はるヲうるひとの紹介:2019年日本映画。俳優の佐藤二朗が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で上演された同名舞台を佐藤自ら原作・脚本・監督を務めて映画化した作品で、佐藤は監督デビュー作『memo』(2008年)に続く監督2作目となります。架空の島の売春宿を舞台に、生きる意味を見出だせずに死んだ様に生きる男女が、それでも生き抜こうともがく壮絶な日々を描きます。本作は2019年の第35回ワルシャワ国際映画祭の1-2コンペティション部門に正式出品され、日本では2020年5月の公開予定でしたが、新型コロナウイルスの影響により公開延期となり、2021年6月4日にようやく公開されました。
監督:佐藤二朗 出演者:山田孝之(真柴得太)、仲里依紗(真柴いぶき)、今藤洋子(柘植純子)、笹野鈴々音(村松りり)、駒林怜(近藤さつみ)、太田善也(ユウ)、向井理(三田)、坂井真紀(桜井峯)、大高洋夫(義雄)、兎本有紀(清美)、佐藤二朗(真柴哲雄)ほか
映画「はるヲうるひと」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「はるヲうるひと」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
はるヲうるひとの予告編 動画
映画「はるヲうるひと」解説
この解説記事には映画「はるヲうるひと」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
はるヲうるひとのネタバレあらすじ:起
ここは本土から離れた場所に位置する、ある島。この島への唯一の交通手段は1日2往復の連絡船のみであり、島の男たちはみな建築業に従事していました。この島では新たな原発を建設する計画が進められており、住民は反対運動に力を入れているのですが、誰もが補償金を踏んだくることを目当てにしていました。
この島には“置屋”と呼ばれる売春宿がいくつもあり、島の女たちは置屋で芸者や遊女として働く他になく、誰もが明日に希望を持てない日々を淡々と過ごしていました。
本作の舞台は島の置屋のうちのひとつ「かげろう」です。「かげろう」には遊女のリーダー格であるベテランの桜井峯(坂井真紀)、ムードメーカー役の柘植純子(今藤洋子)、元気が売りの癒し系な村松りり(笹野鈴々音)の三人の遊女がおり、彼女たちの世話や客の呼び込みを真柴得太(山田孝之)という男が担っていました。
教養がまるっきりなく、純粋で短気な得太は島の人からバカにされる存在でしたが、それでも「かげろう」の遊女からは信頼を寄せられて可愛がられていました。
そんな得太が心の拠り所にしているのは、心身を病んで寝たきりの暮らしを送り、何も感じなくなってしまっている最愛の妹・いぶき(仲里依紗)でした。いぶきは突拍子もなく「かげろう」の遊女たちに度々暴言を吐いてしまうことがあるため、遊女たちからは嫌われる存在でしたが、唯一得太だけがいぶきの味方になっていました。
はるヲうるひとのネタバレあらすじ:承
そんなある日、「かげろう」に新人の遊女・近藤さつみ(駒林怜)が加わりました。しかし、さつみは「かげろう」で働いているうちに自分の唇がぷっくりと腫れあがってしまい、自分は性病に罹ったのではないかと思い悩むようになりました。
さつみは薬を買いに行こうと島の薬局へと向かいましたが、内気な性格のさつみは自分が遊女であることを恥じて何も言えず、結局何の薬も買うことなく薬局を出ていってしまいました。
「かげろう」を取り仕切っているのは得太といぶきの腹違いの兄である真柴哲雄(佐藤二朗)です。狂暴凶悪な性格の哲雄は「かげろう」の遊女たちを恐怖と暴力で支配しており、得太といぶきを忌み嫌っていました。この日も得太が買い物から帰って来ると、その場にいた哲雄が得太が一人も「かげろう」に客を呼び込めなかったことに腹を立て、得太の両手を火鉢の中に突っ込むという折檻を加えました。得太にとっては哲雄は恐怖の対象でした。
さつみは純子から、得太の一家にまつわる話を聞きました。哲雄は「かげろう」の先代主人であり三兄妹の父である義雄(大高洋夫)と正妻の清美(兎本有紀)の子ですが、得太といぶきの母は義雄の愛人だった遊女でした。
哲雄は得太といぶきの母と共に心中し、取り残された清美もショックのあまり狂って自死してしまったというのです。それ以来、哲雄は自分から母を奪った得太といぶき、そして遊女そのものを目の敵にしているのです。
はるヲうるひとのネタバレあらすじ:転
そんなある日、得太は自身の子供だった頃の幻影を見ました。得太は幻影に導かれるがままに義雄が自分といぶきの母と心中したとされる家に入っていきました。
そこでは哲雄、そして哲雄の愛人となっている峯がおり、峯はそこで哲雄の性欲の処理をしていました。得太はその光景に衝撃を受けましたが、哲雄は何食わぬ顔で得太を自宅に誘いました。
得太は哲雄の妻子から手料理を振る舞われました。哲雄は妻子との暮らしこそが“真っ当”であると語り、得太やいぶき、「かげろう」の遊女たちは“真っ当”からは程遠い「嘘で生きる中身のない虚ろ」だと罵りました。
この頃から「かげろう」には、ユウ(太田善也)というベトナム人の常連客がやって来るようになりました。ユウはここでりりと知り合い、やがて彼女にほのかな恋心を抱くようになっていきました。
そんなある夜、「かげろう」の遊女たちはユウと共に食事をしていました。その後、さつみは部屋に戻ろうとした時、哲雄がいぶきを強姦しているところを目の当たりにしてしまいました。そのことを知った峯は哲雄を責めましたが、哲雄は「お前が俺の愛人になろうとしたからだ」と冷たく突き放しました。
はるヲうるひとの結末
その時、哲雄たちの元に得太がやってきました。得太は遊女たちから事情を聞くなり、哲雄を刺そうとしましたが、果たせずにその場に泣き崩れました。得太が口にしたのは、これまで哲雄を含む誰もが知らなかった驚愕の事実でした。
実は得太といぶきの母と哲雄の母・清美は同性愛関係にあり、得太はこのことを知っていたのです。二人の関係に苦悩した得太たちの父・義雄は得太といぶきの母と清美の二人を殺し、目撃した得太にこのことは決して誰にも言うなと言い残して自殺したのです。
まさかの事実を知った哲雄は、自分は母親から愛されていなかったと嘆き、得太に「お前も俺も鼻くそだ」と呟きました。それを聞いていたユウは「愛を知らないなら、鼻くそ以下だ」と呟きました。
それから月日は流れ、ユウとりりの結婚式が執り行われていました。いぶきは式場で出席者全員が“歯”に見えると言い出し、それを聞いた得太はいぶきと共に笑い合いました。
ユウは島の薬局で働いていました。そこにさつみが訪れ、ユウはさつみがいつも何も買わずに店を出てしまうことから彼女の目的を尋ねてみました。すると、さつみは「私、春を売る人やってます」と笑顔で答えました。
以上、映画「はるヲうるひと」のあらすじと結末でした。
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