ゴーストマスターの紹介:2019年日本映画。TSUTAYA主催の映像企画発掘コンペ「TSUTAYA CREATERS’PROGRAM FILM 2016」で準グランプリを受賞したヤング・ポール監督の長編デビュー作となるホラーコメディです。とある青春恋愛映画の撮影現場を舞台に、主人公の冴えない助監督が書き溜めていた脚本に悪霊が憑りついたことによって巻き起こる地獄絵図を描きます。
監督:ヤング・ポール 出演者:三浦貴大(黒沢明)、成海璃子(渡良瀬真菜)、板垣瑞生(桜庭勇也)、永尾まりや(牧村百瀬)、原嶋元久(石田謙信)、寺中寿之(室井凡太)、篠原信一(鈴木敦)、川瀬陽太(土田太志)、柴本幸(白石景子)、森下能幸(松尾正平)、手塚とおる(柴田彰久)、麿赤兒(轟哲彦)ほか
映画「ゴーストマスター」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ゴーストマスター」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ゴーストマスターの予告編 動画
映画「ゴーストマスター」解説
この解説記事には映画「ゴーストマスター」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ゴーストマスターのネタバレあらすじ:起
とある荒れ果てた廃校。ここではいわゆるありがちな“壁ドン映画”である青春恋愛映画『僕に今日、天使の君が舞い降りた』(略して“ボクキョー”)の撮影が行われていました。主演は人気若手俳優の桜庭勇也(板垣瑞生)と牧村百瀬(永尾まりや)です。
現場は映画のクライマックスである“壁ドン”シーンの撮影に入っていましたが、途中で勇也がカットを申し出ました。魂のこもった演技がしたい勇也は、ヒットさえすればいいという考えの監督・土田太志(川瀬陽太)や、プロデューサー・柴田彰久(手塚とおる)の方針に反発し、撮影を放棄して去っていってしまいました。
土田は助監督の黒沢明(くろさわあきら、三浦貴大)を呼び出し、「助監督なら監督を助けてみろよ!」と怒鳴り散らすと現場を放り出してしまいました。気弱で要領の悪い黒沢は日本映画界を代表する伝説の巨匠・黒澤明(くろさわあきら)と名前が同音異字であることから周囲にいじられ続け、下っ端のようにこき使われていました。
スタッフや出演者たちも次々と現場を離れていき、黒沢は事態の収拾に追われました。劇中の恋のライバルを演じる俳優・石田謙信(原嶋元久)はそんな撮影現場を動画配信サイトで生配信し、柴田に止められました。
柴田は残った者たちだけで映画の撮影を続行することにしました。残ったのは牧村の同級生を演じる女優・渡良瀬真菜(成海璃子)、ベテランカメラマンの松尾正平(森下能幸)、録音担当の白石景子(柴本幸)、証明担当の鈴木敦(篠原信一)、熱血教師を演じるベテラン俳優・轟哲彦(麿赤兒)とその付き人である室井凡太(寺中寿之)、そして黒沢だけでした。
渡良瀬の父はB級ホラー映画で活躍していた俳優であり、轟は渡良瀬の父の世話になっていました。B級ホラー映画オタクの黒沢は轟の会話に乗っかっていましたが、現れた土田から轟が持ってきた差し入れのアイスをスタッフ・キャストに配るよう命じられました。牧村の愚痴に付き合わされていた柴田は「正直な話、黒沢君がいるからうちの現場は回っているようなもんだよ」とこぼしました。
黒沢が渡良瀬のPR動画を撮っている時、渡良瀬は黒沢のカバンに入っていた「ゴーストマスター」という台本を見つけました。監督になることを夢見る黒沢は長年温め続けていた自作の脚本「ゴーストマスター」を唯一の心の支えにしており、柴田はいつか黒沢をこの「ゴーストマスター」で監督デビューさせてくれるという約束をしていました。
黒沢は渡良瀬を主演に想定しており、ホラー映画への熱い想いを語りましたが、渡良瀬は「こんな所にいる時点で黒沢さんは才能はないですよ。空しくないですか? 私はこういうのやりませんよ」と一蹴してしまいました。
ゴーストマスターのネタバレあらすじ:承
すっかり落胆してしまった黒沢に追い打ちをかけるように、黒沢は柴田と土田の会話を盗み聞きしてしまいました。柴田は黒沢オススメのホラー映画など全く興味がなく、最初から黒沢の脚本を映画化するつもりなどありませんでした。
絶望と悔しさに駆られた黒沢は泣き叫びながら現場を飛び出しましたが、途中で転んで鼻血を出してしまいました。黒沢の鼻血のしずくが脚本の表紙に描かれた怨霊キャラクター“ゴーストマスター”に垂れたその時、脚本に“悪霊”が宿ってしまいました。
その頃、人気のない校舎裏では、勇也がひとり台詞を呟きながら壁ドンの練習をしていました。「お前は俺の奴隷だ。でも天使でもある」勇也の手からは血が流れており、その様子を見た黒沢はびびってしまいました。完全に演技に行き詰っていた勇也は黒沢に迫り、半狂乱で「僕にも壁ドンが降りてきたんだ!」と叫びました。
その時、勇也の手の血を吸った脚本が覚醒してしまい、悪魔の書と化して勇也の体内に取り込まれていきました。
勇也はたちまち悪魔の形相と化し、怯えた黒沢は廃校の中に駆け込んで土田に事情を話そうとしました。ところが、そこには勇也が何事もなかったかのように待ち受けており、映画の撮影は続行されることになりました。
撮影は中断されていた壁ドンの場面から再開されました。迫真の壁ドン演技を見せた勇也でしたが、次の瞬間、牧村の頭を背後の黒板に叩きつけて潰してしまいました。突然のことに状況が理解できない土田は「黒沢、お前いつの間にこんなの用意したんだよ」と言いましたが、首のもげた牧村の死体から鮮血が噴き出し、鬼の形相と化した勇也が「OKですか? 監督!」と迫ってきました。
撮影は中断され、黒沢やスタッフ、共演者たちは現場から逃げ出しました。
勇也は逃げる土田を捕まえ、映画のワンシーンのように「こうしてほしいんだろ?」と後ろから抱きつきました。すると土田の顔がみるみるうちに腫れあがり、両目が飛び出して黒沢のまぶたにくっついてしまいました。
黒沢たちは倒れた土田を置き去りにして逃げ出し、鈴木は柵を飛び越えて敷地の外に出ようとしましたが、何度飛び越えようとしても元の地点に戻ってしまいました。どうやら廃校の敷地は結界のようなもので外界とは隔離されてしまっているようでした。黒沢は警察を呼ぼうとしましたが、柴田は携帯を取り上げると「うちの会社を潰す気か。警察に言ったら全員ギャラなんて払わないからな!」と言い放ちました。
渡良瀬は勇也をキャスティングしたことを批判すると、柴田は「お前は所詮賞味期限切れ。親父さんと同じようにバーターなんだよ!」と吐き捨てました。黒沢は意を決し、B級ホラー映画の巨匠たちの名を挙げて柴田に「謝れよ」と迫りました。柴田は泣き叫びながら校舎の中へ走り去っていきました。携帯の電波も圏外となっていました。
ゴーストマスターのネタバレあらすじ:転
黒沢はその場の全員に、勇也が悪魔に憑りつかれてしまったことを話しました。轟は「可哀想に。映画に憑りつかれて“別の何か”になったか…」と呟き、「勇也! いるなら私の胸に飛び込んで来い!」と叫びました。するとどこからともなく勇也が現れ、轟の顔面に“壁ドン”しようとしました。石田はその様子をスマホで配信しようとしましたが、勇也にスマホを破壊されてしまいました。石田は「そんなのありかよ!」と叫ぶと過呼吸に陥って倒れ、そのまま絶命してしまいました。
勇也は「早くカメラ回して下さい!」と迫り、黒沢たちは校舎の中に逃げ込みました。轟は「これは鬼を斬る“妖刀ムラマサ”の出番かもしれんぞ。私は常に撮影の時に持ち歩いている。これで斬れば勇也も成仏できる」と言い出しましたが、渡良瀬は「それって映画の中のお話でしょ?」とつっこみました。ところが、付き人の室井は妖刀ムラマサを控室に忘れてしまっていました。そこで轟は自らの顔に梵字を書き入れることにしました。白石はそれを見て思わず笑ってしまいました。
一方、柴田は美術室で自分のカバンを探していました。カバンは実は鈴木が持っており、鈴木は中から札束を抜き取ると「ギャラはもらいますよ」と言い放ちました。ところが、鈴木は室内にあるマネキン相手に壁ドンをしている勇也の姿を見つけ、金を放り出して一目散に逃げていきました。勇也は「青い鳥、逃げちまうぞ」と劇中の台詞を優しく語りながら、拾い上げた札束で柴田を殴りました。
その頃、黒沢、白石、松尾らはそのまま撮影を続行することにしました。轟は室井から妖刀ムラマサを受け取りました。柴田の叫びを聞きつけた轟らは、上半身が異様に膨れ上がった柴田の姿を発見しました。走り去っていく柴田を見て、一同は「学校の怪談」かと思いましたが、その背後から「監督、OKですか!」と勇也が現れました。その頃、鈴木は牧村の死体のスカートの中を覗こうとしていました。そこに柴田が現れて鈴木に抱きつき、二人はそのまま教室の外に落下して死亡しました。
松尾は「役者ってものはOKが出るまで演るものだ」と黒沢に監督の代わりをやるよう指示しました。黒沢は自らカメラを手にし、勇也や一同と共に屋上に上がりました。黒沢は勇也に「跳べ!」と指示すると、勇也はけたたましい絶叫をあげました。
その時、轟が室井と共に現れ、「人生、道に迷う時がある。今ならまだ引き返せる。ここは一発、本番アドリブといこう。妖刀ムラマサよ、今こそその封印されし力を見せてみよ!」と刀を抜きましたが、それはまるでコンニャクのようにくねくねと動くおもちゃの刀でした。轟は勇也の一撃で首を吹き飛ばされてしまいました。
ところが、轟は首を失っても執念で立ち上がり、室井は勇也を押さえつけると「カメラの前では妖刀ムラマサなんです。轟先生は嘘でも本当にするから先生なんです」と一同に告げました。するとおもちゃの刀は怪しい光を放つ本物の刀となり、勇也の右腕を斬り落としました。室井は一同を逃がし、「先生、勉強になりました」と勇也と刺し違える覚悟を決めましたが、轟は斬る直前で力尽きて倒れてしまいました。
勇也の右腕は白石の頭にくっついたまま離れませんでした。その時、一同は室井の断末魔を聞きました。やがて日も暮れ、一同が対策を練っていると、白石はようやく頭から勇也の右腕を引き離しました。すると傷口から悪魔の顔が現れ、それは「ゴーストマスター」と書かれた悪魔の台本に姿を変えました。
黒沢は「全部僕の責任なんです。僕の脚本が勇也に…」と土下座しました。白石は「何で言わなかったんだよ。お前の書いたクソみたいな脚本のせいで!」とブチ切れましたが、渡良瀬は「これが黒沢さんの書いたものなら、どうすれば終わるのかわかるのは黒沢さんだけです」と台本を手に取りました。
渡良瀬は「僕には才能なんかない」と怖気づく黒沢を一喝し、「いつまで自分の世界に閉じこもっているつもりですか。ここはアンタが創った世界なんだよ。アンタがいつまでも逃げている限り、私たちは永遠に死の恐怖に追われ続けるの! 助かりたいならこの恐怖に満ちた世界をアンタの“愛”で上書きしてみせろ!」と檄を飛ばしました。白石と松尾は渡良瀬が悪魔の台本に言わされていることに気付き、黒沢が台本を開くと「もう逃げられない」と書かれていました。
その時、黒沢は勇也の殺し方が“ボクキョー”のシーンと連動しており、勇也の中では黒沢の書いたホラーと“ボクキョー”の世界観がせめぎ合っていることに気付きました。黒沢は「この脚本は勇也の肉体を乗っ取って早く“映画”になりたい。でも勇也の魂はまだ“ボクキョー”を引きずっている」と語り、まだラストシーンを書いていないことを明かすと、心を込めたラストシーンを撮り上げて勇也も脚本も成仏させたいと伝えました。
ゴーストマスターの結末
黒沢たちはラストシーンを渡良瀬に演じさせることにし、撮影の準備に取り掛かりました。父からアクションの手ほどきを受けていた渡良瀬は「何か武器あります?」と言い出したその時、勇也が姿を現しました。黒沢は「勇也、早く映画になりたいだろ?」と台本を勇也に投げつけると、台本は勇也の体と融合して右腕を再生させました。
勇也は「OKですか? 黒沢監督」と言うと、黒沢は「OKなんかじゃないよ。僕の人生は一度もOKになったことなんてないよ。全部NGだ。NG集みたいな人生だクソバカ野郎!」と返し、渡良瀬も「てめえの気持ちだけで芝居してるんじゃねえよ、この大根役者が!」と言い放ちました。
渡良瀬はカチコチに硬く凍ったアイスを武器代わりにし、勇也と対峙しました。黒沢は「アクション!」と撮影を開始し、渡良瀬と勇也は凄まじい闘いを始めました。渡良瀬がピンチに陥ると黒沢が「立て!」と鼓舞し、渡良瀬は「バカ野郎!」と渾身の頭突きを勇也にくらわしました。倒れてもがき苦しむ勇也。渡良瀬は「これがお前のラストシーンだ!」と丸めた“ボクキョー”の台本を勇也の喉に押し込みました。すると勇也の体は眩い光を放ち、「監督、OKですか…」と呟きながら消滅していきました。
校内からは勇也のつけた血痕が消え去りました。勇也の立っていた場所には『僕に今日、ゴーストマスターが舞い降りた』と題された脚本が落ちていました。ラストには「勇也、哀しそうに手を差し伸べながら光の中で崩れ去って消える」と書かれてありました。渡良瀬は「終わった」と呟きました。
黒沢は『僕に今日、ゴーストマスターが舞い降りた』の脚本を燃やしました。渡良瀬は「黒沢監督、次はガンアクションでお願いします」と声をかけました。黒沢は「はい」と答えました。
映画は撮り終わりましたが、次はどうやって上映にこぎつけるかという課題が残っていました。白石はかつての先輩に掛け合って海外のホラー映画祭で上映してもらおうと考え、「映画っていうものは、最後まで諦めさせてくれないものだよ」と語りました。ところがその時、燃え尽きたはずの脚本が再び悪魔の脚本となって蘇り、白石の体に四角い穴を開けました。白石は「えっ」と呟きながらその場に崩れ落ちました。
その頃、黒沢は片付けをしていた松尾に「松尾さんって本当に映画が大好きなんですね」と声をかけていました。しかし、松尾は突然笑い出すと「本当のことを教えてやる。俺は本当は映画なんて大っ嫌いなんだよ。クソ下らない脚本と操り人形みたいな監督、言うことだけはいっちょ前な役者と…」と溜まりに溜まっていた不満を語り始めました。何とか現場にしがみついていた松尾はようやく安定した収入を得るようになりましたが、妻は子供を連れて去っていってしまったのです。
「40年もしがみついて、家族まで失って、ようやく俺は気付いた。映画に命を賭ける価値なんかない」と松尾が吐き捨てたその時、悪魔に憑依された渡良瀬が現れて松尾を殴り倒しました。渡良瀬はカメラを奪い、黒沢は慌てて逃げ出しました。廃校全体を覆っていた結界のようなものは消滅しており、黒沢は敷地の外に脱出しましたが、逃げる途中で転んでしまいました。
カバンの中からは渡良瀬のPR動画を撮った小型ビデオカメラが転がり落ち、黒沢は黙って再生された映像を見つめていました。
その頃、渡良瀬はひとりカメラを回しながら「カメラの前に立つ人生か、スクリーンの前に座る人生か、お前が決めろ」と呟いていました。そこに戻ってきた黒沢が「君のラストシーンを撮りに来た。アクション!」と声をかけました。渡良瀬は黒沢を殴り倒すと、黒沢は「その程度か? もっといけるだろ」と何度も立ち上がりました。
黒沢は「まだOKじゃねえよ!」と背後から渡良瀬に抱きつき、「お前は俺の奴隷だ。でも、天使でもある」と“ボクキョー”の台詞を呟いて壁ドンを決め、渡良瀬にキスをしました。その時、渡良瀬に憑りついていた悪魔が黒沢に乗り移りました。
渡良瀬が我に返ると、黒沢は白目を向いてもがき苦しんでいました。黒沢は「全部終わらせてくれ。君は映画に愛されている。君は光となって、このクソみたいな世界を照らせ!」とカメラを渡良瀬に託しました。渡良瀬は絶叫しながらカメラを黒沢の脳天に叩きつけました。
カメラと融合した黒沢は渡良瀬に「OK」と呟きました。黒沢の口は映写機となり、これまでの一連の出来事を映し出しました。映像のラストは渡良瀬の今の姿でした。全てを映し終えた黒沢はそのまま息を引き取りました。いつしか夜も明けており、渡良瀬は黒沢の死体に目をやると、別のアングルから自分を映していたカメラを叩き壊しました。
以上、映画「ゴーストマスター」のあらすじと結末でした。
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