幸福なラザロの紹介:2018年イタリア映画。その人は怒らない、疑わない、欲しがらない―――。1980年代初めのイタリアで実際に起きた詐欺事件を基に『夏をゆく人々』のアリーチェ・ロルヴァケル監督が作り上げた人間ドラマで、第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門脚本賞を受賞した作品です。イタリアの閉鎖的な村を舞台に、キリスト教の聖人ラザロと同じ名を持つ純真無垢な一人の男が辿る人生を描きます。
監督:アリーチェ・ロルヴァケル 出演:アドリアーノ・タルディオーロ(ラザロ)、アルバ・ロルヴァケル(アントニア(成人))、アニェーゼ・グラツィアーニ(アントニア)、トンマーゾ・ラーニョ(タンクレディ(成人))、ルカ・チコヴァーニ(タンクレディ)、ニコレッタ・ブラスキ(デ・ルーナ侯爵夫人)、ナタリーノ・バラッソ(ニコラ)、セルジ・ロペス(ウルティモ)ほか
映画「幸福なラザロ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「幸福なラザロ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
幸福なラザロの予告編 動画
映画「幸福なラザロ」解説
この解説記事には映画「幸福なラザロ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
幸福なラザロのネタバレあらすじ:起
20世紀後半、イタリア中部の山間部にある、外界から隔絶された小さな村・インヴィオラータ。そこではこの土地を牛耳る領主デ・ルーナ侯爵夫人(ニコレッタ・ブラスキ)の支配のもと、政府に廃止されたはずの小作制度によって村人たちはタバコ農園で過酷な労働を強いられていました。そんな村人たちの中に、純真無垢な青年ラザロ(アドリアーノ・タルディオーロ)がいました。
お人よしで働き者のラザロは何でも言うことを素直に聞いてしまうため、村人たちからバカにされて仕事を押し付けられていました。そんなある日、村の若い恋人同士のジュゼッペ(ニコラ・ソルチ)とマリアグラツィア(ソフィア・スタンガーリン)は結婚を決意、村を出ていこうとしましたが、侯爵夫人や監督官のニコラ(ナタリーノ・バラッソ)がそれを許しませんでした。ニコラは村人が収穫したタバコの葉の量を偽装してあたかも負債が増えてしまったかのように装い、村人たちはそんなニコラのことを快く思ってはいませんでした。
幸福なラザロのネタバレあらすじ:承
そんなある日、デ・ルーナ侯爵夫人が息子のタンクレディ(ルカ・チコヴァーニ)たちを連れて村を訪れました。村人たちは誰一人として侯爵夫人一向に近づこうとしないなか、ラザロだけはタンクレディに近づき、村から離れた自分だけの秘密の隠れ家へと案内しました。
村人たちから搾取する母のやり方に嫌気がさしていたタンクレディはある時、侯爵夫人を脅して身代金をせしめようと狂言誘拐の話をラザロに持ちかけました。人の話を断らないラザロも加担することになり、ラザロは友情と協力の証として壊れた手作りの木製パチンコを受け取りました。ところが、狂言誘拐の一件は侯爵夫人に見抜かれてしまっており、村人たちも冷淡な反応を取るなか、ただ一人だけニコラの娘テレーザ(ジュリア・カッカヴェッロ)だけが真に受けてしまいます。
そんな中、ラザロとタンクレディはまるで兄弟にも近い友情関係を深めていき、ラザロは隠れ家のタンクレディの元に食事を運ぶようになっていきました。しかしある夜、高熱を出してしまったラザロは体調が戻らぬままタンクレディの元に向かい、誤って足を滑らせて崖下に墜落してしまいました。その後、未だに狂言誘拐を真に受けているテレーザの通報で村に警察が駆け付け、侯爵夫人による搾取および隠蔽工作が白日の元に晒され、全ての事実を知った村人たちは村から離れていきました。
幸福なラザロのネタバレあらすじ:転
そして数十年が経った現在。谷底に全く年を取らない状態で倒れ込んでいたラザロは駆け寄ったオオカミに助けられ、意識を取り戻すと村へと戻っていきました。村は既に荒れ果てて村人は一人もおらず、廃墟と化した侯爵夫人の家から金目の物を盗み出そうとする盗人しかいませんでした。
やがて村を出たラザロは、難民ブローカーとなったニコラと再会を果たしますが、ニコラはラザロに対して冷淡な態度を取るのみでした。その後も旅を続けるラザロは侯爵夫人の家で出くわした盗人たちと再会、彼らが暮らすスラム街へと辿り着きました。そこにはかつて侯爵夫人の家のメイドをしていたアントニア(アルバ・ロルヴァケル)がおり、盗人は彼女の夫であるウルティモ(セルジ・ロペス)と息子のピッポ(カルロ・マッシミノ)でした。行くあてのないラザロはアントニア一家の家に滞在することにし、生きるために窃盗や詐欺などの犯罪に手を染めるアントニアたちに協力させられますが、全く上手くいきませんでした。ところが、自然の事情に詳しいラザロは近所で食べられる雑草を見つけたことからアントニア一家に徐々に認められるようになっていきました。
幸福なラザロの結末
そんなある日、ラザロは偶然にもタンクレディ(トンマーゾ・ラーニョ)と再会を果たしました。今や中年に差し掛かっているタンクレディはすっかり没落しており、銀行に騙されて財産を奪われたと愚痴り、生活にも困窮していましたが、それでもラザロやアントニアたちを翌日の昼食に誘いました。ところが翌日、タンクレディの家に着いたラザロたちが目にしたのはとても上流階級の家とは思えないみずぼらしい場所であり、しかもタンクレディは一転して招待した覚えはないと言い出し、ラザロたちは門前払いをくらってしまいます。アントニア一家は憤りを露にするなか、ラザロは帰りの途中で一人涙を流していました。
翌日、ラザロは街の銀行を訪れ、タンクレディの財産を返してほしいと訴えますが挙動不審ぶりから強盗に間違われてしまいます。周囲の客たちはラザロのズボンのポケットに銃が入っているのではと勘違いしましたが、実際に入っていたのはかつてタンクレディからもらった古いパチンコでした。激怒した客たちはラザロに殴りかかり、激しい暴行を加えていきました。そしてぐったりと動かなくなったラザロの元に再びオオカミが現れ、彼の周りをぐるりと歩くと、そのまま銀行を出ていずこへと去っていきました。
以上、映画「幸福なラザロ」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する