海炭市叙景の紹介:2010年日本映画。41歳で亡くなった作家・佐藤泰志の遺作を映画化。架空の地方都市・海炭市が舞台。さまざまな事情を抱えた人々が必死に生きる姿をオムニバス形式で描く。加瀬亮、谷村美月、小林薫らが厳しい冬の寒さの中で生きる人々を演じる。
監督:熊切和嘉 出演者:谷村美月(井川帆波)、竹原ピストル(井川颯太)、加瀬亮(目黒晴夫)、三浦誠己(萩谷博)、山中崇(工藤まこと)、南果歩(比嘉春代)、小林薫(比嘉隆三)、ほか
映画「海炭市叙景」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「海炭市叙景」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「海炭市叙景」解説
この解説記事には映画「海炭市叙景」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
海炭市叙景のネタバレあらすじ:兄妹の話
北国の小さな町・海炭市に住む兄の井川颯太(竹原ピストル)と妹・帆波(谷村美月)。二人は造船業を営む海炭ドッグで働いています。ある日、海炭ドッグが大規模なリストラを行うことを発表。颯太たち労働者は反対を訴えましたが、颯太も帆波も解雇されてしまい、二人とも無職になってしまいました。
今後の見通しが立たない中、世の中では新しい年を迎えるための準備が進んでいます。年越しそばを食べていた帆波に、颯太が「初日の出を見に行こう!」と提案。そばを食べ終えた二人は山に登り、初日の出を待ちました。太陽が昇ると歓声があがります。みんながうれしそうに初日の出を見ているのに対し、颯太だけはただじっと太陽を眺めているのでした。
帰り道、「一人分しか買うことができなかった。」と言って、颯太はロープウェイのチケット一枚と小銭を帆波に渡します。一人で歩いて山を下りると言い出す颯太に、一緒に歩いて下りると告げる帆波。すると「どちらが早いか競争だぞ!」と、颯太は無理やり帆波をロープウェイに乗せました。
その後、帆波は山の下にあるロープウェイの待合室で颯太を待ちますが、待てど暮らせど颯太はおりて来ません。その日の営業が終了し、定員が帆波に声を掛けます。すると帆波は「あと一分だけ待ってください…」と懇願し、その後諦めたように「電話をお借りできますか?」と頼む帆波でした。
海炭市叙景のネタバレあらすじ:トキの話
屋根にはブルーシートがかけられた、今にも崩れそうな古い家に住んでいる老婆のトキがいました。鶏と二匹のヤギ、そしてネコと暮らしている彼女の家は、街の開発のために立ち退きを迫られています。そんなトキの元に、市役所に勤めるまことが説得に訪れます。
「引っ越しを考えてほしい。」と頼むまことですが、トキは「死ぬのはすぐだから、待っとけ!」と言って家を離れることはしないと断固拒否。このままでは強制退去となってしまいますが、トキは頑として立ち退きに応じません。
そんなある日、トキが可愛がっていた猫がどこかへ出かけたまま帰らなくなります。トキは心配して外を見回りますが、ネコの姿はどこにもないのでした。
海炭市叙景のネタバレあらすじ:隆三の話
プラネタリウム施設で働く比嘉隆三(小林薫)は、彼の妻・春代(南果歩)と一人息子との三人で暮らしています。仕事を終えた隆三が家に帰ると、春代が派手な化粧と服に身を包んで夜の仕事に出かけようとしています。家の中は雑然としており、夫婦の仲は完全に冷え切った状態です。反抗期を迎えた息子はまともに口をきこうともせず、そんな毎日に嫌気がさしている隆三。
ある日、春代が朝になっても帰らないことがありました。翌日になってようやく帰ってきた春代に、どこに泊まったのか隆三が尋ねます。隆三は春代に携帯を見せるよう言い、春代は素直にそれに応じますが、「ばかじゃない?何疑ってんだか…」と言われてしまいました。
翌日、隆三はいつもプラネタリウムに一人で来ている小学生の少年・アキラに声を掛け、絵本を手渡します。「本物を見なさい。」と隆三に言われたアキラは、礼を言って帰っていくのでした。その日の夜、隆三は部活帰りの息子を車で迎えに行きます。車の中で隆三は、「お前もお母さんに今の仕事を辞めてほしいと思っているんだろ?」と尋ねました。
すると息子から「それは父さんの都合だろ?自分らで何とか話をつけろよ…」と言われ、隆三は春代が働く店に電話をかけることにします。妻を電話口に出すよう頼む隆三でしたが、店のママから「春代は今忙しくて電話に出れない。」と言われ、隆三は家を飛び出し車に乗り込み急いで店へと向かうことにしました。
その途中、春代が男とタクシーに乗っているのを見かけます。隆三は急いで追いかけようとしますが、車が雪に乗り上げてしまい、追いかけることはできませんでした。
海炭市叙景のネタバレあらすじ:晴夫の話
父親の跡を継いでガス屋の若社長となった目黒晴夫(加瀬亮)は、新規事業として浄水器も扱うことにしました。しかしなかなか設置してくれるところが見つからず、苛立ちが募ります。しかも経営を退いた父親からは色々と口を出され、常にイライラしている状態の晴夫。
そんな彼には同級生だった女性・チエコという不倫相手がいました。妻には内緒で彼女とちょくちょく会っている晴夫ですが、どうやら妻もそのことを勘付いている様子です。
そんなある日、晴夫は息子のアキラにアザがあるのを見つけました。アキラを虐待をしているのが妻だと気付いた晴夫は、妻に暴力をふるいます。すると妻は晴夫が不倫していることを知っていると打ち明け、逆に責められてしまいました。
その後も、アキラは母親から虐待を受け続けます。そのことを社員も知っており、社員の一人から「いい加減ちゃんとしたほうがいいですよ。」と言われた隆三は、アキラを病院へ連れて行き、不倫相手のことも妻のこともちゃんとしようと思うのでした。
海炭市叙景の結末:博の話
晴夫のガス屋に浄水器の話を持ってきたのは博でした。彼は東京から営業で来ていますが、もともと海炭市は彼の出身地でもあります。博の父親は路面電車の運転士をしています。博は故郷に戻っても父親と会うことはなく、ホテルに泊まっていました。
そんな彼が夜の街に出掛けようとすると、一人のホステスに呼び止められます。お金を持っていない博でしたが、安くしておくと言われて飲みに行くことにしました。
博が酒を飲んでいると、一人の中年男性が入ってきます。彼は、「俺は金を持っている。だから酒を持ってこい!お前のことも買うぞ!」と店のママにしつこく迫ります。結局は店にいた男性につまみだされてしまた男性ですが、その後博が店を出ようとすると再び戻ってきます。博はその男性を連れて店の外に出て、ホテルへと戻っていくのでした。
新しい年を迎えようとしています。博の父親が運転する路面電車には、隆三と春代夫婦と晴夫と息子のアキラの姿がありました。
年が明け、博が墓参りをしていると偶然父親と再会します。二人は少しの間バスの中で話をすることができました。その後東京に戻るためのフェリーに乗り込んだ博は、颯太が山で遺体で見つかったニュースを目にします。デッキに出た博は、海炭市の風景を眺めます。
冬が終わり温かな季節になった頃、トキの家の周辺では開発工事が始まっていました。そんなトキの元に猫が戻ってきます。妊娠しているらしい猫を見て、トキは「産め産め。みんなオレが育ててやる。」と言いながら、やさしくなでてやるのでした。
以上、映画「海炭市叙景」のあらすじと結末でした。
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