THE 有頂天ホテルの紹介:2006年日本映画。THE 有頂天ホテルは、大晦日に起こるホテルマンとそこに泊まる数多くの訳アリ客たちとのトラブル劇。年が明けるその瞬間まで宿泊支配人(役所広司)の心労は止まない。稀に見る豪華キャスト陣と演劇舞台作家三谷幸喜がメガホンをとったリアルタイムストーリー。
監督:三谷幸喜 キャスト:役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、唐沢寿明、西田敏行、篠原涼子、戸田恵子、生瀬勝久、麻生久美子、YOU、オダギリジョーほか
映画「THE 有頂天ホテル」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「THE 有頂天ホテル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「THE 有頂天ホテル」解説
この解説記事には映画「THE 有頂天ホテル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
THE 有頂天ホテルのストーリーについて
「お帰りなさいませ、お客様。」新しい年を今まさに迎えようと、役所広司演じる副支配人をはじめ従業員が笑顔を絶やさず各々の仕事に力を入れる。無事にカウントダウンを行えるように。けれど従業員だって人間、職務を遂行しているだけなのに何故か問題多発。そしてお客様だって人間、ただの宿泊と思うなかれ。ホテルはただ寝泊りするだけと思ったら大間違い。
一人一人が大切なこの夜を、この一時を別々の思いで過ごそうとしている。人生色々、波乱万丈、思惑と複雑な人生模様が絡み合い、従業員を巻き込み他のお客様をも巻き込み自分も巻き込まれ、長い夜が一刻一刻と過ぎていく。接客業はしんどい。けれどお客様の笑顔と「ありがとう」の一言がそれ以上の至福を与えてくれる素晴らしい職業。
監督の三谷さんはそれをコミカルに、そしてほろりとくる瞬間を上手に作ってくれた。豪華なキャストの特徴を上手く使った演出と巧みなスーリーに本当に引き込まれます。彼のセリフの作り方と間合いは巧妙で、舞台でも一瞬すら目と耳を離せない空間を最後まで保たせる方なのですが、今までの映画では一番の出来だと思います。それでは、THE 有頂天ホテルのネタバレあらすじと結末までをご紹介します。
THE 有頂天ホテルのネタバレあらすじと結末
大晦日。高級ホテル・アバンティは新年を迎えるカウントダウンイベントを控えて賑わっていた。歌手に成る事を夢見、このホテルでベルボーイのアルバイトをしていた憲二(香取慎吾)は、夢を諦めて明日故郷へ帰ろうと決めていた。客室係のハナ(松たか子)はシングルマザーとして一人息子を育てていたが、母親としての自覚を未だ持てずにいる。
息子の父親は汚職事件で世間を騒がしている国会議員・武藤田(佐藤浩市)であった。会社社長の愛人・なおみ(麻生久美子)が宿泊する客室の掃除をしていたハナは、誰も居ない隙に彼女の高級な毛皮を着て、子供を産まなければ今頃こんな毛皮を着て良い暮らしをしていたかもしれないと夢想していた。そこになおみを尋ねて来客があり、ハナは咄嗟になおみのふりをする。ホテルの副支配人である新堂(役所広司)はこの日たまたまホテルに宿泊していた元妻・由美(原田美枝子)と再会した。自分も宿泊客であり、今晩ホテルで行なわれる“ステージマン・オブ・ザ・イヤー”の表彰パーティーに招かれたのだと言ってしまう。彼はかつて芝居で身を立てる事を夢見ていたが、挫折してホテルマンに成ったのだった。今でも芝居を続けているとウソをついてしまう。カウントダウンイベントに出演予定の歌手・桜チェリー(YOU)は、所属事務所の社長に歌いたくない歌を押し付けられ、事務所の為に顧客と寝る事をも強要されていた。
汚職疑惑の渦中にいる武藤田は、このホテルに身を隠している事をマスコミに嗅ぎ付けられてしまい、政治家としての進退を迫られていた。表彰パーティーが始まり、新堂は受賞者のふりをしてスピーチするが、“ステージマン”ではなく“スタッグマン”(鹿の交配技師)の表彰パーティーだった。しかも表彰されるはずだったのは由美の今の旦那であった。ホテルマンである事を恥じた事に自己嫌悪する新堂。自室で思い詰めていた武藤田は、自殺を決心して銃に手をかけたが、隣部屋から能天気な歌が聞こえて来て思いとどまる。憲二が宿泊客に頼まれて歌っていたのだった。客には才能が無いから歌なんてやめろと言われる憲二だが、武藤田には良い歌だとほめられる。
なおみのふりをしていたハナは、彼女の境遇を知る。世間の眼を気にして愛する人と一緒になる事を諦めようとしている様なのだ。鉢合せになったなおみに、諦めると後悔する事になると告げたハナは、取って返してかつての恋人・武藤田の部屋を尋ね、汚名を被ってでも政治家を続けろと助言する。憲二は歌が歌えるだけ幸せじゃないかと桜チェリーを叱咤激励し、新堂はホテルマンとして武藤田をマスコミから守り切る事に成功する。カウントダウンイベントで誇らしく謡う桜チェリー。
その姿を見て自らも歌を続ける事を決意する憲二。その傍らで息子に電話をかけるハナ。新堂は由美と相対し、今はホテルマンとしてがんばっている事を告げ、さっそくやって来た新年最初の客を出迎えに行くのだった。
以上、THE 有頂天ホテルのネタバレあらすじと結末でした。
THE 有頂天ホテルのキャスト・出演者
宿泊部副支配人・新堂平吉(役所広司) … きまじめなキャラの時折魅せるお茶目な行動は非常に笑える!
客室係・竹本ハナ(松たか子) … 基本的に強気でやや感じの悪い女性の役。部屋を掃除してるときに、客のアクセサリーとかコート着てときめいてる場面は笑える。そしてそこから思わぬ展開に・・・終盤に行くにつれて重要度が増してきます。
副支配人・瀬尾高志(生瀬勝久) … この人ちょっとお茶目な野心家(腹黒い人)を演じるのがホントうまい。台詞数もかなり多く、本編中の重要人物。
アシスタントマネージャー・矢部登紀子(戸田恵子) … 映画中唯一の“普通”の人。ハキハキとしたしゃべりがいい!髪型のせいかなんか若返った感じです。
総支配人(伊東四朗) … 定期的に出てくるのにいつも物語の蚊帳の外・・・せつない・・・
ウェイター・丹下(川平慈英) … うわちょっとこいつウザイってキャラを見事に演じてますというか、本人のキャラそのままなんですがw
ハナの同僚・野間睦子(堀内敬子) … 最初に私服姿を見たときは地味な印象だったけど、制服着てギター背負って駆け回る姿が案外かわいかった。
ホテル探偵・蔵人(石井正則) … とにかく耳をかじられる人。古畑の西園寺以上のはまり役では?
筆字の達人、筆耕係・右近(オダギリジョー) … やけにおでこ広いなーと思ったら、パンフでみたらあの髪型ヅラっぽいね? オダギリ氏はいろんなキャラをうまくこなすなぁ。筆耕て変換したら一発で出てきた。本当にいる係なんですね・・・
ベルボーイ・只野憲二(香取慎吾) … シンガーソングライターの夢を諦め、帰ろうとするその夜・・・これも香取さんの一番のはまり役ではないでしょうか?なんか応援したくなるようなキャラです。
芸能プロ社長・赤丸寿一(唐沢寿明) … うわかなり胡散臭いキャラだな!唐沢さんも芸域広いなと・・・笑
彼の愛人・桜チェリー(YOU) … 非常に幸薄そうな感じが笑える。映画のラストに一花咲かせます。
汚職国会議員・武藤田勝利(佐藤浩市) … ホテル従業員以外では一番重要なポジション。近藤勇と芹沢鴨の抱擁は見ものです。
その夫・堀田衛(角野卓造) … マンオブザイヤー受賞者。その受賞理由は・・・。ヨーコに振り回されてというか勝手に慌てふためいて壊れる様が笑えます。
コールガール・ヨーコ(篠原涼子) … 最初チョイ役かと思いきやいつのまにか重要なポジションに・・・ コート脱いだときの胸元に釘づけです。
憲二の幼馴染・小原なおみ(麻生久美子) … スッチーだからってホテルでも制服かよ!てつっこみたくなります。これもチョイ役かと思いきや、ストーリーに巻き込まれていきます。
その息子・直正(近藤芳正) … 耳でかすぎです!
大物演歌歌手の付き人・尾藤(梶原善) … 徳川との絡みちょっときもいです・・・笑。最近この方はキワモノ多いような。
自殺願望の大物演歌歌手・徳川膳武(西田敏行) … 尾藤とのからみちょっときもいです・・・笑。この人もかなり壊れたキャラです。
腹話術師・坂田万之丞(榎本兵衛) … おじいちゃんかわいい!
ダブダブ … 腹話術師の相方。脱走してホテル探偵他を振り回す。かわいい!
THE 有頂天ホテルのレビュー・感想
外見は丸ビルのように下が年代もの・上が高層ビルというクラシックな有頂天ホテル。大晦日を最後にこのホテルを退職する予定の香取慎吾演じるベルボーイ。
最初、接客業界で大晦日に退職なんてありえないと思いました。次の日もホテルは営業予定で後任もどうやら居ない様子。なにもこのくそ忙しい時期に…と私なら時期をずらすところですが、そこはまぁスルーしましょう。新年は田舎で迎えたいからとかそういう理由が裏にはあったのかもしれません…。けれど結局(現実としても当然のように)人出が足りず急遽狩り出さる彼。逆にリアリティあり過ぎw
ギター片手にプロの歌手を目指していたが28歳で限界を感じ断念、故郷に帰る最後の夜に彼はこのホテルで人生を左右する出来事に遭遇。そんな彼を自分の過去と照らし合わせ、諦めるなと激励しつつも職務に翻弄される有頂天ホテルの副支配人役の役所広司。実際、名だけの総支配人(伊東四郎)よりも支配人らしい、というか彼なくしてはホテルの運営はありえないという役どころ。レストランで灰皿を小皿と間違いに気付かず彼女と食事中の男性を傷つけることなく対処する姿勢。カウントダウン間近だというのに多発するトラブルに冷静沈着に進行しようと奮闘。その副支配人を尊敬と愛情ある瞳で暖かく見つめるアシストマネージャーの戸田恵子。仕事は迅速かつ丁寧、小さな気遣いも忘れない優秀な人材。こんな女性がいるホテルなら安心して泊まれそうw
そしてもう一人の副支配人役の生瀬勝久。キャラどおりのお調子者で負けん気があって役所広司に対抗意識があるが、結局良いところは持っていかれてしまうという可哀想なのに笑えて憎めない役。ウェイター役の川平慈英と客室係役の堀内敬子は恋人同士。けれど前日彼女のパンツを履いてしまったばかりに険悪な状態。でもなんかもう勝手にやってろよといわんばかりのコミカルタッチで他の従業員は心配すらしてないという悲しくも笑えるカップル。そんなことはお構いなしのもう一人の客室係役、松たか子。お客様の私物に手を出すなんて普段ならしないだろうにちょっと興味本位でアクセサリーとコートをつけたら津川雅彦の愛人と勘違いされ、息子役の近藤芳正と別れる別れないの押し問答に発展。過去に自分も愛人だったことがあり、息子の言い分に納得が出来ずにキレまくり。怒っても可愛いところがなんともいえない。というか近藤芳正さんもキャラ濃すぎwどこのマフィアの幹部だと言わんばかり。耳でかいし。
でもってホテルの紙面上では立派な顔ともいえる筆耕係役のオダギリ・ジョーと、カウントダウンパーティーでショー予定の団長役、唐沢寿明。この二人、ウケを狙ってるとしか思えないかつら使用。へぇ、禿げたらこうなるのねと思わせる薄さ加減。しかし最近のカツラって技術が凄い。生え際わかんないw モテ系の人をこうやって活用するのが大好きな三谷さんならではのキャスティング。でも二人とも楽しそう。唐沢さん大喜びでこの役受けただろうねw今TVでやってる小早川役よりも光ってました。 そんな中、アヒルを探せと言われたりスッチーの服が盗難されて館内を走り回る、雇われホテル探偵という微妙な役がお似合いのアリキリ石井正則もキャラ濃すぎ。ポワロもコロンボも真っ青の小物使いと動き。でも小さいからやっぱりコミカルw
そしてこんなホテルに滞在するお客様方々も奇妙奇天烈。濃いキャラでしかも超豪華な顔ぶれの方々が出演されているのですが、その中でも私の心にヒットしたのが西田敏行演じる演歌歌手とその付き人梶原善のやり取り。あぁ…善さん…面白すぎ。他にもカッコイイ自分を保つために自殺までしそうな汚職国会議員役の佐藤浩市とか、無事授賞式を済ませたい鹿の研究家でやたらとスウィートに拘る角野卓造、その奥さんで役所広司の元妻だったおしとやかな女性原田美枝子も絡まってどんどん混乱していくホテル。
そして一番のツボは、コールガール役の篠原涼子。なんとか大晦日をホテル内で過ごそうと、追われても追われても何度も館内に潜入するお色気お姉さん。外は寒いの!と我侭っぷりを発揮。でも実は辛いことも笑顔で乗り切って必死で生きている可愛らしい女性。ほんとに愛らしい。金髪の髪をクシャっと片手で持ち上げる仕草、膨れっ面、獲物を探す色っぽい視線、チラッと舌を出し微笑む姿。魅力的過ぎます。金髪のカツラを取ってコートを脱いで、イメージががらりと変わるシーンもなかなか凝っている。
それから最後にオオトリとも言わんばかりに最後に熱唱する売れない歌手役、YOU。あの独特の声と、不幸そう(?)な表情と細い体。FAIRCHILD時代の彼女も可愛らしかったけれど、ソロも素敵ですね。伊東四郎とのやり取りも面白かった。
つらつらと書いてみましたが、ここに書けないくらいにまだまだチョイ役で有名人がたんまり出演しています。一瞬たりとも見逃せない。結構マニア心を擽られますよ。もう一度観たいと思える映画でした。カメラワークも素晴らしくて、舞台でもそのまま使えるようなシーンの連続。セリフも膨大で、ワンシーンが一つ一つ長いのできっと俳優さんたちは苦悩もしたことでしょう。でもそれ以上に楽しんで演じているのが見えて素敵でした。映画館なのにあちこちで遠慮なく笑い声が漏れるほのぼのとした有頂天ホテル。多分、私たちも一緒に宿泊している気分になっていたのかも。号泣はしないけれど、ちょこっとホロリさせるストーリーもそこかしこに散らばり、それはきっと生きている上で誰もが感じる人生の分岐点が見え隠れするからかもしれません。エンドロールの時には、暖かい気持ちと和やかな空気がありました。
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