散歩する侵略者の紹介:2017年日本映画。黒沢清監督が、劇団イキウメの舞台を原作に侵略SFに取り組む。とある町で人知れず三体の侵略者が活動を始める。彼らは、人間の体を乗っ取り、別の人間からある概念を奪うことによって人間のもつ様々な概念を学んでいく。全く別人になってある日帰ってきた夫を松田龍平が、彼に困惑しながら夫婦の暮らしを作り直す妻を長澤まさみが、侵略者に独占取材するジャーナリストを長谷川博己がそれぞれ演じる。
監督:黒沢清 出演者:長澤まさみ(加瀬鳴海)、松田龍平(加瀬真治)、高杉真宙(天野)、恒松祐里(立花あきら)、前田敦子(明日美)、満島真之介(丸尾)、長谷川博己(桜井)、ほか
映画「散歩する侵略者」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「散歩する侵略者」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
散歩する侵略者の予告編 動画
映画「散歩する侵略者」解説
この解説記事には映画「散歩する侵略者」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
散歩する侵略者のネタバレあらすじ:起
ある町で起きた一家惨殺事件。それは平和な日常が少しずつ脅かされていく序章でした。現場から立ち去った血まみれのセーラー服の少女・立花あきらは、ふらふらと車道の真ん中を歩いて行き、彼女を避けようとした自動車が衝突事故を起こします。
一方、同じ町に住む加瀬真治は数日間の行方不明の後に見つかり、妻の鳴海は病院で夫を引き取ります。病院で鳴海が見た夫は穏やかな話し方ながら会話の内容は要領を得ず、かつての夫とはまるで別人のようになっていました。医師からは一時的な記憶障害や若年性のアルツハイマーなどを疑われますが、とりあえず様子を見ることになった真治は鳴海と一緒に家へと戻ります。しかし、もともと浮気性があり真治との夫婦関係が冷え切っていた鳴海は、これからの生活に辟易としているようでした。「分からないことだらけだ」と話す真治は鳴海に「ガイドになってほしい」と話します。
さらにもう一方では週刊誌のライターである桜井が自衛隊と米軍の不穏な動きを調べるためにこの町に来ていましたが、急遽一家惨殺事件の取材を任されてしまいます。事件現場に行った彼は取材の途中で「天野」と名乗る若者に声をかけられ、彼もまた、立花あきらの行方を探していると話すのでした。桜井が借りていたテレビ中継車に天野は興味を抱き、桜井に自分の「ガイド」にならないかと依頼します。天野は自分が宇宙から来たと話し、その様子を話し半分に聞いていた桜井は、暇つぶし程度にその依頼を引き受けるのでした。
鳴海の家には妹の明日美が訪れ、明日美は何も覚えていない様子の真治を興味深く見つめながら話しかけます。家族の話題になると真治は明日美に「家族」とは何かについて問い、家族という言葉の意味について教えてもらった真治は、そのまま明日美の頭の中にある「家族」の概念を奪ってしまうのでした。明日美はふらふらとその場にへたり込み、心配する鳴海に急によそよそしい態度をとって家から出て行ってしまいます。
散歩する侵略者のネタバレあらすじ:承
真治は鳴海の忠告を聞かずに外へと出ていき、とある一軒家に住む男性と出会います。真治は男性とのやりとりの中で、物と所有者の関係を表す格助詞「の」の概念を奪ったことで、男性の性格は大きく変化してしまうのでした。その後も野良犬に対して話しかけたことでケガをしてしまう真治ですが、鳴海は真治がいなくなるたびに探し出して手当を行っていました。鳴海は真治の素直な言葉に少しずつ昔の気持ちを思い出すのでした。
一方、桜井と天野はあきらが収容されている病院を見つけ出します。親族を装って面会しようとする桜井たちの前に刑事が立ちはだかりますが、天野とあきらは刑事から「自分」と「他人」という概念を奪ってしまうと、刑事はまるで人が変わったように桜井たちをとがめることもなく、逃げるのを容認してしまうのでした。天野やあきら、真治たちは人間の概念を奪い取ることで人間の言葉の意味を学習し、奪われた人間はその概念が頭から抜け落ちてしまうのでした。
そして彼らの目的は地球の侵略であり、3人の宇宙人は地球に派遣され、人間と接触しながら概念を集めているのでした。桜井は天野たち宇宙人による侵略を防がなければと思いつつも、もう一人の仲間を探すという彼らに密着取材することになります。彼らはガイドから概念を奪うことはせず、行動を共にしていた桜井は、彼らから人間の「サンプル」として生き残らないかと勧められるのでした。
一方、イラストレーターである鳴海はできあがったイラストをもっていった会社に行きますが、鳴海が描いたデザインは酷評され、社長から「言われたことをやれば良い」と叱られてしまいます。そこに真治が現れ、社長に「仕事とは何か」を問い、その概念を奪ってしまうのでした。「仕事」の概念を奪われた社長は突如オフィスで遊び始め、社員や鳴海を困惑させます。真治は自分が真治の体を乗っ取った宇宙人であると鳴海に話します。真治と鳴海は仕事場をあとにし、2人で行動を共にするのでした。
散歩する侵略者のネタバレあらすじ:転
桜井はひとりでいるところを厚労省の役人・品川に声をかけられ、立花あきらをはじめ多くの人が新種のウイルスによって被害を受けていることを知らされます。桜井は宇宙人2人と行動を共にしていることは告げませんでした。品川は桜井に発信機を持たせ、何かあったらスイッチを入れるようにと話してその場をあとにします。桜井やあきらたちは倉庫に忍び込み、地球にある部品を使って宇宙に信号を送るためのアンテナや送信機を作っていました。
そこへ警察がやって来てあきらを発見すると応援を呼ぼうとしますが、あきらは警察官から拳銃を奪うと2人の警察官を殺害してしまうのでした。追手が来る前に場所を変えようと移動した桜井たちですが、桜井が発信機を持たされていたことで居場所がバレてしまい、そこにも追手がやって来ます。彼らは武装しており、あきらに襲い掛かりますが、あきらはマシンガンを持った追手を返り討ちにしてしまうのでした。
一方で真治たちも厚生労働省の人間に尾行されていました。鳴海と真治は追いかけてくる彼らを振り切ろうとしますが、真治はひとり、彼らのもとに行ってしまいます。真治が概念を奪ったことで逃げていく彼らですが、心配した鳴海は真治に駆け寄り「ひとりにしないで」と涙を流し、そんな鳴海を見て真治も彼女を抱きしめるのでした。教会に立ち寄った真治はそこで神父に「愛」について質問しますが、神父は「愛とは自分の中にある」と話します。これまで他人の概念を奪うことで学習してきた真治は面食らった様子で、愛の概念を奪うことはできないのでした。
鳴海は病院から連絡を受け、真治がウイルスに侵されている可能性があるとして病院へ連れていきますが、病院には奇病の患者があふれ、自衛隊や医者たちの様子から不安になった鳴海は真治を連れて病院をあとにします。家に戻るとそこには桜井の姿があり、桜井は鳴海に「宇宙人同士を接触させてはダメだ」と忠告するのでした。
散歩する侵略者の結末
他の宇宙人2人には黙って鳴海の家へとやって来た桜井ですが、天野とあきらは桜井のあとをつけていました。ついに3人は顔を合わせることになり、すぐさま鳴海は真治を車に乗せてその場を去っていきますが、それでも宇宙人たちにとっては十分な接触でした。もはや宇宙人たちの侵略が始まるのは時間の問題であり、鳴海は落胆してしまいます。鳴海と行動しているうちに「真治が俺の一部になったのか、俺が真治の一部になったのか分からない」と話す真治には宇宙人ながら鳴海を思う気持ちがあり、「もう一度やり直せる」と鳴海に話します。
追ってきたあきらたちに対して鳴海とともに逃げる選択をした真治は、阻止しようと車道に飛び出してきたあきらを車で撥ねてしまいます。運転を真治に代わりその場をあとにした鳴海たちはできるだけ遠くの場所へと走っていくのでした。車に轢かれたあきらは別の人間の体に入ることが億劫になり、送信機を天野に渡してそのまま息を引き取ってしまいます。
廃工場へとやって来た天野と桜井はアンテナと送信機を取り付ける準備をしますが、そこへ品川たちがやって来て天野を抹殺しようとします。桜井を説得する品川ですが、そこに天野が現れ、品川から「邪魔」という概念を奪ってしまうのでした。直後に銃撃戦となり、追手を全滅させる天野ですが、自分も重症を負ってしまいます。瀕死の状態の天野に桜井は自分に乗り移ることを提案しますが、天野は送信機を託すとその場で息を引き取ってしまうのでした。
桜井はひとりアンテナと送信機を操作し、宇宙人に情報を送ります。その直後、航空機による爆撃が行われ、桜井は木っ端微塵に吹き飛んでしまうのでした。ホテルにたどり着いた真治はそこで鳴海から「愛」の概念を奪ってほしいとお願いされます。はじめは拒んでいた真治ですが、言われるがままに愛の概念を奪うと、今まで見えていた景色がまるっきり違って見えるのでした。やがて宇宙人による地球への侵略が始まりますが、それは途中で終わってしまいます。
数か月後、真治はとある病院におり、そこには今回の侵略で生き残った人々が大勢運ばれていました。そこには人間らしさを取り戻した真治とは対照的に、感情を失ってしまったような様子でベッドに腰かけている鳴海がおり、真治はずっと鳴海のそばにいることを決意するのでした。
以上、映画「散歩する侵略者」のあらすじと結末でした。
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