野火の紹介:1959年日本映画。太平洋戦争末期のフィリピン戦線における日本兵の姿を描く。敗戦を目の前に、飢餓、疲労、絶望に襲われる兵士達。極限状態におかれた人間は何を考えどう行動するのか、淡々と生々しく、そして鮮やかに表現した戦争映画の名作。ロカルノ国際映画祭ではグランプリを受賞した。2015年にはリメイク版野火も制作されている。
監督:市川崑 出演者:船越英二(田村)、ミッキー・カーチス(永松)、安田(滝沢修)、下士官(浜口喜博)ほか
映画「野火(1959年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「野火(1959年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「野火(1959年)」解説
この解説記事には映画「野火(1959年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
野火のネタバレあらすじ:黒い煙
舞台は1945年、太平洋戦争末期のフィリピン、レイテ島。陸軍に属する田村一等兵は、肺病を患い部隊から追い出されてしまいます。米軍に包囲された日本兵は山中へ逃げ込み、食料調達も満足に出来ない状態でした。野戦病院に入院するよう指示された田村は、サツマイモと手榴弾を雑嚢に入れ歩き出します。入院が拒否された場合は手榴弾を使い自決しろと命じられていました。病院を目指して山野を歩き続ける田村は、遠くに立ち上る黒い煙を数度見かけます。やっとのことで病院にたどり着くも、入院を拒否され近くの林に入ります。そこには同じような境遇の日本兵達が集まっていました。まだ若い永松や、ずる賢い安田らと知り合う田村。黒い煙は地元の農夫達がトウモロコシの皮を燃やしているのだと教わります。その後病院は米軍の空襲で木っ端微塵に吹き飛ばされ、田村達は散り散りになって逃げ出しました。
野火のネタバレあらすじ:十字架の下
数日間水辺で寝起きした田村は、遠くに何か光る物を見つけます。教会の十字架だと気づき、危険を承知で村に入りますが人の姿はありませんでした。教会の周囲には日本兵の遺体が折り重なって放置されています。そこへ海から村人と思われるひと組の男女がやって来ました。彼らは小屋に入り床板を外して何か取り出そうとしています。田村が姿を見せると、女が物凄い悲鳴を上げました。レイテ島の人間にとって、日本兵は既に敵だったのです。田村は絶叫する女を射殺し、男の方も追いかけましたが海へ逃げられます。小屋に戻った田村は床下で塩を発見し、喜々として入手しました。
野火のネタバレあらすじ:パロンポンへ
村を出てしばらく歩くと、3人組の日本兵に出会いました。彼らによると日本兵には既に退却命令が出ており、パロンポンへ向かうことになっていました。田村は塩を分ける代わりに一緒に連れて行ってもらう約束をします。パロンポンを目指す日本兵達は一様に生気を失った目つきをしています。道中、タバコの葉を売っている永松と再会した田村。足を負傷し動けなくなった安田と行動を共にしているそうです。安田は米軍に投降するつもりのようでした。2人と別れた田村が街道付近までたどり着くと、日本兵達が集まっていました。パロンポンへ行くには街道を横切らなくてはなりません。しかし街道には米軍の車が走っています。夜を待ち街道に出た日本兵でしたが、潜んでいた米軍の戦車に爆撃され多くが命を落とします。何とか生き延びた田村はパロンポンも投降も諦め、あてもなく山野を歩き始めます。
野火のネタバレあらすじ:猿の肉
険しい山道、雨季による大雨、横たわる死体。その中を1人きりで歩き続けた田村は、木の根元に座り込む1人の日本兵に出会います。半ば正気を失っている彼は、「俺が死んだらここを食べてもいいよ」と腕を出しました。思わず唾を飲み込んだ田村は恐ろしくなり、男のそばから逃げ出します。歩いた先にはぽつんと人の手が転がっていました。「俺は食わない」と呟く田村。そこで偶然永松と再会し、水と食料を分けてもらいます。しかし弱った田村の歯は固い物を噛めません。永松は食料について猿の干し肉だと説明し、安田の寝床へ田村を連れて行きました。
野火の結末:それぞれの人間性
安田と合流した田村は、安田と永松が互いに警戒し合っていることを知ります。2人の間に信頼は無く、隙を見せれば食われてしまうような、殺伐とした関係になっていました。手榴弾を奪われないよう田村に忠告する永松。ところがある雨の日、永松が猿を狩りに行っている間、安田に手榴弾を奪われてしまいます。そこへ響いた銃声の方へ田村が走っていくと、永松が人間に向かって発砲していました。永松は人肉を猿の肉と偽っていたのです。安田が手榴弾を奪ったと知った永松は、安田殺害を決意します。遠くから声をかけて手榴弾を使わせ、水辺に潜んで安田が現れるのを待ちます。遠くにはまた黒い煙が見えていました。「俺が悪かった」と叫びながら現れた安田を射殺する永松。銃剣を使い解体し始めた永松を見て、田村は銃口を彼に向けます。顔を上げた永松の口元は安田の血にまみれていました。永松を射殺した田村は銃を捨て、煙を出す野火の方向へ歩き始めます。「普通の暮らしをしている人間に会いたい」という一心で歩き続ける田村。野火の向こうから銃撃された田村が地面に崩れ落ち、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画 野火のあらすじと結末でした。
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