娼年(しょうねん)の紹介:2017年日本映画。「僕を、買ってください」石田衣良の同名小説「娼年」を原作とする映画化作品。会員制ボーイズクラブを舞台に、無気力に生きてきた青年が様々な女性と肌を重ねるうちに新たな自分の可能性を見出していき、一人前の大人の男性に成長していく姿を、出演者たちの体当たりの描写を交えて描きます。2016年に舞台化された際の演出・脚本の三浦大輔と、主演の松坂桃李が再びタッグを組んで製作されたドラマ映画です。
監督:三浦大輔 出演者:松坂桃李(森中領/リョウ)、真飛聖(御堂静香)、冨手麻妙(咲良)、猪塚健太(平戸東)、桜井ユキ(白崎恵)、小柳友(田島進也)、馬渕英里何(イツキ)、荻野友里(主婦)、佐々木心音(紀子)、大谷麻衣(ヒロミ)、階戸瑠李(ギャル風の女)、西岡徳馬(泉川)、江波杏子(老女)ほか
映画「娼年(しょうねん)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「娼年(しょうねん)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
娼年(しょうねん)の予告編 動画
映画「娼年(しょうねん)」解説
この解説記事には映画「娼年(しょうねん)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
娼年(しょうねん)のネタバレあらすじ:起.情熱の試験
東京の名門、光和大学に通う大学生の森中領(松坂桃李)は、今日も行きずりの女性と朝を迎えます。領は日々の生活や女性関係などに退屈しており、大学にはあまり行かず、下北沢でバーテンダーのアルバイトをしながら無気力な日々を過ごしていました。
そんなある日、領のバイト先のバーに、中学時代からの幼馴染で今はホストとして働く田島進也(小柳友)が、ホストクラブの客だという女性と待ち合わせをしていました。女性の名は御堂静香(真飛聖)といい、今日が初めての店外デートだということです。「女なんて つまんないよ」と話す領の言葉を聞いて、静香はカクテルのコースターの下に名刺を残して、田島と共に帰っていきます。その名刺には、Le Club Passion(クラブ パッション)と「仕事が終わる頃 店の外で待っています」とメッセージが残されていました。
領が仕事を終え店を出ると、赤い高級車で静香が現れます。「いきましょう、私のマンションに」と言い、共にマンションへ向かいます。「あなたさっき女性なんてつまらないって言ったわよね、セックスもそうなの?」と聞くと、領は「そんなの手順の決まった面倒な運動です」と。「じゃあ、本当にそうなのか私に証明してくれないかな?」「いいですよ、どうせ帰って寝るだけだったし」と会話し、麹町にある静香のマンションに到着します。
マンションに着くと領は「シャワー借りてもいいですか」と聞くものの静香は、「だめ、私はあなたの髪や体、それにあそこの匂いも確かめたい。いつもどれくらい清潔にしているか、あなたの習慣も」と言うと、領は服を脱ぎ捨て「じゃあ、始めましょうか」と言って彼女に迫るが、すぐ後ろには見知らぬ女性が立っていました。「あなたの相手をするのはこの子。咲良、ご挨拶しなさい、こちらの男の子が森中領君」。咲良(冨手麻妙)は生まれつき耳が不自由らしく、会話は出来ないとのこと。静香は「私はここで見てるから」と言い、2人の行為の様子を観察します。
領と咲良の行為の一部始終を見つめていた静香は、領の自分本位の行為には値段は5,000円しかつけられないと突き放すような態度を取りましたが、咲良がもう5,000円差し出したことにより、領はギリギリで合格だと伝えられます。静香は女性に男の子を紹介する会員制ボーイズクラブ『Le Club Passion(クラブ パッション)』を経営しており、そのクラブの最低料金が1時間10,000円で、領は最低料金で合格したと言うのです。そのクラブは女性を相手に夜の相手をしたり、デートをするのが仕事だということです。
静香は領にこう伝えます。「咲良は気に入ったみたいだけど、私はあなたのセックスを評価しない。相手に心を開かないし、相手の身体が出すサインを読もうともしない、2人ですれば素敵なことを、あなたは1人でしてる。まず、女性のことをつまらないなんて思うのはやめなさい、人間は探しているものしか見つけない…。あなたがつまらないと見下しているものは、もっと素晴らしいものよ。この世界で生きている限り、女性からもセックスからも逃げきることはできない。もしうちのクラブでやってみる気があるなら明日中に電話してちょうだい。」
娼年(しょうねん)のネタバレあらすじ:承.娼夫リョウ
領は「リョウ」の名で娼夫として働くことになりました。静香によってアルバム用の写真撮影、身だしなみの指導をされ、女性にとって魅力的な男になるよう改善されます。
そこへ平戸東という金髪の美青年が現れ、彼は特別なお客様向けのVIP専用の男の子だと紹介されます。東はリョウを見つめ「静香さんがどう思ってるか分からないけどリョウさんはきっとすごい売れっ子になると思うよ、絶対そうなる」と言います。
バーでは、同級生の白崎恵(桜井ユキ)が、領に授業のノートを渡し、ちゃんと大学に来るよう注意します。3年になって就職活動している人ももういるんだからと。そこへホストの田島進也が訪れ、「俺はセックスについてはまじめだよ」とふざけますが、恵は「そんなことないから」と嫌がります。すると領は「じゃあさ、女の子からすると、いいセックスってどういうものなの?値段も付けられないくらい最高のセックスってなんだかわかる?」と聞きます。恵は「それはまじめな話?何だろう、やっぱり好きな人と心を込めてすることじゃないの?」と。好きな人以外とは考えられないとのことでした。
静香から電話が入ります。リョウは最初の客としてクラブの常連である女性ヒロミ(大谷麻衣)を紹介され、初仕事に向かいます。身だしなみを整え、2人でカフェへ行き会話します。ヒロミ「年上の女性のことをどう思う?」リョウは「僕は子供のころから大人の女性が好きでした、だからどうして年を重ねた女性がそのことを罪のように感じるのか、そっちのほうがずっと不思議でした。」と答えます。するとヒロミは、「今日は楽しかった、静香さんによろしく。またね。」と言って帰っていきました。静香からの着信があり「最初の仕事は成功ね。」と伝えられ、明日もヒロミからの予約が入ったと伝えられます。
次の日、昨日よりすこし色っぽい姿のヒロミがお店で待っていました。「私、今すぐリョウ君としたいな」と耳元で囁くヒロミ。円山町のラブホテルへ向かった2人は激しいキスと共に行為に及ぶのでした。
静香のマンションへ行くと、「ヒロミさんから、自分の専属にしたいくらいだと電話があったわ」と言われ、2回分の報酬として4時間の60%で24000円を受け取ります。女性の欲望は幅広く予測不能で圧倒されてしまう子もいる中、領は「女性のことをもっと知りたいと思うようになりました。」と話します。静香は「頼もしいわね。これだけの人間が生きていて、欲望の種類は無限にある。今この瞬間にみんな自分だけの欲望を生きている。オリジナルの形で、その女性にしかない一つきりのスタイルなの。」と言います。
後日、過激なプレイを求めるキャリアウーマンのイツキ(馬渕英里何)の相手をします。レストランで知的な会話で盛り上がったあと、イツキのマンションへ。イツキは小学生の頃の思い出話をし、好きな同級生の男子の前でお漏らしをしたとき、生まれて初めてのエクスタシーを感じたと話します。それ以来、大人になってもあの時のような快感は得られない、欲望はエスカレートするものの、理想の相手が見つからなかったとのことでした。そしてリョウの前でお漏らしし、最高に満足そうな表情をするのでした。
今日の領のバイト先のバーには恵が来ていました。「領くんなんか変わったね。そんなに楽しいんだ?バーテンダーの仕事。」と言うと領は「ああ…」と微笑みます。
高田馬場、領と静香と咲良の3人で食事をします。静香によると「リョウはお客さんからとても評判がいいの。あなたが相手だと年の差を引け目に感じないらしいの。何か特別な理由でもあるのかしら」と尋ねます。すると領は語ります。「母が10年前に亡くなりました。僕が10歳のとき母は37歳でした、風邪をひいて学校を休んでいた日です。母は暗くなる前に帰ってくるから、暖かくしていい子にしてねと言って、よそ行きのワンピースを着て家を出ていきました。その時の記憶が今でも夢として出てきます。夢の中ではどうしても母を引きとめられない。父が帰ってくると、お母さんが心筋梗塞で横浜の繁華街で倒れたとのこと。母が死んでから、大人の女性に年齢を聞いて37歳という返事が戻ってくるとわけもなく嬉しかったのを覚えています。年上の女性に抵抗がなくなったのはその頃からです」と。静香は『領くんは今でもお母さんとの約束を一生懸命守ってるように見える、あたたかくしていい子にしている。』と。咲良は手話で「きっと優しくてきれいな人だったんでしょう」と伝えると、領は涙を流します。「静香さん、ごめんなさい。肩を貸してください。」と言って領はすすり泣くのでした。
娼夫としてリョウは語ります。「厳しい顔、美しい顔、恐れや不安を隠せない顔、女性たちの顔はいろいろだった。だけど欲望をむき出しに現れた人は1人もいなかった。誰もが自分の物語を持っている。それは表面的な飾りに過ぎないという人もいるだろう。でも表面を飾ろうとする気持ちだけで、僕はどの女性も魅力的に思えた。そして欲望の秘密は、その人の傷ついているところや弱いところにひっそりと息づいている。僕は娼夫になり、より自由になった。そして女性一人一人の中に隠されている欲望を見つけて、それを実際の世界に引き出し実現する。それが娼夫の仕事だと考えるようになった」と。
今日の相手はセックスレスの主婦(荻野友里)。出産後、夫との関係を持てず悩んでいました。夫にそれを伝えると「家族とそんなことできるか、気持ち悪い」と拒絶されたとのこと。領は娼夫として、一生懸命彼女の欲望を満たしてあげようと尽くすのでした。
そして領は、より深く女性たちの欲望のジャングルに踏み込んでいきます。
次は熱海の夫婦からでした。余命の長くない車椅子の初老の男・泉川(西岡徳馬)の目の前で、若妻の紀子(佐々木心音)とプレイすることに。泉川は、その様子をビデオカメラで撮りたいと言います。そして紀子からお願いされます。「夫は余命が1年半なんです。私が乱暴にされるのを見ると夫は喜ぶので、痛いのは嫌ですが、できるだけ見せつけるように乱暴にするフリをしてくれませんか。お願いします。」と。人相が分からないようにと泉川からサングラスを渡され、まるでAVのような演技を交えながら行為に及びます。それを撮影しながら見ていた泉川は興奮のあまり我慢できなくなり、2人の様子を見ながら自分自身を慰めるのでした。
静香のマンション。静香と東と領が熱海の夫婦のことを話しています。あの2人は余命や車いすなどの設定も含めて演技だというのです。東も以前呼ばれたことがあり、あの夫婦は手の込んだストーリーを作るので有名だと言って笑っています。静香「でも涙を流しているときはお芝居だとわかっていても悲しくなるんじゃないかな。だってあれだけ歳が違えば旦那に先立たれるのも時間の問題でしょ?」と言い、領にボーナスを手渡します。お客様からプラスアルファの報酬がもらえるようになったら昇格するということで、リョウは東と同じVIPクラスに移ることになりました。
六本木のクラブ。東は言います。「僕の予言は当たったね。リョウさんは絶対成功すると思っていた。なぜならリョウさんは”普通”だから…。こういうクラブで働く男はみんなどこかずれてるっていうか、歪んでるからね。どうして僕がVIP向けに選ばれたか知ってる?どうして僕みたいなのが売れっ子なのか」と言うと、服を脱いで傷だらけの背中を領に見せます。「僕の中で配線がこんがらがってるんだ。痛みだけが間違って脳に送られて本当の快感になる。だから僕につく客は金持ちの変態ばかり。身体をカミソリで切っても、重ねるごとに痛さが全然違うんだ。そんな話をその辺の居酒屋でみんなとわいわいしてみたいよ。でも話してよかった。僕がこんなこと言うと引いちゃう人が多いんだけど、領さんは真剣に聞いてくれた。そっちに行ってもいい?」と言うと、領はうなずきます。「領さんは何もしなくていい。お礼に僕にさせてくれないかな。必死に普通の人の体のことを勉強したんだ。男女問わずにね。いまでは結構上手だって言われるよ。」と言って領の体中を口を使って愛撫します。そして領は東の口でイかされるのでした。僕もお返ししたいという領に、東は「骨を折ってほしい」と言います。そして小指の骨を折ることで東は快感を得るのでした。
顧客の女性と肌を重ねるうちに、リョウは『Le Club Passion』の中でもトップクラスの売れっ子にのし上がっていく一方、大学には全くと言っていいほど足を運ばなくなっていました。そんなある日、バーでは領を心配していた恵は領の娼夫としての仕事を知り「がっかりした」と言います。ホストの田島進也が知らせていたのです。「自分の体をおばさんたちに売ってるんでしょ。汚いよ。」と恵が言うと、「そうだよ、僕は娼夫だよ。でもそれがどうしたって言うんだよ。その辺のホストとやってることは変わらないだろ」と言うと田島進也は「大学まで行ってこんなんでいいのかよ」と言います。領は「死人みたいにつまんない講義受けてどっかの大企業に入るのがそんなに偉いのか?」と言い返します。恵は「じゃあ就職したくないからコールボーイになりましたなんて、本気で言えるの?」と言います。領は「法律に反した仕事でも本当にやりがいがあるし、感動することだってあるんだよ。」口論は続き、恵が「領くんをたらし込んだ女ってそんなにいい人なの?その女にそそのかされて騙されてるんじゃないの?どうせその頭のおかしいおばさんとも寝てるんでしょ!」と言うと、激高した領は「いい加減にしろ!静香さんとは手も繋いでないよ、寝るつもりもないし、それは恵と寝るつもりがないのと一緒だよ!」と言うと恵は黙り込み、店を出ていきました。田島進也は領に「お前と俺は違うんだよ、別にできることがあるはずだろ。おまえは昼の世界でやっていける普通の人間なんだよ。」と言い残し、去っていきます。
次のお客さんは、親子以上に年の離れた未亡人の老女(江波杏子)です。彼女は今日が誕生日だと言う70歳の女性。老女は「私は手を握っただけで大体のことが分かる、あなたは悪くないわ。あなたの話を聞かせて。なんでもいいから。」と言うとリョウはこの前、バーで友達とケンカしたことを話します。「僕の仕事を知って汚いと言われました、でももう少し続けて、自分がどう変わるのか最後までたしかめたい。それまでの僕は女性も世の中も”つまらない”で片付けていた、そんな自分を変えてくれたのは一人の女性のおかげなんです。僕は彼女に褒めてもらいたくて…」と話していると老女は、手を握りしめたまま果てます。年を取るとこんな芸当も出来ちゃうの、と。「あなたの手は悪くないわ」と言い、2回目の絶頂に達します。
リョウは、次から次へと女性の欲望を解放させていくとともに、自分の中で何かが変わり始めようとしていました。
娼年(しょうねん)のネタバレあらすじ:転.静香への想い
その一方で、領はある想いを胸に秘めていました。幼い頃に母を亡くした領は静香にその面影を見出しており、次第に静香への想いを募らせていました。ある日の静香のマンション。ナンバー1を争うほどの売れっ子になったリョウに、静香は「ご褒美をあげるわ。何でも欲しいものがあったりってちょうだい。」と言います。領は「なんでもいいですか?僕と付き合ってくれませんか?」と告白しますが、「私はあなたのお母さんと同じくらいの歳よ」と拒絶されますが、領は「年齢が障害にならないことはあなたが一番わかっているはずだ」と言い、静香とキスをして押し倒します。しかし強引に迫る領を静香はいさめます。領は「なんで止めるんですか、女性やセックスの素晴らしさを教えてくれたのはあなただ!」と言う領に静香は「他の事なら何でもしてあげる。だけど私はあなたとは出来ない」と言います。諦めきれない領は「もう一度、咲良を相手に試験を受けさせてほしい」と頼みました。僕がどれだけ成長したか静香に見てもらいたいと。咲良もそれを承諾します。そして静香もそれを受け入れます。
娼年(しょうねん)の結末:リョウの成長
その試験の前に仕事が入り、リョウは指定された新宿のホテルに向かうと、そこにはなんと恵の姿がありました。領への想いを抱いていた恵は金でリョウを買ったのです。1ヶ月分のバイト代をはたいて来たと言うのです。「待ってたよリョウくん。今日の私はお客様だよ。昼の光の中で、友達や家族が生きてるこの世界で、領くんはその仕事を一生続けるんだよね?この前言ってたでしょ。人には自慢できない仕事でもやりがいがあるし、感動することもあるんだって。だからそれを私の身体で証明して」と言って下着姿になります。
リョウは仕事と割り切りながらも彼女の想いを受け止めて全力で仕事として挑みました。生でしてほしいと言う恵ですが、自分は娼夫だからと断るものの、客の要望だからと受け入れます。「領くん、領くん…」と叫びながら、恵の中でリョウは果てるのでした。恵は「私はずっと領くんがほしかった、でももうわかった、領くんは私がいる世界とは別の世界の人なんだね。これが売れっ子のプロの仕事なんだね。」 もうかつてのようには戻れないことを悟って涙する恵に、リョウは「またいつでもバーに来てほしい、恵はいつだってあの店ではタダだから」と告げて去っていきました。
そして迎えに来ていた静香の車内で領は、静香がかつて娼婦だったこと、咲良は客との間に出来た静香の実の娘であること、そして静香は今エイズウイルスに感染していることを知ります。そのため大きくなった咲良は、お母さんの仕事の手伝いをしたいと申し出ていたことを知ります。そして静香は「どんなに注意してもセックスで感染する可能性はゼロじゃない。あの時、領くんを拒否するのは自制心が必要だった」と言います。静香の想いを受け止めた領は泣きながら「僕がこうしているのは、あなたへの気持ちを確かめたかったからです」と言い、静香の見守る中、咲良との情熱の試験に挑みます。それは以前、領が受けた情熱の試験の時とは全く違う、女性の欲望を完全に満たす、成長した領のすべてでした。領は咲良を通じて、静香と心を通わせ合うのでした。
それから間もなく、『Le Club Passion』は警察に摘発されて営業停止処分となり、静香は逮捕されました。領は静香が獄中から送って来た手紙を咲良から受け取ります。そこには静香から領への大切な話が書かれていました。
「伝えるかどうか迷ったけど、あなたならきっと知りたがると思いました。横浜のクラブの知り合いに連絡を取って聞いたのですが、結論だけ伝えます。あなたのお母様は娼婦でした。繁華街で倒れたのは、急な仕事の帰りだったそうです。でも今の領くんならお母様のことを責めないでくれますよね。憎んだり、軽蔑しないでくれますよね。領くんとお母様、咲良と私は同じ仕事で結ばれていたのですね。つまらない思い込みかもしれませんが、私たちは出会うべくして出会ったのかもしれません。私の病気はこれからどうなるか分かりません。でもまたいつか3人で過ごした日が戻ってくることを願っています。」
それから1年ほどが過ぎ、咲良と共に『Le Club Passion』を再開させたリョウは、未亡人の老女のもとへ来ていました。今日は1年ぶりの老女の誕生日です。今日は手を握るだけではなく、ローションを差し出し、肌を重ね合うのでした。
今の領には、かつて「女なんてつまらないよ」と言っていた頃の無気力な面影はなく、そこには数々の女性との出会いを経て一人前の男性に成長したリョウの姿がありました。
以上、映画「娼年(しょうねん)」のあらすじと結末でした。
松坂さんがよくこの役を演じたなと思うぐらいファンには衝撃の作品だと思います。
アダルトな部分が多いもののどの場面でも悲しみの方が強く感じました。
多数の女性と関わっていくうちに何も希望がなかった森中領も少しは成長したのではいかと思います。
痛々しい思いを持った者、ただ欲望だけに縋る者。人間の良さも悪さも感じられる映画です。