市子の紹介:2023年日本映画。本作『市子』の原作は、監督である戸田彬弘が率いるチーズtheaterの舞台『川辺市子のために』。2015年8月に上演され、サンモールスタジオ選定賞2015で最優秀脚本賞を受賞、その後2度再演されている人気作品。主人公・市子の壮絶な半生を演じるのは2024年も『52ヘルツのクジラたち』、『朽ちないサクラ』、テレビドラマ『アンメット-ある脳外科医の日記-』と多くの主演作がある杉咲花。市子の恋人・長谷川役は杉咲との共演も多い若葉竜也。数多くの作品に出演し、そのたびに違った顔を見せる演技派である。
監督: 戸田彬弘 出演:杉咲花(川辺市子)、若葉竜也(長谷川義則)、森永悠希(北秀和)、渡辺大知(小泉雅雄)、宇野祥平(後藤修治)、中村ゆり(川辺なつみ)、中田青渚(吉田キキ)、石川瑠華(北見冬子)、倉悠貴(田中宗介)、大浦千佳(山本さつき)ほか
映画「市子」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「市子」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「市子」解説
この解説記事には映画「市子」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
市子のネタバレあらすじ:起
黒いワンピースを着た市子が、鼻歌を歌いながら暑い夏の道を歩いています。
2015年8月13日。
アパートの一室で市子はバッグに荷物を詰めています。同居する恋人の長谷川の乗ったバイクの音が聞こえると、市子は慌ててベランダから逃げようとし、バッグに手が届かずそのまま手ぶらで走り出します。
長谷川はその前の晩、市子にプロポーズをし、彼女は幸せそうに涙を流していました。しかし今夜いっしょに花火を見に行くために用意した浴衣を残したまま、市子は姿を消してしまったのです。
一週間後、長谷川のもとを訪れた刑事の後藤は「川辺市子という女性は存在しない」と彼に言います。
1999年7月。
小学生の山本さつきが父親の入り浸っているスナックへ遊びに行くとそこに〝月子〟がいました。母親がスナックで働いており、晩ごはんを受け取って帰る月子にさつきは、好きな男子にちょっかいを出したことについて問い詰めます。月子はさつきを突き飛ばし怒って去っていきました。
2000年9月。
小学生の幸田梢は、男子の性的なからかいから助けてくれた月子を自宅に招き、ケーキをごちそうします。月子は、自分の本当の名前は市子だと言って帰っていきました。次の日曜日、ふたりでブラジャーを買いに行き、梢は月子に同じものをプレゼントします。すると月子は未会計のおもちゃを持ってきて梢に「あげる」と言い梢を怒らせてしまいます。
数日後、ブラジャーの入った袋を持って月子の住む団地へやってきた梢は、そこで月子の母親のところに男がやってくるのを目撃し、月子と梢は追い出されてしまいます。その男から現金を受け取り「行こ」という月子に梢は「帰る」と言い、以降疎遠になってしまいました。
2008年7月。
高校生になっていた月子には田中宗介という恋人がいますが、キスはするもののなかなか以前のようにその先を許さない月子に彼はイラ立っています。
先回りして団地に来ていた宗介に対し月子は、冷めたわけではないと言いますが、部屋にあげてほしいという要望は拒みます。そこへ大人の男性が現れ、それが父親だと勘違いした宗介があいさつすると、月子から家の鍵を受け取り男は部屋に入っていきます。ただならぬ雰囲気を感じた宗介が帰ろうとすると、月子は建物の陰に彼を連れていきキスをして足をからめてきました。宗介は驚き、その場から走り去ってしまいます。
市子のネタバレあらすじ:承
2015年8月28日。
長谷川はバイクで、市子が以前住み込みで働いていた新聞販売店を訪ねます。既に廃業しており情報は何もないと言いますが、当時ともに住んでいた女性がケーキ屋で働いていると教えてくれました。
2009年5月。
市子といっしょに新聞配達をしている吉田キキが、アルバイト先のケーキ屋から自作のケーキを持って帰ってきました。風邪で寝込んでいる市子を心配し病院へ行くよう言いますが、病院は嫌いだと市子は言います。パティシエを目指すキキは市子に夢がないと知ると、ふたりでケーキ屋をやろうと無理矢理約束させます。そんなキキに市子は「うち、人ころしてしもた」と告白しますが冗談にしか思われませんでした。
キキに会った長谷川は、ホームレスのように町をさまよっていた市子をキキが新聞配達に誘ったと知ります。
そのころ警察署では、生駒山中で見つかった白骨遺体の捜査上に、川辺市子の母・川辺なつみの名前が浮かんでいました。それには難病・筋ジストロフィーの患者が関わっているようです。折しも捜査中の後藤刑事のもとには和歌山から長谷川がやってきて、捜査に同行させてほしいと申し出ます。
後藤刑事は山本さつきをたずね、彼女から、以前は〝市子〟と言っていたのにいつの間にか〝月子〟と名乗るようになり、学年も急に下になっていたような気がすると聞き出します。また幸田梢は、月子の家には介護用のおまるのようなものがあったと言っていました。
後藤刑事は長谷川に、生駒山中の遺体が妹の川辺月子であること、そして戸籍謄本には川辺市子の名前がないことから、DV等で夫から逃げたなつみが市子を産んだが出生届が出せず無戸籍状態であり、難病の月子の死後、市子が月子になりすました可能性が高いと告げます。
市子のネタバレあらすじ:転
後藤と長谷川は、2010年の夏に市子が訪れた相談室で話を聞きます。市子は戸籍が取れるかを聞きに来たのですが、指紋を提出する必要があり断念したと言います。そして、彼女を探して高校のときの同級生の男子が現れたことを教えてくれました。
2008年7月。
高校生の北秀和は恋人のいる川辺月子に惹かれており、たまたまいっしょにアイスを食べたことをきっかけに話すようになっていました。
後藤と長谷川は月子を探していたという北のアパートをたずねます。北は月子のことが好きだったがいなくなってしまったので探してただけだと説明。後藤は「小泉雅雄のこと知ってるよな?」とカマをかけますが北は動じません。しかし違和感をおぼえた長谷川は部屋に入り込み、そこに市子がいたことを確信するのでした。
その後再びひとりで北をたずねた長谷川は、「市子いましたよね?ぼくは市子の味方です」と伝えるのでした。
<北の告白>
高校生のころ、市子を団地まで送っていった北は、彼女が男に手を引っ張られて部屋に入るところを目撃します。気になった北はベランダに忍び込み中の様子をうかがいます。男はソーシャルワーカーとして川辺家に関わり、そのなかで犯罪に手を染めることとなり、なつみと市子を恨んでいるようです。そんな男に市子は身体を差し出そうとしますが途中で怖くなり、口論の末誤って男を殺してしまいます。心配した北が部屋に入ってきて、市子を助けると約束。ふたりは暗くなってから死体を踏切に運び、事故で亡くなったように偽装しました。しかしその間に市子がいなくなってしまい、北は市子を探し回る羽目になったのです。
北は長谷川に、市子が「あんたにはもう会いたないって言ってた」と言い、「川辺は俺にしか助けられへん」と言い放つのでした。
2010年12月。
ケーキ屋で働く市子のもとに北がやってきました。俺に向き合え、と怒る北に対し、感謝はしてるけどもう忘れてほしいと吐き捨てる市子。「川辺、悪魔やで」と北は言います。
市子の結末
北の部屋に北見冬子という女性が川辺市子をたずねてやってきました。サイトの掲示板で知り合ったという彼女は、ここにくれば死ぬのを手伝ってくれると聞いたと言います。そこへ市子から電話があり、ふたりで海に来てほしいと誘います。
一方長谷川は、市子の荷物の中で見つけた写真をたよりに、母である川辺なつみがいる島へ向かっていました。声をかけてきた長谷川を警戒するなつみですが、自分はただの恋人で警察にも言わないし市子を助けたいだけだと長谷川は訴えます。事情をある程度知っている長谷川になつみは過去の出来事を語り始めます。
2008年8月。
夜の仕事をしているなつみが出かけたあと、市子は筋ジストロフィーで寝たきりの月子の世話をしています。無表情の市子の目には無言の月子が映っています。市子は月子の呼吸を助ける器具をはずし、警告音を無視し続けました。翌朝、帰宅したなつみは事態に気づきますが、「市子、ありがとうな」と言って洗い物を始めます。市子は弱弱しく鼻歌を歌う母に話しかけますが、うまく言葉になりません。
限界だった、幸せな時期もあった、となつみは話し、そして長谷川もなつみも泣きました。
車で夜の海にやってきた北と北見。ヘッドライトの先には花火を持った市子がおり、北見は車を降りておじぎをします。
翌日、白浜海岸で男女ふたりの遺体が見つかったという情報が流れていました。
島を離れる船に乗った長谷川を、昨日とは打って変わってきちんとした服装のなつみが見送っていました。
市子は、長谷川との出会いや幸せだった初同居の日、そしてプロポーズのときのことを思い出していました。
あのアパートを逃げだした日、市子はふたりでうつった写真を見て涙を流していました。
いま、市子はまた黒いワンピースを着て黒いサンダルを履き、母と同じような鼻歌を歌いながらあてもなく歩いています。
以上、映画「市子」のあらすじと結末でした。
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