十二単衣を着た悪魔の紹介:2019年日本映画。内館牧子の長編小説「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」を実写映画化した作品で、本作が監督3作目となる女優・黒木瞳がメガホンを執り、ひょんなことから源氏物語の時代にタイムスリップしてしまったフリーターの青年が、光源氏の排除を狙う弘徽殿女御の元で陰陽師となっていく過程を描きます。
監督:黒木瞳 出演者:伊藤健太郎(伊藤雷/伊藤雷鳴)、三吉彩花(弘徽殿女御)、伊藤沙莉(倫子)、田中偉登(春宮)、沖門和玖(光源氏)、MIO(藤壺女御)、YAE(桐壺更衣)、手塚真生(六条御息所)、細田佳央太(伊藤水)、LiLiCo(山下元子)、村井良大(木村)、兼近大樹(責任者)、戸田菜穂(伊藤明子)、ラサール石井(右大臣)、伊勢谷友介(桐壺帝)、山村紅葉(梅命婦)、笹野高史(良喬)ほか
映画「十二単衣を着た悪魔」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「十二単衣を着た悪魔」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
十二単衣を着た悪魔の予告編 動画
映画「十二単衣を着た悪魔」解説
この解説記事には映画「十二単衣を着た悪魔」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
十二単衣を着た悪魔のネタバレあらすじ:起
伊藤雷(伊藤健太郎)は、就職試験で目下59連敗中のフリーターの青年です。雷の弟・水(細田佳央太)は雷とは正反対の頭脳明晰で優秀な人物であり、雷は水に対して常にコンプレックスと劣等感を抱いていました。
そんなある日、雷は日雇いバイトで「『源氏物語』と疾患展」の設営に参加することになりました。雷は会場内で紹介されている『源氏物語』の登場人物に興味を持ち、中でも「デキた弟・二宮」と「後塵を拝した長男・一宮」の関係性に自らの境遇を重ね合わせました。
更に雷が興味をひかれたのは、稀代の悪女とされる一宮の母・弘徽殿女御の存在でした。そんな雷の様子を見たバイトリーダーの木村(村井良大)が、雷に給料と共に『源氏物語』のあらすじが記された冊子を手渡してくれました。
バイトを終えた雷は彼女と合流して食事に出かけましたが、何と「雷といると成長できない」と言われてフラれてしまいました。更に追い打ちをかけるように、今度は水が京都大学医学部に合格したとの知らせが舞い込んできました。
雷はお祝い会が開かれている実家に帰ろうにも帰れず、冊子の入った手提げ袋を持ったまま家の周囲をうろつくしかありませんでした。その時、空には突然雷鳴が轟き、激しい雨が降り始めたかと思えば、雷は不思議な光の中に吸い込まれていきました。
十二単衣を着た悪魔のネタバレあらすじ:承
雷が目を覚ますと、そこは何と1000年以上も昔の平安時代、まさに『源氏物語』の世界に飛んでしまっていました。雷は現状を理解できないまま、駆け付けた者たちに不審者とみなされて捕らえられてしまいました。
その際、雷は手提げ袋に入っていた冊子を読んで大まかな世界観を理解、夜も眠れず苦しむ皇妃・弘徽殿女御(三吉彩花)にバイト先の手土産としてもらった頭痛薬を飲ませました。たちまち弘徽殿女御の病は回復、弘徽殿女御に気に入られた雷は口から出まかせで陰陽師“伊藤雷鳴”と名乗ることにしました。
こうして雷鳴は弘徽殿女御の御前に呼び出されることとなりました。平安時代の習わしに従い、雷鳴は弘徽殿女御と御簾を隔てて対面しましたが、そんなことはどうでもいい雷鳴は直接顔をみて話したいと言い出しました。弘徽殿女御は驚く侍従に御簾を上げるように命じ、その凛とした気品のある表情を雷鳴の前にさらけ出しました。
その気迫に驚いた雷鳴は、これまで悪女とされてきた弘徽殿女御が現代のキャリアウーマンも真っ青の逞しさと冷静沈着ぶり、そして何よりも実子である“一宮”こと春宮(田中偉登)を想う母としての側面に心を打たれました。
春宮と皇位を争うのは“デキた弟”である異母弟の“二宮”こと光源氏(沖門和玖)であり、雷鳴はどうしても春宮を次の帝にしたい弘徽殿女御に協力することにしました。
十二単衣を着た悪魔のネタバレあらすじ:転
そこで雷鳴は、冊子の内容を予言として弘徽殿女御に伝授することで、彼女の信頼を勝ち取っていきました。その過程で、これまで『源氏物語』の主人公である光源氏と比べて影の薄い春宮が実は母思いの心優しくしっかりとした人物であることに気付いていきました。
光源氏は何をやっても超一流で、数々の女性と浮名を流しており、雷鳴はそんな春宮の境遇を自らに重ね合わせていたのです。
決して自らの信念を曲げない弘徽殿女御は、雷鳴の助言を受けつつも自力で解決策を見出そうとし、二人の信頼関係はより一層強いものとなっていきました。そして弘徽殿女御は未だ独身の雷鳴のために結婚相手として倫子(伊藤沙莉)という女性と引き合わせ、雷鳴は倫子と結婚して幸せな日々を過ごしていました。
やがて倫子は雷鳴の子を身籠るも流産してしまい、力尽きた倫子は雷鳴に「私のことを大切にしたように自分のことも好きになってください」と言い残して息を引き取りました。
雷鳴はすっかり落ち込み、仕事も手につかない状態にまで陥りました。弘徽殿女御はそんな雷鳴のために倫子の葬式の手筈を整えてくれ、落ち着くまでは出仕しなくてもいいとまで伝えてくれました。
ところがこの頃、今まさに宮中を揺るがす事態が起ころうとしていました。光源氏の実母である桐壺更衣(YAE)が亡くなり、春宮と光源氏の父・桐壺帝(伊勢谷友介)は桐壺更衣を失った哀しみに暮れるあまり、彼女に瓜二つの藤壺女御(MIO)を寵愛するようになりました。
やがて藤壺女御は身籠りましたが、実はお腹の子の父は桐壺帝ではなく、藤壺女御を深く愛してしまった光源氏だったのです。
十二単衣を着た悪魔の結末
その事実は当事者である桐壺帝、藤壺女御、光源氏、そして『源氏物語』のあらすじを知る雷鳴しか知らないはずでしたが、弘徽殿女御は薄々その秘密に気づいていました。
やがて藤壺女御は男子を出産、どうしても春宮を次の帝にしたい弘徽殿女御は、皇妃の座を藤壺女御に譲ることで自ら身を引き、その代わりに春宮を次の帝にすることを約束させました。
弘徽殿女御は「自分の身の丈にあうことだけして傷つかないようにするのは小物のすること。これからも自分の力で身の丈にあうことでなくても、掴もうと足掻き続け、次の若い世代が出てき始めたら潔く退くのが良い」と語りました。弘徽殿女御と過ごした日々は、いつしか雷鳴を大きく成長させていました。
そんなある夜、雷鳴はホタルの光に導かれるうちに光の中に包み込まれ、気が付いた時には陰陽師の姿のまま現代の我が家の近くに立っていました。
こうして元の時代に戻った雷でしたが、不思議なことに雷が雷鳴として『源氏物語』の世界に長く居続けたわりには、現代ではタイムスリップした時から全く時間が過ぎていませんでした。雷は雷鳴として体中に叩きこんだ宮中での言葉遣いや所作などが抜け切れず、水や母・明子(戸田菜穂)を困惑させました。
ある雷雨の夜、雷は再び1000年前に戻りたいと外に飛び出しましたが、戻ることはできませんでした。雷は自分を心配してくれた水の姿に、これまでの自分は意地を張って卑屈になってしまっていたこと、そのせいで水に気を使わせてしまったことを深く反省しました。
そしてようやく自分の本当にやりたいことを見つけた雷は、晴れ晴れとした表情で弘徽殿女御のことを小説として書くことを決意しました。
以上、映画「十二単衣を着た悪魔」のあらすじと結末でした。
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