猿楽町で会いましょうの紹介:2019年日本映画。まだこの世に存在しない映画の予告編を制作する「第2回未完成映画予告編大賞MI-CAN」のグランプリ受賞作を、数多くのCMを手掛けてきた児山隆が自らの長編監督デビュー作として映画化したラブストーリーです。渋谷・猿楽町を舞台に、駆け出しのカメラマンと訳ありの読者モデルの女性との恋、そして女性が隠している秘密を現在・過去・現在の三部構成で描きます。
監督:児山隆 出演者:金子大地(小山田修司)、石川瑠華(田中ユカ)、栁俊太郎(北村良平)、小西桜子(大島久子/芳岡藍)、長友郁真(片岡康平)、大窪人衛(山本優一)、呉城久美(久万紀子)、岩瀬亮(田中一友)、前野健太(嵩村秋彦)ほか
映画「猿楽町で会いましょう」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「猿楽町で会いましょう」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
猿楽町で会いましょうの予告編 動画
映画「猿楽町で会いましょう」解説
この解説記事には映画「猿楽町で会いましょう」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
猿楽町で会いましょうのネタバレあらすじ:Chapter:1(2019年6月~2019年7月)
駆け出しのカメラマンである小山田修司(金子大地)はとあるフォトスタジオで3年間アシスタントとして働き、独立してから2年が経っていました。
小山田は仕事を得るために雑誌編集者の嵩村秋彦(前野健太)の元に売り込みに行きましたが、小山田の写真を見た嵩村は「何を撮りたいのか全然分からない。パッションを感じない」と一蹴したあげく、「君、ちゃんと人を好きになったことある?」とまで言ってきました。しかし、嵩村はふと思い出したかのように、ある仕事を小山田に依頼しました。
それは嵩村の知人である読者モデル・田中ユカ(石川瑠華)のSNS用の写真を撮る仕事でした。依頼を引き受けた小山田は渋谷で彼女と初対面、小山田が着ているホラー映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のTシャツを見たユカは早速映画の話題をしました。
小山田は緊張するユカに「そんなに表情を作らない方が可愛い」と声をかけ、彼女をリラックスさせるよう努めました。撮影は無事に終わり、彼女のいない小山田はふとユカのことが気になり出しました。ユカから彼氏がいないことを聞きだした小山田は、撮った写真を見に来ないかとユカを渋谷区猿楽町にある自宅アパートへ誘いました。ユカは「何もしないこと」を条件に小山田の誘いに乗りました。
小山田は早速撮りたての写真をユカに見せ、和やかな雰囲気を作ったところで、終電が過ぎたことを口実に泊まっていくよう勧めました。小山田はユカがベットに入ったのをいいことに彼女に強引に迫りましたが、ユカは泣きながら小山田が約束を破ったことを責めました。結局、小山田は何をすることもできず、翌朝、小山田が目を覚ますとユカは既に帰った後でした。
小山田は編集者の片岡康平(長友郁真)と一緒に仕事をしていましたが、どうしてもユカのことが気になって仕方ありませんでした。小山田はユカのインスタグラムを見てみると、ユカはそろそろプロフィール写真を変更したいと書き込んでいました。小山田はぜひ撮らせてほしいとメッセージを送るとユカは快諾し、小山田は喜んで写真を撮りに行きました。撮影後、小山田は再びユカを自宅に招きましたが、ユカとは何をすることもありませんでした。
小山田はユカとの撮影を通じて、ようやく仕事にパッションを覚えるようになっていきました。小山田は意を決してユカに告白し、ユカは戸惑いながらも受け入れました。こうして二人は交際をスタートさせましたが、ユカは小山田を自宅マンションに入れようとはしませんでした。
小山田はユカとの間に距離を感じていたある日、小山田は編集部から急なカメラマンの代役の仕事を頼まれました。小山田がこれから打ち合わせに行こうとしたその時、玄関に全身びしょ濡れのユカが現れました。ユカは「今、一緒にいたいの。お願い」と小山田を引き留め、小山田とユカは初めて関係を持ちました。
二人の交際は順調かと思われたそんなある日。アクセサリーショップの撮影の仕事をしていた小山田は、その店でユカのためにイヤリングを買いました。小山田は以前にユカから教えてもらった彼女の自宅マンションの「4階の右から2番目」の部屋に向かいましたが、その部屋に見知らぬ男が出入りしているのを目撃してしまいました。部屋の表札はユカの苗字「田中」ではなく「北村」と記されていました。
小山田は真相を確かめるため、マンションの前で夜を明かしました。翌朝、ユカの部屋から男が出ていくところを確認した小山田はユカがゴミ出しのために外に出たところを詰め寄り、あの男との関係について問い質しました。ユカはあの男は元々同棲相手だったものの今は別れており、新しい部屋が見つかるまで同居しているだけだと釈明しました。小山田は「私は小山田くんのことが好き」と言うユカを信用できず、今すぐこの部屋から出ないと信用しないと告げました。
ユカはただちに荷物をまとめ始めましたが、小山田はこの部屋の中から「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のポスターがあることを発見しました。どうやらこの映画はあの男の趣味だったようです。
猿楽町で会いましょうのネタバレあらすじ:Chapter:2(2018年3月~2019年7月)
物語はユカが小山田と出会う1年前にさかのぼります。女優志望のユカは故郷の新潟を飛び出し、東京行きの夜行バスに乗っていました。夜行バスの休憩中、ユカは自動販売機で飲み物を買おうとしましたが、小銭が足りませんでした。それを見かねたのは同じバスに乗っている若手インテリアデザイナーの北村良平(栁俊太郎)でした。北村はユカのために飲み物を買ってあげました。
ユカはタレント養成スクールに通い始めましたが、ある時事務員から学費86万5千円を滞納していることを咎められました。特待生で入ったユカは学費が免除だと聞いていたはずでしたが、実際は免除されているのは入学金だけでした。ユカはアパレルショップでアルバイトをしていましたが、それだけでは金が足りず、同じスクールに通う大島久子(小西桜子)という女性がユカを見かねて自分が働いているメンズエステの仕事を紹介してくれました。しかし、久子が働く店は限りなく風俗店に近いグレーな店でした。
この頃からユカは北村の部屋に居候し、同棲に近い暮らしを送っていました。ユカはオーディションの度にアパレルの仕事を突然休むことが多くなり、店長の久万紀子(呉城久美)にそのことを咎められた際に「私は店長と違ってやりたいことがある」と発言して一触即発の事態を招いてしまいました。
そんなユカをいつも庇ってくれたのが同僚の山本優一(大窪人衛)でした。山本はユカに想いを寄せており、彼女の夢を応援してくれていますが、ユカはそんな山本とは一定の距離を置いて惚れ込まないように保っていました。
メンスエステで働いていたユカの前に、客として嵩村がやってきました。嵩村が業界人であることを知ったユカは仕事を紹介してほしいと頼み、嵩村は見返りとして“裏サービス”を要求してきました。ユカは嫌がりながらも、これがチャンスだと思い嵩村と性的関係を持ってしまいました。
久子はいつしかスクールに通わなくなり、気が付くと「芳岡藍」という芸名で新人女優として活動していました。それに気づいたスクールの同級生は、久子に風俗まがいの店で働くよう誘われたことを打ち明けました。どうやらその店に同級生を紹介すると紹介料がもらえるらしく、久子は自分の懐を潤すために自分をあの店に紹介したことに気付いたユカはショックを受けました。
北村は仕事が忙しいのか、なかなか部屋に帰って来ませんでした。ユカは寂しさを紛らわすかのように、ずるずると嵩村との関係を続けていました。ユカは嵩村が妻子持ちであることを知っていましたが、いつか業界の者を紹介してくれるだろうと信じていたのです。
嵩村が紹介したのは小山田でした。小山田は仕事を通じてユカに好意を抱くようになり、ユカもまんざらではありませんでした。ある時、ユカはプロフィール写真を用意する必要に迫られましたが、スクールで撮ると何と1万円以上もかかることを知りました。ユカは山本に写真を撮ってもらいましたが出来は今一つであり、インスタグラムを通じて小山田に撮ってもらおうと思いつきました。それからというもの、ユカは小山田と付き合うようになりましたが、小山田には北村の存在を隠し続けていました。
そんなある日、北村が久しぶりに部屋に帰ってきました。ユカは勝手に部屋を散らかしたままで、作った料理も鍋で腐らせてしまっていました。そもそも北村はユカと付き合った覚えはなく、あくまでもユカが勝手に北村の部屋に転がり込んでいるだけだったのです。北村は「好きな人ができた」と言い、ユカに出ていけと告げました。ユカは雨の中を傘もささずに走り、小山田の家に向かいました。小山田と関係を持ったユカは、その後猿楽町の小山田のアパートで暮らし始めました―――。
猿楽町で会いましょうの結末:Chapter:3(2019年8月~)
小山田がユカをモデルにした写真が、ある写真賞のグランプリに次ぐ優秀賞を受賞しました。これをきっかけに小山田の業界での知名度はぐんぐん上がっていき、次から次へと仕事が舞い込むようになりました。しかし、成功と引き換えに小山田はユカと過ごす時間が減っていき、ユカはまだ北村と繋がっているのか気になり出していました。
真夜中にも関わらず、ユカのスマホにはよく着信が鳴っていました。そこで小山田はユカが寝ている間にこっそりとスマホを覗いてみたところ、小山田の不安は的中してしまいました。ユカはやはり北村と連絡を取り合っており、こともあろうか一番好きなのは北村だというメッセージまで発していました。
小山田はユカに真意を問い質す勇気もなく、ただ夜にユカのスマホを覗き見する日々を送っていました。そんなある日、小山田にファッションの季刊誌の表紙を撮る仕事が舞い込み、小山田は編集部で嵩村と打ち合わせをしていたところ、その場にはユカも居合わせていました。小山田はユカが自分との交際のことを嵩村に報告していないことに気付き、嵩村にユカと知り合った経緯を訊いてみました。
嵩村の話によると、ユカは“カナ”と名乗っていかがわしいメンズエステで働いていたのです。ショックを受けた小山田は恐る恐るその店で“カナ”を指名しましたが、出てきたのは全くの別人でした。ユカは既にその店を辞めており、今度はかつて自分を利用していた“久子”の名を名乗って別の店で働いていました。やがて小山田はスマホの覗き見を通じて、ユカが嵩村とも関係を持っていたことを知りましたが、このことは胸の内に秘めておくことにしました。
そんなある時、ユカは匿名で、「芳岡藍」がかつて風俗でバイトしていたことをSNS上にバラしてしまいました。その直後、ユカにスタンドイン(撮影前に位置を確認するための代役)の仕事が舞い込み、スタジオに行くとそこには芳岡(久子)の姿がありました。ユカは芳岡(久子)のスタンドインを頼まれたのです。芳岡(久子)はSNSに自分の過去を書き込んだのはユカであることに気付いており、口論の末にコーヒーをユカの頭にぶっかけてしまいました。
落ち込んだユカはそのままメンズエステの仕事に行きましたが、客としてやってきたのは何と山本でした。山本は困っているなら金を融通すると持ちかけましたが、ユカは思わず山本を拒絶してしまい、山本も腹を立てて帰っていってしまいました。
行き詰ったユカが最後に頼ろうとしたのは小山田でした。しかし、ユカが電話をかけた時には小山田は仕事の真っ最中であり、「今すぐ帰ってきて。今じゃなきゃダメなの」というユカの訴えにも耳を貸すことはありませんでした。
小山田は嘘をつき続けるユカとの関係に思い悩み、友人にそのことを相談していました。そんなある日、小山田は雑誌の表紙の撮影のため九州に行くことになりました。小山田は現地に泊まっていくとユカに告げました。
表紙のモデルは芳岡(久子)でした。撮影終了後、小山田は芳岡(久子)からユカのことを知っているのかと尋ねられました。芳岡(久子)は小山田がユカを撮った写真を見て、自分もこの写真のように撮ってほしいと依頼したのです。
小山田は九州には泊まらず、新幹線で猿楽町に戻りました。自宅アパートに着いた小山田は、自分の部屋から北村が出てきてタクシーに乗り込む様を目撃してしまいました。嫌な予感がした小山田はこっそりと部屋に入ると、ベッドではユカが裸のまま横たわっていました。
慌てて服を着たユカは北村との関係を否定し、小山田の追及に対しても知らないと喚き散らすばかりでした。遂に我慢の限界を迎えた小山田はユカと別れる決断をしました。
ユカはとあるCMのオーディションを受けていました。面接官から「あなたはどんな人ですか?」と訊かれたユカは適当に答えようとしましたが言葉に詰まってしまい、しばらく黙ったあと「知りたくないんです」と答えました。
小山田はアパートを引き払い、猿楽町から去っていきました。誰もいなくなった部屋には、裏返しにされた1枚の写真だけが残されていました。
以上、映画「猿楽町で会いましょう」のあらすじと結末でした。
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