風立ちぬ(かぜたちぬ)の紹介:2013年日本映画。スタジオジブリ作品。伝説の戦闘機『ゼロ戦』を設計した実在の人物である『堀越二郎』の半生と、主人公『私』と結核を煩うその妻の療養生活を描いた堀辰雄の同名小説『風立ちぬ』を組み合わせたストーリーのアニメーション映画。不景気、貧乏、病気、そして大震災と戦争の時代。そんな時代を生きた堀越二郎。イタリアの航空技術者『ジャン二・カプローニ』との時空を超えた友情。神話とまで化した戦闘機・零戦の誕生。そして妻・菜穂子との出会いと別れ。美しい飛行機を作りたいという純粋で呪われた夢を抱いて、力を尽くして生きた青年を描いた物語。
原作・監督:宮崎駿 プロデューサー:鈴木敏夫 音楽:久石譲 声の出演:庵野秀明(堀越二郎)、瀧本美織(里見菜穂子)、西島秀俊(本庄季郎)、西村雅彦(黒川)、スティーブン・アルパート(カストルプ)ほか 主題歌:「ひこうき雲」荒井由実
映画「風立ちぬ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「風立ちぬ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
風立ちぬの予告編 動画
映画「風立ちぬ」解説
この解説記事には映画「風立ちぬ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
風立ちぬのネタバレあらすじ:起
『堀越二郎』は裕福な家庭に生まれ、勤勉で、優しく、正義感が強く、また飛行機が好きな少年であった。そんな二郎は夢の中でイタリア人の飛行機技術者『ジャンニ・カプローニ』と出会います。
近眼でも飛行機の設計はできるかと、二郎はカプローニに問う。カプローニは自分も飛行機を操縦できないと答える。そうして二郎は飛行機の作り手を志すと決める。
風立ちぬのネタバレあらすじ:承
大正十二年、二郎は飛行機の技師となるため東京の大学に入学していた。帰省していた実家から東京に戻る途中、二郎は少女とその女中に出会う。そして関東大震災が起こる。混乱の中、二郎は二人を助けてから立ち去る。
二年後、助けた女中が訪ねてくるが、二郎は不在で入れ違う。昭和二年、二郎は名古屋の三菱内燃機株式会社に就職。昭和四年、ドイツの飛行機会社であるユンカース社を視察する。その後、西回りで帰国し他のヨーロッパ諸国を視察する。昭和七年、二郎は新型艦上戦闘機の設計主務者に抜擢される。昭和八年、艦上戦闘機は完成するが、不恰好な機体であった。飛び立つも空中分解する。
二郎、軽井沢で休養をとる。そこで、助けた少女、菜穂子と再会する。二人は恋に落ちる。菜穂子との交流の中で二郎は、英気を取り戻す。二郎は菜穂子との婚約を菜穂子の父親に認めてもらう。菜穂子は結核にかかっていたが、二郎はそれでも婚約する。そして、結核を治したら結婚することを約束して分かれる。
風立ちぬのネタバレあらすじ:転
仕事に追われていた二郎に菜穂子が喀血したという知らせがくる。東京に向かい、二郎と菜穂子は再会する。しかし、重要なプレゼンを明日に控えていた二郎はその日のうちに名古屋にとって返す。菜穂子は結核を治す為に高原療養所にいくことを決める。しかし、二郎からの手紙を読む中で感極まり、菜穂子は療養所を抜け出し二郎に会いに行く。自分は治らないと悟り、残りの時間を二郎と過ごすためだった。
そして、上司夫妻を仲人にささやかな結婚式を上げ、一緒に暮らす。二郎は菜穂子に見守られながら零戦の原型となる新型艦上戦闘機を完成させる。テスト飛行は大成功だった。菜穂子はその日に置手紙を残してそっと療養所へと戻るのだった。好きな人に美しいところだけを見せたのだった。
風立ちぬの結末
こうして日本は焦土と化した。二郎は夢でカプローニと邂逅する。二郎の想像的寿命はどうだったかとのカプローニの問いに、力は尽くしたが、終わりはズタズタだったと二郎は答える。結果的に国を滅ぼしたことにかわりなかった。夢の中をあの零戦が飛んでいく。カプローニはそれを見て、美しい、いい仕事だと告げる。二郎は一機も戻っては来なかったと付け加える。
カプローニはここで待っていた人いると告げる。遠くに菜穂子が現れ、生きてと告げてから消えさる。二郎は声を震わせて、何度も礼を告げる。カプローニは言う。「君は生きねばならん…その前に、寄っていかないか?…いいワインがあるんだ」二人は夢の草原を歩き出す。
以上「風立ちぬ」のあらすじと結末でした。
「風立ちぬ」感想・レビュー
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カプローニと時代を超えて話をしたり、軽井沢の別荘でのシーンが映画の時系列になっていたりと、わかりにくい部分はたくさんある。子供が視聴するってことは考えれば、震災、世界恐慌、ナチス台頭、大戦をそのまま描くのは難解に受け取られるかもしれない(ドイツのユンカース社視察時に、夜、社員が誰かに追われて闇に消えてしまうシーンがある。おそらくナチスの台頭を表現したかったのだろう。)
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カプローニは、「創造的人生の持ち時間は10年だ」と二郎に言う。菜穂子と結婚し、菜穂子が死に、零戦をついに完成させた怒濤の半生を最後に振り返り、カプローニの「君の10年はどうだったかね?」という質問に対し、二郎は「力は尽くしました…終わりはズタズタでしたが」と答える。このやりとりが全てだったのではないかと思う。10年間を全力で駆け抜けた半生。自分の作った飛行機で国が滅んでしまう。愛する人も失ってしまう。ここで描かれているのがフィクションだろうがノンフィクションだろうが、ジブリだろうが宮崎駿だろうが関係なく、最後のカプローニと二郎の会話が全てであり、ここで何を思う?この人の全力の反映をどう考える?と観客に問いかけているのでしょう。そして荒井由美が流れる。いい余韻の終わり方ではないでしょうか。
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二郎という人間を描くにあたっての純粋無垢な部分、技術者気質な部分を捉えているのが、庵野秀明の声でしょう。作品にとても合っているように思えた。そんな二郎と菜穂子の恋愛は大げさなロマンティックなものにすると不自然で、この繊細な描き方がよかった。愛情あふれる2人のやりとりに納得です。黒川夫人はかっこよすぎ。 『風立ちぬ』は余韻があるし、胸を熱くさせる作品でした。
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このアニメは今まさに航空業界で活躍しようと奮起している息子の将来を思わせるような映画でとても興味深く、主人と息子の3人で見てきました。実際かぶる部分が有りウキウキしながら見ていました。息子は紙飛行機を幼少の頃から作製していてよく3人で公園に飛ばしに行きました。主人公が紙飛行機を飛ばす場面で、その忘れかけていた記憶を思い出すことが出来て良かったです。
飛行機業界に入っていく人達の多くは、全てここから始まるのですね。「創造的人生の持ち時間は10年間だ」この言葉、我々は嫌という程よく理解できる人生を過ごしてきました。ほんといい教訓を若者に与えてくれる良いアニメだな、今後もこのような人生訓を織り交ぜたアニメを制作していって欲しいです。
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本当に心に何かを問われるような作品でした
堀越二郎は飛行機の設計者になることを夢見る少年。イタリアのカプローニ伯爵なる飛行機の設計者を本で知った二郎は、夢の中で彼と出会う。目が悪くても設計者になれるか、と尋ねる二郎に彼はなれる、と答える。飛行機は美しい夢だ。彼の言葉に勇気づけられ、二郎は順調に設計者を目指していく。帝国大学工学部航空学科に入学した二郎は列車で東京へ向かう途中で関東大震災に遭ってしまう。同じ列車に乗っていた菜穂子のお付の女性が足を骨折するが応援を呼んで救出する。関東大震災後の東京、就職した三菱内燃機株式会社の名古屋を舞台に、友人であり同僚の本庄、上司の黒川ら仲間とともに飛行機、戦闘機の設計を進めていく。 しかし自社の飛行テストは失敗に終わる。最終的には零戦が完成するという1人の青年の情熱を情熱を描いたプロジェクトXである。
同時に描かれるのは、里見菜穂子との恋愛。夏、失意を拭いきれない二郎は軽井沢を訪れ、そこで菜穂子と再会。彼女こそが震災の時に助けた少女だった。交流するうちに二人は恋に落ち、菜穂子は自分は結核だと告白する。震災時の菜穂子との出会いから、別荘のある軽井沢での再会、そして恋におち結婚。菜穂子が結核で余命幾何であるにも関わらず、零戦の設計にほとんど眠らずに没頭する二郎を支え続ける。
結核が治ってから結婚する予定だったが、二郎が秘密警察に目をつけられたこと、菜穂子が恋しさに山の病院を抜け出してきたことなどが重なり、上司夫婦立ち合いのもとに結婚。お互いに慈しみあって日々を過ごしながら、二郎は手掛けた飛行機の飛行テストを迎える。
菜穂子はその朝、手紙を残して山の病院へと帰ってしまう。飛行テストは無事成功するが、二郎は菜穂子がいなくなってしまった直観を抱く。菜穂子の死について直接的なシーンはない。要所要所でのカプローニとの会話のシーンが幻想的で、戦争や結核による死という背景がありながらも、二郎と菜穂子のラブストーリーは決して悲壮感に包まれるのではなく、菜穂子が「あなた、生きて」と呼びかけて去っていくように、希望の余韻を残した温かな作品となっている。