栞(しおり)の紹介:2018年日本映画。理学療法士の青年の成長を描いた作品。監督は、自身も理学療法士の経歴を持つ榊原有佑、主人公の雅哉役は三浦貴大がつとめる。理学療法士として献身的に患者のサポートに取りむ雅哉は、自分が出来ることに限界を感じ…。
監督:榊原有佑 出演:三浦貴大(高野雅哉)、阿部進之介(藤村孝志)、白石聖(高野遥)、池端レイナ(柏木真理)、福本清三、鶴見辰吾(高野稔)、ほか
映画「栞」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「栞」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
栞の予告編 動画
映画「栞」解説
この解説記事には映画「栞」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
栞のネタバレあらすじ:起
理学療法士として献身的に患者のサポートに取り組む高野雅哉(三浦貴大)。彼は幼い頃に母親を亡くし、今は父親の稔(鶴見辰吾)と妹の遥(白石聖)と離れて暮らしています。
そんなある日、雅哉の勤める病院に稔が入院することになりました。久しぶりに再会する雅哉と稔。カルテを見た雅哉は、脳腫瘍で入院している稔に手術をすすめますが、稔は「治療はしない!」と頑なに断ります。高校生の遥は稔の病気のことはまだ知らず、稔はおりを見て話すつもりでいました。
その後、担当医から手術をすすめられた稔ですが、頑なに断り続けます。「もし手術をして以前のように働けるようであれば、手術をしたい。しかしそうでなければ余命が少し伸びるだけで、子ども達に治療費を負担してもらうわけにもいかない」と話す稔。
雅哉は、山田海音という小さな男の子とラグビーの試合中に頸椎を損傷するケガをした藤村孝志(阿部進之介)のリハビリを担当しています。下半身の感覚が全くない藤村は、両手に力が入りにくくなっていました。早速リハビリを始めた藤村ですが、無理をしたために途中で気を失ってしまいます。
午後になり、車いすを看護師に押してもらって藤村が雅哉のところへやってきます。自身でもリハビリについて本で調べていた藤村は、「もう一度リベンジをさせてほしい」としつこく頼み、雅哉は彼のリハビリに付き合うことにしました。
車いすを自分で動かせるようになりたい藤村は一生懸命です。「徐々に慣れていきましょう」と声を掛ける雅哉。藤村は将来的には車いすではなく、足に器具を装着して自分の足で歩けるようになりたいと思っていました。
今すぐそのリハビリを行いたいと言う藤村ですが、頸椎を損傷した彼が歩けるようになる見込みはなく、困った雅哉は「今は危険なので試すのはやめましょう」と止めるのでした。
栞のネタバレあらすじ:承
その夜、雅哉は妹の様子を見るために、久しぶりに実家を訪れていました。妹の遥に稔のことを聞かれて誤魔化す雅哉。健診で引っかかっただけだと稔から説明された遥ですが、入院が長すぎることが気になっている様子です。
翌日、雅哉が稔のところを訪ねると「手術することにした」と父から告げられます。しばらくは病気休暇として給料が入り、それ以降は休職扱いとしてお金が入ると説明を受ける雅哉。稔から「俺のように金で苦労させたくない」と通帳を渡されます。そこへ何も知らない遥が見舞いにやってきました。雅哉は黙って通帳を受け取り仕事へ戻るしかないのでした。
日に日に弱っていく稔や藤村の姿を見て、雅哉は理学療法士として何が出来るのか悩んでいます。同僚からは「患者に肩入れしすぎだ。いくら寄り添ったところで、自分たちには患者の病気もケガも治すことはできない」と言われ、無力さを感じていました。
リハビリを続けていた藤村は、一人で車いすを動かせるまでになっていました。病院内を一人で車いす移動してもいいと許可が出た藤村は、看護師の力を借りて屋上へ連れて行ってもらいます。海が見たかった藤村ですが、結局見えるのは空だけで、海は見えませんでした。
その後、髭を剃り正装した藤村がいました。この日は会社の人間と会う日で、藤村は「ラグビーができない体でも、会社は辞めるなよ」と会社の人間から言われます。しかしプロとして働き出してからは怪我のことなど覚悟の上だった藤村。「会社を辞めて、今はリハビリに専念するつもりです」と告げます。その話を偶然聞いていた雅哉は、やるせなくなり病室をそっと出ていくのでした。
栞のネタバレあらすじ:転
熱心にリハビリに取り組む藤村の懸命な姿に感化される雅哉。彼が希望した足の器具を装着して、歩行訓練を試してみることにします。立ち上がって棒を持った藤村が、足を一歩前に出そうとするのですが、ピクリとも足は動かず、初めて彼の口から「もう無理だわ…」と諦めの言葉が出てしまいました。
「遅くまで付き合ってくれてありがとう」と礼を言われ、雅哉は「こちらこそありがとうございます」と感謝を伝えます。辛い時でもいつも明るく前向きな藤村に、「あなたを見ていると、自分も何かできるんじゃないかと思うんです」と打ち明ける雅哉。それを聞いた藤村は、「こんな俺でも役に立っているのか」と笑顔になるのでした。
夜になり、雅哉は遥に稔の病気について話します。手術しても治らないことを伝え、通帳を見せて「学費のことや生活費は心配いらない」と話しますが、「こんな時にお金の話なんて…」と声を荒げる遥。「どうしてお兄ちゃんがお父さんの病気のことを知ってて、私だけ知らなかったの?だいたいお兄ちゃんは、この家から出ていったくせに!もう出ていって」と遥は泣いているのでした。
翌日、雅哉は海音が亡くなったことを知ります。病院から出たことがなかった海音の夢は、海やコンビニに行くことでした。しかしその夢を叶えることなく天にめされた海音。雅哉は事実を受け入れられず落ち込みます。ショックを隠し切れない雅哉に、同僚が「仕方がなかいだろ」と声を掛けますが、「仕方がないって何だよ!」と雅哉は言い返し、同僚と言い合いになってしまいました。
落ち込む雅哉に上司が、学会で海音の症例を発表する気はないかと尋ねます。断る雅哉に「悔しいんだろ。しかし彼の病気は症例数が少ない。事例をあげるのが大事で、自分たちにはできることをすべきだ」とすすめる上司。
栞の結末
藤村との最後のリハビリの日、彼から「先生でよかったよ。先生とリハビリしてると、生きているって感じる」と言われます。翌日の退院に向け、雅哉は藤村と今後のことについて話し合いました。退院後は、田舎に戻ることにした藤村。話の中で、彼の実家と雅哉の祖父母の家が近所だと判明します。
この日は稔の手術の日でもありました。手術を終えた稔は苦しそうに眼を開け、雅哉に向かって「先生苦しいです。この痛みはずっと続くんですか?」と尋ねます。焦った雅哉が「俺だよ、雅哉だよ」と何度も繰り返し言うと、ようやく稔も気が付き「お前仕事が終わったのか?」と苦しそうに尋ねました。
「知らない間に立派な仕事に就いていたんだな」と言われ、雅哉は驚きながらも「毎日辛いけどね…」と言います。「だから立派なんだよ」と稔に言われ、泣き出す雅哉。「やっとお前と話ができた」と、父親から言われた雅哉は涙が止まりませんでした。
夜になり、一人で屋上に向かう藤村の姿がありました。手だけで階段を這いのぼる藤村は、屋上まで来るとフェンスを腕の力だけでよじ登り自殺。そのことを知った雅哉は驚きとショックで仕事に身が入りません。仕事中もボーっとしてしまい、患者の声が耳に入らず怪我をさせてしまいました。
その後、稔の容体が悪化。医師からは気管切開をすすめられます。深夜まで父親の病室にいた雅哉は、翌日上司に仕事を辞めたいと打ち明けました。ずっと前から精神的に限界だった雅哉。上司からは自分を責めないよう言われ、とりあえず一週間の休暇をとることにしました。
雅哉は妹を連れて、祖父母の家に遊びに行くことにします。藤村の実家を見に行った雅哉ですが、家の中から誰か出てくると急いでその場から立ち去りました。自分たちのために延命治療をする父親の苦しそうな姿を目にするのが辛い雅哉。それは妹の遥も同じで、二人は祖父母の家に来てからもずっと稔のことが頭から離れませんでした。
転院手続きに病院を訪れた時、海音の母親から渡したいものがあると電話をもらいます。海音が描いた自分の絵を渡され、感極まる雅哉。同じ病気の子どもの役に立いたいと思う両親は、海音の身体を大学に検体として提供していました。母親から「海音は先生のことが本当に大好きだったんですよ。短い人生でしたが、先生に出会えてあの子は幸せでした」と言われ、泣き続ける雅哉。
久しぶりに職場に立ち寄った雅哉は、患者に寄り添う同僚の姿を見つけます。「仕方がないって言ってちゃだめだよな。自分たちができることを見つけて行かなきゃ」と同僚に言われ、雅哉に笑顔が戻ります。
その後理学発表会に出席し、海音についての症例を多くの人の前で発表する雅哉の姿があるのでした。
以上、映画「栞」のあらすじと結末でした。
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