劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンの紹介:2020年日本映画。「第5回京都アニメーション大賞」大賞を受賞した暁佳奈の小説をアニメ化した作品で、テレビシリーズ(2018年放映)および劇場版作品「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形」(2019年公開)に続くシリーズ最終章として制作されました。手紙代筆業『自動手記人形』として様々な人々の想いを伝えていくうちに『愛』の意味を知っていった主人公ヴァイオレット・エヴァーガーデン。その最後の仕事と『愛』を巡る旅路の果てを、かつてヴァイオレットのお世話になった女性の孫が足跡を辿るという形で浮き彫りにしていきます。
監督:石立太一 脚本:吉田玲子 キャラクターデザイン・総作画監督:高瀬亜貴子 世界観設定:鈴木貴昭 声優:石川由依(ヴァイオレット・エヴァーガーデン)、浪川大輔(ギルベルト・ブーゲンビリア)、子安武人(クラウディア・ホッジンズ)、木内秀信(ディートフリート・ブーゲンビリア)、遠藤綾(カトレア・ボードレール)、内山昂輝(ベネディクト・ブルー)、茅原実里(エリカ・ブラウン)、戸松遥(アイリス・カナリー)、水橋かおり(ユリス)、佐藤利奈(リュカ)、諸星すみれ(デイジー・マグノリア)ほか
映画「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンの予告編 動画
映画「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」解説
この解説記事には映画「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンのネタバレあらすじ:起
デイジー・マグノリア(諸星すみれ)は祖母アンの葬式に参列するため、両親と共にとある田舎町を訪れました。デイジーはアンの遺品の中から、大切に保管されていたいくつもの手紙の束を見つけました。それは曾祖母クラーラから送られたとても大切な手紙であり、早くに他界したクラーラはアンのために手紙代筆を請け負うあるひとりの“自動手記人形(ドール)”に毎年彼女の誕生日に必ず手紙が届くよう手配したのだというのです。手紙は50年間に渡って届けられ、デイジーは祖母の想い出と歴史が込められたその手紙の入ったブリキ箱をじっと見つめていました。
葬式が終わり、両親は仕事のため一足早く戻っていきました。そんな両親に憎まれ口を叩いたデイジーはそのまま一人アンの家に残ることにし、手紙を読んでいるうちにクラーラが手紙の代筆を頼んだというドールがどうしても気になりました。そのドールの名前は“ヴァイオレット・エヴァーガーデン”。デイジーは船に乗り、かつてヴァイオレットが勤めていたというライデンの街にある「C・H郵便社」に向かいました。確かに過去に「C・H郵便社」には数々のドールが勤めてはいましたが、調べた結果ヴァイオレットは18歳の時にドールを辞めたということが明らかになりました。そこからデイジーのヴァイオレットの足跡を辿る旅が始まりました―――。
劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンのネタバレあらすじ:承
―――遠い昔、名もない孤児だった少女は海軍大佐のディートフリート・ブーゲンビリア(木内秀信)に拾われ、ディートフリートの弟で陸軍少佐のギルベルト(浪川大輔)に預けられました。ギルベルトは少女に花の名前を取って“ヴァイオレット”(石川由依)と名付け、それ以来ヴァイオレットは女子少年兵としてギルベルトと共に幾多の戦場を渡り歩きましたが、ある激戦の最中にヴァイオレットは両手を失い、重傷を負ったギルベルトを助けることもできず生き別れることとなりました。
それから1年後。ギルベルトは生死不明のまま遂に戻ってくることはありませんでした。機械の義手を手に入れたヴァイオレトは後見人から“エヴァーガーデン”という苗字を与えられ、ギルベルトの親友だったクラウディア・ホッジンズ(子安武人)が社長を務める「C・H郵便社」でドールとして働くことになりました。ヴァイオレットに残されたのはかつてギルベルトから買ってもらったエメラルドのブローチ、そして別れ際にギルベルトが発した「心から愛してる」という言葉でした。感情の起伏に乏しく、“愛”という言葉の意味も知らなかったヴァイオレットはそれ以来代筆業を通じてその意味を考えるようになっていきました。
代筆の依頼が3ヶ月待ちという人気ドールに成長したヴァイオレットは、ギルベルトの母の月命日になると彼の代わりを担うかのように墓参りに出向いていました。そこにディードフリードが現れ、ギルベルトのことはもう忘れるべきだと告げましたが、ヴァイオレットにとっては決して忘れることはできませんでした。ヴァイオレットが去った後、ディートフリートは彼女が落とした赤いリボンを拾い、「C・H郵便社」に届けに向かいました。ヴァイオレットの内に秘めた想いを読み取っていたディートフリートは今度所有している船を処分する際にギルベルトが使っていた本やおもちゃなどを受け取らないかと呼びかけました。ヴァイオレットは今までにない感情を露わにして欲しいと返答し、その場にいた者たちは驚きを隠せませんでした。
その頃、とある孤島ではどこか見覚えのある、右目と右手が不自由なジルベールという男が地元の少年から手紙の代筆を依頼されていました。男は戸惑いながらも依頼を引き受けることにしました。
劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンのネタバレあらすじ:転
時を同じくして、ヴァイオレットはあるひとりの少年ユリス(水橋かおり)から代筆の依頼を受けていました。ヴァイオレットは3ヶ月先まで予約が入っていたもののユリスの依頼を引き受けることにし、早速タイプライターを持ってユリスが入院している病院へと向かいました。重い病を患うユリスは長きにわたる入院生活のせいか家族や親友のリュカ(佐藤利奈)などに辛く当たってしまい、どうしても素直になれない自分にもどかしさを感じていました。ユリスはもし自分が逝ったら家族とリュカに手紙を届けてほしいと頼み、そんなユリスの心情を悟ったヴァイオレットは彼と指切りを交わして必ず手紙を送り届けると約束しました。その後、ヴァイオレットはディードフリードに案内されてブーゲンビリア家のヨットに向かい、兄弟の昔話を聞き、ギルベルトが使っていたテーブルゲームや本を頂いて大切そうに抱きしめながら帰路につきました。
そんなある日、荷物を仕分けしていたホッジンズや配達員のベネディクト・ブルー(内山昂輝)は、倉庫で1通の差出人不明の手紙を見つけました。その筆跡は紛れもなくギルベルトのものと酷似しており、ホッジンズは戸惑いながらもヴァイオレットに手紙の件を伝えました。ヴァイオレットは目に涙を浮かべながら、もしかしたらギルベルトは生きているのではという期待と不安に胸を焦がしていました。
その頃、手紙の差出先であるジルベールのいる孤島では島民たちが歌を歌いながら花輪を海へ投げていました。ジルベールは島の老人から、この島の若い男は全て戦争へ行き誰も戻って来なかったこと、今や島に残されたのは女子供と老人しかいないことを告げられ、「君が島のために尽くしてくれて本当に嬉しい」と感謝の意を伝えられていました。
ヴァイオレットとホッジンズは意を決して、真相を確かめるべく孤島へと向かいました。ホッジンズは島の少年への聞き込みから、このジルベールこそギルベルト本人であることに間違いないと確信しました。ホッジンズは単身でギルベルトの家に向かいましたが、ギルベルトは過去は全て捨て去ったと言い放ち、ヴァイオレットに会うことを頑なに拒みました。ホッジンズから事の顛末を聞いたヴァイオレットはそれでも諦めきれず、自らギルベルトの元に向かいましたが、ギルベルトはヴァイオレットを冷たく突き放してしまい、衝撃を受けたヴァイオレットは自分が必要とされていないことを悲しんで走り去っていきました。見かねたホッジンズは家の中にいるギルベルトに怒号を上げ、その夜は島に唯一ある灯台の郵便局に泊まることにしました。
その頃、ギルベルトは過去を振り返っていました。ギルベルトは過去の戦争でヴァイオレットを殺戮の兵器として利用してきたことを深く後悔しており、自分がいない方が彼女にとって幸せなのではないかと感じていました。あの戦いの後、辛うじて一命を取り留めていたギルベルトは全ての過去を捨て、故郷に戻らず各地を転々として戦争の爪痕を見つめ直す日々を送っていました。そしてギルベルトはいつしかこの島に辿り着き、これからは誰にも何も知らせずひっそりと生きていこうと決意していたのです。
劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンの結末
灯台の郵便局に「C・H郵便局」から電報が入りました。それはユリスが危篤に陥ったという知らせでした。折しも島は嵐に見舞われており、島から出ることのできないヴァイオレットは同僚のアイリス・カナリー(戸松遥)とベネディクトに頼んで病院に向かわせました。しかし、家族宛ての手紙までは書き終えていたもののまだ肝心のリュカ宛ての手紙は書き上がっておらず、その間にもユリスの容体は悪化していきました。アイリスたちは最後の手段としてリュカの家に電話をかけ、ユリスは受話器越しにリュカにこれまで言えなかった感謝の気持ちを伝えました。リュカもユリスとの変わらぬ友情を伝え、そしてユリスは静かに息を引き取りました。約束通りに手紙を受け取ったユリスの弟は、兄の遺体に笑顔で感謝の意を伝えました。
翌日、ヴァイオレットはギルベルトに手紙を書き、彼に会うことなくホッジンズと共に帰りの船に乗り込みました。手紙には「少佐(ギルベルト)、あなたに教えていただいたことは全て覚えています。詳細に頂いた”愛してる”の意味も、今は少しは分かるのです」と書かれていました。手紙を読んだギルベルトはかつて言葉も感情も知らなかったヴァイオレットの精一杯の気持ちに心を打たれ、必死で船を追いかけました。ギルベルトの声を聴いたヴァイオレットは迷わずに船から海に飛び込み、砂浜でようやく対面を果たしたヴァイオレットとギルベルトは互いの想いを確かめ合いました。
その後、ヴァイオレットは依頼された仕事を全てこなしてから「C・H郵便局」を辞め、ギルベルトと一緒に孤島で暮らし始めました。ヴァイオレットは島の灯台の郵便局で、戦争で傷ついた島民たちのために手紙代筆業を続けました。ヴァイオレットはユリスから教えてもらった指切りをギルベルトと交わし、二人はそれから穏やかで幸せに暮らしました―――。
時は流れ、ヴァイオレットの功績を称えた島の記念切手が発行されました。その色はヴァイオレットの花の色である紫に彩られていました。ヴァイオレットの足跡を辿るデイジーの旅はこの孤島で終わりを迎え、デイジーは故郷の両親に宛てた手紙を島のポストに投函しました。手紙には「ずっと素直になれずにごめんね、パパ、ママ、ずっと愛してるよ」としたためられていました。
以上、映画「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のあらすじと結末でした。
「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」感想・レビュー
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愛と涙
美しかった。 -
野に咲く花のように繊細で優しい世界。
「ヴァイオレットエヴァーガーデン」は、私にとっては本当に大切な心に残る作品の1つです。美しい映像、美しい音楽、美しい表現。それら全てを満たしたうえで、ヴァイオレットという1人の少女が大人の女性となるまでに関わった人々の心を、手紙というツールに主眼をおいて描き出しています。全編を通して優しさと愛に溢れた作品です。
映画では、ヴァイオレットがずっと慕い続けていた人、「愛」という言葉すら知らなかった頃から愛を注いでくれた人、どれだけ離れようとも彼女にとって誰よりも大切な人…そんな「少佐」へ、ついにヴァイオレット自身の手紙が届くすべてを見届けることができます。彼女自身の想いと、代筆業という仕事にかける(つまりは手紙で繋がる誰かの想いへの)誠意と熱意を、本当に強く感じました。
私はこの作品に、ヴァイオレットに出会えたことを心から幸せに思います。