花腐しの紹介:2023年日本映画。詩人で小説家の松浦寿輝の芥川賞受賞作を『身も心も』『火口のふたり』の荒井晴彦監督がメガホンを執り映画化した作品です。主演に綾野剛、『火口のふたり』で主演を務めた柄本佑、ロックグループ「ゲスの極み乙女」のさとうほなみを迎え、斜陽のピンク映画業界を舞台に同じ女を愛してしまったふたりの男の成れの果てを描いていきます。
監督:荒井晴彦 出演者:綾野剛(栩谷修一)、柄本佑(伊関貴久)、さとうほなみ(桐岡祥子)、吉岡睦雄(桑山篤)、川瀬陽太(寺本龍彦)、MINAMO(リンリン)、Nia(ハン・ユジョン)、マキタスポーツ(金昌勇)、山崎ハコ(韓国スナックのママ)、赤座美代子(小倉多喜子)、奥田瑛二(沢井誠二)ほか
映画「花腐し」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「花腐し」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「花腐し」解説
この解説記事には映画「花腐し」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
花腐しのネタバレあらすじ:起
2012年12月。ピンク映画監督の栩谷修一はかつての恋人だった女優・桐岡祥子の通夜に出向きました。しかし、祥子の両親は彼女が女優になるために家を飛び出し、音信不通となったことを根に持っていたことから、栩谷からの焼香や香典も全て拒絶しました。
続いて栩谷が向かったのは、祥子が一緒に心中した相手であるピンク映画監督の桑山篤の通夜の席でした。栩谷と桑山は友人同士であったのですが、なぜ祥子と桑山が心中に至ったのかは誰も知る由もありませんでした。桑山の通夜の席では映画関係者たちが口々に斜陽化するピンク映画業界の現状を語り合っていました。桑山は生前に祥子が主役の映画『くちびる』を撮ろうと構想しており、遺品にはその台本がありました。
この5年ほど全く映画を撮っていない栩谷はアパートの家賃を滞納しており、ピンク映画製作会社社長の小倉多喜子に事務所に間借りさせてほしいと頼みましたが、小倉は既に会社を畳む決心を固めていました。仕方なく栩谷はアパートの大家である金昌勇に家賃支払いの先延ばしを願い出たところ、金は交換条件として、解体して新たなマンションを建てる予定の古いアパートに居座っている伊関貴久という男の立ち退き交渉をしてくれるよう依頼してきました。
栩谷は伊関のアパートへと向かいましたが、途中で晴天なのにも関わらず栩谷の目の前だけ雨が降り出しました。ずぶ濡れになった栩谷は何とか伊関の部屋まで辿り着きましたが、部屋からは女性の笑い声が聞こえてきました。中にいた伊関は自分はきちんと家賃を払っていると立ち退き要請を拒否しましたが、とりあえず栩谷を中へ入れることにしました。伊関は部屋には女性などおらず自分ひとりだと主張しました。
伊関の仕事は売れない脚本家であり、生活のためにアダルトビデオの脚本を書いていました。偶然にも伊関の取引先であるアダルトビデオメーカーは栩谷も仕事をしたことがあり、二人は意気投合しました。伊関は栩谷に、かつて付き合っていた女性の話をしました―――。
花腐しのネタバレあらすじ:承
―――2000年の正月。当時学生だった伊関は居酒屋でアルバイトをしながら脚本家を志していました。そんなある時、伊関は同じ店でバイトをしつつ女優を目指している祥子と出会い、やがて彼女と付き合うようになっていきました。
伊関は祥子のアパートに転がり込み、同棲生活を始めました。シナリオ大賞に応募するも不合格で、なかなか脚本家として芽が出ない伊関は生活のためにアダルトビデオの脚本を書くことになりましたが、まだ童貞だった伊関はどう書いていいかわかりませんでした。祥子もまた処女でしたが、ふたりは初めて体を重ねました。
やがて祥子は劇団で役をもらうなどステップアップしていきましたが、対照的に伊関は脚本家として伸び悩んだままでした。そんなある時、祥子は伊関の子を身籠っていることを知りました。伊関は祥子の妊娠を機に脚本家を辞めて真っ当な人生を歩もうとしましたが、女優の夢を捨て切れない祥子はお腹の子を堕してしまい、このことがきっかけで伊関と祥子は破局に至ったのです―――。
―――伊関の話を聞いた栩谷は隣の部屋から再び女性の声を聞き、部屋の扉を開けたところ全裸で自慰行為をしている女性がいました。女性は映画監督を志して中国からやってきた留学生のリンリンであり、故郷から持ち込んで栽培しているマジックマッシュルームでハイになっていました。
栩谷は伊関の部屋を出、大久保にある韓国スナックで飲んでいたところ伊関が入ってきました。栩谷と伊関は飲みながら祥子の話を始め、栩谷は伊関が付き合っていた祥子こそがかつて自分が付き合っていた祥子その人であることに気づきました。栩谷は伊関に祥子の死を伝えました―――。
花腐しのネタバレあらすじ:転
―――2006年。栩谷と祥子の出会いは彼女が桑山と飲んでいた時でした。栩谷は「俺は女は嫌い」だと言い放ち、祥子には関心を示しませんでしたが、祥子は女嫌いでピンク映画が撮れるのかと不思議がりました。栩谷と祥子は酔い潰れた桑山を店に残して栩谷のアパートに向かい、そのまま二人は体を重ねました。
やがて栩谷と祥子は同棲生活を始めましたが、栩谷は一向にピンク映画を撮ろうとせず、気がつけば5年の月日が流れていました。そんなある日、祥子は桑山に呼び出され、自分を主役にした脚本を書いたと告げられました。祥子に動向した栩谷は全く気にする様子はなく、台本を手にした祥子は浮かれながら山口百恵の「さよならの向こう側」を歌い始めました。
それからしばらくして、栩谷は祥子を伴ってベテラン脚本家の沢井誠二と話す機会を持ちました。沢井は栩谷の現状を「映画も同棲も“ごっこ”、お前のやってることは全て“ごっこ”なんだよ」と厳しく言い放ちました。栩谷は図星を言われたなか、納得できない祥子は思わず沢井の顔にコップの水を浴びせてしまいました。
やがて祥子は栩谷の子を身籠りました。祥子は哀しい過去、そして自身が既に30歳を過ぎていたことから今度こそ産みたいと栩谷に伝えましたが、栩谷は家族を持ちたくないと言い放ってしまいました。祥子はショックのあまり流産してしまいました。しかし、栩谷はそんな祥子に寄り添うことは決してせず、落胆した祥子は桑山と関係を持ってしまいました。しかし、二人の関係を知った栩谷は彼女を責めることはしませんでした。
ほどなくして栩谷と祥子との関係に亀裂が入り、祥子は疲れたから久しぶりに実家に戻って休んでくると告げて栩谷の部屋から出ていきました。祥子と桑山が心中したのはその数日後でした。
花腐しの結末
栩谷と伊関はスナックを出て伊関のアパートへと戻りました。栩谷と伊関は祥子を幸せにできなかったことを悔んでいました。部屋ではリンリンが友人の韓国人留学生ハン・ユジョンと一緒にマジックマッシュルームをキメていました。
栩谷は酒とマジックマッシュルームの影響で眠り込んでしまいましたが、目を覚ますといつの間にかリンリンがビデオカメラを手にしながら馬乗りになっていました。栩谷は夢かうつつかリンリンとセックスに及び、そのまま再び眠りについてしまいました。
栩谷が目を覚ますと、いつの間にか伊関やリンリンたちは姿を消しており、部屋は綺麗に片付けられていました。部屋に残されたのは金魚が泳ぐ金魚鉢、そして伊関の原稿が入っているパソコンでした。パソコンの中には「花腐し」というタイトルの脚本があり、そこには祥子との思い出がが綴られていました。栩谷は祥子が自分に桑山との関係を打ち明けた時の部分を、怒り狂って祥子の頬を激しく叩き、その後抱きしめたと書き直しました。
伊関の部屋を出た栩谷は、踊り場にある鏡に白いワンピース姿の祥子の姿が映っていることに気づきました。祥子は栩谷を見ることなく、伊関の部屋へと入っていきました。祥子の後を追った栩谷は伊関の部屋の扉を開け、室内を見つめながら涙を流していました。
以上、映画「花腐し」のあらすじと結末でした。
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