ビューティフル・マインドの紹介:2001年アメリカ映画。本作は1994年ノーベル経済学賞を受賞した実在の天才数学者ジョン・ナッシュの統合失調症に苦しみながらも偉業を達成した半生を描いた感動の物語です。「それは真実をみつめる勇気。信じ続けるひたむきな心。」というキャッチで、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞で作品賞ほか数々の賞を受賞した名作です。
監督:ロン・ハワード 出演:ラッセル・クロウ(ジョン・ナッシュ)、エド・ハリス(パーチャー)、ジェニファー・コネリー(アリシア・ナッシュ)、クリストファー・プラマー(口ーゼン医師)、ポール・ベタニー(チャールズ)ほか
映画「ビューティフル・マインド」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ビューティフル・マインド」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ビューティフル・マインド」解説
この解説記事には映画「ビューティフル・マインド」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ビューティフル・マインドのネタバレあらすじ:1.プロローグ:天才変人数学者の夢
時は1947年、アメリカでは数学者が日本軍の暗号を解読し、原爆を造り、第2次世界大戦を終結に導いたと評価されていました。そして、アメリカ軍の新たな脅威は、共産主義国家のソ連となっていました。そんな時代、数学・物理科学の分野で世界トップレベルの研究を誇るプリンストン大学に、未来を担う天才科学者の卵たちが集まって来ました。そんな中に一人の風変わりな若者がいました。彼の名前はジョン・ナッシュ。ナッシュと奨学金を分けて入学した天才数学者マーティン・ハンセンは、そんなナッシュを「ウェストバージニアの天才変人」と揶揄しました。生来、人付き合いが下手なナッシュのもとに、チャールズと名乗る自分とは正反対の社交的な文学青年がルームメイトとして現れました。ナッシュはなぜか、彼には胸襟を開き、悩みなどを話しました。
ナッシュの夢は、「独創的な理論で、この世の全てを支配できる理論を見つけ出す」こと、そして当時最高の軍研究機関であるMIT(マサチューセッツ工科大学)のウィーラー研究所に入り、研究を進めることでした。ナッシュはそのためには、大学の授業や教科書は不要なものだと考え、独自の方法で研究に没頭していました。
ビューティフル・マインドのネタバレあらすじ:2.独自の理論の研究と完成
そんなナッシュをハンセンたちは何かと小バカにし、笑いのネタにしていました。しかし、ナッシュはそんな事はお構いなしでした。しかし、ある日、ナッシュは指導教授から「皆、授業に出席し、論文を出している。考えているだけではダメだ。今のままではどこにも推薦できない」と言われてしまいました。ナッシュは何とか自分の研究テーマを論文という形に仕上げようと躍起になりますが、気持ちばかりが焦り、空回りして落ち込んでいくのでした。そんな哀れなナッシュの姿を見たチャールズは、「答えを見つけるには、こもっていないで、外に飛び出せ」と助言しました。
ナッシュはチャールズの助言を聞き、行きつけのパブで研究を進めることにしました。そんなある日、そのパブに美しい金髪の女性が友達数人を連れて現れました。ハンセンたちはナッシュをまた笑いのネタにしようと、彼女をナンパしろとけしかけました。しかし、その時、ナッシュはある事に閃きました。ナッシュはハンセンたちに呟きました。「A・スミスは間違っている。彼は言った『最良の結果は皆が自分の利益を追求して得られる』。でも、それじゃ不完全だ。皆が“自分と集団”の利益を追求して得られる」と。そう言うとナッシュは急いで、自分の部屋に戻り、猛然とその理論を論文にまとめ上げました。
そしてついにナッシュは、彼独自の理論である「ナッシュ均衡」という理論を完成させました。その理論は150年来の経済理論を覆す、まさに画期的で独創的かつ大胆な理論でした。指導教授はその論文に驚嘆し、ナッシュをウィーラー研究所に推薦することにしました。ついにナッシュの念願が叶ったのでした。ナッシュは研究所へ優秀な数学者ソルとベンダーを連れて行くことにしました。当初優秀な成績で第1候補だったハンセンは、ナッシュの「全てを支配する理論」に敗北宣言をし、彼を研究所に送り出しました。
ビューティフル・マインドのネタバレあらすじ:3.極秘任務と結婚
そして5年後の1953年、研究所のチーム主任となったナッシュは、ソ連の暗号解読の依頼を受け、国防省ペンタゴンへ赴きました。そこでナッシュはこれまで見たこともない暗号に出くわしました。しかし、ナッシュは直感と想像力で、見事にその暗号がソ連のスパイの潜入ルートであると解読しました。それを垣間見ていたある男がいました。その男の名はパーチャーと言う、CIAの諜報員でした。彼はオッペンハイマーが指揮した原子爆弾開発プロジェクト「マンハッタン計画」を監察していた男でした。ある夜、ナッシュはパーチャーに連れられ、研究所の裏手にある倉庫に連れていかれました。そこは廃屋と聞かされていたナッシュは、驚きました。なんとそこは秘密の暗号解読基地で、最新のコンピュータと何人もの科学者たちがいました。そこでナッシュは極秘任務を受けました。それはソ連の小型原爆の脅威からアメリカを救うための暗号解読で、解読する暗号は『ライフ』『ニューズウィーク』などの雑誌の記事の中に隠されているというものでした。腕にラジウム・ダイオードを埋め込まれたナッシュはスパイとなり、この極秘任務に就くことになりました。ナッシュは暗号の掲載される雑誌を毎週購入しては、その記事を見て、文字の配列パターンから暗号を解読していきました。そして、その解読結果を極秘書類として、ケンブリッジの指定されたある館のポストに夜な夜な投函しに行きました。
そんな中、ナッシュは研究所の自分の講義で出会った美しい女性アリシアと恋に落ちました。二人はデートを重ね、愛を深め、やがて結婚しました。しかし、ナッシュはアリシアには暗号解読の極秘任務のことは隠し、新生活を始めました。そして1954年10月のある夜、ナッシュはいつものように解読結果を館のポストに投函しに行きました。その時、突然、パーチャーが車で現れました。「早く乗れ。尾行されている」と言われ、ナッシュは急いで彼の車に乗り込むと、後からソ連のスパイの車が猛スピードで迫り、銃撃してきました。壮絶なカーチェイスの末、ソ連のスパイの車は川に沈みました。ナッシュは命からがら帰宅しましたが、極秘任務のため、心配する妻アリシアにも任務の事は隠しました。
これほどの命の危険が伴うとは思ってもいなかったナッシュは、パーチャーにスパイの仕事を辞めたいと言いますが、パーチャーはそれを許しませんでした。ナッシュは国家を守る暗号解読という任務の重責と、ソ連のスパイから常に命を狙われているという恐怖感から、次第に精神状態がおかしくなっていきました。夫ナッシュの不可解な様子に言い知れぬ不安と疑念を抱いたアリシアは、ある夜、一本の電話をかけました。
ビューティフル・マインドのネタバレあらすじ:4.幻覚との闘い
そしてハーバード大学での全米数学会議の日、講師として招かれたナッシュはリーマン予想の証明に関する講義を行いました。しかし、ナッシュの講義の内容は理解不能なものとなっていました。聴講者たちは一様に不可解な視線をナッシュに向けました。その時、ナッシュの前にソ連のスパイらしき男たちが現れました。ナッシュは講義を中断し、即座に逃亡を図りましたが、外でその男たちに取り押さえられてしまいました。必死の抵抗をするナッシュの前に1人の男が現れました。その男はマッカーサー精神科病院のローゼンという医師でした。ローゼンはナッシュに鎮静剤を打ち、精神病院に搬送しました。
ナッシュは実は重い統合失調症に罹っており、現実と幻覚の区別がつかない状態に陥っていました。ナッシュが行っていた極秘任務の暗号解読の諜報活動も、それを依頼してきたパーチャーも彼の作り上げた幻覚でした。またナッシュのこの病気は大学院時代からのものであり、彼の親友チャールズも彼が作り上げた幻覚でした。ローゼン医師から妻アリシアはそう告知されましたが、俄かには信じられませんでした。アリシアはまず夫ナッシュの研究所の部屋を実際に見に行きました。アリシアは部屋を見て愕然としました。部屋の中は雑誌記事の切り抜きとメモだらけで、それはもはや常人の部屋ではありませんでした。アリシアは友人のソルから、夜な夜なナッシュが忍び込んでいた館を聞き、そこに行きました。アリシアはそこで決定的な証拠を得てしまいました。その館は既に廃屋となっており、しかもその壊れたポストにはナッシュが投函した極秘書類が封も切られずに、山のように溜まっていたのでした。
事実を悟ったアリシアは、夫ナッシュをこの幻覚地獄から一刻も早く助け出すため、ナッシュにこの事実を涙ながら告げました。ナッシュは証拠を突きつけられ愕然としました。ナッシュはその夜、自らの腕に埋め込まれたラジウム・ダイオードを血だらけになって、抜き出そうとしますが、見つからず、愕然としました。ナッシュはローゼン医師の指導のもと、抗精神病薬とインスリン・ショック療法という辛く苦しい治療を受け続けました。
そして、1年後、ナッシュは退院し、プリンストン大学の近くの家で自宅療養をすることになりました。アリシアはナッシュとの間に生まれた子供を大切に育てながら、夫ナッシュの療養に献身的に尽くしました。ナッシュは薬の影響もあり、かつてのように頭も働かず、うつ状態になる時もありました。そのため、妻アリシアの愛に応えられず、彼女を悲しませることもありました。ナッシュはアリシアを悲しませまいと、自己判断で薬を飲むことを辞めてしまいました。
そんなある夜、再び、ナッシュの前にあのパーチャーが現れました。ナッシュは「幻覚だ!」と拒みますが、パーチャーに自宅裏の林の中の廃屋に連れて行かれました。そこは暗号解読の基地となっていました。パーチャーから「君が必要だ」と言われ、ナッシュは再び、暗号解読という幻覚の任務に引きずり込まれていきました。ナッシュは再び、幻覚の世界へと陥り、現実と幻覚との間で葛藤を強いられました。しかし、ナッシュはふと幻覚の人物の中に違和感を覚え、ついにパーチャーやチャールズが幻覚であると悟りました。
病に陥っていると真に悟ったナッシュは、治療に専念する決意をしますが、病院に入院せずに、一人で闘い克服する決意をしました。アリシアはそんな夫ナッシュを支えようと決意しました。アリシアはナッシュに「現実を区別するのは、頭じゃなく、ここかも」と呟き、そっとナッシュの胸に手を添えました。
ビューティフル・マインドのネタバレあらすじ:5.ノーベル賞
アリシアと共に療養に励み、少し落ち着いたナッシュは社会復帰をかけて、昔馴染みのプリンストン大学で教鞭をとれないかと、かつてのライバル・ハンセンのもとを訪ねました。ハンセンは大学で教授として教鞭をとっていました。ハンセンの温かい友情で、ナッシュは大学の授業を聴講することができました。幻覚に悩まされ、生徒たちから変人と笑われながらも、ナッシュは図書館で独り研究を続け、授業を聴講し続けました。
そして、時は流れ1978年10月、50歳となったナッシュのもとに、一人の数学科の学生が自分の理論が正しいかと尋ねてきました。ナッシュの名前は天才数学者として健在でした。これまで人の育成に全く興味がなかったナッシュでしたが、人が変わったようにその学生と優しくユーモアを交えながら、数学談義を始めました。そのうち、ナッシュの周りに次第に次代を担う数学科の学生たちが集まってきました。そんなナッシュの姿を見たハンセンやアリシアは、喜びました。未だチャールズやパーチャーの幻覚が見えるナッシュでしたが、彼は「昔のことだ。誰にも過去は消せない」と割り切るようになっていました。そんなナッシュにハンセンは、翌春から教壇に立つように言いました。ナッシュは大学の教壇に立ち、教鞭を振いました。
そして、1994年3月、すっかり老いた教授ナッシュが講義を終えると、トーマス・キング教授が声をかけてきました。「あなたがノーベル賞候補に」とキングはナッシュに告げました。ナッシュは呆然とし理由を聞きました。それはナッシュがかつて説いた「均衡論」は近代経済学の基盤となりトラスト規制法に応用されただけでなく、労使関係や進化生物学にまで応用され、認められたからでした。ナッシュはキング教授に連れられ、教授しか入れないティールームに入りました。ナッシュはそこで他の教授たちから、万年筆を贈られ、讃えられました。それは若かりし頃、ナッシュが論文をかけずに悩んでいた時、指導教授から見せられた光景でした。ナッシュは初めて業績を讃えられるという感動を実感しました。
ビューティフル・マインドの結末:「妻こそ私のすべて」
1994年12月、ストックホルムのノーベル賞授賞式でナッシュは、静かにスピーチしました。「数を信じてきました。…生涯を数に捧げ、いまだに問い続けます。論理とは?…誰が解を決める。…幻覚にも迷い、…そして行きついたのです。人生最大の発見に。愛の方程式の中にこそ、本当の解があるのです。今の私があるのは君のお蔭だ。妻こそ私のすべて。ありがとう」と。その視線の先には妻アリシアがいました。涙ぐむアリシアに、ナッシュは胸ポケットのチーフを出し、そっと口づけしました。そのチーフは初めてのデートでアリシアがナッシュに幸運のお守りとして贈ったものでした。盛大なステンディングオベーションがナッシュを包み込みました。(エンドロールをバックに、優しく美しく『ALL LOVE CAN BE』が流れます。)
1994年のノーベル経済学賞に輝いた栄光ばかりではなく、知られざる苦悩や人間的な弱さも伝わってきました。人一倍の才能に恵まれていながらも現実の世界と妄想との間でもがき苦しんでいる様子を、ラッセル・クロウが繊細な演技で表現しているのが良かったです。数学の謎に挑み続けていくことによって、1番近くにいる大切な人の存在に気付く瞬間が感動的でした。