ローレライの紹介:2005年日本映画。福井晴敏の小説『終戦のローレライ』を原作として制作された映画。キャッチコピーは「祖国を守るため、彼女を守るしかなかった…」で、もしも3発目の原爆が東京に落とされたらという設定で、新型索敵システムを搭載した潜水艦「ローレライ」を舞台に描かれた作品です。
監督:樋口真嗣 出演:役所広司(絹見真一)、妻夫木聡(折笠征人)、柳葉敏郎(木崎茂房)、香椎由宇(パウラ・アツコ・エブナー)、石黒賢(高須成美)、堤真一(浅倉良橘)ほか
映画「ローレライ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ローレライ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ローレライ」解説
この解説記事には映画「ローレライ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ローレライのネタバレあらすじ:プロローグ:深海にも「希望」はある
ある若い作家は、第2次世界大戦末期に日本を救った伝説の潜水艦の物語を書こうと取材をしていました。彼はその物語の冒頭は、このような語りから始めようと考えていました。「深海に棲む生き物は、眼を持たない。なぜなら、彼らの世界には、地上からの光がまったく届かないからだ。そこは果てしない闇に閉ざされ、死と沈黙が支配する。だが、彼らは抱いている。決して消えることのない「希望」という名の光を」。
ローレライのネタバレあらすじ:1945年、“鋼鉄の魔女”の伝説
1945年、第2次世界大戦末期、7月18日、11時25分、西太平洋、日本列島近海に国籍不明の1隻の潜水艦が海中を航行していた。謎の美しい女性の歌が海中に響いていました。米海軍・潜水艦「ボーンフィッシュ」はその潜水艦から発射された1発の魚雷で撃沈されました。同海域を航行していた米海軍・駆逐艦「フライシャー」は、戦闘態勢でその潜水艦を追跡しましたが、海中へと姿を消していきました。当時、「フライシャー」に乗船していたエリック大尉は、当時を思い出し、「その頃、あの海には謎の潜水艦の伝説があった。どこからともなく現れ、命を奪い、姿を消していく…そして、最後に聞こえるのは美しい歌声。我々は“魔女”と呼んだ。“鋼鉄の魔女”と…」と語りました。
ローレライのネタバレあらすじ:1945年8月6日、新型潜水艦「伊507」発進
1945年8月6日、午前8時15分、米軍が開発した原爆が広島に投下されました。午後3時、軍令部作戦課長・浅倉大佐と海軍・絹見少佐は、横須賀にいました。浅倉は、絹見に小説『罪と罰』で「主人公が本当は自分が殺したかったのは、誰と言ったか覚えているか」と問いかけると、絹見はそこまでは覚えておらず、浅倉を残念がらせました。絹見は、特攻は貴重な戦力の浪費でしかない作戦と言って認めなかった為、一部から「腰抜け」と蔑称で呼ばれていました。そんな絹見に浅倉は、「若者が無駄に血を流すのは、実に耐え難い」と絹見の意見に賛同し、米軍は、広島に落とした原爆と同型の原爆をテニアンに運んだことを告げました。そして、軍属技師の高須を紹介しました。浅倉は絹見を外に連れて行き、高須が密かに運んできた新型潜水艦「伊507」を見せました。浅倉は、この潜水艦は「ナチスドイツの科学の結晶にして、我々の最後の希望」であると紹介すると、絹見にこの「伊507」の艦長を命じ、「広島に続く新たな原爆の投下を阻止すること。出撃は明朝5時、日本を滅亡から救ってくれ」と命令しました。8月7日、6時30分、浦賀水道海上を、伊507は航行していました。真珠湾戦闘以来、絹見艦長と篤い信頼関係にあった先任将校・木崎茂房大尉が副館長として同乗していました。絹見艦長は早速、演習を開始しました。演習が終わると、絹見は全艦マイクで「我々が与えられた使命は、広島に続く新たな原爆投下を阻止することにある。俺は3年ぶりの出撃になる。慣れない船、乗員数も定員に満たない。…帰るべき祖国があるかどうかは、貴様らの双肩にかかっている。例え、貴様らが死に損ないだろうが、はぐれ者だろうが、一切関係ない。この船に乗ったからには、俺たちが“祖国の最後の希望”だ。…最善を尽くしてもらいたい。…俺は“腰抜け”と呼ばれているらしいが心配するな。1人も死なせん。任務を遂行し、必ずや、この船は日本に帰還する。…いいか、諦めるな。生き残るのは諦めなかった者だけだ」と全搭乗員に命じました。
ローレライのネタバレあらすじ:謎の新兵器「ローレライ」と行方不明の浅倉大佐の意図
日本軍初の特攻兵器・人間魚雷「回天」搭乗員の折笠征人と清永喜久雄は、特攻作戦に反対している艦長への不平を言いながら、この艦にあるN式潜航艇の話をしていました。その2人を見た掌砲長・田口徳太郎曹長は、2人には気合いが入っていないと咎め、制裁のため殴ろうとしました。その時、絹見と木崎が現れ、事後報告でその場を収めました。回天搭乗員が乗員していることを知らなかった絹見に、高須は回天搭乗員がN式潜航艇の操舵手であることを告げました。絹見は、N式潜航艇は特攻兵器かと高須に訊くと、彼は「あれは高感度の索敵装置です。従来型のソナーを“耳”とするならば、あれは“目”です。ドイツでは伝説の魔女に因んで、“ローレライ”と呼んでいました」と答えました。8月7日、9時25分、東京の海軍司令部では、海軍諜報主任・大湊三吉大佐が、海軍軍令部総長・楢崎英太郎大将ら上層部に、午前5時に横須賀より伊507が密かに出撃したこと、その命令は海軍創設以来の秀才と言われた浅倉大佐が下したこと、現在彼は行方不明で捜索中あることを報告しました。樽崎総長は、浅倉大佐の意図を知る為、彼の確保を大湊に一任しました。その頃、伊507船内では、各部署の上層部が集合し、作戦会議をしていました。高須はその場で“ローレライ”の性能は絶対であるが、作戦海域まで可能な限りローレライを使わず、秘匿行動で行くことを進言しました。
ローレライのネタバレあらすじ:謎の新兵器「ローレライ」起動!
8月7日、22時55分、八丈島沖を伊507は航海していました。折笠は、家族の写真を見ていました。高校球児であった清永は、ボールで遊んでいました。2人はどこからか聞こえる美しい女性の歌声を耳にしました。2人がその歌声を追うと、それはN式潜航艇の中から発せられているようでした。折笠は清永のごり押しで、N式潜航艇に忍び込みました。折笠はその中で1人の少女を発見しました。彼女は折笠の姿を見ると、銃を頭に突きつけて自殺しようとしました。折笠は慌てて彼女から銃を取り上げようともみ合いになり、その時、胸にしまっていた家族の写真を落としてしまいました。折笠は彼女から銃を取り上げました。その時、警報がなり、「敵艦隊発見、急速潜航」という命令が全艦に放送されました。急速潜航した伊507は、敵・米軍駆逐艦にソナー音で位置を捕まれました。絹見は「いい機会だ。ローレライを使おう。船の装備を把握できんようでは話にならん」と高須の制止を無視して、ローレライを使う命令を下しました。高須は命令に従い、前のレーダーを動かし始めました。折笠はN式潜航艇搭乗の指示を受けました。既にN式に搭乗していた折笠は、指示の従いコックピットに座りました。そして、少女の存在を伝えようとしましたが、高須の指示で制されました。N式の中で少女は管のついた黒のスーツを身に着けました。高須の指示のもと、N式潜航艇は本艦より分離され、「増幅器、出力最大。ローレライ、起動」と高須が言うと、潜航艇の中の少女は苦しみ始めました。本艦発令所では、高須の前のレーダーが光り始め、まるで実際の海中・海面の状況を見ているかのような画像が映し出されました。高須は絹見に「ローレライさえあれば海中を自在に見通し、正確な照準による水中攻撃が可能となります。N式が捉えた本艦を中心にした海中状況です。実用可能な解像度で120マイル。距離、方位、敵艦数も正確に分かります」と解説しました。絹見は信じられず、各部署に確かめると、ローレライが示す通りでした。絹見はローレライを信じ、縦一列で接近してくる米駆逐艦3隻の、先頭の駆逐艦を主砲で砲撃し、後の2隻を玉突き状態にし、3隻を航行不能にする作戦を立てました。敵艦から魚雷6発が発射されましたが、ローレライの正確なレーダーのお陰で全弾かわすことができました。絹見は田口掌砲長に「一発で決めろ」と言うと、敵艦の正面に急速浮上しました。田口掌砲長は命令通り先頭の敵艦に向けて、主砲を撃ちました。しかし、先頭の敵艦はそのミサイルを間一髪でかわし、ミサイルはその後ろの艦に命中しました。玉突きになったのは、後の1隻だけでした。N式の中にいた少女は敵艦にミサイルが命中したとき、急に苦しみだし、気絶してしまいました。それと同時に起動していた本艦のレーダーも停止してしまいました。絹見は限界深度まで急速潜航して、今回は逃げることにしました。敵艦は爆雷を投下しましたが、艦隊司令部から“魔女”を「拿捕せよ」との命令が下され、攻撃を中止しました。絹見たちは、何とか逃げることができました。
ローレライのネタバレあらすじ:新兵器「ローレライ」の仕組みと浅倉大佐からの1通の手紙
絹見は高須にローレライの仕組みを尋ねました。高須は「ローレライの中枢は、人間です」と冷たく答えました。絹見は驚きました。N式が本艦に戻ると、N式から気絶していた少女が発見されました。その少女の手首には注射の跡が何本もありました。手の甲には認識番号のような刻印がされていました。絹見は、ナチスが本気で人種改良をしていたことを知り、驚いていました。軍医長・時岡纏軍医大尉の推測では、ローレライは人の潜在能力を開花させるシステムで、彼女は水を媒介にして他者の意識を得る能力があり、その能力を増幅するシステムだろうということでした。作戦会議が急遽、開かれ、絹見は「新兵器の中枢があんな柔なものだったとは…」と呟きました。絹見はこの事に箝口令を出しました。折笠は「米軍に一矢報いたい。特攻を認めてください」と絹見に上申しますが、絹見は、折笠が勝手にN式に搭乗した罰として、少女の面倒をみることを命じました。納得いかない折笠に絹診は「与えられた仕事をしっかりやれ。それが先に逝った者に報いる道だ」と諭しました。それでもなお、艦長に詰め寄ろうとする折笠を木崎は止め、「艦長がストップウオッチを持たないのは、亡くなった奥さんとの記念品の腕時計を大切にしているからだ。艦長はそういうお人だ。信じろ」と折笠を諭しました。8月8日、午前10時、大湊は、開戦以来、浅倉と親密な交流のあった元駐米大使・西宮貞元の東京郊外の家に面会に行っていました。西宮は若い頃に浅倉を米国留学させた人物でした。西宮は大湊に「若い人を育てなければ、いかなる国にも将来はありません。若い頃の浅倉は国を愛し、希望に溢れていて、純粋で一途な男でした」と言いました。その時、西宮宛に一通の手紙が届きました。送り主は浅倉でした。その手紙には「我、国家トシテノ、切腹ヲ断行ス」と書かれていました。
ローレライのネタバレあらすじ:「ローレライ」少女・パウラの能力と『罪と罰』
その日の夜、伊507で密かに電信を発している数名の男たちがいました。その頃、折笠は命令通り仕方なく、少女に食事を持って世話にいきますが、少女は全く食べてくれませんでした。折笠は少女に食べるように説得しましたが、少女は寝たふりをして聞き流していました。少女は彼が出ていくと起きあがり、ふと下を見ると、一枚の家族写真を見つけました。それは折笠が落とした写真でした。折笠は、何も食べ物を受け付けない少女に何か食べさせようと、噂でかつて銀座のパーラーで働いていたと聞いた田口掌砲長に、アイスクリンを作ってもらうように頼みました。その頃、少女は眠りの中で子供の頃の悪夢を見て、悲鳴をあげて飛び起きました。折笠はその悲鳴に驚き、田口掌砲長が作ったアイスクリンを少女のもとに置きました。少女は折笠に拾った家族写真を渡し、「家族、死んだの」と初めて言葉を発しました。それも日本語であったので、折笠は驚きました。明朝、木崎は絹見に昨晩、当直の者が電信を発する音を聞いたことを伝え、「寄せ集めの乗員と奇妙な新兵器…今回の作戦は妙なことが多すぎます」と危惧を吐露しました。絹見も危惧していました。彼は浅倉大佐の言葉を思い出し、ある部屋で『罪と罰』を改めて読み返していました。そこに時岡軍医が入ってきました。絹見は時岡に「主人公は自分を殺したのは、老婆ではなく、自分自身だと叫ぶ…なぜだろう」と尋ねると、時岡は「それは神様殺しでしょ。…キリスト教の訓戒を破ることで、自分の中の神様を殺したということでしょう。…それは同時に自分を殺すことでもある」と答えました。絹見は「自殺か…自分と神を殺す」と呟きました。8月9日、午前2時45分、テニアン島より1機のB29「ボックスカー」が飛び立ちました。午前5時2分、火山列島の東方沖を伊507は航海していました。折笠がN式の少女に食事を運んでいくと、少女はアイスクリンを食べていました。折笠は嬉しくなり、彼女を見ましたが、彼女は梯子に登って天井の窓から外を覗いていました。折笠はその少女はずっとこのN式内に閉じこめられた状態だったことに気付き、彼女に船員の服を着させて、密かにN式から降りて、艦尾の甲板に少女を連れ出しました。2人は眩しいほどの太陽の下、青い空、青い海、吹く風に心を解放しました。折笠と少女は甲板に座り、自己紹介をし合いました。少女の名前は「パウラ・アツコ・エブナー」といい、祖母が日本人の日系ドイツ人女性でした。折笠は彼女に自分を「ユキト」と呼ばせ、「もしこの船が日本に帰れたら、俺の生まれた街においでよ」と言いました。少女パウラは、あの歌を美しい声で歌い始めました。折笠は、故郷・長崎の風景を思い出し、その光景を少女に語りました。絹見艦長は、艦内マイクで全搭乗員に、一時停船し、破損個所の修理と暫しの休息を命じ、木崎と共に発令所から甲板に出てきて、2人の姿を見つめていました。「狂気の世界を生き抜いてなお、優しく透き通った彼女の歌声。それは暗い海に差し込む光にも似て、彼らにひと時の安らぎを与え」ました。船内では各々が思い思いの休息をとっていました。通信長・鍋坂定男少尉は時岡軍医の持っていたライカのカメラに見入っていました。彼は写真家になるのが夢でした。時岡はそんな鍋坂にカメラを触らせ、彼を喜ばせました。甲板に出ていた木崎は絹見に、手首に巻いていた赤い紐を見せて、5歳の娘から教えてもらった綾取りを披露し、「子供たちには夢を語り合えるような、未来を残してやりたい」と言いました。暫くすると、急に天候が悪化し始め、暗雲が立ちこめ、雨が降ってきました。甲板に出ていたパウラはその雨にうたれ、悲鳴をあげ、急に苦しみ、のたうち、気絶してしまいました。それは8月9日、11時2分、米軍が長崎に2発目の原爆を投下したからでした。伊507は潜航して、目標地点に向かって進んでいました。すぐに病室に運ばれたパウラは、船員たちの注目を浴びました。気絶したパウラを診断した時岡は、「戦闘による何か…人の死がこの娘には耐え難いもので、いたく神経を麻痺させるのではないか」と絹見に告げました。絹見は「それはどこかの海域で大規模な戦闘が起きたということか」と思いました。そこにパウラを勝手に外に出した罰としてトイレ掃除をさせられていた折笠が、彼女を心配して見に来ました。折笠は艦長に「このか弱い少女を使うのですか」と上申すると、絹見は腕時計を見ながら、「軍人でありながら妻をめとった。国を守ることを選んだ俺が、妻を幸せにすることなど所詮無理だった。そんな自分への戒めとしている」と折笠に言い残し、発令所に戻っていきました。
ローレライのネタバレあらすじ:反乱勃発! 浅倉大佐の最後の命令
8月10日、13時、マリアナ諸島近海、伊507を拿捕せよとの命令を受けた米駆逐艦「フライシャー」船内では、艦長が副艦長に「あの“魔女”が持つ秘密兵器には、世界の勢力図を変える威力があるらしい。…ワシントンの連中はどうしても手に入れたいらしい」と話し、全員を戦闘配置につかせました。そして、伊507の位置を掴むため、ソナー音を発し、位置を捉えました。その頃、伊507船内では一部の搭乗員が銃を手に、反乱を起こしました。田口掌砲長は、回復したパウラを囲む船員たちのいる食堂を占拠しました。各部署も反乱分子によって占拠されました。発令所では敵のソナー音を探知し、絹見が戦闘態勢を指示し、警報をならそうとしたところを、高須が阻止し、数名の銃を持った乗員がなだれ込んできました。高須は絹見に「伊507はこれより米駆逐艦と会合、以後、その指揮下の入れ。浅倉大佐からの最後の命令です」と言って、胸ポケットから命令書を渡しました。そして、高須は、絹見に「本艦は正式な協定に基づいて合衆国に供与される。昨日、長崎に2発目の原爆が落とされました。…この艦とローレライを米国に供与し、その見返りとして、3発目の原爆を投下する。目標は東京。それが我々と米国との間に結ばれた協定です。この先、原爆を保有する国は合衆国一国にとどまりません。その時、…勝敗を決めるのはローレライです。これを搭載した潜水艦は難なく敵国の懐に入り込み、迎撃不可能な至近距離から原爆を打ち込むことができる」と説明し、絹見に協力要請をしてきました。絹見はそれに反対し、艦内マイクで各部署の状況確認をしますが、田口掌砲長が出て「無駄です。艦長。この艦は現在、高須大尉の指揮下にあります。…我々には何事にも代え難い絆があるのです。俺たちは南方にいました。無謀な作戦。…無意味と分かっている死ほど、耐えられないものはねえ!…飢えに苦しむ俺たちに残された選択肢は…」と言ってすすり泣きをし出しました。高須はそれに続けるように「極限状態に陥った我々を司令部の反対を押し切って救ってくれたのが浅倉大佐です。大佐は切々と説かれた“死ぬな。今は生きろ”と」と語りました。それを聞いた絹見は浅倉の命令書を破り捨てました。高須は絹見に銃を突きつけ、駆逐艦に返答音3発を打つよう指示し、本艦を浮上させました。田口掌砲長がパウラを発令所に連行してきました。トイレ掃除をしていた折笠はトイレの水が変動しているのを見て、本艦が浮上していることに不審をいだき、発令所に向かいました。同時刻、東京帝国海軍・軍令所では、海軍幹部たちが「夕べの御前会議で一度はご聖断が下されたのに、陸軍は納得できんのか!」「あの西宮大使が和平に動くという噂もあるが…」「ここに終戦を逃すと、ソ連の本土上陸で日本は分断されてしまいます」と各々が意見を交わしながら、会議室へ入ると、行方不明だった浅倉大佐が上座の席に座っていました。驚く幹部たちに、浅倉は座るように命じました。浅倉の部下・土谷少尉が各幹部のテーブルの皿に短刀を置き始めました。浅倉は「この国の指導者が責任を取らないでどうしますか。無条件降伏の協議ですか。日本が降伏をした後、皆さんはどうするおつもりですか。ただのうのうと生き残るのか!」と一喝しました。そこに、大湊が入ってきました。浅倉は、海軍幹部たちが誰一人として切腹をしないのを見て失望し、既に浅倉の部下が占拠した大和田通信隊から、伊507に通信回線を開き、絹見に「この国は道を誤ってしまった。今こそ過ちを正さねばならない」と伝えました。絹見は「だからと言って、東京を焼き払うことに何の意味があるのですか!」と質すと、浅倉は「東京こそが日本の中枢だ。それを根本から絶ち、日本を新生させる。…優れた人間は皆、この戦争で死んだ。今生き残っている者など、ただの臆病者にすぎない。臆病者どもが作る戦後に何が期待できる」と答えました。絹見は「臆病者か…我々もその1人かもしれない。…それでも生き残るのは勇気がいるものだ。…どんなに苦しくても、生きようとした者であれば、いつか必ず日本を立て直すことができる。総員、聴け! 我々は原爆の驚異から祖国を救う為に、ここまで来たんじゃないのか。…最後まで諦めるな!」と反乱を鎮める為に語りました。折笠は隠れて発令所の様子を窺っていました。そんな折笠を目にした木崎は、手振りでバルブを回し開け、本艦を沈めるように指示しました。折笠はその指示を理解し、任務を遂行すべく、走り去りました。伊507は海上に浮上し、米駆逐艦から「こちら“フライシャー”。貴艦の投降を歓迎する」との通信が入りました。高須はこれを聞くと、パウラを連れて行こうとしました。しかし、パウラは銃を高須の背に突きつけ、心配する絹見たちに「大丈夫。この人たちは私を撃てない」と言い、拒否しました。その時、折笠はバルブ室に行き、「パウラは絶対、渡さない!」と言い、制止する者たちともみ合いながら、バルブを回し、本艦を沈めていきました。伊507は左右にぶれながら、沈んでいきました。発令所内ではその揺れで、パウラを巡って、もみ合いとなりました。高須は、銃を手にしようとした絹見に銃を突きつけ、引き金を引こうとしたとき、田口掌砲長が高須を背後から撃ち抜き、「もう辞めましょう。…子供相手に大人げない」と呟きました。高須はその場に倒れました。田口掌砲長は艦内マイクで同志たちに武装解除を命じていると、背後の高須から銃で撃たれ、田口もまた高須を撃ち返し、2人とも倒れてしまいました。その様子を見て、絹見は艦内マイクで「総員、聞け!指揮は回復した。持ち場に戻れ。浮上して最大船速で現海域を離脱、北へ向かう。我々は日本に帰投する」と命じました。米駆逐艦の艦長は、海上の伊507が沈んでいく様子と艦内から聞こえる銃声で、「ジャップの気が変わったようだ」と呟きました。そして、伊507を再び捕捉しようとしましたが、濃い霧とひどい雑音で見失ってしまいました。
ローレライのネタバレあらすじ:反乱終決。浅倉大佐、自決す
東京の軍令所にいた浅倉に、絹見は「米軍との取引は失敗しました。あなたの思うようにはならない。…原爆は断じて東京には落とさせない」と告げました。それを聞いた浅倉は、楢崎総長の横に立ち、黙座している幹部たちを叱咤するように「百年後の日本を想像してみろ。大人たちは誰も責任は取らない。子供たちは自国に誇りも見い出せず、希望も持てない。…そんな国に何の価値があるというのか!」と語りました。それに対して絹見は「私は信じる。…この娘を売り渡し、東京に住む何十万の命を巻き添えにして、何が日本の新生か!そんな考えには同調できない!」と断固反対しました。すると、浅倉は「作戦に想定外は付き物だ。…日本が降伏しない限り、いずれにせよ、第3の原爆が東京に落とされる」と言うと、部下の土谷に後で会おうと言い、土谷にその場から立ち去らせました。浅倉は、楢崎総長に銃を突きつけ、絹見に「貴様は己が忌み嫌っていた人間兵器を使用する。…あらがえ、臆病者。これが新生日本の幕開けだ」と言うと、自分の首に銃を当て、自決しました。大湊はその光景を見て、和平工作に向かっている西宮大使が狙われていることに気付きました。車で西宮大使を追いかけますが、時既に遅く、西宮大使は浅倉の部下・土谷によって暗殺されていました。土谷も浅倉の後を追うように自決しました。
ローレライのネタバレあらすじ:高須の最期。絹見艦長の決断
絹見は虫の息の高須から、何とか東京へ向かうB29の発進時刻等の情報を訊きだそうとしますが、高須は口を割りませんでした。するとパウラが高須の撃たれたところから出ている血に手を当て、「午前6時30分、テニアン北飛行場」と読みとりました。高須はパウラの手を握り、「私の血を…魔女め…」と言って息絶えました。あと、原爆搭載機の発進まであと15時間しかありませんでした。18時20分、マリアナ諸島テニアン島、米空軍・第509混成群、テニアン基地に「日本ノ無条件降伏、拒絶ニ伴イ、明朝実施サレル第3回爆撃ノ目標都市ガ決定サレタ、最優先目標ハ東京」との電信が入り、北飛行場のB29に第3の原爆が搭載されました。17時30分、艦長室で、絹見艦長は妻の形見の時計を見て「自分を育んでくれたものは、命に代えても守りたい」と木崎に言うと、彼も賛同してくれました。絹見艦長は発令所に行くと、全艦放送で「これより本艦は米機動艦隊の防衛網を突破して、テニアン島を進撃。同島の飛行場を砲撃によって破壊し、原爆搭載機の離陸を阻止する。但し、これは…本艦有志の者が独自で起こす行動だ。この戦争は間もなく終わる。…ただ言えるのは、東京に原爆が落ちるのを黙って見過ごすことはできない。だが、貴様らに強制する気はない。降りたい者は降りろ。それも祖国の為の勇気ある選択肢だ。各々が考え、各々で決断しろ」と命じました。各部署から続々と「お供いたします」という声が聞こえてきました。折笠はパウラに「何の為に戦ってきたの」と訊きました。パウラは「私は歌が好き。生きていれば歌えるから。ただそれだけ」と答えました。折笠は絹見艦長に「パウラを連れて行くのは?」と上申しましたが、絹見は「ローレライが必要だ」と答えました。それを聞いていたパウラは、弱きになっている折笠に「日本に連れて行くって…。諦めるな」と励ましました。鍋坂は、本艦から降りる決意をし、最後に時岡軍医にお礼を言いに行きました。すると時岡はライカのカメラを鍋坂に渡し「こいつの価値の分かる奴に持っていてほしい。お前の未来に役立てろ」と言いました。鍋坂は涙を流し、喜び、礼を言って去っていきました。鍋坂少尉以下、25名の退艦者は、本艦に残った者たちに敬礼をし、去っていきました。そして、彼らは旧日本領のロタ島に漂着、無事、祖国への帰還を果たしました。
ローレライのネタバレあらすじ:N式潜航艇、涙の分離
8月11日、午前4時、東京への原爆搭載機、発進まであと、2時間30分のとき、東京の大湊は、浅倉に占拠されていた大和田通信所が復旧したことを知り、急遽、そこへ向かいました。大和田通信所では米艦隊の間の通信を傍受し、その平文の中に「ローレライ」という言葉が頻繁に出てくることを大湊に伝えました。大湊は、伊507が原爆投下の阻止の為、何らかの動きをしていることに気がつきました。午前4時45分、マリアナ諸島、テニアン島海域には、米太平洋艦隊が集結していました。絹見は時間がない為、危険だが浅瀬を行く最短ルートを選びました。伊507を海底ギリギリの深さで潜航させていました。米海軍は圧倒的な物量作戦で、伊507を挟み撃ちにする作戦でした。多数の爆雷が海中に投下されてきました。パウラと折笠はN式に搭乗し、切り離しを待っていました。しかし、爆雷の衝撃で揺れ動く船体で、清永は愛用のボールをN式の注水室に落としてしまい、それを拾おうとして手が抜けなくなり、動けない状態になりました。折笠は彼を助けようとしますが、絹見艦長は「戻れ!折笠、船を沈める気か!」と一喝しました。清永も涙を流しながら折笠に戻るように言いました。N式分離の為の注水室に注水が始まり、N式は本艦より分離しました。落ち込む折笠に絹見は「自分の仕事をしっかりやれ。それが死んでいった者への報いる道だ」と励ましました。原爆搭載機発進まであと25分、ローレライが起動しました。多数の米艦隊から発射・投下される魚雷、爆雷を、ローレライを見て、紙一重のところでかわしつつ、伊507は潜航していきました。そして、パウラへのダメージを軽減するために、本艦魚雷は全て信管をはずし、ローレライの正確な照準で、米艦隊のスクリューを狙って魚雷を撃ち、破壊し、コントロール不能の状態にして、米艦同士が激突していくようにしました。狙い通り、米艦同士が次々と衝突し合い、航行不能状態にさせることができました。
ローレライのネタバレあらすじ:木崎の最期。「生きろ。パウラ」
原爆搭載機発進まであと15分のところで、伊507本艦の全ての魚雷は撃ち尽くしました。その時、米艦の放って外れた魚雷の衝撃で、伊507は海底土中に先頭から突っ込んでしまい、動くことができなくなりました。浮力も出ず、エンジン電池室で主電源を入れないと、米潜水艦に破壊されてしまうという窮地に追い込まれました。電池室に入るのは高温とガスで死に行くようなものですが、誰かがやらないといけませんでした。木崎は絹見を見つめ、自分が行くことを決意し、電池室に向かいました。木崎はうめき声を上げながら、娘から貰った赤い綾取りの紐を口にくわえて、必死で作業を終えました。伊507全艦に電気が通りました。ローレライも再起動しました。絹見は電池室の木崎を呼びましたが、木崎からの返事はありませんでした。彼は既に息を引き取っていました。絹見は悲しみをこらえ、伊507を窮地から脱しました。そして、「これが最後だ。N式の魚雷を使う」と折笠に指示しました。折笠はN式の魚雷には信管が抜いていないので、パウラに与えるダメージを心配しました。しかし、パウラは折笠に「一緒なら、耐えられる」と言いました。絹見は、「折笠、パウラ、頼むぞ」と呟くと、米潜水艦に向けてのN式魚雷発射の命令を下しました。魚雷は見事、米潜水艦に命中、破壊しました。米艦隊は伊507を撃沈したと勘違いしていました。パウラは「大丈夫、大丈夫、…」と繰り返し呟きながら、意識が無くなっていきそうでした。その姿を見て、折笠は絹見艦長にN式の本艦への結合を求めました。絹見艦長は、発令所にいる乗員全員の目を見つめ確認すると、「N式は結合しない。N式船乗員は自力で戦場を離脱し、自らの生存の道を探すこと」と折笠に命じました。折笠は「一緒に連れて行ってください。ひどいじゃないですか!置いてけぼりですか!」と艦長に訴えましたが、絹見は「これからは俺たちのけじめだ。大人の起こした戦争に、お前たち子供の力を最後まで頼りにした。すまなかった。…自分の目で本当に大切なものを見極めてほしい。そして、それを守り抜くんだ」と諭しました。パウラは疲れた表情で、折笠に「ユキト、これ」と言って、艦長から預かった腕時計を渡しました。絹見艦長は「N式分離、切断!」と命じると、ワイヤーが切れ、N式は本艦と離ればなれになりました。パウラのあの美しい歌声が聞こえてきました。本艦乗員たちからすすり泣きがでました。絹見は「生きろ。パウラ」と願いをこめて呟きました。
ローレライのネタバレあらすじ:原爆搭載機撃墜、任務完了
原爆搭載機、発進まであと2分のところまできました。絹見は「いよいよだ。貴様の腕に全てがかかっている」と負傷している田口掌砲長に言いました。伊507は予定海域に到達した所で浮上を開始し、敵艦の下を通り抜け、急浮上しました。驚く米艦隊の船員たちの目の前で、飛び立ったB29に狙いをさだめ、主砲が動きました。そして、絹見の「撃ち方始め!」の号令と共に田口掌砲長が主砲を撃ちました。砲弾は見事、B29の翼部分に命中し、爆破、墜落、B29の破片と共に搭載された3発目の原爆は爆発することなく、海中深くに沈んでいきました。絹見はその光景を目に焼き付けると、総員に「本艦はこれより帰還の途につく」と命令し、潜航していきました。米艦隊は総力で、伊507に向け砲撃を加えましたが、伊507は海中へと姿を消し去りました。伊507から分離されたN式潜航艇は、パウラのあの美しい歌声を響かせながら、戦場を離脱していきました。
ローレライの結末:エピローグ:彼らはかけがえのないものを守りきった
「軍は全力で捜索したが、私が知る限り、今に至るまで、発見されることはなかった。何1つも…これで全てだ」と老人は語り終えました。青年作家は、ヴォイスレコーダーを止めました。そして、持っていた写真を老人に見せました。それらは伊507の乗員の写真でした。その中の1枚に、1人の笑顔の少女を囲んだ楽しそうな船員たちの写真がありました。作家はその少女が「魔女」と言うと、老人は「この子があの“魔女”?」と信じられないと笑いました。「こんな愉快な話があるか。あいつらはこの少女を守る為に、太平洋艦隊を敵に回したのか?」と老人は言いました。作家は「それだけではありません。我々の未来を守ったのです」と老人に告げました。老人は作家の時計を見て、「いい時計だ」と褒めました。その時計は伊507艦長・絹見の時計でした。作家は老人に礼を言い、送りましょうかと尋ねましたが、老人は「歩いていくよ」と言って、海岸を歩いて行きました。作家は「彼らのその後を知る者は誰一人いない。だが、確かなことは、彼らはかけがえのないものを守りきったということだ」と思いました。老人はパウラが歌っていた歌を鼻歌で歌っていました。そんな老人の後ろ姿から、当時のパウラの美しく優しい歌声が聞こえてきました。
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