さよなら、ベルリン またはファビアンの選択についての紹介:2021年ドイツ映画。1931年のドイツ、ベルリン。ナチズムに向かって世界が大きく変わろうとする予感と、出口のない不況への不安の中で、作家を志してベルリンにやってきたファビアンは戸惑い立ち尽くす。そんな中、女優志望のコルネリアと知り合いたちまち恋に落ちる。しかし、ただ一人の親友ラブーデが破滅し、コルネリアはキャリアのためファビアンの元を離れてしまう…。原作はエーリヒ・ケストナーの『ファビアン あるモラリストの物語』。当時の狂躁と頽廃を刺激的にカリカチュアした映像や実写のコラージュ、スーパー8撮影のざらついた質感などを縦横無尽に駆使。ドイツのアカデミー賞と言えるドイツ映画賞では最多となる10部門にノミネートされ、主要3部門の受賞に輝いた注目作。
監督:ドミニク・グラフ 出演:トム・シリング(ヤーコプ・ファビアン)、アルブレヒト・シューフ(シュテファン・ラブーデ)、ザスキア・ローゼンダール(コルネリア・バッテンベルク)、ミヒャエル・ヴィッテンボルン(ラブーデ弁護士)、ペトラ・カルクチュケ(ヤーコプの母/ファビアン夫人)、エルマー・グートマン(ヤーコプの父/ファビアン氏)、アリョーシャ・シュターデルマン(マーカルト監督)、アンネ・ベネント(ルート・ライター男爵)、メレット・ベッカー(イレーネ・モル)ほか
映画「さよなら、ベルリン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「さよなら、ベルリン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「さよなら、ベルリン」解説
この解説記事には映画「さよなら、ベルリン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
さよなら、ベルリン またはファビアンの選択についてのネタバレあらすじ:起
1931年ドイツ、ベルリン。
作家を目指してドレスデンから首都ベルリンへやってきた32歳のファビアンは、日中タバコ会社のコピーライターとして働き、夜になると金持ちの親友ラブーデとともに、芸術家たちのたまり場や売春宿が立ち並ぶ界隈を彷徨っていました。
ある夜のこと。ファビアンは怪しげなクラブで、イレーネ・モルという謎めいた女性に出会い、強引に彼女の屋敷へと連れていかれました。
2人がベッドに身体をうずめるとイレーネの夫であるモル博士が現れました。ところがモル博士は酒と色情に乱れたイレーネの姿を見ても驚きもせず、ファビアンを座らせ“妻が他人とセックスすることを望む場合は夫に紹介すること”と書かれた契約書を見せました。2人の異常な関係に冷めたファビアンは屋敷を飛び出しました。
ベルリンは没落に溢れていました。
そんなある日、ファビアンは女優を夢見るコルネリアと出会います。25歳のコルネリアは偶然にもファビアンと同じ下宿屋に越してきたばかりで、今は映画会社で著作権を扱う契約部門で働いていました。作家を志すファビアンと、女優を夢見るコルネリアは瞬く間に恋に落ちました。
しかし、ファビアンは突然仕事をクビにされてしまいます。退職金は185マルク。家賃も滞納していましたが、コルネリアにいつか贈ろうとワンピースを買いました。
さよなら、ベルリン またはファビアンの選択についてのネタバレあらすじ:承
ある日のこと。ファビアンはコルネリアと共に、ラブーデの父の別荘に遊びにいきます。ラブーデは金持ちの放蕩息子でありながら、世界革命を夢見る運動家でした。互いに愛のない両親を軽蔑し、レッシングについての教授資格論文に未来を賭ける文学博士でもありました。
ファビアンにとっては、作家としての才能を心から信じてくれていた大切な親友です。そんなラブーデとコルネリアと共にファビアンはカナヅチでしたが湖で遊び、射撃をして遊びました。
次第に世の中は戦争やインフレ、失業をきっかけに不平不満がつのり、社会はバランスを失い始めていきます。ファビアンも依然仕事を手に入れられずにいました。
その中で、ドレスデンからファビアンの母がやってきます。失業したことを隠したまま、ファビアンはコルネリアを紹介しました。
3人でレストランに行くと、大物監督マーカルトが入ってきました。コルネリアはすかさずマーカルトに挨拶をしに行きましたが、ついに最後までファビアンの待つテーブルに戻ってくることはありませんでした。
ファビアンはやりきれない気持ちを持ったまま、母を見送りました。ファビアンは列車に乗り込む母を抱きしめ、彼女のバッグに20マルクをそっと忍ばせました。母は食べものを詰めた箱を部屋に残し、手紙と共に20マルクを忍ばせました。
数学的には差引ゼロでしたが、お互いの優しい行いは決して消えることはありません。
さよなら、ベルリン またはファビアンの選択についてのネタバレあらすじ:転
マーカルトに気に入られたコルネリアは女優への階段を歩み始めていきますが、相反するようにファビアンとの関係は崩壊していきました。そしてついにコルネリアは部屋を出ていきました。ファビアンは彼女がオーディションで朗読する文章を贈りました。
その後ファビアンは偶然にもあのイレーネ・モルと再会します。夫のモル博士は横領の容疑でフランスへ逃げ、彼女は有閑マダムを相手に男娼の館をやっているとのこと。ファビアンの失業を知ったイレーネは、誘いをかけましたが、ファビアンは去っていきました。
職業安定所に行っても仕事はありませんでした。そんな中、ラブーデの父がファビアンを訪ねてきました。ラブーデが行ったデモ行為によって彼は逮捕され、釈放されたのち姿を消してしまったとのこと。ファビアンはラブーデを探し歩きました。その途中で向かったのは、コルネリアがオーディションを受けているスタジオでした。
どうしてもひと目会いたかったファビアンは天井桟敷からそっと彼女を見ました。コルネリアはファビアンが贈った文章を朗読していました。「本当に気持ちがあるなら、日曜日、いつものカフェで4時に待ってる」そう締めくくられたセリフを最後まで聞くことができずに、ファビアンはその場から立ち去ってしまいました。
ラブーデは、男に裏切られた女たちを集めた娼婦の館に入り浸っていました。仕切っているのは男爵と呼ばれていたライター女史。世界革命の夢が破れ絶望したラブーデは男を信用しない女たちに囲まれていることに安らぎを感じていたのでした。
しかし、そんなラブーデのもとに大学から手紙が届きました。そこには論文失格を告げる内容が書かれていました。ラブーデは全ての希望を失ってしまい、翌日、別荘で自らに銃口を向け自殺をしてしまいます。しかも、論文失格を告げる手紙は、同級生ヴェッカーリンの陰湿ないたずらでした。
さよなら、ベルリン またはファビアンの選択についての結末
恋人が去りたった一人の親友まで亡くしてしまい、悲しみに沈むファビアンは絶望と共に故郷のドレスデンへ帰ることにしました。
しかし、ここでも新星として雑誌を飾るコルネリアの姿を見たファビアン。どうしても彼女への想いを捨てることができず、なんとか連絡を取ろうと決意します。
撮影ですれ違いになりながらも、ファビアンは夜通しで電話を抱えコルネリアからの連絡を待ちました。そして電話が鳴りました。
2人は思い出のカフェで再会の約束をしました。
「日曜日、4時にカフェ・シュパルツホテルで」
翌朝、両親に挨拶もせず家を飛び出したファビアンは駅に向かう途中、川に身を投げようとしていた少年の姿を見てしまいます。ファビアンはとっさに飛び込み少年を助けようとしました。ところが、ファビアンはカナヅチでした。そしてあっけなく川に飲まれ姿を現すことはありませんでした。
カフェでは、コルネリアがファビアンを心待ちにしていました。
以上、映画「さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について」のあらすじと結末でした。
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