パリ13区の紹介:2021年フランス映画。2015年『ディーパンの闘い』でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞したジャック・オディアール監督。70歳の彼が、セリーヌ・シアマとレア・ミシウスという若手監督たちの共同脚本による現代の愛の物語を美しいモノクロ映像で映したのがこの『パリ13区』だ。高級高層住宅が立ち並ぶ今まで知らなかったパリの街並みと、そこに暮らす様々なルーツの人々の、愛を求めてもがく姿がていねいに描き出されている。原作は、日系アメリカ人四世のグラフィック・ノベル作家、エイドリアン・トミネの短編小説。
監督:ジャック・オディアール 原作:エイドリアン・トミネ 出演:ルーシー・チャン(エミリー)、マキタ・サンバ(カミーユ)、ノエミ・メルラン(ノラ)、ジェニー・ベス(アンバー・スウィート)ほか
映画「パリ13区」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パリ13区」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「パリ13区」解説
この解説記事には映画「パリ13区」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パリ13区のネタバレあらすじ:起
パリ13区にある高層マンションに住む台湾系フランス人のエミリーは、ルームシェアの募集を見てやってきたカミーユを見て驚きます。女性だと思ったその人はアフリカ系の男性でした。仕事の関係でどうしてもそこに住みたいカミーユは真面目な高校教師だとアピールし、エミリーは彼を招き入れます。
飲みながらいつの間にか話はセクシャルな話題にまで及び、カミーユは無事にルームメイトになることができました。早速ふたりはセックスをする関係になりますが、自由奔放に求めてくるエミリーをカミーユが拒んだことから雲行きが怪しくなってきます。
恋人ではないのでもうセックスはしないとカミーユが言うと、エミリーは当初のルールを変更してカミーユの家事負担を増やしました。
そんなある日、エミリーは自らの不適切な応対のせいでオペレーターの仕事をクビになってしまいます。傷心のエミリーは医師である姉に電話して相談しますが、忙しい彼女はあまり相手にしてくれません。
そしてカミーユからは、今夜友だちを家に呼ぶから部屋を使わせてほしいと言われてしまいます。また、離れて住む母親から<おばあちゃんに会いに行って>とのメッセージが届きます。
その夜、クラブでハメを外したエミリーはMDMAでハイになってしまいます。カミーユへの思いがあふれ、雨の中ずぶ濡れになりながら家に帰るとそこには裸の女性とカミーユの姿がありました。
ステファニーというその同僚の女性を紹介されたあと、エミリーは毛布にくるまって眠ろうとしますがふたりの愛し合う声が聞こえて眠れません。助けを求めて電話した姉にも拒絶され、エミリーはただただあやまり続けていました。
パリ13区のネタバレあらすじ:承
カミーユが実家に戻ると、昔から吃音で悩んでいた妹がスタンドアップを始めたと父が話します。それをバカにしてしまったカミーユはふたりから責められますが、カミーユはくだらないと思っています。
一方、エミリーの部屋にはステファニーが来ていました。カミーユが留守なのにここにいるのはおかしい、とエミリーは家賃を払うよう要求します。そして他の女は払っている、と冗談を言って彼女を怒らせます。
カミーユは、君のせいで大変だったとエミリーに抗議します。そして、魅力があれば関係は長続きするが君とはそうではなかったと言ってエミリーの怒りを買います。やがてカミーユは、ステファニーの部屋に引っ越すと言い出します。
失業中の自分を置いていくの?とエミリーは責めますが、この部屋は彼女の祖母のものでそもそもエミリーは家賃を払っていません。君の生活を支えるために家賃を払っていたのか…とカミーユはあきれ、ぼくは君の恋人でもなんでもない、と言い放つのでした。
パリ13区のネタバレあらすじ:転
ソルボンヌ大学に復学した32歳のノラは、セーヌ川沿いのアパートでの新生活にワクワクしていました。しかし、大学では都会の年下の学生たちになかなかなじめません。パーティがあると知り、金髪のウィッグにミニスカートという格好ででかけたノラでしたが、その姿が男子学生たちのよく知るセックスワーカー“アンバー・スウィート”にそっくりだったため、本人と勘違いされてSNSでそのことが拡散されてしまいます。
大学に行けなくなってしまったノラは田舎の叔父に電話をしますが、帰っておいで、君の身体が恋しい、と言われ電話を切ってしまいます。その後どんどんいかがわしいメッセージが不特定多数から送られてくるため、ノラは携帯電話を叩き壊してしまいした。
一ヶ月後。エミリーは中華料理店で給仕の仕事をしています。仲間たちとマッチングアプリの話題で盛り上がっていると、久しぶりにカミーユから連絡が入ります。仕返しとばかり冷たくあしらいますが内心まんざらでもありません。
カミーユは教師の仕事を休職し、友人の不動産会社を手伝っています。その会社の求人にノラが応募してきました。ボルドーで、叔父の不動産会社で5年働いていたノラは優秀で即採用となります。カミーユは美しくて仕事もできるノラに熱い視線を送りますが、彼女はそういうことはやめてください、とハッキリ告げるのでした。
帰宅したノラは、気になっていたアンバー・スウィートにチャットしてみました。女性からのアクセスに驚いたアンバーですが、話したいだけというノラと料金分の会話をしてくれました。
カミーユは久しぶりにカフェでエミリーと再会し、ステファニーにフラれたことや今の仕事のことなどを話します。エミリーは、最近はマッチングアプリで相手を探していると言いました。
ノラはだんだんカミーユとの仕事に慣れてきました。現場で彼の元教え子に会い、ノラはカミーユの知らない一面を目にします。その夜、食事をしたふたりはベッドをともにしますが、いざというときになってノラが拒否。でもカミーユはやさしく接してくれました。
エミリーは近くの老人ホームにいる祖母に会いに来ました。ボサボサの髪を切ってあげますが、認知症の祖母はエミリーに向かって「あなた誰?何してるの」と言うのでした。
エミリーは新しくルームシェアに応募してきた女性に、週1回老人ホームに行ってほしいと条件をつけ加えます。家賃を安くするから、というと彼女はOKしてくれました。
ノラはまたアンバーとチャットしています。ノラのアカウント名が本名だと知り驚くアンバー。時間を延長するためノラが課金しようとすると、アンバーは直接連絡がとれるアドレスを教えてくれました。そしてルイーズという本名も。
パリ13区の結末
つき合い始めたカミーユとノラ。自分を卑下するノラをカミーユは心配しますが、彼女はありがとうと言うだけです。
昼間エミリーと会っているカミーユは、ノラに夢中だと話します。彼女は“聖女”だと。エミリーは、不感症なんじゃない?と悪態をつきます。
ノラはアンバーとスカイプで話しています。アンバーもウィッグを取り素顔の女性の姿です。そこでノラは、叔父との関係を明かします。それが10年続いたことに驚きを隠せないアンバー。
仕事で通訳を頼まれたエミリーがカミーユの不動産会社にやってきました。ノラとは初対面です。カミーユのノラへの視線に嫉妬をおぼえるエミリー。しかしその夜、ともに参加したパーティで、親しげに話すカミーユとエミリーの姿を見てショックを受けたのはノラの方でした。
ふたりきりになり、エミリーと関係があったことを知ったノラは「私はあなたの何?愛人2号?3号?」と声を荒げます。そして部屋のベッドで身体をつなごうとしますが、突然ノラは後ろからの体位を望み、強引に事を進めようとして自己嫌悪に陥ります。そしてベッドから出ると、ひとりになりたい、と言って帰ってしまうのでした。
ノラはスカイプでアンバーに、いままで一番屈辱的だった行為を質問します。よく考えてから笑い話のように話すアンバー。
一方カミーユはエミリーとビデオ通話しています。アプリの男の品定めをしながら、ノラの行動について悩むカミーユ。
ある日、カミーユの仕事場には妹がやってきています。そこにノラが現れますが、そそくさと仕事で外出してしまいます。恋人だとカミーユは白状しますがその顔はどこか寂しそうです。
その夜、勉強中のカミーユの部屋に裸のノラが静かに入ってきました。動画のアンバーのように積極的なノラはカミーユの動きを制し、自分主導で行為を行います。そしてすべてが終わると服を身に着け、「もう二度と会わない」と言って去っていきました。
翌日、妹の動画を見て大笑いするカミーユ。そして妹に、彼女は出ていったと報告します。するとひとりの女性が入ってきました。カミーユたちの母の遺品である車イスを譲り受けにきたのです。カミーユは車イスを見せて説明しますが、うまく折りたたむことができず慌ててしまい、座り込んで泣いてしまいます。困惑する女性は、そのままで大丈夫と声をかけます。
ベッドで寝ながらスカイプをしていたノラとアンバー。もう寝ましょうと切ろうとすると、このままで、とアンバーが止めます。「目が覚めたときさみしいから」と。
エミリーの携帯電話に母親から、祖母が亡くなったと電話が入ります。本当なら近くにいるエミリーが一番早く知るはずなのに、最後に会いに行ったのはいつなの?と責められるエミリー。葬式は今度の日曜日だと告げられます。
エミリーはカミーユに事情を話します。部屋を売りに出すというと手伝おうかというカミーユ。落ち込むエミリーに、葬式にいっしょに行ってやろうか、とカミーユは提案しますが、なんて紹介すればいいの?と怒られてしまいます。そして、「今もあなたを愛してるからつらい」と言ってエミリーは去っていきます。
日曜日。
ノラは広い公園をひとりで歩いています。ベンチに座ると、反対側からひとりの女性が近づいてきました。アンバー、いえルイーズです。ふたりは向かい合い、互いの頬に手をあてます。すると突然、ノラがその場に倒れ込んでしまいます。心配してのぞき込むルイーズにノラは「キスして」と頼みます。ふたりはその場で美しいキスを交わします。
物が片付いたマンションの部屋で、エミリーは黒い服に身を包んでいます。花束を持ちでかけようとするとインターホンが鳴りました。声の主はカミーユです。「愛してる」というカミーユに、聞こえない!なんて?と言って何度も大きく愛してる、と言わせたエミリー。鍵を締めて下におりていくのでした。
以上、映画「パリ13区」のあらすじと結末でした。
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