哀れなるものたちの紹介:2023年イギリス映画。スコットランドの作家アラスター・グレイが1992年に発表した小説『Poor Things』を、『女王陛下のお気に入り』(2018年)で組んだヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再びタッグを組んで映画化したSFラブコメディー作品です。エマ・ストーンはプロデューサーも兼任し、天才外科医によって死から蘇り世界を知るための冒険の旅を通じて成長していく主人公を体当たりで演じています。本作は第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で金獅子賞を受賞しています。
監督:ヨルゴス・ランティモス 出演者:エマ・ストーン(ベラ・バクスター)、マーク・ラファロ(ダンカン・ウェダバーン)、ウィレム・デフォー(ゴドウィン・バクスター)、ラミー・ユセフ(マックス・マッキャンドレス)、ジェロッド・カーマイケル(ハリー・アストレー)、クリストファー・アボット(アルフィー・ブレシントン)、マーガレット・クアリー(フェリシティ)、キャサリン・ハンター(マダム・スワイニー)、スージー・ベンバ(トワネット)、ヴィッキー・ペッパーダイン(プリム夫人)、ハンナ・シギュラ(マーサ・フォン・カーツロック)ほか
映画「哀れなるものたち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「哀れなるものたち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「哀れなるものたち」解説
この解説記事には映画「哀れなるものたち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
哀れなるものたちのネタバレあらすじ:起
ロンドン。若く美しいひとりの女性が橋から飛び降り自殺しました。天才外科医ゴドウィン・バクスター博士は女性の遺体を回収し、女性を蘇生させることに成功しました。女性はゴドウィン博士から“ベラ・バクスター”という新しい名を与えられ、新たな人生を歩むことになりましたが、彼女はまるで幼児に戻ったかのような振る舞いをしていました。
ゴドウィン博士はマックス・マッキャンドルズという男と家政婦のプリム夫人を助手として雇い入れることにしました。マックスはベラに一目惚れしてしまいましたが、見た目は大人ながらもまるで子供のように振る舞うベラを見て不思議に思い、彼女の知性を高める手助けをすることにしました。
ある日、マックスはベラに世界の広さの話をしました。蘇生手術をしてから一度もゴドウィン博士の屋敷から一歩も出たことのないベラはマックスの話に強い興味を抱きました。ベラはマックスとゴドウィン博士に連れられて初めてのピクニックに出かけましたが、もっと外の世界を知りたいと思ったベラは帰りの馬車から飛び出そうとして暴れてしまいました。ゴドウィン博士はベラにクロロホルムを嗅がせて眠らせました。
マックスはベラの行動に違和感を感じ、ゴドウィン博士に彼女のことを訊いてみました。すると、ゴドウィン博士はベラの元となった女性の遺体を回収した際に彼女が妊娠していたことに気づき、女性の脳に胎児の脳を移植したことを明かしました。そのためベラの知能は幼子程度であり、ゴドウィン博士を実の父だと思い込んでいました。
やがてベラはたまたま股間を触った際に快感を覚えるに気づき、それからというもの自慰行為に勤しむようになっていきました。このことを知ったゴドウィン博士はマックスにベラと結婚するよう持ちかけ、マックスはゴドウィン博士が提示した条件である同居を受け入れてベラに結婚を申し入れました。
哀れなるものたちのネタバレあらすじ:承
ある日、ゴドウィンの屋敷に口先三寸の弁護士ダンカン・ウェダーバーンがやってきました。ダンカンはたまたま部屋で自慰行為に耽っていたベラを見て興味を持ち、彼女に一緒に旅行に行こうと言葉巧みに誘いました。その気になったベラはゴドウィン博士に自分の意思を伝え、マックスにクロロホルムを嗅がせて眠らせました。
ベラはダンカンに連れられて駆け落ちし、リスボンへと向かいました。ベラは初めて酒の味を覚え、様々な料理を楽しみ、ダンカンとの激しいセックスに溺れました。ある時、ダンカンが眠っている間にベラは一人で外に繰り出し、今まで見たことのない未知の世界を体感しました。
ダンカンはベラを誘い、上流階級の人々と夕食をとることにしましたが、退屈に感じたベラはダンカンと口論になってしまいました。その後、ベラはダンカンと共に別の夕食に参加しましたが、酒に酔ったベラは踊り始め、ダンカンはベラに手を出そうとした別の男と喧嘩になりました。やがてベラは太ももにタトゥーを入れるようになり、自由気ままに動くようになったベラにダンカンはお手上げとなっていきました。
その頃、ロンドンではベラがいなくなったことを寂しがるゴドウィン博士が新たな人体実験をしていました。ゴドウィン博士はフェリシティという女性にベラと同じ手術をしましたが、フェリシティはベラほどに成長せず精神はいつまで経っても赤子のままでした。
哀れなるものたちのネタバレあらすじ:転
ベラを思い通りに制御できないことに苛立ったダンカンは彼女を大きなトランクに詰め込み、アレクサンドリアに向かうクルーズ船に乗せて出発しました。ベラは船内でハリー・アストリーやマーサ・フォン・カーツロックという乗客に出会い、彼らから哲学について聞かされたベラは興味を示して哲学の本を読むようになりました。
ベラは好奇心の赴くまま次々と知識を得ていく一方、ダンカンの苛立ちは募っていくばかりでした。やがて船はアレクサンドリアに寄港しましたが、ベラは港で奴隷同然の扱いで酷使されて命を落とした下層階級の人々の遺体を見て思わず泣き叫んでしまいました。その後、ベラはダンカンが眠っている間にこっそり金を抜き取り、下層階級に寄付しようと船員たちに金を渡しましたが、船員たちはその金を自分たちの懐に収めてしまいました。
無一文となったダンカンとベラはマルセイユで船から降ろされてしまいました。ダンカンが途方に暮れている間、ベラは近くの売春宿に足を踏み入れ、そのまま男性客の相手をすることになりました。行為を終えたベラはダンカンに金を渡しましたが、ダンカンはベラが売春をしたことに激怒し、ゴドウィン博士が万が一のためにベラの服に忍ばせていた金を奪っていずこへと立ち去っていきました。
ベラはその売春宿で働くことにし、数々の男性客に抱かれる一方で娼婦仲間のトワネットと親しくなりました。ベラはトワネットと一緒に学校に通うようになりました。
哀れなるものたちの結末
ダンカンはすっかり精神的に不安定になり、精神病院に収容されてしまいました。マックスはダンカンから事情を聞き、ベラに手紙を送ってゴドウィン博士は重病で余命僅かであることを伝えました。ベラは久しぶりにロンドンのゴドウィン博士の屋敷に戻り、マックスから自身がゴドウィン博士の人体実験の産物であることを告げられました。ベラはゴドウィン博士と和解し、マックスとも寄りを戻しました。
ベラとマックスの結婚式の日、そこにベラの体の元の持ち主だった女性の夫である貴族出身のアルフィー・ブレッシングトン将軍が現れ、強引にベラを連れ帰ってしまいました。ベラはアルフィーに自分の体の元の持ち主について訊こうとしましたが、傲慢で身勝手なアルフィーは家政婦を笑いながら虐げ、下層階級に惨めな仕打ちをして楽しんでいたこと、そしてベラ(の体の元の持ち主)の妊娠は迷惑だったことを話しました。ベラは自身の体の元の持ち主はアルフィーとの結婚生活から逃れるために自ら命を絶ったのだと確信しました。
アルフィーは立ち去ろうとしたベラに銃を向け、クロロホルム入りのカクテルを飲むよう命じましたが、ベラはアルフィーの顔にクロロホルムを投げつけて気絶させました。ベラは助けに来たマックスと共にアルフィーをゴドウィン博士の屋敷に連れ帰り、アルフィーを手術台に乗せました。その後、ベラは臨終間際のゴドウィン博士に寄り添い、彼の最期を看取りました。
その後、ベラはマックス、プリム夫人、知識の向上したフェリシティ、トワネットと共にゴドウィン博士が遺した屋敷でお茶を飲んでいました。その横ではヤギの脳みそを移植されたアルフィーが草をもしゃもしゃと食べており、ベラはその様を見て微笑みを浮かべました。
以上、映画「哀れなるものたち」のあらすじと結末でした。
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