影踏みの紹介:2018年日本映画。「半落ち」「クライマーズ・ハイ」「64-ロクヨン-」などで知られる日本ミステリー界の巨匠、横山秀夫。彼の異色作「影踏み」が、「月とキャベツ」(1996)の篠原哲雄監督によって映画化された。主演は、監督とは三度目のタッグとなるミュージシャンの山崎まさよし。本作では、頭脳明晰ながら“ノビ師”と呼ばれる泥棒として日陰の人生を歩んできた男を淡々と演じ、主題歌も担当している。共演は、ここ数年主演作が次々と公開されている北村匠海。山崎と息ピッタリのバディぶりを披露している。
監督:篠原哲雄 キャスト:山崎まさよし(真壁修一)、尾野真千子(安西久子)、北村匠海(啓二)、滝藤賢一(久能次朗)、鶴見辰吾(馬淵昭信)、大竹しのぶ(真壁直美)、中村ゆり(稲村葉子)、竹原ピストル(吉川聡介)、中尾明慶(大室誠)、藤野涼子(安西久子:回想)、下條アトム(栗本三樹男)、根岸季衣(菅原春江)、真田麻垂美(図書館にいた女)、田中要次(加藤)、ほか
映画「影踏み」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「影踏み」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
影踏みの予告編 動画
映画「影踏み」解説
この解説記事には映画「影踏み」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
影踏みのネタバレあらすじ:起
真壁修一(山崎まさよし)は“ノビ師”。深夜に住人が寝静まった家に忍び込み、現金だけを盗み出すプロの泥棒です。彼は「ノビカベ」と呼ばれ、決して捕まらないと言われていました。その修一が、同級生で刑事の吉川聡介(竹原ピストル)の取り調べを受けています。
修一が忍び込んだ稲村道夫の家では灯油がまかれ、道夫の妻・葉子(中村ゆり)が二階で今まさに火をつけようとしていました。修一はそれを止め、その後逮捕されてしまったのです。
それから二年。
保育士をしている安西久子(尾野真千子)は、出入りの文具店店主・久能次朗(滝藤賢一)に見初められ、デートしたあとプロポーズされますがそれを断ります。久子は、修一の出所を待っていたのです。
翌日。刑務所から出てきた修一を出迎えたのは、彼を「修兄(しゅうにい)」と呼んで慕う若者、啓二(北村匠海)です。修一は自分が捕まった事件のことを調べ、葉子の通報によって捕まったと記録されていることを知ります。しかし実際は、葉子が火をつけるのを止めた後、なぜか階下にいた吉川によって逮捕されたのです。
吉川に会いに行った修一は、稲村が借金で破産し離婚、家も競売にかけられたと聞かされます。葉子の通報は嘘だと吉川に言ってみますが、それを認めるような男ではありませんでした。
その後、昔からの仲間である大室誠(中尾明慶)の店に行き、葉子のバックに関西ヤクザのシノキという男がついていると教えてもらいます。そして誠も啓二も、ヤバいから関わらない方がいいと言いますが、修一の真相が知りたいという気持ちは変わらないようです。
翌朝、修一と啓二のところへ捜査一課の警部補・馬淵(鶴見辰吾)がやってきました。吉川が死んだというのです。吉川は葉子を囲っていて、彼女のスナックで飲んだあと川で溺死したのだと言います。修一はシノキの名前を出しますが、彼は刑務所に入っており、葉子も店で客といたというアリバイがあります。しかもその客は地裁の判事。修一は、自分は久子のところに行っていたと説明します。
影踏みのネタバレあらすじ:承
二十年前。
修一の母は高校教師をしていました。しかし息子(修一の弟)が窃盗で捕まり、校長から辞職を促され、生徒には残酷な言葉を浴びせられます。失意のまま家に帰ると、そこにはおびただしい数の貼り紙が貼られ、中傷の言葉が並んでいました。それを剥がしながら徐々に理性を失っていく母。帰宅した修一が暴れる母を抱きしめ、その姿を恋人である久子(藤野涼子)も見つめていました。
吉川の死体が発見されたその夜、修一は久子のアパートを訪れました。久々の再会でどことなくぎこちない二人。晩ごはんを食べながら、自分の名前をアリバイに使ってくれてうれしい、と久子は言います。でも、これから事件のことを調べると言う修一に久子は、泥棒をやめてほしいと頼みます。無言の修一。この部屋で寝るよう言い残し、久子はその部屋を出ていきました。
翌朝、修一は啓二を自転車の後ろに乗せ、金貸しの加藤(田中要次)のところへ向かいます。そこで当面の生活資金を借り、事件の情報を聞き出します。どうやらシノキという男と地裁の執行官である轟という男がつながっていて、カモになる人物を轟が紹介してはシノキからバックマージンを受け取っていたらしいのです。そのとき、奥で金を借りた男が店を出ていきました。その男は久能のようです。
その日、久子がアパートに帰ってくると、なぜか久能がそこに現れました。強引に指輪を渡そうとする久能を拒否し、久子は部屋に入りました。
その夜、修一は、事件後初めて葉子が営むスナックを訪れました。あからさまに嫌な顔をする葉子に、誰が後ろ盾なのか質問すると、「シノキが吉川に変わっただけ」と暗い顔で葉子は答えます。横暴な吉川に苦しめられていた葉子は轟に相談し、事件の夜も轟と、判事の栗本がスナックに来ていました。泥酔してからみ出した吉川を外に連れ出したのは轟で、その後のことは知らないと葉子は答えました。
影踏みのネタバレあらすじ:転
修一は、久子に迷惑がかからないよう簡易旅館に宿をとります。久子のために足を洗ったら?と言う啓二の言葉を聞き流し、深夜、修一は轟の家に侵入します。そこで“シノキタツヨシ”からの多額の入金が記録された通帳と、轟の手帳を盗み出した修一は、翌日、本人に会うため地方裁判所へ出向きます。
しかし轟は暴漢に襲われて入院してしまったとのこと。仕方なく修一は、手帳を見て判事の栗本を呼び出します。葉子と関係を持ったことは認めたものの、暴漢に心当たりはなく、犯罪者である修一に心配されたくないと言い残して栗本は立ち去ります。
一方そのころ、久子は無言電話やネットでの中傷など嫌がらせを受けていました。「安西久子の恋人は泥棒」という部分は事実であり、久子は職場を退職することを決意します。
若き日の久子。一緒にいるのは今と変わらない姿の啓二です。そこへやってくる啓二と瓜二つの男、それは修一でした。啓二と修一は双子だったのです。
ある日、部屋で啓二と久子が二人きりになり、高校の入学式のときに三人で撮った写真を久子がなつかしく見ていると、いきなり啓二が久子を押し倒してきました。久子が修一とつき合っていることに気づいていた啓二は、「いいじゃん、同じ顔なんだし」と言いますが、久子は「全然違う!」と抵抗します。写真を破り捨て、「久子がいなきゃよかったんだ」と捨てゼリフを残して啓二は出ていきました。
修一は、踏切で電車に飛び込もうとしている葉子を助けます。店で傷の手当てをしながら、二年前の事件のとき、葉子が自身もこぼれた灯油の中に立っていたことに触れ、死ぬ気だったのかとたずねます。「またあなたにジャマされた」と答える葉子。そんな葉子に修一は、自分の過去を話し始めます。
二十年前の母子心中事件。修一の母が狂って弟を焼き殺したと言います。優秀な修一は法律家になるべく難関大学に合格しますが、弟啓二は受験に失敗し、挙げ句盗みを働いてしまいます。そのことで浴びせられる世間の非難に耐えきれず、修一が恋人の久子と京都旅行に行っている間に母は啓二の首を絞め、家に火を放ったのです。
修一が火や人の死に対して特別な感情を持っていることを理解した葉子は、修一の手に唇を寄せ、そして二度とここには来ないよう告げるのでした。
そんなとき、事件が起きます。久子の部屋に久能が押し入ってきたのです。襲われながら久子は、それが久能本人でないことを見抜いていました。襲ってきたのは久能の双子の兄で、指輪を持ってきたのも、嫌がらせをしていたのもその兄の方だったのです。
なんとか逃げ出した久子は、簡易旅館の前でうずくまり修一に助けを求めました。久子を落ち着かせ、翌朝修一はひとりでアパートに荷物を取りに向かうことにしました。出発の際、修一は自転車に発信機が仕掛けられていることを確認します。以前逮捕されたときも、警察によってそうされていたと修一は疑っていました。
久子の部屋で修一は、テープで修復された三人の写真を発見します。それを拾い上げたところでドアと激しく叩く音が…。用心しながら開けると、何者かがスタンガンで襲いかかってきました。それは誠でした。部屋から飛び出し修一と誠がもみ合っていると、捜査一課の馬淵がパトカーで駆けつけ、誠は確保されました。誠は葉子にやさしくされ、勝手な思いで周りの男を排除しようとしていたのです。
馬淵が、轟を追及したいが証拠がないと嘆くと、修一はそっと盗んだ通帳と手帳を渡します。地裁の前で拾ったと言って。修一は、発信機を仕掛けたのが馬淵だとわかった上で行動していたのです。馬淵はそんな修一に感心するのでした。
旅館に戻ると部屋の窓ガラスが何者かに割られていて、修一と久子はトラブルを嫌う女将に追い出されてしまいます。修一は久子を葉子のスナックに連れていき、しばらくここで匿ってほしいと無理矢理久子を置いていきます。そしてその足で久能文具店に向かった修一は、久能次朗から店をたたむことにしたと聞かされます。久能も双子で、兄が迷惑を掛けたと謝りながら、自分も兄に引きずられてしまったのかもしれないと言うのでした。
影踏みの結末
久子はスナックで夕食を作っています。食べないという葉子は、自分はみんなを不幸にする、と話します。久子は「その不幸はあなたのせいじゃない」と言い、いらないものは切り捨てていいという言葉に葉子は救われます。やっぱり食べる、と久子の料理に口をつけた葉子は味付けに文句をつけますが、ふたりの距離は縮まったようです。
その夜、修一は久能が外出しているスキに文具店に忍び込みます。戻ってきた次朗が異変を感じて倉庫に入ると、そこに修一がいました。久能兄の死体を見つけた修一がその事実を突きつけると次朗は、兄が自分からすべてをかっさらっていた、と叫びます。修一は、ほしかったものが同じだっただけだと言い、双子の片割れではなく一人の人間だと証明するべきだと言い残して去っていきます。
双子としての苦悩を理解する修一は、弟の啓二から母子心中事件の真相を聞きます。確かに母は啓二の首を絞めて家に火をつけましたが、ハッと我に返り啓二を助けるため逃がそうとしたのです。「ごめんね、修ちゃん」と言いながらその場にとどまる母を一人にしておけなかった啓二は、逃げることをやめ、ふたりで炎に包まれたのです。
自分が久子とつき合ったことで啓二を追いつめてしまったとずっと罪悪感に苛まれていた修一。自分を貶めるように泥棒に身を落とし、久子とも結ばれずに生きてきた修一に啓二は言います。「お互いもう解放しようかね」
葉子と買い出しに出ていた久子を修一が迎えにきました。すべてを理解した葉子と無言で別れ、逆の方向に歩いていく修一と久子。向かったのは、昔三人でよく過ごした丘の上です。
久子には見えない啓二と、三人並んで木の下に立つと、啓二はうれしそうに修一にお礼を言います。そして「いい?」と許可をとり、後ろから久子をそっと抱きしめます。
「久子がいなきゃよかったなんてウソだよ。ごめんね」啓二はそう言い、久子はおだやかに微笑みます。
目に涙を浮かべ手をつなぐ修一と久子。そこに啓二の姿はもうありませんでした。
以上、映画「影踏み」のあらすじと結末でした。
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