待ち伏せの紹介:1970年日本映画。藤木弓(稲垣浩のペンネーム)と小国英雄、高岩肇、宮川一郎の4人で執筆したオリジナル脚本をもとに、三船プロダクションが製作したアクション時代劇映画。三船敏郎が主演を務め、石原裕次郎、勝新太郎、中村錦之助、浅丘ルリ子などが共演した豪華キャスト時代劇です。
監督:稲垣浩 出演:三船敏郎(用心棒)、石原裕次郎(弥太郎)、勝新太郎(玄哲)、中村錦之助(伊吹兵馬)、浅丘ルリ子(おくに)、ほか
映画「待ち伏せ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「待ち伏せ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「待ち伏せ」解説
この解説記事には映画「待ち伏せ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
待ち伏せのネタバレあらすじ:1.プロローグ:密命
時は江戸時代・天保年間、水野越前守が老中であった頃、1人の浪人・鎬刀三郎が鬱そうとした山中を歩いていました。三郎は寂れた古寺に入り、“からす”と呼ばれる武士から当座の小遣いとして小判5枚で密命を受けました。“からす”は「亀屋に行け、飛脚が書状を持ってくる。…『山』と書いてあれば…、『三』と書いてあれば三州峠でそこで何かが起こるまで待て。斬るか斬らないかは貴殿の判断に任す」と命じられました。内容の分からぬ密命を受けた三郎は思いました。「善玉か、悪玉か、運だめしの博打を打つか」と。
待ち伏せのネタバレあらすじ:2.三州峠に集まる人々
ある冬の日、亀屋に行った三郎は、飛脚から書状を受けました。その書状には「三」と書いてありました。三郎は三州峠に向かいました。その道中、一軒のあばら屋から女の叫び声を聞き、行くと、1人の男が怒りながら走り出てきました。中に入った三郎は、女が天井から縄で手首を縛られ吊されていました。三郎はその女を助けると、女は三郎に「私を連れて逃げて」と頼みました。三郎は仕方なくその女を連れ、三州峠に行きました。戦国時代、三州峠は信州伊那と諏訪を結ぶ要路でしたが、この頃は人生の裏街道を行く者の通路となっていました。そこの“みのや”という茶屋で、三郎はその女と別れようとしました。別れ際、その女は「おくに」と名乗り、三郎の名を尋ねましたが、三郎は「諸国を彷徨いているうちに忘れた」と名を開かしませんでした。おくには、その茶屋の元気で若い娘“お雪”に誘われ、茶屋で住み込みで働くことにしました。三郎は茶屋におくにを預け、一人立ち去って行きました。その頃、一人の若い渡世人“弥太郎”が、雪が積もる三州峠に向かっていました。すると三州峠から役人が盗人を追ってきました。役人と盗人は雪の中で格闘になり、大捕物となりました。弥太郎は、偶然、お雪の誘いで茶屋に入り、酒を飲み休んで行くことにしました。お雪はこの茶屋で、祖父で老主人の“徳兵衛”と二人きりで店を切り盛りしていたそうでした。弥太郎が酒を飲んでいると、一人の男が二羽の鳥を持ち、入ってきました。その不気味な男“玄哲”は、この茶屋の納屋に住む医者のなれの果てでした。玄哲は、働いている美しい女・おくにを見ると、手首のアザを見て手当してやると言いつつ、後ろから抱きついてきました。その時、突然、役人が盗人を捕らえて倒れ込んで来ました。追跡役人“伊吹兵馬”も盗人“野猿の辰”も血だらけでした。医者くずれの玄哲は頑として手当を断ったので、おくには「私たちでやりましょう」と言いました。すると、弥太郎は「関わり合うのはご免だ」と言い、旅立とうとしました。勘定を払おうとする弥太郎に、おくには「好きなだけ置いて行きなさい。後で後悔がないように」と言うと、その言い草に頭にきた弥太郎は、おくにを張り倒しました。そこに、旅だったはずの三郎が入ってきました。眼光鋭く「もう少しいてもらおうか」と言う三郎に、弥太郎は「黙っておめえの言う通りにはいかないぞ」と言い返し、暫く茶屋に残ることにしました。戻ってきた三郎に驚いたおくにたちに、三郎は倒れた役人・伊吹を見ると、手当の指図をしました。すると、さっきまで嫌がっていた玄哲が急に手当をし始めました。三郎は、酒でも飲み休もうとする弥太郎を、外に連れ出し、素手で殴り合いの喧嘩をしました。互いの力量を確かめ合った三郎と弥太郎は、大笑いしました。二人が戻ると、手当を終えた伊吹と辰は寝ていました。伊吹は脚の骨が折れていました。玄哲は自分が手当したことにせず、徳兵衛が手当し、恩賞の銭をもらえと言いました。強欲な徳兵衛は目の色を変えました。三郎と弥太郎は仲直りに酒を酌み交わしました。酒の肴に漬け物を外の漬け物小屋に取りに行ったおくにを、玄哲は手籠めにしようとするが、おくにを呼ぶ徳兵衛の声で、おくには逃げることができました。
待ち伏せのネタバレあらすじ:3.「汚い根性の奴ら」
翌朝、顔を洗いに外に出てきた三郎に、おくには嬉しそうに名を明かさぬ三郎を、用心棒の“用さん”と呼び、「なんだかもう一度会えるような気がしていた」と語りかけました。三郎は未練で戻ってきたわけではないと返し、「出たとこ勝負が俺の性分なんだ」と言いました。そこに朝飯を持って徳兵衛が玄哲の納屋に入っていきました。玄哲は密かにそこでご禁制の薬を作っていました。徳兵衛とは儲かれば山分けという約束でした。昨夜、“鬼ごろし”を飲み酔いつぶれた弥太郎は、そのまま寝てしまい、二日酔いで目が覚めました。お雪は朝立ちをしようとする弥太郎に顔を洗って、朝飯を食べるように言い、外に連れ出しました。お雪は弥太郎に惚れ、「私も連れて行って」と懇願しますが、そこに徳兵衛が現れ、二人を制しました。暫くして、伊吹が起き、隣で寝ていた辰を縄で縛りあげようとしましたが、お雪がそれを止めに入りましたが、三郎はお雪を止めに入りました。伊吹は突然入ってきた三郎の顔を見ると、怯え「貴様の面、覚えておくぞ」と言い放ちました。三郎は「三州峠で何かが起こると言った。これがその何かか…」と思いました。伊吹は辰を柱に縛りつけ、朝飯を食っていると、辰は飯を欲求しました。「死なれちゃ、困る」と言い伊吹は、縄も解かずに飯をおくにに運ばせました。辰は地べたに置かれた飯を犬食いしました。それを見ていた三郎は「『罪を憎んで人を憎まず』という諺もある」と伊吹の仕打ちに文句を言いました。伊吹が「こいつはクズだ」と三郎に反論していると、外から戻ってきた弥太郎の顔を見て、「見たことのある面だな。暫くそこにいろ」と命じました。弥太郎は悪いことはしてないと反発しましたが、伊吹は無視し、水をくれと欲求する辰に、「欲しければ白状しろ!」と責め、とうとう辰は倒れてしまいました。その様子を見ていた茶屋にいた全員が、黙り込み、場は異様な雰囲気になりました。伊吹は「手当をしたのは誰だ」と問うと、徳兵衛が玄哲の指示通り、自分だと答えましたが、伊吹は信じず、全員を疑い始めました。暫くすると、本陣から役人が二人、馬に乗って茶屋に来ました。役人たちは辰を捕らえた伊吹を褒め、伊吹を馬に乗せ、本陣に戻ろうとしましたが、この役人たちは怪しいと思った三郎と弥太郎が邪魔をし、三郎は役人の一人を峰打ちで倒しましたが、その男は舌を噛んで自害していました。腕に入れ墨を入れた死んだ男を、三郎は辰の仲間と言い、伊吹は辰をただの盗人ではないと感じ、辰を尋問し始めました。報償目当てで伊吹の手柄を守った弥太郎と三郎を、伊吹は「汚い根性の奴ら」と揶揄しました。
待ち伏せのネタバレあらすじ:4.三郎と弥太郎の旅立ち
「どうとでも言え」と言い放った三郎は、「仲間の一人は逃げた。今夜中にもう一度やってくるぜ。今度は真っ向から襲撃だ。早く逃げねえと、元も子もなくなるぜ」と言いました。伊吹は怯え,三郎と弥太郎は旅立とうとしました。弥太郎に「また戻って来て」と泣いて懇願するお雪に、弥太郎は「おめえだけが、おいらを人間らしく思ってくれた」と感謝し、喜びました。おくにも三郎の身を案じましたが、何も言えませんでした。水を欲求する辰に、弥太郎が水をやろうとすると、伊吹は水の入った茶瓶を棒で叩き壊しました。咄嗟に刀を抜いた弥太郎は、やり場のない怒りの刃を、吊していた豆袋に突き刺しました。豆がバラバラと落ちる中、伊吹は弥太郎のことを思い出しました。弥太郎は、昔、村での些細な喧嘩で大悪党にされ、伊吹の父に捕らえられ、2年の所払いの刑になった男でした。弥太郎はその2年の刑に服し、惨めな姿を見せまいともう2年放浪し、十両貯め、母に会おうとしましたが、母は既に亡くなっていました。弥太郎は、伊吹が疑うその十両をお雪に渡し、茶屋を出て行きました。その様子を見ていたおくには、三郎に酒を振る舞いました。おくには三郎についてきて幸せだと言うと、三郎は「男って奴はな。そんな事を言われると、その気になるもんだ」と答えました。恥ずかしそうにする三郎に、おくには「あんたって、いい人。…ひと目見ただけで分かる時があるわ」と言い、二人は見つめ合いました。伊吹は三郎に夜の襲撃に備え、銭で助っ人を頼みましたが、三郎は断り、茶屋を出て行こうとしました。その時、太鼓の稽古に行く十人ほどの村の男たちが入ってきて、祭りに行けないお雪と徳兵衛のために、“暴れ打ち”を披露し始めました。三郎は「事件が起こる。とすれば、ここから離れて様子を見るのが一番」と考えました。伊吹は、男たちに太鼓を止めて10人ほどの捕り方を呼ぶように命じましたが、三郎は伊吹の命令を無視し、自ら太鼓を叩き、村の男たちに太鼓を叩かせました。狂ったように伊吹は「止めろ」と叫ぶが、誰も聞きませんでした。三郎はその最中に密かに茶屋から出て行きました。それに気づいたおくには、黙って三郎を見送りました。
待ち伏せのネタバレあらすじ:5.悪党の頭・玄哲
ある日、伊吹はあの手この手で辰に仲間のことなどを白状させようとしますが、辰は何も言いませんでした。その時、おくにの夫が茶屋に来て、おくににこれまでのことを謝り、よりを戻そうとしますが、おくには夫の言うことを聞きませんでした。夫はおくにを連れ出した浪人と勝負しようと、茶屋に入りましたが、その浪人・三郎はいませんでした。伊吹は夫に頼み事をしようとしますが、夫は急いで浪人を追い、茶屋を出て行こうとしました。しかし、その時、5,6人の悪党たちが、辰をもらいに来たと言い、茶屋に入ってきました。その悪党たちの頭らしい“法華の権次”は、茶屋にいた4人を人質に取り、辰を解放しました。縄を解かれた辰は、これまでの恨みとばかり、伊吹を棒で叩きのめしました。権次は水を飲み一服する辰の腕の入れ墨を見ると、辰を斬り殺しました。納屋で寝ていた玄哲のところに、権次は行きました。権次は玄哲に、辰の腕に入っていたサイコロの入れ墨の暗号を、「4月2日、三州峠」という知らせだと説明しました。玄哲は「明日、本当に来るのか…やっぱり、俺の目に狂いはなかった。手配はついたか」と権次に言うと、権次は手配済みで、あとは玄哲の指図があれば、茶屋の人質も皆殺しにすると告げました。翌朝、玄哲は悪党たちを引き連れ、堂々と茶屋に入ってきました。悪党の本当の頭は玄哲だったのです。驚き、怯えた人質たちの中、おくにだけは毅然と「一人ずつ殺すなんて、一人前の悪党のすること。…やるんなら、皆殺しにおし!」と言い放ちました。玄哲は「夜が明けたら、ひとまとめに殺してやる」と脅しました。その夜、村の若い男衆が山寺で太鼓の稽古をしている音が響き、茶屋にもその音が聞こえていました。その山寺に三郎はいました。酒が無くなったので、三郎は茶屋に向かいました。三郎が茶屋の近くに来ると、弥太郎が待っていました。弥太郎は変な予感がして戻ってきてみると、茶屋が悪党たちに支配されていることを、三郎に伝えました。三郎は弥太郎に指示すると、「死ぬか生きるかが俺の商売」と言い、堂々と正面の入り口を叩きました。すると悪党たちが三郎を捕まえ、茶屋に入れました。三郎から密書を見せられた玄哲は、「お前だったのか、腕のたつ用心棒は」と言い、三郎は仲間だと知り、水野越前守の命令で三州峠を通る御用金を強奪し、松本藩を潰すという計画を暴露しました。それを聞いた三郎は「手助けすればいいんだろ」と言いました。解りの早い三郎に、玄哲は自分の指図通りに動くことを三郎に約束させ、この茶屋の人質を皆殺しにするように命じました。
待ち伏せのネタバレあらすじ:6.裏切り者
夜が明け、太鼓の稽古を終えた男衆は茶屋に寄らずに家路を急ぎました。外で見張っていろと指示された弥太郎はやきもきし、ある行動に出ることにしました。悪党の仲間になった三郎を見て、おくには驚きました。権次は伊吹に、陣屋に走るかと言い、脚が折れて満足に歩けない伊吹を引き倒しました。悪党たちが何もできない伊吹を笑い飛ばし、茶屋の入り口を開けたとき、おくにの夫は走って逃げ出そうとしました。しかし、夫は権次に斬られ、雪山に落ちて行きました。夫を斬り殺さなかった権次を玄哲は疑い、「斬れ」と言うと、三郎は権次を一刀両断に斬り殺し、「これからは俺が“法華”の代わりだ!裏切り者は容赦しねえぞ!」と脅しました。三郎は村の男2人を連れ、酒を渡して帰らせました。その行動を見た玄哲は三郎を外に呼び出し、大砲の仕掛けを見せました。三郎は玄哲の過去を聞きました。玄哲は元江戸城中の医者だったのですが、老中・水野越前守が御殿女中に手をつけ、その罪をかぶせられ、今に至ったのでした。玄哲は自らの過去を語り終えると、突然、三郎に刀を抜きました。咄嗟に三郎も刀を抜き、2人は対峙しました。玄哲は「いい腕だ」と三郎の腕を褒め、ずっと組まないかと誘いますが、三郎は断りました。茶屋に戻ると、“からす”の使いの武士が密書を持って来ました。密書を読んだ玄哲は、使いに泊まっていくよう誘いましたが、使いは今夜中に帰ると言い、店を出ようとし、三郎とすれ違い様に密かに密書を手渡しました。使いは馬で帰ろうとすると、悪党たちに斬り殺されました。三郎は外に出て密書を見ると、そこには「玄哲を斬れ」と書かれていました。三郎は、これは老中・水野の弱みを知る玄哲を抹殺するための罠と察しました。
待ち伏せのネタバレあらすじ:7.罠
翌朝、計画実行の日、三郎は人質4人を裏口から出すと、皆殺しをする振りをして、人質たちを納屋に入れ、匿いました。しかし、その納屋には玄哲は火薬を仕込んでいました。爆発すれば、その音で御用金の行列は警戒しますが、玄哲は三郎を「裏切り者」と呟き、殺そうとしました。殺気立つ玄哲に三郎は、裏切り者は“からす”の方だと言い、これは罠だと、昨夜密かに渡された密書を玄哲に見せました。「嘘だ!」と言う玄哲に、三郎は「俺はお前を斬りたくない。斬りたいのは“からす”というあの男だ」と言い、御用金強奪計画を実行しようとする玄哲を止めようとしました。しかし、玄哲たち一味は、御用金の行列を見て、強奪計画の配置につきました。その頃、納屋で火薬玉を見つけた伊吹は、これを爆発させて、御用金の行列に知らせようとしました。伊吹は火薬玉を持ち、茶屋に仕掛けて、茶屋を爆破しました。その音を聞いた御用金の行列は防御の態勢に入りました。そこへ玄哲の指示のもと、悪党たちは行列を急襲しました。しかし、袋には金ではなく、砂が入っていました。この行列は“からす”の仕組んだ囮の行列だったのです。三郎の言う通り罠にかかったことを悟った玄哲は、弥太郎が呼んできた陣屋の捕り手たちと格闘し、深手を負ってしまいました。野望を砕かれた玄哲は、三郎に「地獄で待っているぞ」と叫び、自ら身を崖下へ投じました。爆発でボロボロになった茶屋を見て、お雪は祖父・徳兵衛に、これから一生、一緒にいると泣いて言いました。伊吹は駆けつけた捕り手たちに担がれ、現場に急行しました。おくにも三郎が心配になり、追いかけました。現場に行くと、三郎は玄哲一味と間違えられ、捕り手たちと格闘していました。そこに着いた伊吹は、捕り手たちに「人の善と悪の見分けもつかんのか!」と言い、三郎を逃がしてやりました。三郎は追ってきたおくにに、何も言わずに立ち去って行きました。
待ち伏せの結末:エピローグ:待ち伏せ
三郎にとって、“からす”は卑怯で許せない存在となりました。ある日、“からす”の一行を待ち伏せした三郎は、“からす”一行を剣先鋭く斬り倒し、また、流浪の旅へ出て行きました。
「待ち伏せ」感想・レビュー
-
1960年代、三船敏郎(東宝)、石原裕次郎(日活)、勝新太郎(大映)、中村錦之助(東映)ら 筆頭に、日本の大手映画会社のスターたちが相次いで独立し自身のプロダクション、いわゆるスタープロを設立。
三船と裕次郎が手を組ん だ「黒部の太陽」(1968)を皮切りに、専属制度に基づく「五社協定」の下では実現不可能だった、彼らの共演が次々に実現した。
その中心的役割を果たしていたのが、この時期のスター プロ・ブームの先駆者でもあった三船であった。彼は自社の作品に彼らを招く一方、彼らの作品にも積極的に出演した。
そんな、当時のスタープロ旋風の頂点的な作品が、“ 兄貴” 三船の主導の下に四大スタープロの主宰者が勢揃いしたこの作品である。天保年間。「からす」と 呼ばれる謎の武士、(市川中車)に 雇われた浪人・三郎(三船)は、詳細を知らされないまま、命令通り人里離れた三州峠に向かった。 途中、囚われていた女おくに(浅丘 ルリ子)を助けた三郎は、彼女を連れて峠の茶屋に来た。
茶屋は老主人の徳兵衛(有島一 郎)と孫娘のお雪(喜多川美佳)が 切り盛りしており、医者くずれの玄哲(勝) も居候していた。
さらに、渡世人の弥太郎(石原)や捕らえた盗賊を連れた追跡役人の伊吹(中村)らが次々と茶屋にやってきた。
それは、峠で行われようとしていた陰謀の始まりだった———。“頂点” というのはあくまでも「四人が全員出演している」という点についてであり、作品的には、「全員集合」のイベントムービーとして見ると結構 、地味な作りではある。
マカロニ・ウエスタン風の味わいもあるし、中盤から物語が茶屋を中心に展開 するので、密室劇的な面白さも無きにしも非ずだが、これまでのスタープロ映画がどれも正統派で大スケールの作品だったので、同様のものを期待すると若干、肩透かしを食らう。
巨匠・稲垣浩監督の遺作としても、少々寂しい感じではある。
ただ、佐藤勝の音楽は素晴らしい。
勇壮なメイン・タイトルの曲をはじめ、電子テナー・サキソフォンの凄みを漂わせながら、独特の響きが混声合唱と絡む、ユニークな楽曲が全編を彩っていて素晴らしいのだ。
三船敏朗、石原裕次郎、勝、萬谷、浅丘の往年のオールスターが勢揃い。五社協定の時代が終わり、自由に各映画会社の映画に出演できるようになり、その後有名俳優が独立プロを設立。三船、石原、勝とプロを設立。その象徴的な映画だ。三船美佳の姿もある。