こんにちは、母さんの紹介:2023年日本映画。2020年に創立100周年を迎えた松竹。『男はつらいよ』シリーズなどを手がけた巨匠・山田洋次監督が自身の監督作品90作目としてメガホンをとった人情ドラマです。本作は劇作家・永井愛が2001年に発表した戯曲で2007年にテレビドラマ化された作品を原作とし、山田洋次と主演・吉永小百合がタッグを組んだ『母べえ』(2008年)、『母と暮せば』(2015年)に続く「母」三部作の集大成と位置づけられています。
監督:山田洋次 出演者:吉永小百合(神崎福江)、大泉洋(神崎昭夫)、永野芽郁(神崎舞)、YOU(琴子・アンデション)、枝元萌(番場百惠)、加藤ローサ(原)、田口浩正(久保田常務)、北山雅康(巡査)、松野太紀(区の職員)、広岡由里子(足袋屋の客)、シルクロード(フィッシャーズ)(出前の配達員)、明生(立浪部屋)(本人役)、名塚佳織(昭夫の妻(声の出演))、神戸浩(ボランティアの炊き出しに並ぶ男)、宮藤官九郎(木部富幸)、田中泯(イノさん)、寺尾聰(荻生直文)ほか
映画「こんにちは、母さん」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「こんにちは、母さん」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「こんにちは、母さん」解説
この解説記事には映画「こんにちは、母さん」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
こんにちは、母さんのネタバレあらすじ:起
とある大手企業で人事部長を務める神崎昭夫はある日、大学時代からの友人で同僚の営業部課長・木部富幸に飲みに誘われました。昭夫は部下の原と共に木部と居酒屋で飲み、同窓会の幹事をすることになった木部は隅田川の屋形船を借りたいと持ちかけてきました。昭夫は東京の下町・向島の実家で足袋屋を営む母・福江に相談することにしました。
数年ぶりに実家に戻った昭夫。久しぶりに会った福江は髪を染めて若作りしていました。福江から家族の状況を訊かれた昭夫は「俺も捨てられる」と呟きつつみんな元気だと答え、今晩の夕食にうなぎを食べに行こうと誘いました。しかし、福江は今夜はホームレス支援のボランティア団体「ひなげしの会」の夜回りがあり、これから会議があると断りました。
程なくして、福江のもとに「ひなげしの会」のメンバーが集ってきました。昭夫の幼馴染で煎餅屋の妻・番場百惠、スウェーデン人の夫を持つアデンション・琴子、教会の牧師・荻生直文です。昭夫は自宅マンションに戻ることにしました。
昭夫は妻や大学生の娘・舞と別居中で、お掃除ロボットだけが唯一本音を吐ける存在でした。昭夫がひとり食事を採っていると妻から電話があり、舞は外出したまま3日も帰ってこないと告げられました。妻は舞は向島の福江の家に行っているのではないかと考えていました。
昭夫の会社での仕事は早期退職のリストに挙げられた社員たちの離職手続きでした。ある日、昭夫は木部に詰め寄られました。木部は上司から早期退職を勧められており、昭夫に「俺がリストに入っていたのを知っていただろう」と責め立てました。昭夫は守秘義務を盾に説得を試みましたが、木部は「俺は絶対に辞めない」と言い張るばかりでした。
舞は昭夫の妻の予想通り、福江のもとに身を寄せていました。舞は昭夫に、自分が家出した理由として母に大学の授業がつまらないと相談したところ、良い成績を取って昭夫のような大企業に入るか金持ちの男を捕まえろと言われたことが癪に障ったことを打ち明けました。福江は昭夫が妻と別居していることをこの時初めて知りました。
こんにちは、母さんのネタバレあらすじ:承
舞はしばらく福江のもとに居候することにしました。そんなある時、昭夫が福江の店にいると木部が押しかけてきました。木部は福江、そして福江の亡き夫と知り合いでした。昭夫と木部は2階で二人だけで話し合うことにしましたが、いつしか取っ組み合いの大喧嘩になってしまいました。店に居合わせていた「ひなげしの会」の面々は会社と木部ら早期退職リストの者との板挟みになっている昭夫に同情しました。
その夜、福江ら「ひなげしの会」の面々はホームレスに弁当や飲み物を渡す活動をしていました。福江と萩生はホームレスのひとりである老人・イノさんがどうしても気にかかっていました。弁当は受け取るものの決して心を開かないイノさんは生活保護を受けるよう勧められましたが、「役所の世話にはならない」と意固地になって拒否しました。一方、福江の帰りを昭夫と共に待っていた舞は、福江は恋をしていることに薄々気づいていました。
ある日、昭夫は会社で、木部が上司に怪我をさせたとの騒ぎを聞きつけました。昭夫が駆け付けると、上司は救急車で運ばれるところでした。木部は自分が立ち上げたプロジェクトであるにも関わらずプレゼンに呼ばれなかったことから会議室に乱入し、上司と押し問答の末に誤ってドアに手を挟めてしまったとのことであり、わざとやったのではないと訴えました。昭夫は木部を自宅に招き、食事を奢ってもらった木部は涙を流しました。
一方の福江は教会での萩生の礼拝に参加し、教会の座席の修繕を手伝い、買い物に同行するなどしていました。そんな時、福江と萩生は空き缶を大量に積めた袋を自転車に載せて引いていたイノさんを見かけました。イノさんはその場で倒れてしまい、福江は救急車を呼ぼうとしましたが、イノさんはそれを拒絶すると水を求めました。
萩生が教会に水を取りに行っている間、イノさんは福江と萩生は夫婦だと勘違いしていたことを明かしました。やがて萩生から水を受け取り、元気になったイノさんはその場を立ち去りました。福江はイノさんの話を伝えると、萩生は激しく動揺しました。
福江は上機嫌で帰宅しましたが、待っていた昭夫はこれから懲戒解雇になってしまうかもしれない木部を何とかしなければと言うと、つい「ボランティアのホームレス対策とは違う」と言って福江と口論になってしまいました。
こんにちは、母さんのネタバレあらすじ:転
その夜、福江は足袋を縫うミシンで萩生の上履きを作り始めました。それを見ていた舞は福江と亡き祖父との馴れ初め話を聞きました。戦災孤児だった祖父は中学校しか出ておらず、料亭を営んでいた福江の親は結婚に反対していました。やがて足袋職人となった祖父は成人式の晴れ着ができて喜んでいた福江のために特注で足袋を作り、そのことがきっかけで結婚に至ったのです。福江の新たな恋を応援することにした舞はいつ告白するのかと尋ねると、福江は言われるまで待つと答えました。
舞から福江の恋の話を聞いた昭夫は不満を覚えましたが、福江が萩生に上履きをプレゼントした際に萩生はかつてフランス文学の大学教授をしていたことを知りました。萩生は教授時代に上司の顔色を伺い続けるのが嫌で牧師に転職したことを明かし、同じ境遇の昭夫に「若いのでまだやり直せる」と励ましました。
福江は昭夫に、木部が店に来たことを明かしました。木部は昭夫と共にもう一度やり直したいと語っていたそうです。そして福江は昭夫の妻とも会ったことを話しました。どうやら昭夫の妻には他に好きな人ができたらしく、昭夫は怒りながら帰路につきました。
昭夫は橋の上でイノさんに呼び止められました。イノさんは東京大空襲の話をしてきました。その場に居合わせた巡査が、イノさんは空襲の時にこの橋から飛び降りて命拾いしたということを教えてくれました。イノさんは昭夫に家で女房と子供が待っていると声を掛けましたが、昭夫は「そんなものいない」と怒って帰っていきました。
一方の福江は着物を着て萩生とのデートを楽しんでいました。ピアノのリサイタル、レストランでの食事、水上バスでの遊覧と楽しいひと時を過ごした福江でしたが、帰宅した福江に萩生は「真っ先にあなたに言おうと思っていた」と告げられました。北海道出身の萩生は知床の近くの牧師が病気になったため、教会から北海道に移るよう言われたことを告げました。
かつて家族の反対を押し切って上京した過去のある萩生はいつか故郷に帰らなければならないと思っていたことを明かして立ち去っていきました。萩生が帰った後、電気もつけずのテーブルに伏せていた福江を舞は心配し、昭夫に「おばあちゃんは失恋した」と電話をかけました。
こんにちは、母さんの結末
昭夫の会社の上層部は上司に怪我を負わせた件で木部を懲戒解雇にすることを決定しました。昭夫は独断で木部の扱いを希望退職にし、退職金を与えて系列会社への再就職先まで斡旋しました。昭夫は上司の久保田常務に呼び出され、木部の件で問われると「僕は疲れました。どんな処分も受けます。今の仕事は向いていない」と懲戒退職を受け入れました。
その後、昭夫は木部、原と飲みに行きました。木部は昭夫の配慮に感謝し、原はここのところ昭夫は疲弊しきっていたけど、今のほっとした顔を見られて安心したことを伝えました。
萩生が北海道に戻る日。「ひなげしの会」のメンバーや教会の信者が見送りに駆け付けました。百惠の車に乗り込んだ萩生に福江は手作りの弁当を渡すと、自分も北海道に連れてってと伝えました。福江はすぐに冗談だとごまかしました。車は出発し、萩生は福江が冗談を言うとは思わなかったと呟くと、百惠は福江は本当に萩生のことが好きだったと伝えました。萩生はいつものように空き缶を自転車に載せて引いているイノさんの姿を見かけ、「長生きしろよ」と呟きました。
昭夫は木部からもらった佃煮の瓶を携えて実家に向かうと、福江は酒を飲んでいました。福江は萩生にあと2、3年でもいいから傍にいてほしかったと嘆くと、もはや瓶の蓋も開けられなくなり字も読みづらくなったとぼやきました。
福江は自分はいつ寝たきりになるかわからないが人の世話にはなりたくないと本音を打ち明けました。昭夫は福江に妻と離婚したこと、木部の身代わりになって会社を辞めたこと、まだローンが残っている自宅マンションを引き払うことを伝え、この実家に戻っていいかと持ちかけました。福江は落ち込んではいられないと奮起しました。
この日は隅田川の花火大会の日であり、昭夫の誕生日でもありました。福江は昭夫を出産した時のことを振り返り、花火と共に生まれた昭夫は世界中から祝福されている気がしたと語りました。昭夫と福江は、仕事に失敗して離婚した息子と失恋した母とでやり直す決意を新たにしました。
以上、映画「こんにちは、母さん」のあらすじと結末でした。
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