エレニの帰郷の紹介:2008年ギリシャ,ドイツ,カナダ,ロシア映画。とある映画監督が作る母の物語の映画、やがて母の過去の記憶と現在がオーバーラップし、物語は終焉へ向かう。テオ・アンゲロプロス監督の「20世紀3部作」の2作目で遺作となりました。監督は3作目の撮影中に事故で亡くなっています。
監督:テオ・アンゲロプロス 出演:ウィレム・デフォー(A)、ブルーノ・ガンツ(ヤコブ)、イレーヌ・ジャコブ(エレニ)、ミシェル・ピッコリ(スピロス)、クリスティアーネ・パウル(ヘルガ)、ほか
映画「エレニの帰郷」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エレニの帰郷」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「エレニの帰郷」解説
この解説記事には映画「エレニの帰郷」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エレニの帰郷のネタバレあらすじ:撮影を中断してしまった監督
製作サイドから、なぜ撮影を中断したのかとクレームが来た。ラストシーンさえ決まれば撮影再開できるがそう簡単にはいかない。モスクワ行きの列車に乗ったスピタウは別の席の男から旅券と書類を受け取り、カザフスタンを経由しモスクワに来たらアメリカ大使館へ行くように指示されていた。彼は途中カザフスタンのテルミルタウで、エレニと再会する。彼女は革命に失敗したギリシアからの難民だった。路面電車に乗り込むと、エレニは迎えに来てくれるのを待っていたと再会を喜んだ。彼は彼女に夜の列車で逃げようと言った。中央広場ではスターリン逝去に伴う追悼式に人が集まっていた。映画のテーマ曲を録音している所を訪れた監督に電話がかかってくる。しかし、スピーカーにして答えないで居ると切れてしまった。それは学校に行くのをやめ、父親である監督から姿を消すように友人の家を泊まり歩いている娘のエレニからの電話だった。手がかりをアガシにエレニの部屋に来た監督は枕の下に写真と手紙を見つける。それは1956年、シベリアにいた母が父に書いた手紙だった。
エレニの帰郷のネタバレあらすじ:シベリアの地でエレニを支えたヤコブ
路面電車に隠れていた二人は、夜行に乗る前に見回りの警官に見つかってしまった。逮捕歴のあるエレニはシベリアへ、別々に連行されてしまった。この時、エレニはスピタウの赤ん坊を授かっていた。監督は娘に避けられている事を元妻に打ち明けるが、それは全て仕事にかまけていた自業自得だとあしらわれてしまう。シベリアの収容所でエレニはナチスを逃れたユダヤ人のヤコブで会う。彼女はモスクワにいるヤコブの姉を頼り、息子をシベリアからモスクワに逃がした。1956年、息子(後の監督)は3歳だった。ドイツ語の話せるヤコブがドイツ人博士にパイプオルガンを引き渡しの交渉の通訳をしに図書館を訪れると、館内のいたるところに逝去に伴い撤去されたスターリン像が置かれていた。ある年の暮れ、オーストリアの中立地帯を抜けソ連から逃れた収容所の人々の中にエレニとヤコブが居た。深夜、1974年を祝う放送に国境で二人は踊った。そして、中立地帯を過ぎると、イスラエルに行く人と、アメリカや他の国へ行く人に別けられる。ヤコブはイスラエルへ。エレニには帰る場所がなく他の場所に行かなければならない。エレニはやっと夢に見た故郷に行けるヤコブに、「行って」と声をかけた。
エレニの帰郷のネタバレあらすじ:両親の来訪と娘エレニの不在
1999年12月31日、監督はベルリンの空港で母エレニ、父スピロスを迎える。娘のエレニの事を聞かれると、学校に行っていると言葉を濁した。母エレニはここから故郷へ旅をするのだと言う。ショッピングモールで、監督はエレニの友達からエレニの荷物を渡され問い詰めると、ブルーノなら知っているかもと言われ、彼の居る場所に案内されると、ブルーノはやって来た他の青年と取っ組み合い腹を刺し殺し去って行ったそれを見守っていたバイクに乗った仲間たちが追い、居なくなるのを見計らい、倒れた青年に駆け寄った。ホテルにチェックインした両親の所にヤコブが会いに来た。彼はニューヨークでエレニと暮らした部屋に似ているとスピロスも居る寝室で語った。エレニの中にアメリカでの記憶が蘇えり部屋を走り出た。イタリアでアメリカ行きのビザを待っていたエレニ。何ヶ月にも渡る時間を耐えられたのはヤコブが居てくれたからだった。そして、アメリカでエレニはパーティーでピアノを弾いているスピロスを見つける。窓越しに見つめるエレニに気づいたスピロスは彼女を追おうと外にでるが、既にいなかった。霧の中カナダの国境へむかったエレニは、ベトナム行きの兵役を逃れた息子である監督に対面する。霧の中で二人は抱き合った。
監督の家を訪れた元妻に、渡された荷物の中に入っていた写真、絶望を綴った日記見せると、元妻は警察にエレニの事は届け済みと言うだけだった。母の働いているバーに父を連れて行った監督、父は閉店ですと言われてバーの隅のピアノを結婚行進曲を弾き始め。結婚式の誓いの文言を唱えた、そして、エレニが居るであろう厨房に同じように声をかけると半狂乱の声と食器を割る音が続いた。スピロスが出て行こうとするとエレニがそれを追った。二人はベルリンに居る息子から、ベルリンの壁崩壊を知らせる手紙を読む、新時代が来たとその手紙は告げていた。
エレニの帰郷の結末:終焉と始まり
駅で大道芸の寝に乗せて踊るエレニとヤコブそしてスピロスも、しかし曲が終わるとエレニはめまいを起こしてしまう。そこで息子の監督に電話をすると、孫のエレニがみつかったと電話口で言った。急いでその場所に向かうと、警官たちが囲む廃屋の窓辺にエレニが立っていた。扉は内側からしか開かず、中はならず者がたむろしていて、交渉にも応じてくれない。祖母のエレニは扉を叩き、中から開けさせる。ならず者たちの中を進み窓辺からエレニを降ろすと、祖母に抱きつき死にたいと彼女は繰り返した。そこへ警察が乗り込んできて彼らは摘発された。帰宅後、具合が悪いエレニのために監督が医者を呼んでこようとする、道の反対側では元妻がエレニの帰宅を見守っていた。エレニの部屋ではベッドに横たわり「眠らなくては」と繰り返した。ヤコブが別れを言いに来た、二人のエレニは眠っていた。起き出したエレニに、ヤコブは今の自分には帰る場所がない、嘆きの壁にももう行かないと言った、そしてエレニによい旅をと言って去るヤコブは街を走る舟に乗り船尾から川に飛び込んだ。エレニは新年なのに食卓の準備をしていない、スピロス、息子、孫のエレニ、ヤコブ。ここに居ないヤコブを探しテーブルに倒れこんでしまった。外では、新年のお祝いの歓声。ベッドには寝かされたエレニ。ベッドの横には孫のエレニ、スピロス。そこへ息子と、聖職者らしき人が入ってくるシベリアの収容所から駆け出す若かりし頃のエレニ。監督に窓から強い風が吹き付け、スピロスはベッドに向かって「エレニに起きなさい、迎えに来たよ」と手を差し伸べると孫のエレニがその手を取り、ブランデンブルク門へ。
以上、、映画エレニの帰郷のあらすじと結末でした。
エレニの帰郷のレビュー・感想:物語は新しい世代へ
この作品の中には二人のエレニが出てくる。監督の母であり物語の中心を担うエレニと、監督を避け姿をくらましていた娘のエレニ。作中、ベルリン崩壊に伴って新しい時代と手紙で言っているように、母であるエレニから娘であるエレニに物語がシフトしていく。この二人を繋ぎとめているのは他でもない、名前こそ出てこないがエレニの息子であり父親でもある監督にほかならない。そして、迎えに来たという言葉に手を取ったのも、娘のほうのエレニだ。この作品はギリシアの巨匠アンゲロプロス監督の遺作となった(20世紀三部作の三部の撮影中に亡くなっている)。そのギリシアでは、若手監督が斬新な切り口で映画作りをしているというのを書き添えておきたい。
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