しあわせのマスカットの紹介:2020年日本映画。岡山県を拠点とする和菓子メーカー「宗家 源吉兆庵」の全面協力で製作されたヒューマンドラマです。岡山の名産物であるぶどうを使った和菓子に魅せられたドジで明るい女性が、夢を叶えるために奮闘する姿が描かれます。第8回東宝シンデレラオーディションでグランプリを受賞した福本莉子が初主演を務め、脇を竹中直人や長谷川初範などのベテランや『機界戦隊ゼンカイジャー』の森日菜美などの若手が固めています。
監督:吉田秋生 出演者:福本莉子(相馬春奈)、竹中直人(秋吉伸介)、中河内雅貴(屋敷達也)、ヨシダ朝(緑川祐二)、宝積由香(川本百合恵)、大島蓉子(板橋政恵)、佐野泰臣(今西大輔)、ボブ鈴木(工場長)、本仮屋ユイカ(相馬雪絵)、田中要次(秋山守)、森日菜美(矢島祐美子)、大久保聡美(尾崎奈緒)、村瀬美穂(金澤こころ)、土居裕子(秋吉みよし)、長内美那子(太田綾子)、長谷川初範(田岡社長)ほか
映画「しあわせのマスカット」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「しあわせのマスカット」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
しあわせのマスカットの予告編 動画
映画「しあわせのマスカット」解説
この解説記事には映画「しあわせのマスカット」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
しあわせのマスカットのネタバレあらすじ:起
北海道在住の女子高生・相馬春奈(福本莉子)は修学旅行で岡山県に来ていました。春奈は病気で入院中の祖母のために、岡山の特産物であり“ぶどうの女王”との異名を持つ“マスカット・オブ・アレキサンドリア”を買おうとしましたが、こともあろうに財布を落としてしまいました。
春奈は慌てて宿泊先のホテルに戻り、フロントに財布がないか確認しましたが、結局財布を見つけることはできませんでした。春奈は僅かばかり残った小銭を手にデパートへと向かいましたが、さすがに高価なマスカット・オブ・アレキサンドリアを買えるだけの金は持ち合わせていませんでした。
そんな時、春奈はある和菓子に目が留まりました。それはマスカット・オブ・アレキサンドリアの一粒を丸ごと包んだ和菓子「陸乃宝珠」でした。これなら買えると判断した春奈は持ち金で2個購入、病床の祖母はその味に大変感銘を受けました。祖母はその3日後に亡くなり、春奈にとっては「陸乃宝珠」が祖母との最期の思い出となりました。
数年後の2018年4月。春奈は「陸乃宝珠」の製造元である和菓子メーカー「宗家 源吉兆庵」に就職すべく岡山の本社へと向かっていました。ところが、春奈は途中で道に迷ったお年寄りの手助けをし、自分が道に迷ったせいで面接の時間には遅刻してしまいました。
人事部長の緑川祐二(ヨシダ朝)と部下の川本百合恵(宝積有香)は春奈を追い返そうとしましたが、春奈が語る祖母とのエピソードに感涙した「宗家 源吉兆庵」の田岡社長(長谷川初範)が「あの娘の笑顔はみんなを和ませる」と独断で採用を決定してしまいました。
春奈は同期入社の新入社員・矢島祐美子(森日菜美)、尾崎奈緒(大久保聡美)、金澤こころ(村瀬美穂)と共に研修に入りました。尾崎は面接に遅刻しながらも採用された春奈を冷やかし半分で「大物ちゃん」と呼びました。
しあわせのマスカットのネタバレあらすじ:承
研修は店頭での接客から始まりました。春奈は販売部の板橋政恵(大島蓉子)から接客の要領を学びましたが、春奈は客の要望を聞こうともせず自分の好みを押し付け、勝手に持ち場を離れるなどしたため板橋に呆れられてしまいました。
続いて春奈は工場内部の研修を受けました。春奈は箱詰めの作業を手伝うことになりましたが、たまたま来ていた小学校の団体見学の面倒を見るよう命じられた際に、腰痛持ちの職員が重いお菓子の材料を運ぶのを見かけ、代わりに運ぼうとして誤って全てこぼしてしまい、全部廃棄処分にせざるを得なくなるという失態を犯してしまいました。
続く商品開発部の研修でも、お菓子を試食した春奈はただ「おいしい」としか感想を述べず、主任の今西大輔(佐野泰臣)を呆れさせてしまいました。
研修終了後、秘書検定準1級を持つ矢島は秘書室に秘書として配属され、営業力の高い尾崎は営業部に、ディスプレイのセンスを高く評価された金澤はマーケティング部にそれぞれ配属されました。
どこも引き取り手のない春奈は、お菓子の原材料となるぶどうなどの果実を確保する商品部に回されましたが、そこは前任者が半年足らずで辞めてしまう程のいわくつきの部署でした。
ぶどう農家の支援を命じられた春奈は、派遣先のぶどう農家を経営する秋吉伸介(竹中直人)の元へ挨拶に出向きましたが、偏屈で頑固者として知られる伸介は春奈を門前払いしてしまいました。
落胆して自宅アパートに帰宅した春奈の元に、北海道でカーリング選手として活躍する姉・雪絵(本仮屋ユイカ)から電話がかかってきました。雪絵は翌日に大事な試合を控えており、春奈も負けてはいられないと持ち前のやる気を取り戻していきました。
春奈は再び伸介のぶどう農場に出向きました。春奈は伸介の妻・みよし(土居裕子)に取り入ることに成功し、彼女から農場に関することなど色々な話を聞きました。かつて伸介のぶどう農場は秋吉夫妻の一人息子・太郎が経営していました。
しかし、太郎は10年前に交通事故で他界してしまい、伸介は太郎の代わりにこのぶどう農場を守り続けてきたのです。しかし、伸介は今年の収穫を終えたらこのぶどう農場を畳むことを決めていました。
しあわせのマスカットのネタバレあらすじ:転
春奈は近くでぶどう農場を営む屋敷達也(中河内雅貴)からぶどう栽培のコツなどを教えてもらう機会を得ました。ぶどうの表面には白い粉のようなものが付着しており、春奈は最初はそれがカビだと思い込んでいたのですが、屋敷はそれはブルーム(病気や乾燥などからぶどうの実を守る役割を果たすもの)であることを教えてくれました。
また、屋敷はぶどうの木の寿命は10年であり、接ぎ木をして育てていくことも春奈に教えました。
春奈は伸介から何度も門前払いをくらいますが、それでも足しげく伸介の元に通い続けました。一方の伸介は、みよしを通じて春奈の過去の話を聞いていました。春奈は高校時代、姉の雪絵に匹敵する腕を持つカーリング選手でしたが、指を怪我したことをきっかけにカーリングを諦めざるを得なかったのです。
伸介も少しずつ春奈に心を開き始め、春奈は農場の草むしりを手伝うなど農作業に精を出していきました。春奈は伸介にぶどう農場を続けるべきだと提案しましたが、それでも伸介の意志は変わりませんでした。屋敷は太郎のことを考えれば無理もないことだと伸介に理解を示し、春奈も人間の気持ちはそんなに単純なものではないことに改めて気付かされました。
春奈がこの会社に入った理由は、いつか自分が考えた和菓子を作りたいという夢を実現させるためでした。しかし、理想と現実とのギャップに思い悩んだ春奈も次第に思い悩むようになり、仕事に行き詰まりを感じるようになりました。そんな時、春奈の元に北海道から雪絵が訪ねてきました。
春奈は休日を利用して雪絵と共に倉敷の観光を楽しみ、カーリングができるスケートリンクで久しぶりにカーリングを楽しみました。雪絵は春奈に北海道に戻ってもう一度カーリングをしようと声をかけ、待ってると告げて北海道へと戻っていきました。
春奈はそれからも伸介のぶどう農場を手伝っていましたが、ある日伸介から突然「今日限りで、明日からもう来んでええ」と告げられました。春奈は深く落ち込み、自分にはお菓子作りやぶどう作りの資格はないのだと思い込んでしまいました。
しあわせのマスカットの結末
そんな時、岡山県を西日本豪雨の猛威が襲いました。人事部を手伝っていた春奈は伸介のぶどう農場が心配になり、現地へと駆け付けました。近辺のぶどう農場は幸いにも災害の影響を免れましたが、伸介のぶどう農場だけは土砂に埋もれてしまっていました。
伸介は「これで潰す手間が省けた」と諦めていましたが、春奈は一縷の望みをかけて土砂の中に埋もれてしまった太郎のぶどうの枝を掘り起こす決心をしました。
春奈は会社を無断欠勤してまで、たった一人で必死で土砂の除去作業に励みました。そんな春奈の姿を見た同期の尾崎は彼女の勇気を認め、やがて尾崎や矢島、金澤の同期組、そして販売部の板橋や商品開発部の今西、工場長(ボブ鈴木)らも春奈の手伝いに加勢しました。
その甲斐あって、春奈はようやく太郎のぶどうの枝を掘り起こすことに成功、「これは太郎さんの命だから」と伸介のぶどうの枝と接ぎ木しようと考えましたが、伸介は「その木は死んでいる」と言うのみでした。
伸介の心を動かすことのできなかった春奈はとうとう心が折れてしまい、会社を辞めて北海道に戻る決断をしました。春奈は住んでいたアパートを引き払い、帰り支度をしましたが、その前に屋敷から接ぎ木の方法を教えてもらい、太郎のぶどうの枝を屋敷のぶどうの木に接ぎ木しておきました。
岡山を離れようとしていた春奈でしたが、どうしてもあのぶどうの木が気がかりになりました。屋敷のぶどう農場に向かった春奈は、そこで接ぎ木をやり直している伸介の姿を見つけました。
伸介はたとえ接ぎ木が成功したとしてもぶどうの実が実るまでは3年はかかると言い、それまでは誰が面倒を見るのか、春奈の夢は人を幸せにするお菓子を作るはずだったのではないのか、中途半端なまま逃げるのかと春奈に語り掛けました。「太郎の木が泣いている」伸介の言葉に我に返った春奈は会社に戻り、辞表を撤回しました。同期の仲間たちは以前の軽蔑の意味ではなく、春奈の勇気を高くかって「大物ちゃん」と評しました。
引き続き商品部に所属することになった春奈は、それからも伸介のぶどう農場に通いました。春奈はあの接ぎ木が芽吹いていることに気付きました。春奈の夢はまだ始まったばかりなのです。
以上、映画「しあわせのマスカット」のあらすじと結末でした。
高級な葡萄が食べたくなりました。