルース・リーに憧れ、武士道精神を持った、今時珍しい熱血漢でした。本城は、過去のスタントで痛めた首の後ろにシップを貼りながら、妻・凛子に電話をしました。本城が今、スーツアクターとして出演している『神龍戦士ドラゴンフォー』が映画化されることになり、それにあたり新キャラクターの「ドラゴンブラック」役に本城が指名されたのでした。本城は、待ち望んでいた顔出しの仕事に、ウキウキしていました。本城はその事を凛子に伝えました。凛子はただ本城の身体のことだけを心配していました。
インザヒーローのネタバレあらすじ:3.人気アイドル・一ノ瀬リョウ
そして、映画化にあたっての打ち合わせの日、本城は打ち合わせで、自分の役が新人の若手人気アイドルの一ノ瀬リョウに奪われたことを知りました。本城はこの映画でもまたスーツアクター役でした。がっかりする本城に、一ノ瀬のマネージャー・門脇利雄が、一ノ瀬にアクションを教えてほしいと頼み込みました。本城は仕方なく了承しました。しかし、一ノ瀬は本城から教わる気などさらさらありませんでした。早速、本城はそんな一ノ瀬を連れて、HACのメンバーが予行練習をしているスタジオに向かいました。本城は、打ち合わせで一ノ瀬がガムをクチャクチャと噛んでいたことを指摘し、「ヒーローが口、クチャクチャさせてたら、子供の夢を奪うだろう」と注意しました。一ノ瀬は歩きながら「子供いなきゃ、問題ないですよね」と本城に言い返しました。一ノ瀬は、本城が演じるはずだったドラゴンブラック役の仕事を「単なる子供相手のくだらない仕事」と思っていました。本城は一ノ瀬を大芝と森田に紹介しました。一ノ瀬は「チャアス」と小声で言い、頭を鳩のように出して挨拶しました。そんな礼儀を知らない一ノ瀬に、大柴は憤り、くってかかりました。本城は大柴をなだめ、本番の撮影に入りました。一ノ瀬は本城らHACのアクションを見ましたが、彼の頭の中は、今回日本で撮られるハリウッド映画『ラスト・ブレイド』のオーディションのことでいっぱいでした。一ノ瀬が狙っている映画『ラスト・ブレイド』の監督スタンリー・チャンは、実に頑固で石頭な男でした。チャンはオーディション会場で用意された天然水に文句をつけ、「水の価値が分からない人間に、映画の価値は分からない」と言い放ちました。一ノ瀬は、そんなチャン監督の映画の第1回目のオーディションを受けました。好感触を得た一ノ瀬は、益々、ドラゴンブラック役の仕事へのモチベーションをなくしていきました。ある日、一ノ瀬はドラゴンブラックの変身用ブレスレットを、それを作った美術小道具の女性に放り投げました。それを見ていた監督は、一ノ瀬が「超アップ用」の小道具を粗末に扱ったことに憤り、くってかかりました。それでも一ノ瀬の生意気な態度は変わりませんでした。
インザヒーローのネタバレあらすじ:4.一ノ瀬の夢
そんな一ノ瀬にHACの真鍋満は、ゲーム用のモーションキャプチャの撮影現場を見せてあげました。そこにはワイヤーで吊され、相手と殺陣を演じている本城がいました。真鍋は「世界中のゲーマーが、本城さんの分身で遊んでるんだよ」と呟きました。一ノ瀬は少しですが、本城を見直しました。スーツアクターは、こういったものにも裏方として演じていたのでした。その夜、本城は一ノ瀬と真鍋を連れて飲みに行きました。人気アイドルの一ノ瀬は、店員からサインを求められますが、冷たく拒否しました。そんな一ノ瀬の姿を見た本城は、「礼は寛容にして慈悲あり!」と彼に言いました。新渡戸稲造の『武士道』の中の一節です。本城は「学びたいのなら、まず礼儀からちゃんとしろ!」と言い、色紙とサインペンを出し、嫌がる一ノ瀬に「夢を与える練習だ」と言って、サインを書かせました。本城は、娘・歩から頼まれていた一ノ瀬のサインをもらうことに成功しました。一ノ瀬は本城に「ゲームのやつは楽しかったです。でも日陰ですよね」と言いました。その言葉を聞いた本城は、一ノ瀬に「日の当たる場所だけが人生じゃない。男は誰も知らなくても、その誰かのために、命を懸けるんだよ」と語りました。しかし、その言葉は今の一ノ瀬の心に響きませんでした。生意気で冷めた態度の一ノ瀬に、本城は「夢はないのか?」と問いました。一ノ瀬は「アカデミー賞を獲って、スピーチをすることです」と答えました。本城はそれを聞いて、嬉しくなり、一ノ瀬を励ましました。そして、翌日の『神龍戦士ドラゴンフォー』の撮影の控え室で、独り台本を読み込んでいる本城を見た一ノ瀬は、不思議に思い、本城に尋ねました。すると本城は「全部読んでキャラクターを知らないと、動きで表現できない」と言いました。「子供映画なのに…」と不思議がる一ノ瀬に、本城は「表現は必ず伝わるものだ。大人も子供も関係ない」と答えました。そして本城は一ノ瀬に、ドラゴンブラックのスーツを強引に着させました。初めて着た一ノ瀬は、驚きました。息苦しい上に、ヘルメットからの視野が狭すぎて、動きがとれないからでした。一ノ瀬はスーツアクターの大変さを少し実感しながらも、ヘルメットを脱ぎ、負け惜しみまがいの捨て台詞を吐き、現場に臨みました。
インザヒーローのネタバレあらすじ:5.一ノ瀬の自信
一ノ瀬は実は、独りで幼い弟と妹を養っていました。そして、一ノ瀬は家に帰ってからも、筋トレなどを欠かさず行っていました。一ノ瀬は体力や運動神経に自信がありました。そんなある日、映画の撮影が終わった本城は、一ノ瀬に声をかけ、スタジオを見て周りました。そして、本城は一ノ瀬に、明日の撮影の準備を懸命にしている裏方の様子を見せ、「映画はそれぞれの部が力を合わせてできるんだ。だから、スタッフさんを大事にしろ」と諭しました。しかし、一ノ瀬は「違うんだよな~」と言い、具体的なアクションのコツを知りたいと言い返してきました。変わらない一ノ瀬に本城は、「アクションはチームプレイだ」と教えました。するとそこにマネージャーの門脇が来ました。一ノ瀬は門脇から『ラスト・ブレイド』の最終選考に自分が残っている吉報を聞き、大喜びしました。有頂天になった一ノ瀬は、監督にアクションをやらせてくれと進言しました。監督は戸惑いましたが、一ノ瀬は自信満々でした。一ノ瀬はHACのメンバーに混じって、アクションに加わりました。しかし、一ノ瀬は独りよがりの殺陣をし、危険で無茶苦茶な結果になりました。そこに偶然来ていた『ラスト・ブレイド』の日本側のプロデューサー・石橋隆生が、そんな一ノ瀬の素人のような殺陣を見て、彼を貶しました。突如現れた礼儀知らずの石橋に本城は怒り、「ここは俺たちの現場だ」と石橋を追い払いました。一ノ瀬は一気に自信を喪失し、落ち込みました。
インザヒーローのネタバレあらすじ:6.一ノ瀬の決心
そして、ある日の早朝、一ノ瀬は本城から本格的にアクションを教えてもらおうと決心し、本城を家の前で待ちました。本城がトレーニングスーツ姿で出てきました。本城は一ノ瀬を見ましたが、何も言わず、独りでランニングに出て行きました。一ノ瀬は本城のあとを追い、走りました。年齢差があるにも関わらず、一ノ瀬は本城のペースに全くついていくことができませんでした。体力に自信のあった一ノ瀬は、改めて本城の凄さを知りました。折り返し地点の神社で、本城は息を切らせて追ってきた一ノ瀬に声をかけました。一ノ瀬は深々と頭を下げ、本城にアクションの教授願いをしました。一ノ瀬は本城に、自分がハリウッド映画で成功してアカデミー賞を獲りたいのは、自分たちを捨てアメリカにいる母に「恨んではいない」とスピーチしたいからだという思いを打ち明けました。それを聞いた本城は、一ノ瀬をHACのメンバーと共に練習するように言い、励ましました。本城の優しさに心打たれた一ノ瀬は、本気でHACのメンバーと共にアクションやスタントのトレーニングに励みました。それは厳しく、難しいものでした。しかし、一ノ瀬は昼夜を問わず、練習し、自ら進んで裏方の手伝いもしました。本城もHACのメンバーたちも、一ノ瀬の心意気を感じ取り、彼を励ましました。いつの間にか、一ノ瀬はHACのメンバーと家族のように親しくなりました。
インザヒーローのネタバレあらすじ:7.本城の決意
一ノ瀬は『ラスト・ブレイド』の最終選考に臨みました。あとは結果を待つだけでした。そして、海野と美術部の女性との結婚式の日の夜、一ノ瀬は『ラスト・ブレイド』への出演が決定しました。一ノ瀬は自らの役を懸命に演じました。しかし、問題が噴出してきました。我が儘な監督チャンが「これは私の映画だ」と言い、不死身の白忍者役を演じる韓国の有名俳優フェン・ロンに無理難題を主張してきたのでした。それは舞台となる本能寺の2階から、ノーワイヤー、ノーマット、ノーCGで落ちて、再び立ち上がり、火の中でアクションをしろというものでした。それも約5分、ワンショットで一気に撮るとチャンは言い始めました。命がけの危険な監督の要求を聞いたフェンは突如、韓国に帰ってしまいました。この映画の最大のクライマックスシーンを演じる白忍者役がいなくなってしまいました。大変な事になりました。石橋やスタッフたちはあれこれ相談しますが、ここまで撮影が進んでいる以上、誰か代役を見つけなければいけませんでした。石橋はふと、ある男を思い起こしました。その男とは本城渉でした。石橋は本城に謝罪し、深々と頭を下げ、白忍者役を演じてくれるように懇願しました。本城は迷いました。しかし、本城は石橋の「日本にはアクション俳優はいないのかと思われる。これはあなたしかできない」という言葉に奮起し、この役を演じる決意をしました。本城はハリウッド映画に出られ、名前も出るという夢が叶いました。嬉しくなった本城は、凛子の元に行き、その事を伝えました。しかし、命がけの危険なアクションを引き受けた本城を、凛子は「あなたはいつまで戦国時代を生きてるつもりなの!」と怒りました。しかし、本城の決意は変わりませんでした。
インザヒーローのネタバレあらすじ:8.命がけのヒーロー
本城は短い準備期間の中、その撮影に向けて、自主トレを行い、準備をしました。さあ、クライマックスシーンの撮影当日、本城は覚悟を決めて撮影所に入りました。本城が演じる白忍者の敵役の黒忍者たちは、本城を真のスーツアクターと慕うHACのメンバーほか、スーツアクターの面々、そして、「いつも斬り役」の松方弘樹も名乗りを上げ、黒忍者軍団の頭領として入っていました。本城は松方から刀を受け取り、セットに向かいました。凛子にプロポーズしようと思っていた西尾俊久と食事をしていた凛子は、やはり本城の事が心配でならず、途中で退席し、娘の歩と撮影所に行きました。一ノ瀬も共にやって来ました。本城は本能寺セットの2階に上がり、心を落ち着け、撮影に臨みました。約5分のワンシーン・ワンショットの命がけのアクションシーンの撮影が始まりました。本城は、見事な殺陣を演じ、チャン監督の理想通り、2階から落ちました。本城は背中を強打しました。普通であれば立ち上がれません。凛子や歩、一ノ瀬、そしてスタッフたちは息をのみました。しかし、本城は見事、立ち上がりました。そして迫ってくる黒忍者たちを斬って斬って斬りまくりました。そして、次に本城は火矢で狙われました。紙一重で矢をよけましたが、本城は足から炎に包まれました。燃える本能寺のセットをバックに、迫ってくる黒忍者たちをぶった斬り、本城は全身炎に包まれながら、最後に頭領の松方を斬り、池に身を投じて炎を消しました。見事な殺陣を演じた本城は、最後に池から立ち上がらねばなりません。皆、また息をのみ、見守りました。すると、本城は池から立ち上がってきました。本城の覆面は燃え、顔が出ていました。本城は燃える本能寺のセットをバックに、最後に刀を構えました。本城は命がけのアクションを見事に演じ切りました。まさに不死身の白忍者でした。チャン監督は予想以上の出来に興奮し、カットしました。本城はその声を聞くと、池の中にぶっ倒れました。本城のもとへ、凛子、歩、一ノ瀬、HACのメンバーたちが駆け寄りました。本城は救急車で救急搬送されました。
インザヒーローの結末:A HERO IS BORN.
本城は全身骨折と打撲で入院しました。本城は凛子や歩の心配を余所に、おどけて見せました。本城はまだまだ、このスーツアクターという仕事を続ける意気込みでした。主治医の指示に耳を傾けず無茶なリハビリをする本城を、凛子は復縁して監視することにしました。一方、一ノ瀬はアメリカに渡り、ハリウッド俳優となりました。一ノ瀬は本城の教えを胸に、押し寄せるファンに気前よく笑顔でサインをしてあげました。そんな一ノ瀬の前に、母親が会いに来ました。一ノ瀬は母親を笑顔で迎えました。また一人、ここにヒーローが産まれました。
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