アリスとテレスのまぼろし工場の紹介:2023年日本映画。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』シリーズの脚本などを手掛けてきた岡田麿里の自身監督作品2作目として製作された長編アニメーション映画です。本作は『呪術廻戦』『チェンソーマン』などの人気アニメを手がけてきたスタジオ『MAPPA』の初のオリジナル作品となり、製鉄所の爆発事故により全ての出口を失ったあげく時間が止まった町で主人公の少年少女たちの恋する衝動が閉じられた世界を動かしていく様を描いていきます。
監督:岡田麿里 主題歌:中島みゆき 声優:榎木淳弥(菊入正宗)、上田麗奈(佐上睦実)、久野美咲(五実)、八代拓(笹倉大輔)、畠中祐(新田篤史)、小林大紀(仙波康成)、齋藤彩夏(園部裕子)、河瀬茉希(原陽菜)、藤井ゆきよ(安見玲奈)、佐藤せつじ(佐上衛)、瀬戸康史(菊入昭宗)、林遣都(菊入時宗)、行成とあ(菊入美里)、多田野曜平(菊入宗司)ほか
映画「アリスとテレスのまぼろし工場」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アリスとテレスのまぼろし工場」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「アリスとテレスのまぼろし工場」解説
この解説記事には映画「アリスとテレスのまぼろし工場」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アリスとテレスのまぼろし工場のネタバレあらすじ:起
製鉄所を中心とする企業城下町・見伏(みふせ)。1991年の冬のある夜、その製鉄所で爆発事故が発生しました。空にはヒビが入り、まるで龍のような煙がヒビを塞ぐかのように舞いました。自宅で勉強していた中学3年生の菊入正宗は同級生の笹倉大輔、新田篤史、仙波康成と共にその様子を目撃していました。
製鉄所の爆発事故以来、見伏は時が止まり、住民は外部に出ることもできず、終わりのない冬を繰り返す世界となっていました。夜空には時々亀裂が入り、製鉄所からの煙が亀裂を塞ぐことが日常的に起こっていました。
住民は元の世界に戻れた時に齟齬がないようにという理由で定期的に自身についての調査書「自分確認書」の記入が求められ、元の世界に戻れなくなるのを避けるために「変化しない」ことを求められていました。このルールを定めたのは製鉄所の責任者で、見伏神社の社家である佐上衛でした。衛は住民たちが見伏に閉じ込められているのは神が住むという見伏山を製鉄所のために削ってきたことで天罰が下り、“神機”と化した製鉄所によって閉じ込められたのだと主張していました。
正宗は正直この町を“刑務所”のようだと感じていました。正宗は退屈さを紛らわすかのように、友人に首を絞められる気絶ごっこに興じていました。正宗は同級生で衛の娘・佐上睦実(むつみ)を嫌っており、自分確認書には常に睦美が嫌いだと記入していました。そんな退屈な日々のなかでも、正宗の叔父で製鉄所従業員の時宗は正宗の描いた絵を上手だと褒めてくれました。
そんなある日、正宗は睦実から「退屈が根こそぎ吹っ飛んでっいっちゃうようなのを見せてあげる」と言われ、製鉄所の閉鎖された第五高炉に連れていかれました。そこには言葉もまともに話せない野生児のような少女がいました。睦美はこの少女は外に出してはいけない子だと語り、正宗に少女の排泄物の処理や入浴の手伝いをさせました。そして睦美は週3回この子の面倒を見てくれるよう正宗に頼み、自分には“6つの罪”があるから“六罪(むつみ)”と呼ぶよう告げました。
アリスとテレスのまぼろし工場のネタバレあらすじ:承
見伏では未成年者も自動車運転免許を取得することが許可されていました。正宗は車を運転し、母・美里を自治会の防災講演会に送っていきました。正宗が帰宅するとそこには時宗がおり、時宗は正宗に「アリストテレスの哲学で、可能的なものが発展する以前の段階である“デュナミス”が可能性を実現させた段階を“エネルゲイア”と言う」と語ると、「怒りを抑えると元に戻れるかもしれない」と語りました。その夜、製鉄所従業員である正宗の父・昭宗は正宗に「ここから先はもう逃げられない」と告げると夜勤に出ました。しかし、昭宗は出かけたきり二度と帰ってはきませんでした。
正宗は睦美に言われた通りに第五高炉で少女の面倒を見ていました。正宗は少女に「五実(いつみ)」と名づけました。睦美が学校を休んだ日、正宗がいつも通りに五実の世話をしていると、そこに衛が現れ、五実を見て大きくなったと驚きました。五実が着ていたコートは睦実の手編みによるものでした。
この日、睦美は学校を休み、正宗は睦実にプリントを届けることになりました。正宗は睦美の家の前で同級生の園部裕子に会い、彼女から睦美は衛の実子ではなく母の連れ子であり、衛は跡継ぎを欲しがっていたのですが時間が止まったことでその必要はなくなり、睦美は衛に捨てられたというのです。正宗は園部から睦美と付き合っているのかと問われ、否定しました。
ある時、正宗、笹倉、新田、仙波の男子4人は、睦実、園部、原陽菜、安見玲奈の女子4人と列車の通らない廃トンネル「かんざりトンネル」で肝試しをすることにしました。まず最初に正宗と園部がペアになってトンネルに入り、園部はスプレー缶で到達点をつけると相合傘を描き、正宗と自分の名を記しました。園部は正宗のことが好きだと告白し、何も答えない正宗に対して睦実が好きなのかと問い詰めました。ところがその時、園部の体にヒビが入り、やがて製鉄所から伸びてきた狼の形の煙が園部を飲み込んでいき、園部はそのまま姿を消してしまいました。
市民ホールで集会が開かれ、園部の失踪が取り上げられました。衛は園部を飲み込んだ煙を「神機狼(しんきろう)」と呼び、園部は心が新しい事をやろうとしたので神機狼に消されたこと、彼女のようにならないためにこの世界から出ようと考えてはいけないと演説しました。集会後、家に帰らず商店街にいた正宗を時宗が迎えに来ました。正宗はこの街に閉じ込められている鬱憤、そして時宗と昭宗が五実の存在を知ってて隠していたことへの不満をぶちまけました。時宗は五実がここにいてはいけない存在だと語りました。
正宗は一人で五実のもとを訪れました。五実は正宗に抱きつき、何度も鼻を正宗の顔に押し付けてきました。そこに睦美が現れ、何をしているのかと激怒しましたが、正宗と睦美は五実を外へ連れ出すことにしました。外には線路と列車があり、正宗はなぜここに列車が置かれてあるのか疑問を感じました。
その時、製鉄所の上空にヒビ割れが発生し、その向こうにこの世界とは別の世界が垣間見えました。そこに現れた衛は“神の女”を戻さないと世界が崩壊すると告げましたが、正宗はもっと別の世界が見たいと叫びました。現れた神機狼がヒビを修復し、空は元に戻りました。
ヒビの向こうの世界では製鉄所は廃墟と化していました。時宗はヒビの向こうの世界こそが現実の世界だと語りました。その後、住民への説明会が開かれ、衛はこの世界は神機によって生み出された非現実の世界であり、たとえ偽の世界でも心のヒビが入らなければ永遠に命は続いていくこと、そのためには五実を神機に戻さなければならないと主張しました。しかし、時宗はこの世界の終わりは遠くないと告げ、世界の手がかりがなかったから仕方なく衛の言うことを聞いていただけだと話しました。住民の多くは時宗の発言を支持し、学校では自分確認表が生徒たちに返却されました。
アリスとテレスのまぼろし工場のネタバレあらすじ:転
神機狼は頻繁に出現するようになり、街の住民そして仙波までもが消されていきました。衛のもとにいた睦美と五実は抜け出して正宗の家に身を寄せ、正宗は五実をヒビの向こうの現実世界に戻してあげようと睦実に提案しました。
その夜、正宗の家にもヒビ割れが発生し、正宗はヒビの向こうに大人になった現実世界の自分と睦美が盆祭りについて話をしているのを見ました。正宗はヒビの向こうに行こうとして睦美に止められ、睦美は五実が「きくいりさき」という名札を持っていたこと、「きくいりさき」とは現実世界の正宗と睦美の娘で行方不明になっていること、そして五実こそが「きくいりさき」本人であることを告げました。
学校では原が新田に告白し、新田も受け入れていました。放課後、正宗はゲームセンターで睦美に隙だと告白しました。睦美は断って外に逃げ出しましたが、追いついた正宗は改めて想いを伝え、正宗と睦美はキスを交わしました。しかし、この様子を目撃した五実は仲間外れだと激怒し、街中のヒビ割れが拡大して現実世界が鮮明に映るようになり、神機狼を発していた製鉄所の高炉も停止しました。
正宗は行方不明になったままの昭宗の日記を見つけました。そこには五実がこの世界にやってきた経緯が綴られていました。製鉄所の敷地にある列車は現実世界と繋がっていること、現実世界とこの世界では物理法則が違うこと、五実が心を動かすと世界が崩れるため彼女を現実世界に返そうと衛に提案するも一蹴されたこと、現実世界の昭宗はおそらく工場の爆破事故で死んでいるであろうこと、そしてこんな異常な世界でも人は変われるということ・・・昭宗の思いを受け止めた正宗は改めて五実を現実世界に戻す決意を固めました。
睦美や同級生も正宗の提案に賛成し、正宗は列車に五実を乗せて現実世界と繋がっているであろうトンネルの向こうまで走らせる計画を立てました。その一方で時宗はこの世界を延命させるべく製鉄所の高炉を再稼働させて神機狼を蘇らせようと画策、正宗の計画を知った衛は五実を連れ去って第五高炉に連れて行き、ウェディングドレスを着せて“神の女”にしようとしました。
アリスとテレスのまぼろし工場の結末
ヒビの向こうの現実世界では盆祭りが催されていました。第五高炉に着いた正宗と睦美は五実を連れ出して列車に乗せ、かつて製鉄所の機関士だった正宗の祖父・宗司が列車を運転して出発しましたが途中で脱線してしまいました。正宗・睦実・五実は笹倉が運転する車で先を進みましたが、衛も車で追いかけてきました。その最中、正宗はどこか悲しげな表情の現実世界の自分の姿を見ました。正宗は「俺たちはこの虚構の世界で笑うことができた。けど現実の俺たちは違った。どこへだっていけるのに、どこにも行けない毎日を送ってる」と思いました。
ヒビの向こうの現実世界に列車が走っているのを見つけた正宗と睦美は、その列車に五実を乗せて現実世界に返すことにしました。正宗は車を運転して現実世界に突入し、列車を止めて五実を中に乗せました。睦実は五実に、このトンネルの先にはこの世界の自分には手に入らない色んなことが待っていると語り、だから“正宗の心”だけは自分が手に入れると告げました。五実は「大嫌い」と言いながら睦実に抱きつき、頭のベールを睦実に被せました。睦美は列車から飛び降り、正宗に助けられました。
五実を乗せた列車は現れた神機狼を間一髪でかわし、トンネルの向こうへと消えていきました。睦実は正宗がいるから自分は生きているのだと話し、この世界は終わってもいいと叫びました。正宗もこの世界の自分たちはどうなるかわからないけど睦美と一緒に生きていくことを誓いました―――。
―――現実世界の数年後、成長した五実こと菊入沙希はすっかり荒れ果てた見伏の駅に降り立ちました。沙希はタクシーで製鉄所跡に向かうと、ほとんどの建物が姿を消すなか第五高炉跡はその姿をとどめていました。沙希は工場の窓ガラスに正宗が描いた睦美と五実の絵を見つけ、「この場所で生まれた。私の初めての失恋」と呟きました。
以上、映画「アリスとテレスのまぼろし工場」のあらすじと結末でした。
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