蛍火の杜へ(ほたるびのもりへ)の紹介:2011年日本映画。『夏目友人帳』の原作緑川ゆきの初期短編、映像化。山深い日本の原風景の中で展開される人と人ならざる者の交流。そしてお互いに惹かれあっていく。
監督:大森貴弘 出演:内山昂輝(ギン)、佐倉綾音(竹川 蛍)
映画「蛍火の杜へ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「蛍火の杜へ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
蛍火の杜への予告編 動画
映画「蛍火の杜へ」解説
この解説記事には映画「蛍火の杜へ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
蛍火の杜へのネタバレあらすじ:神域の森で迷子
就職面接に向かうヒロイン、蛍はバス停で思い出を語り始める。六つの時、妖怪の住む山神の森で迷子になった彼女の前に現れた仮面の青年、人間に触れられると消えてしまうと言う彼は、この森に棲む者で、山神様がそういう術をかけただと言う。手を繋げないので、木の端をそれぞれに握りながら参道まで蛍を連れて行き、鳥居の所で別れた。また会える?と蛍が聞くと、ここは入ってはいけないと言われているだろうとギンは答えた。蛍が祖父に森の事を聞くと、そういう言い伝えがあるのだと言う。妖怪見たさに入ったことがあるけれど、見たことはない。友達は妖怪たちの祭りに紛れ込んだのではないかと話した。夜、蛍は、入れば心を惑わされ帰れなくなると言う人の言葉を思い出していた。
蛍火の杜へのネタバレあらすじ:妖怪と人間と
翌日、蛍が再び森の入り口に行くと、鳥居の所で待っていたギンは涼しいところへと蛍を連れて行った。森の中にうごめく気配を感じると、そこには妖怪のようなものがいて、人間の子供か、食べてもいいかと尋ねた。ギンは友達だからダメだよと答えた。蛍とギンはそれから来る日もギンと森の中を駆け回って遊んだ。ある日、蛍は草原で昼寝をするギンのお面を興味本位で取ってみた、するとそこには普通の人間の青年の顔があった。目覚めたギンに、なぜお目をしているのと聞くと、お面でもしていないと妖怪に見えないだろうと答えた。蛍が、この森へ来るのは夏に祖父の家へ遊びに来ている間だけだと話すと、ギンは来年も来られるかと聞いた。それからというもの蛍は夏を心待ちにするようになった。また、ギンも約束の夏には山の鳥居で蛍を待っていた。人間に触れられるとギンが消滅してしまうと知っている森の妖怪たちは、二人が仲良くなっていくのを心配し、あるものは蛍に触れてくれるなよと言い含めた。幾度か夏を繰り返したある日、蛍の登っていた木の枝が折れてしまう。ギンが落ちる蛍を受け止めないでいると、蛍は、何があっても私に触れないでねと泣いた。
蛍火の杜へのネタバレあらすじ:歳のずれてゆくギンと蛍
中学生になっても通う蛍は人間より成長が遅いギント目線が近づいていることに気づいた。そして、自分は年を重ねるごとに変わり、ギンはずっと出会った頃のままで、そのうちきっと、ギンの年を追い越してしまうだろうと予感した。縁側で祖父とスイカを食べながら、冬は寒いだろうと祖父が話すと、明日帰る蛍はマフラーをギンに上げ、また来年と言って去った。その冬、クラスの男子と手を繋いだ蛍は、ギンに会いたい、ギンに触れたいと思うようになった。同じ頃、雪の降る山でギンはマフラーをしていた。あっという間に高校生になった蛍。最近は飛びついてこないとギンが笑うと、そのたびに棒で殴られたからだと蛍は返した。そして三年して、高校を卒業したら、このあたりで就職をする、そうしたら、もっと一緒にいられるとも。ギンは自分が実は妖怪ではなく、もはや人ではない事を蛍に話した。赤ん坊の頃、森に捨てられ、ほんとはその時死ぬはずだったけれど、山神様が情けで生かしていてくれる成仏できない魂なのだと。だからこそ本当の生きる者に触れるとギンは消えてしまう。忘れてもいいんだよというギンに 忘れないでね、と返す蛍は、いつか時が自分たちを分かつだろうけど、それまで一緒にいようと心に誓った。
蛍火の杜への結末:妖怪たちの祭り
その夏、妖怪たちの祭りにギンは蛍を誘った。それは妖怪たちが人間のマネをして遊ぶ祭りで、面をしたものや、異様のもの、人間の姿に化けたものが集まっていた。そこには時々人が迷い込むこともあるらしい。ギンは蛍に迷子にならないよう手を繋ぐ代わりに手拭いで互いの手首で結わえた。二人は花火を見、雲のような綿あめを買ったりした。面をしたものや異様が集まる。人に化けているものもいた。時には人が迷い込むこともあるらしい。ギンは、もう夏を待てない、人ごみをかき分けて会いに行きたくなってしまうからと言って、お面を蛍にかけると、そっと口づけた。蛍は来年の夏、彼はもうあの場所では待っていてはくれないだろうと予感した。そんな二人の横を子供が通り過ぎた。転びそうになった子供の手を、うっかりつかんでしまったギンは、消え始めてから、その子供が人間だったのだと気づいた。消えてゆく刹那、蛍はギンを抱きしめた。周りの妖怪たちは、やっと人に触れたいと思ったんだね、やっと人に抱きしめられたんだねと、喜んだ。しばらく夏を心待ちにできないと蛍は抜け殻の服を抱きしめて思った。そして、現在、蛍は思い出のあるこの地に根付こうとしている。
以上、映画「蛍火の杜へ」のあらすじと結末でした。
蛍火の杜へのレビュー・感想:思春期の大切な思い出と日本の原風景
思春期の思い出はとかくその人の中で核や人生の中での基盤になることが多い。この話の中では、祖父の家で過ごす夏の時間が、蛍の中でどれだけ重要なものだったかというのがわかる。そして、夏を迎えるたびに少しずつ変化していく自分と、変わらないギンを知り、いやがおうにも人と人ならざる者だという事も、口に出さないながら気づいたに違いない。そして、彼が消える時まで、触れてはならないと言うルールを自分から侵すことはなかった。それは彼女が自分たちの違いを何より尊重していたからのように思える。
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