長いお別れの紹介:2019年日本映画。小説家・中島京子が自身の父との実体験を基に綴った同名の連作短編集を映画化したヒューマンドラマです。認知症の父と優しく見守る家族の7年間の軌跡と深い絆を描きます。
監督:中野量太 出演者:蒼井優(東芙美)、竹内結子(今村麻里)、松原智恵子(東曜子)、山崎努(東昇平)、北村有起哉(今村新)、中村倫也(磐田道彦)、杉田雷麟(今村崇)、蒲田優惟人(今村崇(幼少時代))ほか
映画「長いお別れ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「長いお別れ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
長いお別れの予告編 動画
映画「長いお別れ」解説
この解説記事には映画「長いお別れ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
長いお別れのネタバレあらすじ:起
2007年。
東京郊外に住む東昇平(山崎努)はこれまで中学校校長として働き、妻・曜子(松原智恵子)や長女・麻里(竹内結子)、次女・芙美(蒼井優)とささやかな暮らしを送ってきました。厳格な昇平は二人の娘が教師になることを希望していましたが、麻里は海洋生物学者の今村新(北村有起哉)と結婚して息子の崇(蒲田優惟人)をもうけ、夫の赴任先であるカリフォルニアに移住しました。芙美は得意な料理を活かしていつかカフェを開くことを目標にしており、スーパーの惣菜部門で働いていました。
この年の秋、曜子は昇平の70回目の誕生日を機に麻里と芙美を実家へ呼び寄せることにしました。麻里は海外移住から1年半経っても未だに異国での暮らしに慣れず、仕事に行き詰まっていた芙美は同棲中の彼氏とも別れたばかりでした。
久々に顔を合わせた一家4人は全員で毎年恒例の三角帽を被って昇平を祝いましたが、突然娘の名前を間違えたかと思えば急に怒鳴ったりしてしまい、麻里と芙美を動揺させてしまいます。
曜子の口から告げられたのは、昇平は半年前から認知症の症状が現れているということ、そしてその事実を告げるために姉妹を呼び寄せたということでした。衝撃の事実を告げられた麻里と芙美はすぐに現実を受け止めることができませんでした。
長いお別れのネタバレあらすじ:承
2009年夏。
芙美はフードトラックでカレーを売る商売を始めましたが、経営は全く上手くいきませんでした。
そんな時、芙美は曜子に頼まれて昇平の友人の葬式に付き添いで参列しましたが、昇平は死者の名前が思い出せず、突拍子もなく訳の分からない言動をとってしまいました。この頃から曜子はデイサービスを雇って昇平の面倒を見てもらうことにしていました。
この頃から新とのすれ違いを感じるようになった麻里は、崇の夏休みを機に母子で帰国しました。麻里と曜子が買い物に出掛けている間、予定よりも早く帰宅した昇平は一人で留守番していた崇のことも誰か忘れてしまっていましたが、崇は昇平が難しい漢字もいとも簡単に読み解く姿に感服しました。
ところが、近頃家を抜け出してどこかへ出かけることが多くなった昇平は崇が寝ている間に家を出てしまい、芙美の中学時代の同級生だった磐田道彦(中村倫也)に助けられました。父を心配に駆け付けた芙美はそこで道彦と再会しました。
曜子、麻里、崇は度々「帰る」と言い出すようになった昇平を生家へ連れて行くことにしましたが、昇平は生家のことも記憶にない様子で「この頃、色々と遠い」と呟きました。崇もまたアメリカに残したガールフレンドを想いながら「遠いのは淋しいよね」と共感しました。
帰りの電車の中、昇平は記憶が結婚前に戻ったのか、自分の両親に曜子を紹介したいと言い出し、曜子は思わず涙を浮かべました。
長いお別れのネタバレあらすじ:転
2011年春。
昇平の症状は更に進み、もはや曜子を妻として認識しなくなっていました。芙美は道彦と交際しており、彼の母が営む食堂で働いていました。道彦は離婚した妻との間に娘がおり、中々娘に会わせてもらえない日々を送っていました。
2011年3月11日。
日本列島を東日本大震災と福島第一原発事故が襲いました。アメリカの麻里はしきりに故郷や家族を心配しますが、放任主義の新は関心を示さず、夫婦の関係はより一層悪化していきました。崇は両親の不仲に加えてガールフレンドに裏切られたこともあり、次第に家庭では口も利かないようになっていきました。
その頃、日本では曜子は放射能から昇平を守るために帽子とマスクを着けさせて外出していましたが、昇平はスーパーで万引き騒ぎを起こしてしまいました。
道彦の母は彼が芙美と結婚することを望んでいましたが、震災の影響か道彦は娘に会わせてもらえるようになりました。ある日、芙美は道彦が母・元妻・娘と楽しく過ごしているところを目の当たりにし、ここに自分の居場所はないと悟ってしまいます。昇平に励まされた芙美は道彦と別れる決心を固め、食堂も辞めました。
程なくして昇平を心配した麻里が帰国しますが、またしても昇平は家を抜け出してしまいます。あらかじめ昇平に持たせていたGPS機能付き携帯により居場所は特定できましたが、そこは麻里と芙美が一度だけ昇平に連れて行ってもらった思い出の遊園地のメリーゴーランドでした。
昇平の姿に、芙美、麻里、曜子は昇平が“あの頃へ”戻りたがっていることに気が付きました。
長いお別れの結末
2013年。
昇平の症状は更に悪化しており、これまで気丈に夫を支え続けて来た曜子も左目の網膜剥離を患ってしまいました。芙美は曜子を説得して手術を受けさせることにし、自分の内定も犠牲にして曜子の代わりに昇平の介護をすることにしましたが慣れない作業に悪戦苦闘して疲れ果てていきました。
ネット電話で芙美と連絡を取り合っていた麻里は実家を心配しますが、自らも不登校に陥っていた崇(杉田雷麟)や相変わらず家庭を顧みない新のことで悩みを抱え続けていました。
そんな時、学校に新と共に呼び出された麻里は、崇の不登校の原因が両親の不仲であると担任から指摘され、相変わらず態度を改めようとしない新に洗いざらい不満をぶちまけた後にキスをしました。
昇平は遂に入院生活を余儀なくされ、足を骨折していたことも明らかになってしまいます。芙美は無事退院した曜子と共に昇平をネット電話で麻里と通信させ、麻里は両親みたいな家庭を築きたかったと涙をこぼしました。そこに帰宅してきた崇は画面越しに昇平と対面、昇平は孫の姿に笑顔で答えました。
やがて昇平は意識不明に陥り、芙美と曜子は帰国した麻里も交えて四人で昇平の誕生日を祝いました。恒例の三角帽とケーキを用意した三人は、寝ながらも笑みを浮かべた昇平の姿に思わず笑みを浮かべました。昇平が息を引き取ったのはこれから間もなくのことでした。
学校に呼び出された崇は校長と面談し、祖父の死を伝えると、校長はアメリカでは認知症のことを“ロング・グッドバイ(長いお別れ)”と呼ぶのだと教えてくれました。その後、学校を出た崇は舞い降りて来た1枚の葉っぱを掴み、昇平が生前葉っぱを栞代わりに使っていたことを思い出しながら改めて祖父への想いを馳せていました。
以上、映画「長いお別れ」のあらすじと結末でした。
実際の認知症患者さんの流れを克明に描いており、感動し、参考になりました。(医師)