反撥の紹介:1964年イギリス映画。「水の中のナイフ」に続くポランスキー監督の2作目の長編。男性への嫌悪と欲望の狭間で次第に妄想にとらわれて狂気に飲み込まれていく様を描いたサスペンス・ホラー。瞬きもせず無表情で人形のように美しいカトリーヌ・ドヌーヴと、見ている者にも現実を妄想の違いが分からない狂気の描き方が秀逸な作品。ポーランドを離れてイギリスで撮影されたもので、彼のコスモポリタンとしての活躍の手始めとなった。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。
監督:ロマン・ポランスキー 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ(キャロル)、イヴォンヌ・フルノー、ジョン・フレイザー(コリン)、イアン・ヘンドリー、パトリック・ワイマーク、ほか
映画「反撥」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「反撥」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「反撥」解説
この解説記事には映画「反撥」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
反撥のネタバレあらすじ:起
美容サロンでネイリストとして働くキャロル。その緩慢な動作と常にぼんやりとしている様は、客や同僚から居眠りを疑われるほどだった。カフェでぼんやりとランチをとっているところへ、彼女に想いを寄せるコリンが現れて食事に誘われるが、姉と食事をするからとすげなく断り、翌日会う約束をして仕事へ戻る。
その日、キャロルが帰宅すると姉ヘレンが恋人マイケルのために料理をしていた。マイケルは既婚者であったが毎日のようにやってきては泊まるようになり、洗面台に置かれたキャロルのコップに彼の歯ブラシや剃刀が入れられているのを見て嫌悪する。
マイケルがやってきて挨拶ついでに顔に触れるが、キャロルは後ずさり、ヘレンは後をついて回ってマイケルとの行動を聞いてくるキャロルをたしなめる。マイケルはキャロルに違和感を感じ、医者に見せるべきだというが、ヘレンは取り合わない。
その晩、眠っていたキャロルは隣室から聞こえてくる姉と恋人の情事の声で目が覚める。徐々に大きくなるその声を、キャロルは耳を塞いでやり過ごす。
翌朝、バスルームに入ろうとしたキャロルは、そこでマイケルが髭をそっている姿を目にして嫌悪する。彼が出て行くと再びヘレンのあとについて、既婚者でありながら毎日のように訪れるマイケルのことを言い立てるが、生き方は人それぞれだと一蹴される。
反撥のネタバレあらすじ:承
その日、仕事を終え、コリンとの待ち合わせ場所に向かっていたキャロルだったが、途中足元の大きなひび割れを目にした彼女は、そこから動けなくなる。1時間待ってもキャロルが現れなかったために店を出たコリンは、近くのベンチに座ってひび割れを眺めているキャロルを見つけ、すっぽかしたことを責めるが、様子がおかしい彼女を家まで送る。
別れ際、キスをしようとしたコリンに、キャロルは思わず顔を背けるが、憮然とする彼にキャロルは無表情でキスを受ける。しかし、彼女は慌てて車から降りると口を拭い、家に入るなり歯を磨くと、コップに入っていたマイケルの洗顔セットをゴミ箱に捨てる。無言で部屋に籠ったキャロルを、ヘレンはマイケルとのことですねているのだろうと考えていた。
翌日、ヘレンはマイケルと旅行に出ることになっていた。行かないで欲しいというキャロルに、ヘレンは滞納していた家賃を大家に支払うようお金を用意して出掛けてしまう。
サロンに行ってもぼんやりとしていて仕事にならないキャロルに、オーナーから帰って休むよう言い渡される。
帰宅した彼女は冷蔵庫からヘレンがマイケルのために料理しようとしていたウサギ肉をただ取り出して放置する。バスルームには捨てたはずのマイケルの剃刀がコップの隣に並べられていて、床には彼のランニングシャツが落ちていた。ゴミ箱に捨てようとそれを拾い上げたキャロルは一瞬、シャツの匂いを嗅いでみるが、とたんに吐き気をもよおす。
そして姉の部屋に入り、クローゼットのヘレンのドレスを手にしたキャロルは、鏡に一瞬男の姿を目にするが、振り返ってもそこには誰もいなかった。
反撥のネタバレあらすじ:転
その頃から彼女の意識は現実と妄想が交錯するようになる。誰もいないはずのアパートの部屋で異音がし、夜中に足音がする。灯りを着けようとスイッチを入れると、壁に大きな亀裂が入り、夜中に部屋に押し入ってきた男に犯される。
3日間の無断欠勤のあと、出勤したキャロルはオーナーに理由を問われるが答えることができない。そのまま仕事についたものの、ぼんやりとしたままのキャロルは客の指を切ってしまい、再び帰されてしまう。同僚が彼女を励ますが、バッグの中にウサギ肉の頭が入っているのを見て驚愕する。
帰宅したキャロルが、放置されて腐り始めた食材をよそに部屋でぼんやりしていると、再びあちこちの壁に亀裂が生じ、別の壁は粘土のように手がめりこんだ。
そこに、キャロルと連絡が取れないことを心配したコリンがやってきて、中で彼女の気配を感じてドアを押し破って中へ入ってくる。無事を知って安心したコリンだったが、彼が背中を向けた瞬間に、キャロルは手にしたロウソク立てで彼の後頭部を何度も殴打して殺害する。
その後、彼女はコリンの死体を浴槽に沈めると、壊れたドアをあて木で塞ぐ。
何事もなかったかのように鼻歌を歌いながら裁縫をするキャロルだったが、男に犯される夜は続いていた。ある朝、全裸で床に横たわっていた彼女が呼び鈴の音で目覚めると、ドアの下からはがきが差し込まれる。それは、旅先から送られてきたヘレンの絵葉書だった。
反撥の結末
部屋のいたるところに大きな亀裂が何本もあり、その亀裂からは無数の男の腕が伸びて、キャロルの体をまさぐるようになった。夫の浮気を知ったマイケルの妻からの執拗な電話に苛立ち電話線を切ったところへ、期日を過ぎても支払われない家賃を取り立てようと大家がやってくる。
呼びかけにも応じないことから、ドアをこじ開けて中に入った彼は、キャロルを見つけると家賃の滞納とドアの破損を責め立てるが、キャロルが用意されていた金を支払うと大家は相好を崩す。
そこでキャロルがネグリジェ1枚のしどけない姿でいるのを目にした彼は、欲望をあらわにし、身を任せれば家賃をタダにすると言って彼女に圧し掛かると、キャロルは手にした剃刀で動かなくなるまで家主を切りつける。
10日が経ち、ヘレンとマイケルが旅行から戻ってくる。先に部屋に入ったヘレンの悲鳴を聞きつけたマイケルが慌てて中に入ると、居間と浴槽で2人の遺体を発見する。部屋の電話が使えないため、マイケルは茫然とするヘレンを自室に残し、通報のためアパートを出て行く。
騒ぎを聞きつけてアパートの住人らが集まってくる中、ヘレンはベッドの下から差し出された腕に気づいて飛びのく。住人らがベッドをどかすと、そこには狂気に飲み込まれ、自我を失ったキャロルが横たわっていた。
部屋に戻ったマイケルは彼女を抱きかかえて運び出すが、目を開けた彼女が何を見ているのかは分からない。
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