切り子の詩の紹介:2016年日本映画。「“大事なものは目に見えないものよ”すべてのモノづくりを支える人への応援詩」と題した日本のモノづくりを描いた関西発の人情ドラマです。「切り子」とは「切りくず」に対する敬意を込めた造語で、物語はフィクションですが、劇中でのモノづくりの技術はホンモノの『たこ焼きの詩』に続く下町の詩シリーズ第2弾です。
監督:近兼拓史 出演:澤田みほ(とみずみほ)、澤田敏行(澤田敏行)、サニー部長(サニー・フランシス)、一真奈(永津真奈)、コミジイ(小峯隆生)、一一課長・カズハジメ課長(KAZZ)、岩井万実(岩井万実)、良子先生(田中良子)、澤田鈴音(近田球丸)、ほか
映画「切り子の詩」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「切り子の詩」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
切り子の詩の予告編 動画
映画「切り子の詩」解説
この解説記事には映画「切り子の詩」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
切り子の詩のネタバレあらすじ:起・信頼
関西の商社で営業マンとして働く澤田敏行は、下町の小さな工場を回っては工作機械や設備の注文を受けていました。成績は常に低い万年課長でしたが、顧客のために親身に働く彼の姿勢は、取引先から厚い信頼を得ていました。家族は、仕事で留守がちな敏行に代わり、家を守るしっかり者の妻・みほと、幼稚園に通う元気な息子・鈴音との3人暮らしで、幸せな日々を暮していました。
ある日、敏行はある取引先の社長から大型工作機械の相談を受け、工場見学に招きました。案内したのは、岡山県浅口郡里庄町に本拠を置く世界的な精密工作機械メーカー・安田工業です。社長は一流の技術者でしたが、二代目を継ぐ自分の息子のため、一念発起して大型機械の購入を考えていました。しかし、敏行は機械を売ることを渋ります。「なんやて~。あんたな、人が機械買う言うてんのに、売らんって言うんかい」怒る社長に、敏行は自分が若き二代目から受けた相談を告白し、今一番必要なのは機械ではなく、二代目の不安を解消することだと説明します。万事この調子なので、「困った時の澤田さん」と取引先からの信頼は抜群ですが、売上成績はいつも最下位で、社内での評価は今ひとつでした。
切り子の詩のネタバレあらすじ:承・技術者の魂
敏行はクライアントだけでなく、若い後輩社員からも信頼されていました。2000万以上もする高額な機械を自分などに売れるのかと不安になる若手に、敏行は精密工具メーカーを見学させます。それは最新鋭の高額機械も小さな精密な刃物がなければ、全く使い物にはならないからでした。「1億円の機械でも1万円の刃物の出来次第で仕事の質が変わる」「陰の主役や」と敏行は言います。工場見学を終えた彼は、敏行の言葉と工場での刃物づくりの技術者の姿勢と技術に魅せられ、仕事への意欲を新たにします。
さて今、江戸切粉細工が注目されています。それは高級住宅地で有名な白金で作られています。かつて白金には金属加工工場が集まっていましたが、時代の流れと共に今や数軒となってしまいました。しかし、そんな中、金属加工工場が目をつけたのが、金属加工の過程で出る金属の削りかす「切粉」でした。それは様々な美しい色に輝くもので、それをペーパークラフトやアクセサリーに加工したのです。予想以上にそれは、若い人たちを中心に静かな人気を集め始めていました。モノづくりが好きな敏行は、それを聞いて嬉しくなり、つい買って妻にプレゼントします。
切り子の詩のネタバレあらすじ:転・奇跡
「あっ、澤田さん。えらいことですわ~」ある日、敏行は得意先の工場から見たこともない部品の緊急注文を受けます。なんとそれは、敏行が幼い頃から憧れていたJAMSTECの有人深海調査船「しんかい6500」プロジェクトに関わる重要部品でした。しかし、その精度はミクロ単位で、期限も翌日の10時と、ほとんど不可能と思われる仕事でした。「もう、こんな離れ業できるのは澤田さんだけ」と頼み込まれた敏行は、駆けずり回ります。
そして、敏行は懇意にしている下町の金属加工会社に駆け込みます。「これできるんは大阪でここだけなんです」「明日の朝。横須賀に」「今日中って、そりゃ無理ですわ」「いや、そこをなんとか…。日本の未来のために」「高くなりますよ」「ありがとうございます!」敏行はこれまで積み上げてきた信頼で、職人の協力を得て部品を完成させます。そして、真夜中、敏行は完成した部品を持って、横浜に向かって車を走らせました。敏行の寝食を忘れた努力は実り、奇跡の緊急対応は成功し、敏行の名は金属加工業界に轟きます。
切り子の詩の結末:新たな舞台へ
仕事一辺倒で忙しい敏行に不満を抱いていた妻・みほや幼い息子・鈴音も、そんな父・敏行を理解するようになります。「新天地のインド支社なら澤田さんしかいない。僕の絵は上書きがうまいだけ。でも澤田さんの絵は下地にとんでもない時間と手間、愛情がこもっています」低かった社内での評価も上がり、敏行はインド支社支社長を打診されます。
「ボクより適任はいるでしょ。それは無理です。僕の売上知ってます?」「しかし、顧客満足度ではお前はダントツのトップだ。オレはな、一番売れる会社じゃない。一番信頼される会社にしたいんだ」断ろうとした敏行でしたが、会社や家族の後押しもあり、新たな一歩としてインド支社長となる決心をします。そして、敏行は家族3人で新天地・インドへ旅立つのでした。
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