マイ・ブロークン・マリコの紹介:2022年日本映画。永野芽郁がやさぐれたOLを演じ話題の『マイ・ブロークン・マリコ』。原作は第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞をはじめ各賞を総なめにした平庫ワカの同名マンガ。「親友の遺骨と旅に出る」物語に惚れ込んだタナダユキ監督が映画化を切望して実現した本作は、役者の熱量も生半可ではない。タバコを吸い酒を飲む姿がカッコいい永野芽郁。その親友マリコ役は実生活でも永野と仲の良い奈緒。ふたりが息のあった演技を見せている。謎の男マキオを演じる窪田正孝も秀逸。
監督:タナダユキ 原作:平庫ワカ 出演:永野芽郁(シイノトモヨ)、奈緒(イカガワマリコ)、窪田正孝(マキオ)、尾美としのり(マリコの実父)、吉田羊(タムラキョウコ)ほか
映画「マイ・ブロークン・マリコ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マイ・ブロークン・マリコ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「マイ・ブロークン・マリコ」解説
この解説記事には映画「マイ・ブロークン・マリコ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マイ・ブロークン・マリコのネタバレあらすじ:起
ブラック企業に勤めるシイノトモヨは、定食屋のテレビニュースで親友のイカガワマリコが死んだことを知ります。小学生のころから知っているマリコは、いつも父親から殴られて顔にアザがありました。シイノは仕事そっちのけでマリコのマンションに向かい、片付け中の業者から、葬式もなく遺体は既に火葬されただろうと聞かされます。
タバコを吸いながらシイノは、いまからマリコに何がしてあげられるだろうと考え、閃いて走り出します。
包丁を持ってマリコの実家をたずねたシイノを出迎えたのは、義理の母であるタムラキョウコでした。訪問営業を装って部屋にあがったシイノは、遺影の前でうなだれている父親の姿を見つけ、マリコが高校生のころ、この男にレイプされたことを思い出していました。
そのせいで実の母はマリコを憎んで出ていき、マリコはますます情緒不安定になっていったのです。唐突にシイノは遺骨の箱を奪うと、怒声を浴びせて殴りかかる父親に包丁を向け、積年の恨みをぶつけます。
父親にはその姿が一瞬マリコに見えてひるみますが、遺骨を取り戻そうと大声をあげ、あんたが悪いんじゃないの!とキョウコに止められます。シイノはそのまま窓から飛び降り、靴も履かずに自室へ帰ってきました。
中学生のころから取ってあるマリコの手紙。あのころからふたりで海に行きたいと言っていたマリコ。シイノは旅行の支度を始めますが靴がないことに気づき、履きつぶしたボロボロのドクター・マーチンを取り出して消臭剤をかけまくります。
あてもなく家を出たシイノは、夜道で遺骨の箱を抱えたまま途方に暮れます。「あたしには正直あんたしかいなかった」とつぶやき、「ねぇマリコ。本当に手紙のひとつもあたしに残さず死んだの?」と涙を流します。ふと、「まりがおか岬だって!行ってみたいね」とマリコが言っていたのを思い出し、シイノはその足で高速バス乗り場に向かいます。
マイ・ブロークン・マリコのネタバレあらすじ:承
早朝、バスを降りたシイノは定食屋で牛丼を2杯頼みます。1杯はマリコ用ですが結局2杯食べ、その後列車でまりがおか岬へ向かいます。ウトウトしていたシイノは、高校生のマリコが目の前でリストカットしたときのことを夢に見ます。「シイちゃんに彼氏ができたらわたし死ぬから」とマリコは言っていました。
目的の駅に着き路線バスに乗ったシイノ。ひとりの女子高生を見て再び過去のマリコの記憶が呼び覚まされます。その女子高生が降りていき、シイノはなんとなくその子に手を振りました。
まりがおかバス停に着いたシイノは、全財産の入ったリュックをバイクの男にひったくられてしまいます。路上にへたり込んでしまったシイノにひとりの男性が心配して近づいてきますが、マリコの手紙を持っていかれてしまったことに気づいたシイノはかまわずバイクを追いかけていきます。
しばらくしてシイノが戻ってくると、男性は放置されていた遺骨を見守ってくれていました。五千円札を渡して「名乗るほどの者じゃございません」と男は去っていきますが、“ナリタ商店 マキオ”と書かれたクーラーボックスをシイノは見逃しませんでした。
夜、漁港の酒場でひとり飲んでいるシイノの目の前にはマリコがいます。昼間の男のようなやさしい人とつき合いたいというマリコに酔ったシイノは怒り、「あんたにはあたしがいたでしょうが!」と叫びます。
店の常連客たちはシイノを冷やかしますが彼女はそんな声には耳を貸しません。「わたしから離れてったら一生許さないからね」と言う幻影のマリコ。「そんなふうに脅さなくったってさ、あたしにはあんたが一番大事なのに」と血の流れるマリコの手首をつかんでシイノは大声で泣いていました。
翌朝、シイノは漁港の小舟で目覚めます。そこへマキオが歯磨きセットと水をもってやってきて、自分のことを大事にするようにと諭します。厚意に甘えて歯を磨いたシイノは、行く所があるといって去っていきます。
マイ・ブロークン・マリコのネタバレあらすじ:転
シイノはマリコの部屋でDV男から彼女を守って闘っていますが、マリコはヘラヘラしています。そうやってせっかくマリコを守っても、彼女はその男に呼び出されて会いに行ってしまい、次にシイノと会ったときは骨折させられていました。
シイノが「あんた、感覚ぶっ壊れてンじゃねえの?」と怒ると「そーだよ、わたしぶっ壊れてるの」と返すマリコ。シイノを試すようなマリコは「ごめんね、怒った?シイちゃん…」と問いかけます。
そんなマリコのことを思い出していたシイノはついに岬にやってきました。そこにはマリコもいます。シイノは「あんた、何も悪かない」とマリコを抱きしめますが、「いいの。わたしは幸せになれないの。そう考えた方が楽だもん」とマリコは言います。
「何であたしを置いてった?」とシイノは、ひとりで死んだマリコの遺骨に向って怒り、崖から飛び降りようとしますが、やってきたマキオに止められます。なおも飛び降りようとしてふたりがもみ合っていると、「助けて」という若い女の声がします。それは昨日の女子高生でした。
彼女はヘルメットの男に追いかけられています。その姿にマリコを重ねたシイノは遺骨の箱で男に応戦し、骨を撒き散らしながら箱は宙を舞います。シイノはそれを掴もうとして崖から落ちてしまいました。
朦朧とした意識の中でシイノは、「わたし、シイちゃんから生まれたかった。シイちゃんの子どもになりたかったよ」というマリコの声を聞いています。
マイ・ブロークン・マリコの結末
意識を取り戻したシイノの横にはマキオが寄り添っていました。自分も半年前にここから飛んだと彼は言います。
翌日。事情聴取のあと、シイノは女子高生からのメッセージを受け取ります。そこには「ご恩は一生忘れません」と書かれていました。
駅まで見送りにきたマキオに駅弁とお茶を渡されたシイノは、「ご恩は一生忘れません」とぶっきらぼうに感謝を伝えます。マキオは、「あなたの思い出の中の大事な人とあなた自身を大事にしてください」と絞り出すように伝えます。すると席に座ったシイノは列車が動き出す前から弁当を食べ始め、別れの挨拶も何の余韻もありませんでした。
自室に戻ったシイノはしみじみと、マリコとのやりとりを思い出しています。おばあちゃんになってもずっといっしょに住んでいたいと夢を語っていたマリコ。
松葉杖姿で久しぶりに出社したシイノは上司に退職願を出します。しかしその場で破り捨てられ、そのまま営業に向かわされます。同情で契約を取ったシイノは、日常が戻ったことを感じながらも会社をやめることはあきらめていません。
家に帰るとドアノブに紙袋がかかっています。そこには、マリコの実家で脱いだ靴が入っていました。住所が知られていたことに戦々恐々としながらも中を見ると、タムラキョウコからの手紙ともう一通、別の手紙が入っていました。
『シイちゃんへ』と書かれた封筒。
それを開けて読んだシイノは泣いて顔をうずめ、ひとり「うん。」とうなずきマリコを思うのでした。
以上、映画「マイ・ブロークン・マリコ」のあらすじと結末でした。
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