ある少年の告白の紹介:2018年アメリカ映画。アメリカに現在もあるという同性愛者の矯正施設。この映画には、原作者ガラルド・コンリーが告発本を出版するに至った、ある矯正施設での実体験とそれによって生まれた人間ドラマが描かれている。主人公ジャレッドを演じるのは、20歳のときにアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたこともあるルーカス・ヘッジズ。その両親に、ともにアカデミー賞主演男優賞・女優賞をとったラッセル・クロウとニコール・キッドマン。豪華キャスト陣の繊細かつ大胆な演技が観る者を圧倒する衝撃の実話、そして深く考えさせられる内容となっている。
監督:ジョエル・エドガートン 出演:ルーカス・ヘッジズ(ジャレッド・イーモンズ)、ニコール・キッドマン(母 ナンシー・イーモンズ)、ラッセル・クロウ(父 マーシャル・イーモンズ)、ジョエル・エドガートン(ヴィクター・サイクス)、ジョー・アルウィン(ヘンリー)、グザヴィエ・ドラン(ジョン)、トロイ・シヴァン(ゲイリー)、テオドール・ペルラン(ゼイヴィア)、フリー[レッド・ホット・チリペッパーズ ベーシスト](ブランドン)、ほか
映画「ある少年の告白」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ある少年の告白」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ある少年の告白の予告編 動画
映画「ある少年の告白」解説
この解説記事には映画「ある少年の告白」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ある少年の告白のネタバレあらすじ:起
ジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は、敬虔なキリスト教徒で牧師の父マーシャル(ラッセル・クロウ)と美しい母ナンシー(ニコール・キッドマン)に育てられた18歳の男子大学生。彼は母と、同性愛を矯正するための施設に向かっています。
そこは朝9時から夕方5時まで、携帯電話などの私物をすべて預けて、12日間の救済プログラムに取り組む施設です。主宰はカウンセラーで牧師のサイクス(ジョエル・エドガートン)です。性的な罪や同性愛を、「イエスが元に戻してくれる」と言います。ただし、施設でのことは一切他言してはならないと釘を刺すサイクス。
このプログラムには2回目の参加だというジョン(グザヴィエ・ドラン)は、他人には一切触れず、あいさつは敬礼という変わった男です。いつプログラムが終わるかはサイクス次第、「やりこなせ」と意味深にジャレッドに告げるのでした。
翌日、やってきたのはブランドン(フリー)という教官。元犯罪者らしきその男は、立ち直った成功例として紹介され、参加者たちに“男らしさ”を伝授していきます。
バッティング練習では、リー(エミリー・ヒンクラー)という参加者の頭にボールが当たってしまいますが、特に手当てもせず、次の日にリーの両親が怒鳴り込んできました。リーは施設から去り、サイクスは「施設でのことを外でしゃべるな!」と悪態をつくのでした。
ある少年の告白のネタバレあらすじ:承
(回想)“心の清算”という課題で過去に向き合うジャレッド。ヘンリーは(ジョー・アルウィン)大学に入学して初めてできた友人でした。一緒にランニングをするようになった二人。ある夜ジャレッドの部屋に泊まったヘンリーは、突如無言で襲いかかりジャレッドを犯そうとしました。ヘンリーは泣きながら「他にもこういうことをした」と告白し、二人だけの秘密にしてほしいと懇願しました。
(回想)ヘンリーを避け、傷心のまま自宅に戻ったジャレッド。しかしそこに大学のカウンセラーを名乗る人物から、ジャレッドが同性愛者だという電話がかかってきたのです。問い詰める父にジャレッドはヘンリーにされたことを話し、電話もヘンリーが掛けたのだと説明し、父は一度は納得したものの、その後ジャレッドは実は男性に興味があると告白します。すると翌日、家に教会関係者が呼ばれ、ジャレッドは父の指示により矯正施設に行くことになってしまったのです。
(回想)次にジャレッドは、大学のアート館で出会ったゼイヴィア(テオドール・ペルラン)のことを思い出していました。ウィーン出身のゼイヴィアは線の細い、芸術を愛する人物で、「何もしないから一緒にいてほしい」と言う彼とは、プラトニックな関係でした。
ある少年の告白のネタバレあらすじ:転
施設でサイクスと面談したジャレッドは、大学には行かずこの施設で一年間過ごした方が有意義だと言われてしまいます。
そんなある日、巨漢のキャメロン(ブリットン・セアー)がサイクスに「本気じゃない」と責められていました。さらにサイクスは「生まれない方がよかった」と言い、ずっとここに座っていろと命じました。同情したジャレッドが励ますつもりで肩に手を置くと、すかさずジョンが「誰かが見ている。自分をコントロールしろ」と忠告してきました。その後、ひとりでトイレに入ったことを見とがめたブランドンに「カマ野郎!」と言われ、ジャレッドは不快感をあらわにします。
その日の帰り、金髪のゲイリー(トロイ・シヴァン)が「実態がわかってきたか。よくなっているフリをするんだ。でないと長い間ここから出られなくなる」とアドバイスをしてくれました。その夜、ジャレッドは父に「やめたい」と電話をしますが、父の返事はノーでした。
翌日、多数のキャンドルが灯された、ただならぬ雰囲気の中、キャメロンに対する儀式が始まりました。まるで悪魔祓いのように、聖書でキャメロンのからだを皆で叩くのです。さらに水を張ったバスタブに入れられるキャメロン。見ていられない、とその場を立ち去ろうとするジャレッドの腕を、あのジョンがつかんで引き留めました。翌朝、キャメロンは生まれ変わった、とサイクスが声高に宣言しました。
そしていよいよジャレッドの番です。練習したとおり、男性が気になりいろいろ妄想してしまったこと、そしてゼイヴィアとのプラトニックな関係のことを告白し、変わりたいと告白するジャレッド。しかしサイクスが、「ヘンリーのことは?」と声をかけます。お父さんから聞いている、と。「事実ではない、自分の罪ではない」と激昂したジャレッドは部屋を飛び出し、事務所で自分の携帯電話を取り戻すと、トイレに駆け込み母に電話をして助けを求めました。
取り押さえられたジャレッドに対し聖書を読み上げるサイクス。するとジャレッドの目に駆けつけた母の姿が。ドアを開けるよう母が声を荒げても、サイクスは開けようとしません。すると突然、キャメロンがジャレッドを制止するブランドンに体当たりし「行かせてやれ」と助けてくれました。母はサイクスに「恥を知れ」と言って、ジャレッドと共に施設をあとにします。
ある少年の告白の結末
「施設に戻れ」という父に、「私は戻させない、もう黙っていない」と母が味方になってくれて、ジャレッドは無事自宅に戻りました。そして数日後、キャメロンが自殺したと連絡が入ったのです。
4年後。
ニューヨークで暮らしているジャレッド。同性のパートナー、クリスもいます。ジャレッドは今、矯正施設の実態を告発する回顧録「アーメンと言え!矯正施設の真実」の出版に向けて執筆をしています。そんな時、母との会話から異変を感じたジャレッドは、実家に帰ってみることにしました。
日曜日なのに教会に行かない母を不思議に思い質問すると、今回のことでいろいろと母の考え方にも変化があったようです。その夜、ジャレッドは父に「自分の書いたものが世に出て公になるということを承知しておいてほしい」と告げました。
ジャレッドがニューヨークに戻る日、父は経営する自動車販売会社にジャレッドを呼びました。自分が長年使ってきたペンをジャレッドにプレゼントし、「執筆に使ってほしい。本当はこの会社を継いでほしかった、孫を抱きたかった」と話す父。「進む道がちがうのだから仕方ない。が、お前を失いたくない」と。
ジャレッドは、「大学での出来事について、本当は話を聞いてほしかった。大丈夫か?と言ってほしかった」と言い、深く傷ついたと当時を振り返ります。そして「もうフリはしない。僕はゲイで、父さんの息子だ。受け入れられないならこれで終わりだ。無理なら別の道を行くしかない。僕を失いたくないなら父さんが変わるしかない。」とはっきり告げました。
「分かってる、努力するよ、必ず。」と答える父。それは父と息子が初めて腹を割って気持ちをぶつけた瞬間でした。
別れ際、「クリスマスに母さんを招待したから、父さんにも一緒に来てほしい」とジャレッドは言うのでした。
(エンドロール)ジャレッドのモデルとなった原作者のガラルド・コンリーは現在、パートナーの男性とニューヨークに住み、LGBTQのコミュニティのため執筆と活動を通じて闘っている。サイクスは2008年にロサンゼルスを離れ、今はパートナーの男性とテキサスで暮らしている。この映画の完成時において、36州が未成年の矯正治療を認可しており、LGBTQのアメリカ人70万人以上が矯正治療の影響を受けている。
以上、映画「ある少年の告白」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する